恐れを知るものは、無限の空を目指す   作:めんつゆ

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  第9話 「ハル、再び相見える」

 

 

 

◆                 ◆

 

織斑先生に先導してついたところは、薄暗い倉庫のような場所だった。

 

「今、ライトをつける」

 

その言葉通りに、ふいに着いた光源のまぶしさから目を瞬かせる。

ここは―――倉庫、いや研究室か?明るさに慣れてきた瞳で周囲を観察すると大きなモニターと、マシンアーム、工具箱やら何か用途のわからない大きな機械が見える。

とりあえず、なんで俺がここに呼ばれたのか?それを聞くために口を開いた。

 

「あの…織斑先生?…」

「少し待て」

 

 何やらコンソールを使って作業をしている織斑先生はこちらに視線もむけず、肩ごしに言葉を投げかけると…5分ほどコンソールを叩き続けた。

 

「……やっと、終わった。まったく…こんな簡単な手続きにここまで時間が掛かるとはな」

 

やっと、終わったか?それにしても手続きって、何のだろう?

 

(わかるか、スプー?)

【ノーコメントで失礼します】

 

その時、大仰な機械音と共に何かがせりあがってきた。

 

「加藤…お前をここに呼んだのは、“これ”に要求されたからだ」

 

そうして、目の前にせりあがってきたそれは、“あの時”とまるで同じような―――前衛的オブジェのような見た目、鈍色の装甲。

間違いない、これは……

 

「打鉄ぇ!?」

 

なんでここに打鉄が?というかこれを見せるために俺を呼び出したのか?

 

「ああ…加藤、コイツに触ってもらえるか?」

「はい」

 

先生の指示に従い打鉄に右手を添える。

打鉄、かぁ…思えばコイツのおかげでIS学園に通うことになったんだよなぁ…コイツのせいで今の状況に置かれている、とも言えるんだけど―――とりあえず……

 

「ありがとうな」

【なぜこんなのに感謝の言葉を言っているのですか?】

(俺が言いたいから言うのさ)

 

コイツに触れることが無かったら一夏と箒ちゃんと二度と会うこともなかった、と断言できる。だから二人にまた会わせてくれたことに感謝したい…今まで月の陰に潜んでいた時は、自分がばれないように気を使っているだけでよかった。だが、今となっては俺が、世界から注目を浴びる立場だ。きっと動きづらくなる時も来るだろう。でも!このことを後悔したって無駄だし、これを後悔するつもりはない。

 

そんな風に自分の思いを新たにしていると…ふいに目の前にディスプレイが投影された。

 

『おはようございます、主!一日千秋の思いでお待ちしておりました』

 

……この物言い、目の前に投影される会話文、そして―――どこかサムライを思い浮かばせる古風な物言い

 

コイツは!

 

「織斑先生、これってまさか―――」

「想像の通りだ。この打鉄はお前があの、試験の日に起動させた“打鉄”だ」

「なんで、コイツがこんなとこにあるんですか?」

 

いくらIS操縦者の育成を目的としたIS学園であっても、操縦者に対してIS本体のほうが遥かに数が少ない。試験が終わった後は、すぐに訓練機としてたくさんの人間に“乗られる”ことになっているだろう。こんなところ(研究室)で放置されていていいはずがない。

 

『主、そこは私が……』

「単純に、誰が動かそうとしても…動かせなかっただけだ」

「誰にも動かせなかったんですか!」

『(´・ω・`)』

 

なるほど…だからこいつは放置されてたのか…ん?たしか、

 

「たしか、山田先生に教えてもらったんですが…コアの初期化ってできましたよね?」

『主!私の主への思……』

「試したさ…何度もな。だが、コイツのコアは初期化できなかった」

『(´_`。)グスン』

「初期化できなかったっていることは…」

「ああ、今はっきりしたことだが…この打鉄はお前専用だ。おそらく、これからずっとな」

「じゃあ、この打鉄…俺が使っていいんですか?」

「お前が実際に起動させるまで、決定“では”なかったがな」

 

そういって、織斑先生は小脇に抱えていた大きなファイルを手渡し

 

「これが専用機持ち必読の、IS携行に関する規約書類だ。確認しておけ」

「はい、わかりました。それで打鉄はどうするんですか?」

「まずはここでフィッティングを済ませろ。それが終わったら第三アリーナに許可を取って、人を手配してあるから軽く慣らしで飛んでみるといい…私が言うのもなんだがISで飛ぶのは気持ちがいいぞ」

「そうなんですか!」

 

そいつは、楽しみだ。いつもグリーンランタンとして空を飛ぶときは、周りにばれないようにかなり気を張って飛んでるから…なにも考えずに空を飛ぶのはどんな気持ちなんだろう?―――イメージするだけでもワクワクして来た!

 

【油断大敵!古事記にもそう書いてある】

(わかってるよ、お小言はちょい待ち)

 

「ああ。せっかくだし楽しむといい…私は会議があるから行くぞ。これに、お前のISスーツが入っている。それと、部屋の電源はあそこにあるから帰る前に必ず消していくように」

 

 そう言い俺に紙袋を渡してすぐに踵を返した、織斑先生に

 

「ありがとうございます!」

 

と、お辞儀をする。

しかし、彼女は振り向こうともせずそのまま足を出口に向け…研究室に出る前に一言

 

「別に、礼を言われるようなことじゃないさ。学園からお前にその打鉄を専用機として与えることは、上からの決定事項だ。」

 

上?あの学園長の指示か?それとも、IS委員会の指示か?……

 

「加藤…教室での言葉を聞く限り、お前は力というモノの本質…それを理解しているようだから言うまでもないことかもしれないが、お前が持っているモノの重さを自覚しろ。じゃあな」

 

そうして、彼女が出て行ったドアに向かって俺は返答をする。

 

「はい」

 

俺に与えられた大いなる力……

 

“世界を壊した兵器” IS

 

“宇宙最強の武器” パワーリング

 

そしてこれに伴う責任の大きさを俺は知っている。

 

そして、この道は俺が選んだものだ。

 

もう“見なかったことにする”つもりも、“気が付かなかったことにする”気もない。

 

俺の良心に従って、為すべきと思ったことをなすだけだ。

 

「さて、じゃあさっさとフィッテイングを始めるか!これからよしくな、打鉄!」

 

そう俺の新しい仲間に話しかける。

独りぼっちじゃなにもできない俺に力を貸してくれる新しい仲間…打鉄を得ることができたのは、ここに来てから一番の収穫かもな。

 

『(o^∇^o) 

 主!感無量のお言葉でございます!!』

 

ところで、なぜこいつは…一々ディスプレイに顔文字?を表示しているんだ?…まあ、いいか。

それよりも……

 

(スプー、周辺のチェックを頼む。電子機器だけじゃなくって、生命体の目視による監視も含めて、考えられるありとあらゆるもの全部だ)

 

しかし、テレパシーで話しかけた相棒は…いつまで待っても反応をよこさない。

あれ?どうかしたのか?

 

(スプー?何か…あったのか!?)

【いえ…何でもありませんよ―――確認終わりました。この部屋に監視装置の類はありません。人間の反応も…この部屋周辺には存在していません、話せますよ】

 

「おし、なら話して大丈夫そうだな。打鉄、俺が乗れるように展開してくれ!」

『かしこまりました、主。この打鉄の雄姿、ぜひご覧になってください!!』

 

そう打鉄はディスプレイを投影すると、一瞬で待機形態の前衛的オブジェから人が乗れるよう鎧姿に姿を変える。たしかこの状態のISに体を預けるようにすると、装着できるんだよな?

しかし、何か違和感が…そうか

 

「スプー?なんで話に参加しないんだ?」

【“こんなの”と話すとこなどありません、あなたと、私は、“一心同体”ではありませんか】

 

精神リンクでつながっている、という意味じゃあそうなのかもしれないが…なんか今の発言、ところどころイントネーションがおかしくなかったか?

そう頭の中で考えてると、打鉄が画像を投影する。

 

『主!現在正体不明の音声を確認しました。これより周辺警戒を厳にします。すぐに拙者に搭乗してください!ここは危険です!!』

「ああ、違うんだ打鉄!!これは…あの、なんというか…俺の相棒というか…」

 

なんで、俺が信頼しなきゃならないはずの仲間を前にして右往左往しているんだ?

わけがわからないよ……

 

それから、五分かけて俺が今まで経験してきたこと、あの時打鉄に接触した俺の目的、そして―――俺達の敵についてなんかを話してようやく打鉄は警戒を解いてくれた。

 

『(ノ_;\( `ロ´)/

 なるほど…主、心中お察し申し上げます。ですが、これからは“この”拙者が主の御身をお守りいたします!ご安心を!!』

【ハル…今、“この”鉄屑があなたを守る、とか言いませんでした?私の聞き間違えですよね?】

 

えっ?…なんでスプー=サン。今、噛み付いたんですか?

今、噛み付いたりなんてしたら話がこじれるでしょう。

 

『ゴ━━━━(# ゚Д゚)━━━━ルァ!!

 お主…拙者のことを鉄屑と申したか?』

【事実を言ったまでです…なんですか、鉄屑?】

『拙者を愚弄する気か!お主!!…そうか、お主は拙者に嫉妬しておるのだな♪

 (・∀・)ニヤニヤ 』

【なぜそんな結論に至ったのですか!?私はただ…私とあなたとの性能差のことを言っただけです。実際、あなたにできることなんてすべて私ができますからね!!】

『( ̄ー ̄)ニヤ...

確かに、“現段階”では拙者とお主の性能を比べた場合、軍配はお主に上がることだろう…だが!今の監視された主の現状で、大っぴらに使えなければ…性能差などないのと一緒であろう?』

【確かにあなたの意見にも一理あります…ですが!イザという時に役に立たないようでは、必要ないのと一緒でしょう?】

『【#・∀・】ムカムカ

 なんだと…この―――骨董品が!!』

【うるさいです。黙りなさい、鉄屑】

 

……何ぞ、これ…なんで、仲間同士で修羅場になっているんだ?ハッ!こういう時は小粋なギャグで場を和ませるのがいい、と前にスプーが言っていたな……

よし、自信はないが―――やってみるか!!

 

「ド、ドーモ、オフタリ=サン。カトウハル=デス。

 ケンカ、やめるべし。慈悲は無い。」

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ 

 

【何をアホなことを言っているのですか?少し黙っていてください、このマダオ】

『ムキ━━ο(`・皿・´)ο━━━━━━━━!

 主に対してなんという口の聞き方…もはや是非もなし!!主、しばしお待ちを!この不心得者に説法をいたしますゆえ』

【それはギャグですか?だとしたら、あなたのギャグセンスはハルと同レベルですね】

『そんなことはない!拙者の冗談はもっと上手い!!』

 

……プッチン

 

「おまえらいいかげんにしろおーーーーー!!!」

 

そして、俺以外には人っ子一人いない部屋に絶叫が響き渡った。

 




ドーモ、読者=サン。めんつゆ=デス。

いかがだったでしょう?おそスト第9話は楽しんでいただけたのなら幸いです。

さて、本日は打鉄と再会しましたね!えー打鉄に顔文字を使わせるというモノは、スプーがテレパシーで話ことから考えました。打鉄もしゃべらせてもよかったのですが、同じことをやらせても面白くないと思いまして…どうせだったら意思疎通を文字でやらせよう!と思い至りました。
だったら、何を使ったら楽しいかな……と思ったときにAAのことを思いだしまして文章なら顔文字を使わせてもOKじゃね?と思いましてやらせてもらいした。
打鉄は今後ディスプレイに表示された文章で話していると思ってください。

今回のネタ

古事記にも書いてある

ニンジャ語…あとはわかるな?

では、今日は短いですがこの辺で失礼します。

よろしければ感想などいただければ幸いです。

おやすみなさい
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