「初めまして、加藤陽君。君のことは聞いているよ」
(・・・なんで俺はここにいるんだろう)
【情報を引き出すいい機会じゃないですか。あなたの前にいるのはこのIS学園の学園長ですよ?】
あれから、三か月は何事もなく過ぎ去った。だが・・・俺が“初めて”学校に登校した時なぜか俺だけは織斑先生に連れられて、学園長室に通されたのだ。
家に着いた後ニュースを見て、自分が二番目、ということは知っている俺はなぜこの場にもう一人の男がいないのかという点に疑問を感じつつ、目の前の学園長になぜここに呼んだのか聞くために口を開いた―――が・・・
「ああ!ごめん、こっちのほうがよかったかな?―――ドーモ、カトウ=ハルサン、轡木=十蔵デス」
「・・・・・・」
あいた口がふさがらない・・・なんでスプーが言ったネタをこの人、轡木学園長も知っているんだ!?―――のちになって、俺が宇宙で修行をしているときに流行った小説の言葉だと、あいつに教わった。
そんな俺が当惑してるの状況を見かねてか織斑先生が口を出してくれた。
「学園長、用がないのでしたら加藤を連れて行きますが・・・」
「おっと、ごめんよ織斑先生。年甲斐にもなく彼をからかいたくなってね・・・」
そんなに、一時の失敗をからかって楽しいのかあんたは!!
【同感です。ハルはドMなんですからもっとネチネチと責めないと・・・】
「・・・それで、なぜおれだけここに呼ばれたんですか?」
そんな相棒の危険なテレパシーに無視を決め込み、俺は轡木学園長に今度こそ話を聞いた。彼は柔らかい微笑を湛えながら
「私、個人が君に逢ってみたかったからだよ」
「じゃあ、なぜもう一人の男性操縦者はここにいないんですか?」
「彼には織斑先生から人となりを聞いているからね・・・しかし、君とはそんなかかわりもなかったし、何か身構えさせてしまったみたいだね。ごめんよ」
単なる興味からか?―――いや、こんな火薬庫みたいな学園の学園長だ。警戒して損はないだろう、そう警戒を緩めずにいると・・・学園長が目を細めつぶやくのが聞こえた。
「君が・・・ね・・・」
「何か?」
「いや・・・これから大変だろうけど、頑張ってね」
「学園長、そろそろよろしいでしょうか?」
「ああ、忙しい朝にすまなかったね。加藤君、何か困ったことがあったなら相談に来るといい、話ぐらいなら聞いてあげるよ」
「ありがとうございます」
そうして、俺と織斑先生は学園長の執務室から出た。それにしても、さっきの言葉・・・何か俺について知っているのか?―――俺は織斑先生について教室に向かう道中、スプーに
(偽装は完璧だよな?)
【ええ、私が情報を改ざんしたんです。普通に調べてもあらは出てきませんよ】
(ならよかった。それにしても学園生活か・・・)
【心配ですか?せっかくなんだし楽しめばいいじゃないですか?】
(・・・俺にそんなことが許されるのかな?)
【あなたは真面目すぎます・・・そんなんだから一生マダオなんですよ】
(ど,ど童貞ちゃうわ!・・・と思いたい・・・)
そんな感じで頭の中でスプーに突っ込みいれているうちに織斑先生が立ち止り
「ついたな・・・加藤、ここで少し待て」
「はい。わかりました」
なんで待つんだ?何か俺が行ったら不都合なことがあるのかな?その答えはすぐにわかった。扉越しにも聞こえるほどの大音量の歓声がとどろいたからだ。
「キャーーーー!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
など姦しい声が聞こえ、どう考えても一緒に入りずらい雰囲気・・・
【これぞボッチ的アトモスフィア】
(おまえはなにをいってるんだ・・・)
そんな風に相棒と脳内漫才をしていると、俺の肩ぐらいの身長の黒縁メガネをかけた女性がドアを開けて自信なさげな顔を覗かせ
「すみません加藤君・・・お待たせしました。教室に入ってください」
「わかりました」
(山田先生そんな怯えたような表情を浮かべないでください。別に俺は何もしませんから・・・なんだか、自信なさげだしもっと自信を持たないと生徒になめられますよ?)
【それは、あなたが言えたことではないでしょう】
頭の中で響く俺への突っ込みにスルーを決め込みつつ、俺は女の花園に足を踏み入れ・・・なんとかなる、いや何とかするとかのたまっていた三か月前のおれをぶん殴ってやりたい気持ちに襲われた。
なにせ、こっちに集中する大量の視線。そのすべてに好奇心の三文字が刻まれている。素直に言おう―――これはつらい
教室に入ってきて、なれない状況に教壇で固まっている俺に織斑先生はこちらに視線を向け
「自己紹介の最中だったな。では、いきなりだが加藤、自己紹介をしろ。手早くな」
「はい・・・」
やばい、なんて言おう・・・それどころか自己紹介って何を言えばいいんだっけ?え~っと、たしか名前と、性別と・・・ああ!頭ン中ががこんがらがってきたぁ!
こんなに大勢の前で話をすることなんて、もう遠い昔の話と化していた俺は頭の中で混乱から(グレート・クリプトン!!)とか言いそうになっていると・・・俺の右手からからかうような口調でテレパシーが響いた。
【なんなら、私が声帯模写して自己紹介しましょうか?―――ネタまみれでいいなら、ですが】
(わかった、今すぐ始めるからそれだけは勘弁してくれ!!)
話す内容は決まってない、それどころか何を話せばいいのかわからない―――ええい、ままよ!“まずは自分が動き出す”、それだけだ!!
「はじめまして加藤陽です年齢は15歳性別は男趣味はアメコミの収集ときゅ・・・・」
・・・噛んだ
【ざまぁw人の第一印象を決める自己紹介を早口で、しかも噛んでやんのw無いわーw、マジないわーwww】
(うるさい)
あたりの空気が固まった。周りの女子の視線から好奇心に満ちた視線は消え・・・代わりに何か、かわいそうなものを見るような生温かい視線でこっちを見つめている―――悪かったな!どうせ俺はこんなんだよ!!もう俺の評価なんて知るか!
そんな思いで再び口を開いて、さっさと続きを話し始めた。
「・・・特技は早食いです。織斑先生、僕の席は何処ですか?」
「あ、ああお前の席は、織斑の後ろだ。目の前のそこが開いているだろう?」
「ありがとうございます」
早口で畳み掛けるように言って、“世界で唯一俺と同じ男”の後ろの席に腰かける。
目の前の彼が振り返る―――その瞬間、この教室に入って初めて彼と目があった。
澄んだ黒髪、自分と同じ境遇の人間がいたことで安堵したような色を宿した鳶色の瞳、人受けしそうな笑顔―――思い出した、彼はあの時試験会場でみた学生の彼か!なるほど・・・たしかに、大騒ぎを起こしてくれたみたいだな―――
まあ俺が起こす側に回っていたなら世話がないんだが・・・
それよりも、あの時彼に感じたデジャヴはなんだったのだろう?
(後で聞いてみるか)
席に着いた俺に顔を合わせるように彼が振り向き、小声で囁く。
「俺、織斑一夏っていうんだ。よろしくな」
「よろしく、織斑くん」
「に、しても・・・」
話を続けようとした彼、目の前の織斑くんが振り返った体勢のまま、織斑先生の手に持った出席簿で一撃。パァンッ!と小気味いい音があたりに響いて、目の前の彼が悶絶する。
「織斑、今はSHRの時間なんだが・・・続けていいか?」
「はい、織斑先生、すみませんでした」
「わかったなら次は気をつけろ」
(なんだか、昔に食らった店主チョップを思い出させるな・・・)そんな感じに過去を思い出しつつ、織斑くんに心配する言葉を投げかけた。
「大丈夫か?話はあとにしようぜ」
「うん・・・わかった」
そのまま、自己紹介が続き・・・ある名前を聞いた瞬間、俺の脳裏に今は遥か昔の出来事がフラッシュバックした。
「篠ノ之箒です。趣味は料理、特技は剣術です。みなさんこれから一年間よろしくお願いします」
その瞬間、俺の初めて自分で作った友達のことがフラッシュ・バックした。
◆ ◆
少女は、満面の笑みを浮かべて
「いいだろう、私の名前は篠ノ之箒という。お前は?」
◆ ◆
篠ノ之、箒・・・あのもしかして、あの箒ちゃんか!?
あの夏の日、俺の“決意の日”・・・俺にできた二人の友達。箒ちゃんと一夏―――まさか!!
俺の前に座ってむくれ面で織斑先生を眺めているコイツが、あの“一夏”なのか?だとしたらすごい偶然だな・・・まあ俺の勘違いかもしれないけど、話をするときにかまかけてみるか?
でも・・・もし、今まで俺が気が付かなかったとしたら―――俺は薄情ものだ。
数少ない友達の顔も覚えていないなんて
(スプー、俺ってなんというか・・・薄情な奴だな)
【落ち込まないでください。彼らがあなたの知己だとして、あなたは平穏な時など忘れるほどの訓練を十年間続けてきました。それを私は知っています】
(ああ、さんきゅーな)
そんな相棒の優しい励ましが、自分のブルーになっていた心にしみわたった。
そして、全員の自己紹介が終わるのとほとんど同時ぐらいにチャイムが鳴り・・・SHRは終わりを告げた。
ドーモ、読者=サン。めんつゆ=です。
いかがだったでしょう?おそスト二部第5話は?
えっ?たかが自己紹介で噛む男が主人公を張るのはないって?
……仕様ですのでご了承ください。
というネタはさておき・・・本日、二次創作ISスレのほうにされしてきちゃいました。
……ぶっちゃけ自信ないです。まあ、完結目指して頑張るだけなんですが。
それは、そうと最近やっとブラインドタッチができるようになりました。これもおそスト書き出したおかげです!!
話は本編の話になりますが……轡木さんは本作では普通に学園長やってます。おそストのIS学園はIS委員会直轄の機関として設立されましたから、そこから派遣された、という感じです。
ネタ紹介
”グレート・クリプトン!!”
スーパーマンがびっくりした時に言うセリフ……らしい。現在は消滅した設定。
”アトモスフィア”
雰囲気を意味する忍殺語……アイエエエ!ニンジャ、ニンジャナンデー!
では今日はこの辺で失礼します。
感想、ご指摘、質問などいただければ幸いです。
おやすみなさい
14/1/6 追記しました。