……えっと…現実を直視しよう。ドアについている部屋番号を確認する―――2025室、
うん…知ってた。これは…いったん状況を整理しなきゃならないな。
つーか、これ本日何回目だよ…もう疲れたんだけど…そんな風に考えつつ相棒にテレパシーを呟く。
(作戦ターーイム!!)
【認める!】
『主、兄者…そんな冗談をかましておられると彼女に怪しまれるでござるよ?』
(ああそうだよな、打鉄。ネタはこの辺にして本題に…)
……入ろう?待て、なんかおかしくなかったか?俺はさっき“スプーに対して”考えを呟いた。なんで打鉄も反応しているんだ?
話の本題そっちのけ打鉄のことについて考えていると、スプーからテレパシーで捕捉が入る。
【ああ、ハル…事後承諾になりましたが、私と打鉄の間に量子通信回線を設置しました】
(量子、通信回線?何に使うんだ?)
『( ̄ー ̄)ニヤリッ
兄者を経由しての主との
なるほど…さっすがスプーだな。そんなこともできるなんて多芸だ。まあ打鉄の…“いろいろ”の後でまたスプーと喧嘩にならないか気になるが……それよりも今は状況を整理しなきゃな
(さて、じゃあ状況を整理しよう…議題は“なぜ生徒会長が俺の部屋にいるのか”だ)
【十中八九、監視でしょう】
『(。-`ω-)ンー
左様でござろうか?アリーナで生徒会長殿は、拙者たち監視してはおりましたが…その本意が主の保護という線も考えられるのではありませぬか?』
なるほど…監視=俺が危険視されてる、って考えてたけど確かにその線もあり得るな。前に自宅に軟禁されて、山田先生に家庭教師をしてもらっているときにそんな話を聞いたっけ……たしか俺の生体データの公開を許可したことにより、一時期かなり大騒ぎになったらしいんだよな…俺にはテロぐらいどうってことはないけど、日本政府やIS委員会のほうからIS学園に入学するまでずっとテロを警戒して護衛の人が家の周りを囲んでいたらしいし。
このことと世界で二番目の男のIS操縦者という価値から、からまだ俺は不特定多数の勢力から狙われているって学園側が判断してもおかしくないか…ん?まて……
(待て、打鉄。それだと一夏と俺の部屋を分けた理由に説明がつかなくないか?)
【たしかに…監視するだけなら盗聴器と監視カメラだけで事足りるはずです…わざわざ人員を配置している、ということは……】
『なるほど、確かに両方の意味で監視するのでしたら一夏殿と主を別々の部屋に分ける必定はござらん。ということは…生徒会長殿はやはり、主の監視役、ということでござるか』
【まだ断定するには情報が足りません…ですが、彼女…更識楯無はかなりの実力者である、ということは確かでしょう】
目をつむいで思考に没頭する。確かにスプーの意見に賛成だ。
更識、楯無か…IS学園の生徒会長で俺と同室になるくらいだから…たぶん諜報員とかそっち関係の人間なんだろうなぁ…しかも、かなり有能と頭に付く位。
それにしても彼女にアリーナで初めて会った時に感じたあのデジャヴは一体…?
ただの錯覚かそれとも……
「……やめよう」
つい、独り言がこぼれだす。
いくら考えたところで情報が足りない今、答えが出るわけでもないし…そろそろ観念して部屋に入るか―――気が重いなぁ…
そんなことを考えつつ、つむっていた瞳を開けると
「やあ、考え事は終わった?」
「ひゃぁ!!!」
目の前に部屋の中にいるはずの生徒会長が満面の笑みを浮かべ、鼻がぶつかるくらいの距離で顔を見つめているのだ―――実際、驚いた。
【相変わらず童貞丸出しの対応ですね…】
(うっさい!お前こそ気が付いているなら教えてくれよ!)
呆れたような相棒の突っ込みに責任転嫁するかのようにテレパシーで反論しつつアリーナの時と同じように後ろに向かって全力で後ずさる俺。大丈夫だ!今回は奇声を上げてないからさっきよりましのはず!
そんな考えをスプー経由で読み取ったのか打鉄がディスプレイで
『( _ _ )..........o
主…そこは胸を張るところではござらぬと拙者でも思うておるのですが…』
(悪い…情けなねぇよな…)
【実際情けない!】
「やっぱり、君の反応はからかい甲斐のあるいい反応だね♪」
内心自分の情けない行動を省みつつも、俺をからかう生徒会長の顔にのみに集中して視線を向けるように心がけ、答えがわかりきっている質問を投げかける。
無論、冒頭部の言葉はスルーして……
「えー…生徒会長さん、なんで、あなたが私の部屋にいらっしゃるのでしょう?」
彼女は楽しそうな笑みをうかべ
「だって…ここ私のでも部屋だから♪」
「あっ…さいですか。ったく…IS学園には公序良俗っていう概念は存在しないんですか?」
そんな風に俺の目の前であからさまに教育によろしくない格好している誰かに皮肉を投げかける。
「そ れ よ り も、さっき何を“やめよう”言ってたのかなぁ?おねーさん気になるなぁ?」
残念!俺の皮肉はスルーされてしまった…じゃなくって!
「どこから見ていたんですか?」
俺の投げかけた質問に打鉄が答える。
『主がご自分の考えに集中するために瞠目してから、すぐに早々に生徒会長殿が、部屋から出て参ったでござるよ』
『(`3´)ブーブー
ご注進、もし上げ申したが…主、集中力が高いことは誠にあっぱれ!ですが時と場合をわきまえていただきたいものです』
「ごめんなさい…」
打鉄のもっともな指摘に質問をした彼女をそっちのけで謝る。そうすると彼女はむくれたように唇を尖らせ
「おねーさんを無視するなんて生意気よ……」
次の瞬間、一瞬の浮遊感と同時に視界が反転した。
そうやって何の衝撃もなくあっさりと倒されてから初めて、自分が目の前の少女によって押し倒されたことに気が付いた―――普通、こういう場合激昂して何をするんだ!と食って掛かるべきなのだろうが…あまりの手際の良さに
「……こりゃぁ…すごい」
思わず、感嘆の意を表してしまった。
そんな俺の姿に彼女はからかうように
「あれ~加藤君そんなこと言っていていいかしら?」
……どういう意味だ?
【ハル!あたりの部屋から動体反応がが……】
「あーっもぉー…うるさーい!!」
【……すでに遅かったようです】
その一声を皮切りに近場の部屋からわらわらと出るわ出るわ、見た目麗しい少女たちの群れ…
(やばい)
ここになってやっと状況が理解できた。
ここは天下のIS学園学生寮……つまり、俺と一夏以外に男はいない。そんな場所で消灯時間後に大騒ぎなんてしてみろ…五月蠅くおもった人たちが注意しに出てくるだろう。
そして…学校にいるときは意図的に意識の範囲外に追いやっていたが、休み時間に教室の周りには山ほどの人だかりができていなかったか?
【山ほど、できてましたよ】
やっぱり……と、いうことは次におこることは一つ。
「「キャー!!」」
「楯無会長が噂の男子生徒押し倒してる!」
「でも、あの会長でしょ?」
「へぇ…彼がねぇ……」
「あの地味げだけど、ほりの深い顔…彼が加藤陽君ね!」
「昼間に見たけど、織斑くんとは違う良さがあるよね!」
「そうそう!それに…グヘヘヘ…」
「織斑くんと同じ部屋じゃないっていうことは…楯無会長が二人の間に入った壁!?」
「キマシタワーー」
・ ・ ・ ・ ・ ・
はっ!いかん、このままでいるといつまでもこの好奇の視線にさらされることになる!つーか、もういい加減疲れた……早く部屋に逃げ込みたい……
そうなると、
「生徒会長、これ以上騒ぎになると周りの人たちにも迷惑ですから…その……」
「えー!…加藤く~ん、はっきりといってくれなくちゃぁ…わからないなぁ……お ね え さ ん に、何をしてほしいのかなぁ?」
そういって彼女はのしかかっていた体をさらに押し付けてくる―――ふ、二つ何かやわ…じゃない!俺は何を考えているんでだ!こんなことを考えるなんてスーパーヒーローしかくだ!
そんな俺の動揺などお構いなしに放たれた彼女の猫なで声に周りの熱はさらにヒートアップ……
「きゃー!!」
「会長が…!年上の魅力を使って…」
「昔からの恋人一夏と同室の楯無会長…加藤君の心が揺れる…夏のネタはこれね!」
「でも…会長女の子だし…なんか、ねぇ?」
「逆に考えるんだ…男の娘にしちゃってもいいさって」
「「それだ!!」」
顔が熱い…たぶん、赤面している気がする―――いろいろな意味で
【ハル、そんな童貞臭い反応していても状況は好転しませんよ!】
(やっかしいわ!!…だけど、さんきゅな)
さてスプーの突っ込みのおかげで冷静になれたけど…状況はある意味最悪、まさしくことわざにある前門の虎、後門の狼ってやつだ。
だったら、俺は!
「きゃい……」
噛んだ……
『(´・艸・`;)ぁぁぁ
主!落ち着いて、落ち着いてくだされ!』
【ニンジャは噛んだりしない…いいね?】
(アッハイ……じゃなくって!あーもうスプーなんで突っ込むんだよ!)
【まだ冷静になれていないようでしたのでもう一発小粋なジョークをと…】
(もう冷静になれたから!)
そんな風に脳内漫才を展開していると目の前の似合ったはずの彼女の顔がひくひくと細かく痙攣しているのが目に見て取れた―――泣きっ面に蜂、とはまさしくこのことか?
その様子を見てようやく心情のクールダウンに成功した俺は冷静に
「会長…とりあえず、降りていただけますね」
そんな風に冷静に言った言葉は会長の笑いを堪えるあまり、震えた声で
「わ、わかった、わ」
…なんで俺こんなんばっかなんだろう?
【それは、あなたのアイデンティティですから……】
『主、そんなに落ち込まずとも…拙者はそんな主を心から尊敬申し上げます上』
そっか……
呟いた俺の独白は、仲間内にそれ以上突っ込まれることもなく消えて行った。
◆ ◆
あの後、裸エプロン…いや確認したら水着エプロンだった―――会長が周りの部屋の生徒たちをなだめすかしているのを後ろ目に眺めつつ、やっと部屋に入ることができた俺はとりあえず自宅から送った段ボールの中から着替えをあさってシャワールームに入った。
もう、一日ってこんなに長かったけ?……あっついシャワーで体についた汗を流しつつそんな風に考えていると、うちの相棒が
【ふぁっきん!あのアマ、ダルを誘惑するつもりならマジモンの裸エプロンで来いってんです!…せっかくのハルの情けない姿を織斑さんに、朝一で送りつけようと思っていたのに……】
あれれー?なんだか……相棒が俺を辱める計画を俺に対して大声で吹聴している幻聴が聞こえるぞ~?うん、やっぱり俺って疲れて―――
【さて、冗談はここまでにして…ハル、一応言っておきますが……あの女の色仕掛けに屈しないでくださいね】
『色仕掛け…とは何のことでござるか?兄者、後学のために教えていただきたい!』
【ああ…それは、ですね・……】
(まてーい!おれ、負けないから!絶対負けないから!だから打鉄に教えるのだけはよしてくれ!頼むスプー!)
そんな俺の必死さが伝わったのか相棒は何処か心配そうな口調で
【あなたが…誘惑に屈する、とは思っていません…】
(だろう!誘惑に負けるようなら……)
【ですが!あなたは何分腹芸が下手です!なるべく平常心を心がけてくださいね!】
(アッハイ……)
スプーのもっともな指摘を受け、忠告に感謝しつつ、着替えを終わらせシャワールームから出ると……水着エプロンでキッチンに立つ、会長の姿が!
【ゴウランガ!その理性を崩壊させる、瑞々しい色気を湛えた背中と臀部にハルの理性はしめやかに爆発四散!……】
(しないから!!)
そう相棒に反論してみたはいいが…正直、非~常に、目に毒だ。
何気ないふりをして後ろを通り過ぎよう。
抜き足…差し足…忍び……
「あっ…シャワー終わった?そろそろできるから待っててね」
「あしぃい!」
「何かあった?」
「ひぃえ、何でも、ありません」
「そう?なら…いいわ」
そういって振り返った会長の柔らかい笑顔に見ほれてしまう悲しい男のサガ―――別に他意はないぞ、絶対に他意はないからな!そんな風に自分を言い聞かせながらベットに腰かけ、寝れるように
【おう…ハルよ。エロに負けるとは情けない】
(まけてないから!ぜ~ん、ぜん!負けてないから!!)
「で~きたよ」
……ところで、会長は何を作っていたんだろう?もしかして今までご飯食べていなかったのかなぁ?だとしたらお腹すいてだろうに……まったくご苦労なことだな…
「はいどーぞ」
そういって彼女はお盆をベット前に置かれている勉強机の上にすっと、おいた。
……どうぞ?なんで彼女が自分で作った食事なのに、“どうぞ”なんだ?
「なーにハトが豆鉄砲くらったみたいな顔をしているのかしら…加藤君ご飯まだ、でしょ?」
「え、ええアリーナで生徒会長と別れてから一夏に相談したいことがありましたので」
そういえば、食事どころじゃなかったからな―――思いだしたら腹がすいてきた…ゴロゴロと大降りにカットされた野菜、柔らかそうな鶏肉…それを包み込むシチューのルゥ、好いた腹をダレクトに刺激する芳醇な香り……
ううっ!うまそう……
「なら、よかったわ。あり合わせだったからできたのが、クリームシチューだったけど…好き?」
「はい、好物ですが…それは会長の晩御飯なのでは?」
そう聞き返すと彼女はきょとんとした表情を浮かべて
「そんなわけないじゃない、察しの悪い男の子は女の子にもてないわよ」
っていうことは……俺のためにわざわざ作ってくれたのか!―――なんていい人なんだ!腹が減っては戦ができぬ…ありがたくいただこう!
【ハル!さっきの言葉は何処に行ったのですか!速攻で陥落寸前じゃありませんか!まったく犬じゃあるまいし…餌付けされるじゃないですよこのダル!!】
(うっ……)
そうだった…会長は俺を監視していた人=優秀な諜報員=気を付けないとばれる……
ってこれ100%餌付けじゃねーか!!
しかし…うまそうだ。
さっきまで意識の範囲外だったから、大丈夫だったけど…正直彼女の正体に気が付いていなかったら…瞬殺だったろう……う~、我慢、我慢だ。
「こっちに来なさい。冷めちゃうわよ?」
「いえ…お腹、好いてないので……」
言ってやった!よく言ったぞ俺!がんばったぞ俺!
内心自分の言ったことを全力でほめたたえる俺に、彼女は…にっこりと笑顔を浮かべお盆を手に立ち上がり……
「よいしょっと」
「って、なんで俺の横に座ってきてんですかー!!」
そのまま俺のすぐ隣に腰を収めた。
「あんなバレバレな嘘でごまかされるほどおねーさんは甘くないわよ♪」
・・・・・・バレてんじゃん。
「さ、作戦タイーーム」
「許可する―――とでも思った?」
どうしよう…とりあえず別の話で気を引いて会長の持つ爆弾から話を逸らしたけど……
ヤバイ、いいにおい
【どっちの意味で?】
(どっちも…じゃなくて!何かいい案出してくれよ!仮にも宇宙最強の武器だろ!!)
【仮にも…というのは気に入りませんが―――罠とわかりつつ攻め込むのも一つの手かと】
(ウマソーヤッター!!)
【罠なんですから気を付けてくださいね?】
(わかっていますって!!)
そう一瞬で、スプーとのテレパシーで作戦を立て終わると…どこか不敵なところを感じさせる笑みを浮かべた彼女に真剣な表情で向き合い呟いた。
「生徒会長……それ、本当にいただいでも…よろしいのですか?」
彼女は一言。
「もちろん!さぁ…召し上がれ!」
それだ言い放ち俺のシチューの乗ったお盆を手渡した―――もう、どうにも、止まらない
脇目も振らずシチューに対面する。スプーには大変、申し訳ないが俺の頭の中にあるのはこの
ほかの…なんで会長はいまだに水着エプロンなのかとか、なんで都合よく俺が腹を減らしていることを知っていたのかとか、ベットの上で食事何て変な気分だとか…そう言った考えは匙を手に握った瞬間、地平線の彼方へ吹き飛んだ。
口をとろけさせるルゥのうまみ…型崩れしない、絶妙の柔らかさの野菜―――そして、驚きはぷりぷりの触感を残しつつも、歯を入れると柔らかいこの、鶏肉
何よりも……どこか、懐かしさを感じる味だ……
事実だけ言うと…五分後には皿のすべては俺の口の中に消え,陶器特有のピカピカした白い底を眼前に晒していた―――お代わりを含めて……
万感の感謝をこめて彼女に向き合い手を合わせる。
「ごちそう様でした…とっても、おいしかったです」
彼女は柔らかい笑みを浮かべ
「そう?ありあわせでちょっと自信がなかったから…それならよかったわ―――」
ありあわせ?あのクオリティでか?正直、店を開けるレベルだったぞ……
食後の満腹感からか、そんなのんきなことを考えていた俺の耳に彼女が発した次の言葉が突き刺さった。
「―――じゃあ、何を隠しているのか話してもらおうかしら?」
「ん~~~?何か言いましたか?」
「だ~か~ら…何を隠しているのか話してくれない?」
・・・・・・ 何 を 隠 し て い る の か 話 し て……
ば、ばれてるぅー!?ア、アイエエエ?ナンデーー?スプー=サン、ナンデーー?
【落ち着いてくださいハル!まだごまかせます―――あなた次第ですが?いいですか……】
(わかった!試してみよう!)
先ほどの柔らかい笑みのまま、俺の返答を待つ彼女に…意を決して口を開く。
「これからうまくやって行けるか不安……」
「おねーさんにそんなバレバレの嘘が通用すると思っていたら大間違いよ」
「なぜ…嘘だと思うんです?」
これだ…スプーから託された秘策…それが!本当のことを言うことだ!これで実際嘘は言ってないし…仮に嘘だ思われても、その確証を立証できない!
これで決まりだ!
「ん~…直感?」
「それなら、僕が言ったことが嘘っていう確証はないですね?」
「そうね―――いいわ、あなた言ったことが本当だって認めてあげましょう……」
…どーだぁ!これで今日これ以上の追及はされまい。明日、学校に行ったら織斑先生に抗議して……
「―――でも…おねーさんずっとやっていた、加藤君の“お世話”で疲れちゃったなー」
「へ……?」
(なんだ?急に話が変わった、だと?俺のお世話って…何のことだ?)
【落ち着いてください、ハル。彼女はあなたの話を信じたように見えます…ならば素直に質問してみればいいのではないでしょうか?】
(その通りだ!さんきゅースプー!)
「……それは一体、どういうことでしょうか?」
「聞きたい?」
彼女の不敵な笑みに一抹の不安を感じるが…聞くしかあるまい。
「ええ、教えていただけますか?」
「実は…私、君のこと監視してたんだ」
「ッ!―――そうですか…でも、なんでですか?俺はただたまたま高校受験の時に巻き込まれただけの、どこにでもいるような餓鬼ですよ」
俺を監視していたことを公言した?なぜ、このタイミングで…いや、俺の動揺を見越しての行動か?―――脳内を高速で駆け回る憶測の嵐に思考を沈めかけたとき…彼女は口を開いた。
「それは…嘘ね」
「だからッ!何を根拠……」
「君がやっていた、どう考えても初めてとは思えない、ISの戦闘機動」
彼女の指摘に、アリーナで空を飛んでいた時も感じていたことをそのまま伝える。
「何を言っているんですか?あんなの、誰にでもできることでしょう?」
「無理ね…あなたの飛んでいるところ見させてもらったの…その中に数々の上級機動が見て取れたわ…瞬時加速、加速を殺しつつの直角反転、地表ギリギリのホバー機動、一時的にPICをカットし、自重を利用した直角急降下……これらは“今日ISに触れた初心者にできる戦闘機動”ではないわ」
―――しまった…何気なくやった機動が実はそんな高等技能だったとは……
「それだけじゃない…あなたの経歴の不透明さ、十年前に世界に革命を起こした会社の売り上げのほとんどがあなたの口座に振り込まれている……偽装するならもっとしっかりと追われることも考えないとだめよ?」
(・・・・・・これ、詰んでね?―――つーか、スプゥーー!)
【すみません、私が改ざんできるのはネット上の情報だけですので……】
(あ、そんなに謝られても…俺にはできないことだし……)
彼女は咳払いを一回…本題はこれからとばかりに話し始めた。
「さて、じゃあ…取引と行きましょうか?」
「と、取引?」
「そう…内容は私があなたにISのコーチをすること…」
……ISのコーチ?俺に指導をしてくれるっていうことか?先にメリットを提示するということは……デメリットのある本題がこれから来るのか。
そう思い一層気を引き締め先を促す。
「それ以外には?」
彼女はきょとんとして
「それだけよ?」
そうのたまった。
「あ、え?あのぅ……もっとアコギな要求とか…?」
「無いわよそんなの。第一、一番危険だった工作員、スパイって線は考えられないし…仮にスパイだったとしても、君の調査続けていくつもりだから、いずれわかるし」
……こーさくいん?すぱい?つまりは…
【ニンジャです】
「アイエエエ!ニンジャ、ニンジャナンデーー!?」
「ドーモ加藤=ハルサン、更識=デス。…っとネタはここまでにして本題に戻るわね」
「チッ」
「何か言ったかしら?」
「いいえ何も?」
「じゃあ…どうする?受ける?受けない?…受けないなら此方もそのつもりで動くけど?」
会長は俺に決断を促す
くそッ話を考える時間がほしかったけど…即断するしか―――ッ!好い手を思いついた。
「会長…僕の決断の前に…服、着替えてもらえませんか?その…落ち着かなくって…」
「あ、そういえばそうだったわね…じゃあ着替えるまでの少しの間、猶予を上げるわ」
そういって食器を片づけ…仕切りを引いてその向こうに姿を消した。
これで、少しは時間が稼げた―――隣から何かを脱ぐような布ずれの音が……
へ、平常心、平常心…こういう時、スーパーヒーローはあわてないのだ…
きっと、メイビー……
そんな風に自分の欲望と戦っていると相棒からテレパシーが入る。
【さて…どうします?受けますか?】
(それしか…ないだろ…)
『同感にござる。しかし……』
(打鉄の言いたいことはわかる…このまま言いなりっていうのもな……)
これからについてすぐにでも決断を下さなければならなくなり、考えあぐねていると…頼れる相棒から天啓が下った。
【ハル…ここまで、状況証拠を握られているなら面白い手があります―――】
(…なるほど、その案いただきだな)
◆ ◆
俺の視線の先には、彼女…更識楯無が着替え終わった服で自分のベットに腰かけている―――なぜか…黄色と黒のパジャマだが……
彼女が笑みを浮かべつつ、口を開いた。
「じゃあ…加藤君、君の決断を聞こうか?」
「……会長の話、受けましょう!ただし!!」
彼女が、一瞬…ほんの一瞬、眉をひそめる。
「ただし?」
「俺にも条件があります?」
「何かしら?」
「会長…俺と賭けをしませんか?」
「……へぇ。どんな?」
よし!食いついた!ここから畳み掛ける!
「会長が勝ったら、俺はなんでもゆうことを聞きましょう―――でも、俺が勝ったら、以後…俺に対して詮索するのをやめていただきます」
「へぇ…」
「今度…俺がISで模擬戦をすることはご存知ですね?」
「ええ」
「その模擬戦で…会長が問題…いえ、指示と言えるかもしれませんが何でもいいのでそれを出してください―――それをこなすことができれば俺の勝ち……」
「逆に、こなせなければ…負け、ね?」
「その通りです」
彼女は値踏みするかのような表情で、少し考え―――結論を口にした。
「受けるよ…でも…」
「でも?」
先ほどと違い今度は俺が聞き返す。
「加藤君…キミは私にいくつか借りがあるのを忘れてない?」
「へ?……どんなことでしょうか?」
悪戯っ子のような笑みで続ける
「アリーナで待っていた私を放っておいた点」
「うっ」
放たれた矢じりが心に刺さる。
「さっき、誰が助け舟だしてあげたんだっけな~?」
「ぐぅ!」
確かに…でも、それは会長が原因だろ!…あっ違うや…あの状況で俺を放っておいてもよかったんだ…俺を助ける義理なんてないわけだし……
「クリームシチューおいしかった?」
「ぎゃふん!!」
ダメだ…不利な条件しかないわ―――これはこちらが不利になるプラスアルファが必要か?
「でも、それを含めて…その賭け受けましょう!」
「了解です…これからよろしくお願いします―――生徒会長」
彼女はそれまで楽しそうにしていた表情を一瞬で不満げな表情に変え
「楯無!」
・・・・・・へ?
「生徒会長じゃなくって楯無!」
「あの…会長?」
「た・て・な・し!!」
「はい…これからよろしくお願いします…楯無会長……」
まだ、少し不満げだったが、そこで歩み寄りを見せてくれたようで…
「まぁ…今日はそれでいいわ…じゃあ、もう遅いから電気消すわね?」
それだけ、言い残すを再び仕切りを張り…ついていた手元電気を有無を言わさず切ってしまった―――思えば、もう夜も更けに更けて…一時過ぎ、確かにもう遅い。
ここで会話を切ってくれたことに感謝をしつつ、俺もベットに潜り込む。
隣に気になる?美少女がいることを思考の外に追いやりつつ目をつむる。
ふいに、隣から声がする。
「ねぇ…加藤君…その…これから一緒に生活して言ううえで……」
まだ話したいことがあるのなら、電気をつけといてもよかったのに…そんな思いで楯無会長に先を促す。
「なんでしょう?」
俺の言葉に一拍置いて…何か、強い感情のこもった声で彼女は口を開く。
「その…ハルくん、って…呼んでも、いい?」
名前で呼ばれることに慣れ切っていた俺は“その本意”をかけらも理解せずに
「かまいませんよ」
あっさりと返した。その返答に…彼女は、心底嬉しそうな声で
「ありがとう、じゃあお休み!」
「え、ええ…おやすみなさい」
その一言を最後に、すぐ穏やかな寝息が仕切りを超えてこちらに聞こえ出す。
隣で、男が寝ているってーのに……
まぁ、くだらないことを考えてないで…俺も寝るか。
(お休み、スプー、打鉄。)
【おやすみなさい。ハル】
『どうぞ、ごゆるりとお休み召されよ…主』
寝る前に相棒に寝ることを告げる。今日からは伝えるやつが二人になったけど、やり慣れたあいさつを交わして…柔らかく体を覆っていた睡魔に身を任せた。
ではみなさん…いかがだったでしょう?おそスト二部第十五話は?
日刊予定だったのに…もう週刊と…情けないことですが、お付き合いいただけるなら幸いです。
さて、文字数は多くなりましたが…話の進みが遅いですねぇ…まだセシリア戦いかなんですよ…しかも最低あと二話は進まない予定だし…頑張ります。
今回は、楯無さんとの面談がメインでした。
やっぱり、心理描写って…難しい。
日々精進あるのみ、ですね。
本日のネタ紹介
「作戦ターイム」
日本でもっと有名な五歳児の映画の中での一セリフ…あの作品の映画シリーズは本当によくできています。また、見たくなってきなたなぁ…
ニンジャ…
この小説はニンジャ=サンに監視されています…ハッ!
では、今日はこの辺で失礼します。
何か気になった点などありましたら感想に送っていただければ幸いです。
おやすみなさい