夜のとばりに包まれ静寂に包まれた森、そこに一条の光が降り立った。
光が一瞬、光量を増して消える。
そのあとから一人の少年が現れる。
癖のないつややかで腰まで伸びた黒髪
全身よく鍛えられて、引き締まった体つき
そして・・・まだどこか幼さが残るあどけない顔
ふと、当たりの静寂を破り無機質な声が響き渡る。
【着地―――成功。ダミーに使った隕石もきれい粉々になって海に落ちました】
「報告さんきゅー」
【現在時刻午前2時15分・・・俗にいう丑の刻というやつですね】
「なあ・・・最近ずっと考えていたんだが・・・お前のその謎知識は何処産のものだ?」
【・・・別にいいじゃあありませんか!】
「別に・・・【それよりもせっかく夜なんですから人目に付く前に移動しましょう!】
そんな声にせかされ町のほうに歩きだした少年を、森の木々だけが優しく見つめていた。
◆ ◆
俺が林から出ると、繁華街を照らすネオンが目を焼く
繁華街と俺が降りたった森はかなり離れていて、何度か降りる際に利用しているだが・・・いまだなれない。
宇宙から日本をに見ると明るくてはっきりと見えたが・・・実際この場に来ると余計にすごく感じるな―――これから地球にいるんだし、早くならさないとな・・・
そんなことを考えつつ歩を進める。
俺の両親の所へ
さすがに、深夜に墓参りに来る人はほとんどいないだろう・・・というか大体の霊園は鍵を閉められている。まあ、この10年訓練を続けてきた俺は生身の状態でも3mぐらい塀なら簡単に上れるんだけどな・・・っと
俺が足を止めた墓石には俺と同じ“加藤”の名が刻まれている。
「スプー、広域探査。衛星も含めて俺たちを見ている奴がいないか確認してくれ」
【了解―――終了。監視している生命体は存在しませんし、衛星にはダミーの映像を送信しています・・・お好きなだけどうぞ】
「いつも、悪いな・・・ありがとう」
そう確認を取ってから、リングに意志をそぎこみ緑色に輝くブラシを作って力を入れてゴシゴシと墓を磨き始める。
「前に来たのは4か月前だったから結構汚れが頭っているなぁ」
【ですが、大きな傷もないですしすぐに綺麗になるでしょう】
スプーの言葉の言うというり、汚れまみれだった墓石はみるみると綺麗なっていき、最後にソリッドライトで創ったホースから水を流して、これまたソリッドライトで創った大きなドライヤーで乾燥させて・・・・
「よし、終わった!」
【お疲れ様です】
ピカピカに綺麗になった墓石に俺は語りかける。
「挨拶が遅れたけど・・・ただいま。ママ、父さん」
「最近はずっと月の裏側にいたけど・・・そろそろ、地上でも活動を始めようと思う」
「これでも、結構強くなった。ってスプーからは言われたんだぜ」
「だから、心配しないで・・・見守っててくれよ」
「じゃあ、また来るね・・・行ってきます」
それだけ言うと墓石に背を向けて町のほうへ歩き出した。
【もうよろしいのですか?】
「ああ、それよりも地上で活動をするっていうことはこれまでの経歴を聞かれるかもしれない。準備はしてあるか?」
うちの相棒はすこし呆れたような口調で
【私の能力はヤバイ級ですよ。すでに偽造身分の手配は終わっています】
「ありがとう。それよりもお前の口・・・」
【あんなところにラーメン屋が!食事にしたらどうですか!?】
「・・・わかった」
また聞き逃してしまった。まあいいか、そのラーメン屋のあっさり塩ラーメンがうまかったから店を出るころにはそんなことなどさっぱり忘れて、“家路を急いだ”
◆ ◆
「ここに来るのは久しぶりだな」
表札には加藤の文字、雑草だらけになった庭、塗装の禿げた壁、雨戸の周りはほとんどメンテナンスをしていなかったから錆びついている。
俺は今、自宅の前に立っていた―――まあ、案の定ボロボロの幽霊屋敷のようだが・・・
「こりゃあ、ひどいな・・・手入れの手配をしとかないとな」
【あなたがこの家にいたのも10年も前のことになりますからね・・・】
ソリッドライトで鍵を創って鍵穴に突っ込むが・・・
「あかない・・・」
【まあ、こうなっても仕方がないでしょう】
「しょうがねーなぁ」
そうぼやきつつ鍵を消して、今度は庭のほうに向かう。目指すは雨戸だ・・・でもこのままじゃ音が響くな―――なら!
【賢いやり方ですね】
「だろう?・・・こうやってレールの部分に創った油を流せば音は出ないって寸法さ」
そう言いつつ、静かに雨戸をあけた俺は・・・今度は室内に手だけ創って窓の鍵を開ける。
「・・・なんだか、自宅に帰ってきたのにやってることは泥棒みたいだ・・・」
【そうですね・・・まあバレなきゃ犯罪じゃないんですよ!!】
・・・あのころのスプーが懐かしい。
前は犯罪すんなって口酸っぱく言っていたのに・・・そんなことよりさっさと入るか。
十年ぶりの自宅は、雪の様に厚く降り積もっていて・・・外と同じく荒れ放題だった。
「また、掃除かな・・・?」
◆ ◆
俺の努力とスプーの力によって空が明るくなるくらいには、家の中だけだが幽霊屋敷から、古い家レベルまで持ち直した。俺は疲れて掃除をしたばかりの床に突っ伏す。
「だ~っ!疲れた~!」
【お疲れ様です】
さてと・・・ひとまず家の片づけは終わったし、これからどうするかだ。
宇宙での修行にひと段落ついたから地球に降りてきたんだが・・・何をしよう?
・・・そうだ!
「なあ、スプーIS関連の情報で何か変わったことはなかったか?」
IS―――いやインフィニット・ストラトスというべきか。10年前のあの日、流星のように現れたマルチフォームスーツ。
“ISは女性にしか動かせない”という汎用性に欠けるという欠点はあるものの、“篠ノ之束”という女性が一人で作り上げたというには信じられないほどの技術が詰まっている。
慣性制御技術や
そして、これらの機能をすべて管理している中枢コンピュータ・・・このISという10年前の技術レベルからしたら100年・・・いや、もしかしたら1000年先を行く技術がつまったモノが、世界に登場したことによってこの世は大きく様変わりした。
ISの運用規定を定めたアラスカ条約。核兵器を代表とした、大量破壊兵器の根絶。IS関連技術の解析による技術革新。ISを動かせる、という理由で女尊男碑という考え方の蔓延。不要になった軍人の大量リストラ。その用途を協議用と断定されたISによる世界競技の開催。アラスカ条約によって設立された、IS操縦者を育成するためだけの学校など、正直、今までのほとんどの時間を宇宙で過ごしていた、俺にとってはまるで対岸の火事といった感じだが、実際にさっき町を歩いてみて俺からしたら“かなり変わった”ということだけはわかった。
【もう、今までに調べた以上の情報は実際に私が調べてみないことには無理です】
そうか・・・じゃあどうするかな?
【ですが!面白い情報がありました】
(勿体ぶりやがって・・・)内心、そんなことを考えつつ先を促す。
「どんな情報だ?」
【ちょうど、明々後日・・・IS学園の入学試験が開かれます】
「なるほど・・・そいつは面白そうだ」
そういって俺は笑みを浮かべつつ文章や服装などを偽造するために立ち上がった。
皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年もおそストをよろしくお願いします。今日は状況説明でしたが明日はついにIS学園の入試に向かいます。今回はほとんどネタなしですので少し微妙かもしれませんが・・・それでは失礼します。