恐れを知るものは、無限の空を目指す   作:めんつゆ

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たった今、書き終わった―――

今夜零時投下する……ひゃぁ!我慢できねぇ!投下だぁ!!


  外伝 「とある新聞記者の一日」 上

 

 

 

あの夜―――

月も見えないインクで塗りつぶしたような夜

廃墟になった建物で俺は母さんにしがみついて震えていた

 

 

そこに何者かが焦って駆けこむ足音が響く

 

「デント!!」

 

ぱ、ぱ……?

やった!パパが来てくれた―――“悪い奴”なんてやっつけて今日は久しぶりにパパとママ、それに姉さんと一緒に家に帰れる。

 

大丈夫、大丈夫なんだ……きっとパパが何とかしてくれる。

 

今の恐怖を振り払うためにその言葉ばかりが頭の中をぐるぐるとまわっていく

階段をあがり僕達を確認して、急いで走ってくる父さん。

でも、僕の瞳にも見えていた―――“悪い奴”が柱の陰に隠れているのが

 

危ないっ!鬼気迫った表情の父に危険を知らせようと口を開こうとしたが―――

 

おそかった

 

目の前で“悪い奴”のパンチを喰らって倒れ込む父さん

母さんが僕を抱きしめて前が見えなくなる。“悪い奴”はコミックで読んだ悪党みたいに背を向けて何やら話を始めた。

 

その話の内容は恐怖に怯える僕によく響いた。

 

「誰より愛する者に…もうだめだと分かっていて大丈夫だと――――そう励ましたことはあるか?」

 

「今から―――それを味わせてやる」

 

「それから俺の目を見て心から…謝れるだろうよ」

 

「たのむ…家族に手を出すな……」

何時も頼もしいパパの声がひどく怖がっているように感じる。

 

「いいや―――“コロス”のは最愛の一人だ」

 

その一言で僕の心は黒く塗りつぶされた。恐い!これから僕たちどうなるんだ!?コミックみたいに殺されちゃうの?

助けて―――お父さん

 

あいつにつかまり、床の無い建物の縁に引っ張られ……外で犬がわめきたてる声が聞こえて―――銃が、頭に付きつけられた。

 

助けて―――“×××××”

 

その無言の叫びを聞き入れてくれたかのように、彼が現れた。

でも……未だに銃は僕の頭のすぐそばで……僕は何やら問答をしている三人を見つめて震えることしかできなかった。

 

 

 

その最中コインをはじく軽快な音が聞こえ―――×××××()が撃たれた。

あまりに痛々しいその様に目を固く紡ぐ。

 

もう一回同じ音が聞こえる。

そして……あいつは言った。

 

「息子に大丈夫だと―――嘘をつけ“俺と同じように”!!」

 

目の前で倒れ不死顔だけで僕を見つめるパパが、涙をこぼして

 

「大丈夫だ…心配いらないぞ」

 

そしてあいつがまたコイントスを始めた―――その瞬間理解する

 

ああ……僕死んじゃうんだ……死にたく―――ないな

受け入れるように目をつむる

 

だが、想像していた銃の発砲音はなく……代わりに何かに突き落とされ空に投げ出される様な浮遊感と僕を支える力強い手が見えた―――×××××だ!

撃たれた彼が助けてくれたんだ!!

 

そして×××××は僕をパパの手に………

 

◆                 ◆

 

 

ピ、ピピピ!ピピピ!!

軽快な電子音が俺の耳に打つ。

 

「う゛……うぅ……う゛!」

 

枕元でなり続ける電子音に眉をひそめて、体を起こしむず痒い頭をかく。

ぼーっとした頭で今まで見ていたものが夢だということに実感を持つ

 

「懐かしい夢を見たな……」

 

そうごちつつピーピーとヒステリックに鳴いているアラームを止める。

こんなん(アラーム)じゃなくって優しく起こしてくれるブロンド美人な彼女がほしいぜ……

 

そんなことを考えつつベットから立ち上がり、いつもの様にリモコンでテレビに電源を入れてからシャワールームに引っこむ。

愛すべき我が(ボロ家)アパートはシャワールームの扉が壊されていて無い―――おそらく前の住人の仕業だろう。くそったれめ。

まぁ…そのおかげで貴重な朝の時間にシャワーを浴びつつニュースを聞く、なんてことができるのだが……

 

男性キャスターが朝の挨拶をジョーク交じりに話す言葉をBGMにシャワーのノズルを回す。

寝汗でしとった体とぼやけた頭に熱いシャワーが心地いい。

こちら(NY)に越してきて早4年―――すっかりドラマの中でよく見るニューヨーカーといった感じだなと自嘲していた俺の耳に…大体調べてた通りのヘッドラインニュースが飛び込む。

 

「………昨日は大変だった」

 

おとといの未明、NYのど真ん中……ハドソン川に面しベイヨン地区にあった“クィーン産業”のコンビナートで謎の爆発があり―――それと共に周辺に火災が燃え移る大火事があった。

死者7名―――行方不明者100名以上。

警察と消防の連携不足による初動の遅れによりNY各所で同時多発的に発生した事故によりその日一日中、NYの交通がマヒするほどの大混乱を引き起こした。

酷い火事だった……コンビナート自体が大都会のど真ん中でかつ、出火したのが深夜だったのが重なり……当初は莫大な被害が出るものと思われた。

俺も…外の騒ぎに起こされてカメラを持った着の身のまま上った“仕事”にかけだしていってメラメラと燃え上がる炎の柱を……そして“アレ”を写真に収めることとなったからわかる―――あれはこの程度に被害で収まるようなちゃちな火災じゃあ……断じてない。

 

 

「と、いっても……“アレ”のおかげか、異常なくらいに被害が少ないんだけどな」

 

たぶんそろそろ、この火災で炎を消した“ヒーロー”の話が取り上げられるだろう、と思い―――シャワーのノズルを絞り、大きなバスタオルを腰に纏って、冷蔵庫の中のシリアルと牛乳皿とスプーンを手にテレビの前まで戻った俺に衝撃の真実が告げられた。

 

 

「では……次のニュースです―――国防長官のストライカー氏の脱税が発覚し……」

「はぁ?」

 

おいおい……肝心の“アレ”はどうした?ここからが盛り上がるところじゃないか!!

 

そんな思いでテーブルに持っていたものを全て落すように置き、リモコンを片手にテレビにかじりつく―――だが、どこのニュースでも流れているのは同じような内容のみ―――肝心の“アレ”については何も言及されていないことだけがわかると、俺は怒りのあまりリモコンを壁に向かって全力投球し……思わず口から言葉がこぼれた。

 

「なんで……あれだけ大勢の人を助けた……“ヒーロー”の活躍が報道されないんだッッ!!」

 

俺の怒りの雄叫びが誰もいない部屋にむなしく木霊する。

 

「くそっ!!」

 

こんなことがあってたまるか―――

その一心でパソコンの電源を入れ、いくつもインターネットニュース(同業者の仕事)を確認する。

 

「こっちもか……」

 

だが……そこには期待していた情報はなく―――心の中に強烈な違和感だけが残った。

あれだけ大きい火事だったら大手SNSも大騒ぎになっていただろうと思いつき…ログをあさってみたがきれいさっぱりとなくなっていた。

公式の回答によると……サーバークラッシュのため過去のログが全消去されたという慣例的な謝罪文が残るのみ

 

だが、俺はそこまで調べて……やっと違和感が疑念に変わった。

 

「おかしい―――これは……何か、変だ」

 

とりあえず熱くなった頭を落ち着かせるように、皿にシリアルを突っ込み牛乳を流し込むアメリカ的ブレックファーストでエネルギーを補給しようとしていると

ふいに携帯に着信が……画面を確認して、会心の笑みを浮かべ

通信ボタンを押した。

 

「こんにちは、フォックスさん」

「やぁ…おはようゴードン君」

 

通話の相手はルーシャス・フォックス―――元“ヘレン・エンタープライズ”CEOにして

 

俺の雇い主だ。

 

「ランチタイムだというのにわざわざ時間を割いていただきありがとうございます」

 

NYと俺の故郷の時差は5時間―――今向こうは12時くらいのはずだ……それにしてもこのタイミングでフォックスさんが連絡してきたということは、昨日送った“アレ”の取材許可についてだよな……

 

「いえいえ、会社もクビになって暇を持て余す身ですからね…それにキミの記事はそれなりですけれど…写真は実に素晴らしい。そんなあなたの夢を応援したいという老婆心の様な物ですから」

「ほめていただき光栄です。それより昨日送らせていただいた…新しいネタ……見ていただけましたか?」

 

本題を切り出した俺の耳に何か決心をするように息を吸い込む彼の吐息が伝わった。

 

「実にすごいことが起こった、ということは理解できます。

ですが…ほかの報道機関がこのニュースのことについてほとんど報道を行っていない……いえ、正しく言いましょう―――グルになって隠蔽工作を行っているのはご存知ですね?」

 

さすが、フォックスさん……既にこのことに“何か”きな臭いものがかかわっていることをつかんでいるのか。

 

「はい、朝見てびっくりしました」

「こちらでは、まだ情報が錯綜している、の一点張りです。こういう時に強いSNSもどうやら手をいれたようで…デマや誤報が飛び交っていて大混乱しています」

「そこまでご存じなのですか!?」

 

彼は電話口でふふっとおかしそうに笑い

 

「昔取った杵柄、という奴です。気にしないでください―――それよりも、わかっていますね?」

 

声色に真剣みが増す―――これからが本題だ。

 

「はい、このネタ……“かなりやばい”ヤツですよね?」

「ええ、その通りです。追うということはそれなりの覚悟とリスクに突っ込むだけの理由がいります」

 

この人はこういう時必ずこう言う。

覚悟と理由―――

 

覚悟の決まっていない人間に何もなすことができはしないし

覚悟が決まっていたとしても、リスクに突っ込ませるだけの見返り(理由)がビジネスマンとして必ず必要になってくる。

 

だから、俺がやるべきことはいつも同じ……メリットを提示して説得させるだけだ。

 

「はい、まずはメリットを上げさせていただきます。

一つ目としては、単純に“オウル・アイ”の購読者を増やすことができます。

ほかに誰も言っていないネタですからね……たぶん反響は大きいでしょう」

 

フォックスさんは余裕たっぷりの人を試すような声色で

 

「それだけではないでしょう?」

「もちろんです。

二つ目に、このネタを世界中に公表することができたのなら、今、業績の悪いマーデルにもかなりの注目が集まるでしょう。そうすればあの会社の業績回復のチャンスだってあり得るはずです」

「ふむ………」

 

フォックスさんは少し考え込むように口を閉ざした。

それかきっかり一分たった後、彼は再び口を開いた。

 

「では、私の考えを述べましょう。まず―――一つ目ですが、デメリットもあるでしょう?掲載してすぐに情報隠蔽のためにサイバー攻撃を仕掛けられる可能性がありますね」

 

このデメリットならすでに解消済みだ……そんな心持でにやりと笑い返答する。

 

「ええ、ですがウチのセキュリティなら大丈夫でしょう?今までどれだけウチがやばいネタ掲載して来たと思ってるんですか?」

 

俺の記事を掲載するサイト―――“オウル・アイ”は他社が突っ込まないような危険なニュースをよく取材する。それこそ、政治家の不正や、噂レベルでしか出回っていない危険な新種ドラックに関する記事、製薬会社の違法実験に関する記事…テロが激化している紛争地帯の現実をとらえた記事など……かなり危険ネタばかり、だ。

 

「ふふっ…その通りです。では、マーデル社の業績の回復がなぜ私のメリットになるのでしょう?もう本社からは勘当をいいわたされて長いですよ?」

「以前話してくれたじゃないですか?フォックスさんもコミックスの収集にはまっているって、あの会社潰れたら嫌じゃないんですか?」

 

ちなみに、俺も未だにコミックを毎週に欠かさず集めている立派なギーグ(オタク)だ。

でも、ギーグだからこそ会社がつぶれてその先の展開が読めなくなるのは嫌なはず。

―――どうだ?

 

「ふぅ……少し強引な気がありますが、まぁ―――いいでしょう。

Goです。思いっきり―――やりなさい」

 

その言葉に携帯を握る手に力がこもり、空いている手は自然とガッツポーズを形作る。

そして……俺は会心の笑みを浮かべつつ口を開いた。

 

「あ、ありがとうございます!!」

「現地時間の今日九時にマーデル・コミックス本社で社長へのインタビューをセッティングしてあります。後はあなたの腕の見せ所ですよ?」

 

まったく―――フォックスさんも人が悪い。初めからGOサイン出すことを決めてかかっているのに説得させるなんて……

 

「任せてください!色々と伝手をあたってみます」

「ああ、最後になりますが……話は通しておくので、記事をアップロードする前に必ず“オウル・ブレイン”セキュリティ部主任のビクター・ストーンに連絡しておいてください。

それと!近々NYに“オウル・アイ”のアメリカ支部オフィスを構えようと考えていますから、そのつもりで……」

 

えっ?マジで……これって、もしかして……

 

「まぁ、今回の記事の反響にもよりますが……その時はよろしくお願いしますよ、“ゴードン編集長”」

「は、はい!がんばります!!」

「では、これで失礼します」

 

そうして嵐のような電話が終わり、俺はイスに深く体を沈み込ませ……びしゃびしゃになり重くなったシリアルをしかめっ面で口に流し込む食事(作業)を初めた。

 

 

◆                 ◆

 

 

「さて、幸いにも最近私の仕事が忙しくなくってね……一時間ぐらいだったら時間が取れるんだ、ではリポーター君、質問は?」

 

スーツできっかりと決めて俺の前に、黒く輝く皮ジャケットに、薄い色のサングラスをかけた老齢の男性―――かなりファンキーな人物だが……

彼が、彼こそが…

マーデル・コミックス社長兼主席編集長“ステン・リー”

かつて、アメリカン・コミックス全盛期―――今から十年前、ISが発表される前まで老年ながら前線に立っていくつものライター(脚本)を手掛けた本物の鬼才。

その人が俺の前でおかしそうに笑っていた。

 

「まずは掛けたまえ。それよりも、フォックスから話は聞いているよ」

 

俺は緊張した面持ちで口を開き、今日の取材の目的を説明し始めた。

 

「はい、本日伺った件は……おとといNYに現れたマーデル・コミックスのキャラクターについてです」

 

俺が話を切り出した途端、彼は真面目な顔になって

 

「これからいうのは独り言だから聞き流してほしいんだが―――政府の担当者を名乗るスーツの男たちが昨日、乗り込んできてだよな」

「え?あの……」

 

びっくりして目を丸くしている俺をよそに、彼はそのまま話を続けた。

 

「私に大量の写真を突きつけて…“これはお前の会社のしたことか?”だと、あまりの言い様に年甲斐もなく―――ぶち切れてなしまったよ。

反省しないとね……まぁ幸いにも関係ないとわかってくれてすぐに帰ってくれたんだ」

 

これは―――まさか!

 

「その帰り際にねェ……“このことを口外したらわかっているんだろうな”っていかにもな捨て台詞を残して去って行ったんだ」

「まるでコミックですね」

「……独り言とは、若いのに若年性痴呆症かね?」

 

ぷちっ……このジジイ……

 

「ほほっ……そんな顔をするんじゃない、“私は君の話については何も知らないし…わが社も関係なんて全然ない”が―――ウチのスタッフが最近暇しててね。落書きをしてしまったんだ…ほら、これだよ」

 

彼が手渡したいくつかの紙には、鉛筆書きのスケッチ、しかも未完成の状態だったが

紅蓮の炎に包まれる人たちとそれを救うために戦う“スーパーヒーロー”の活躍が書かれていた。

 

「これは……」

「むろん、お遊びだったんだけど…スタッフがかなりヤル気でね…きちんと完成したものを君に送るよ」

 

―――なるほど…彼も、いや…彼らもどうやら俺と同じ心境だったようだ。

これは……“サイトの目玉が増えるな”

俺が会心の笑みを浮かべて感想を述べると

 

「これはすごいですね……いやぁ自分は、よくものを無くしがちので……もしかしたら“せっかくいただいた落書きを落として”しまうかもしれませんが」

 

彼もしてやったりというイイ笑みと、とぼけたような口調で返す。

 

「ん~落してしまったのならしょうがないね…息抜きのための落書きだし、問題ないだろう」

 

時間というのは早いもので、控えめなノックと共に彼の部下がしかめっ面と共に入ってきた。

どうやらここまでの様だ。

 

「そろそろ時間の様ですね、貴重な時間を割いていただきありがとうございました」

「いやいや…久々に楽しい時間を過ごさせてもらったよ、今度君の所で特集を組んでもらいたいものだね」

 

最初、彼がうかべていた晴れやかな笑みに戻ったところで俺は“ある質問を思いついた”

 

「最後に、ステン・リーさん…あなたは――――――」

 

 

           □                 □

 

 

同時刻

 

 

狭い部屋に、ほほを叩く乾いた音が鳴り響く。

久しぶりに顔を合わせた上司のしたことは、ねぎらいの言葉をかけるでもなく、新しい任務を伝えるわけでもなく……“使えない道具へのお仕置き”だった。

 

目の前の上司は自分が上位に立っているという小さい優越感からか、サディスティックな笑みを浮かべているが…そんなこと私には関係ない。

叩かれたことなど、完全に無視して冷淡な口調で話を切り出す。

 

「スコール、報告書は提出したはずだ。何の用だ?」

 

上司の男を虜にする美しい顔立ちが醜くゆがむ―――やはり、コイツは底が浅いな

口答えされた怒りを抑えきれぬといった風体で

 

「Mッッ!!あなたへの任務は“あの現象を起こした生物の捕獲か、抹殺ののち回収だと”言ったはずよ!なぜあそこまで追い詰めて撤退したのか、その理由を説明しなさいッ!!」

 

まったく―――面倒くさい女だ。“スコール”のコードネームは伊達ではないな。

そんなことなら画面越しでも済んだだろうにわざわざ出向いてくるとは……暇なのか?

そんなことを考えていることなど、おくびにも出さず淡々として口調で説明を始める。

 

「任務は目標の調査だけだったはずだろう。新しい任務を受け取っている途中で通信機器の調子が故障してしまい―――それ以降は独自の判断で行動しただけだ」

 

その物言いが気に入らなかったのか、再びの乾いた音と共にさっき叩かれた頬とは逆のほうにも痛みが走った。

 

「ならなぜ、あそこで離脱したの!?映像データからでもわかるほど対象は弱っていたはずよ?」

「ジャパンのコトワザに“窮鼠猫をかむ”という物がある」

 

スコールはやっと落ち着いてきたのか、静かにうなずく

 

「そんなことは知っているわ…それが何?まさか、ネズミの反撃を恐れたんじゃないでしょうね?」

「違う―――」

 

一度、言葉を切ってスコールの目を真剣なまなざしで見つめる。

 

「―――私がネズミで奴のほうが猫だ。奴を撃った後“私は眼中にもない”そう、強く感じたから撤退した。あのまま下手な行動をとっていたら“今”私はここにいないだろう」

「はぁ………」

 

そんな発言にスコールはあきれたように深いため気をついた。

何も知らない男から見たら美しく感じるのだろうが、今の私にとっては不快でしかない。

 

「……いいわ、“三 次 変 異 ”(サードシフト)を起こしたIS操縦者を処分する気も、暇にさせている余裕もないし、ね……でも、」

 

スコールが肉食獣のような獰猛な顔で凄絶に脅し文句を口にした。

 

「あまり……勝手なことをすると、処分されてしまうかもしれないわよM」

 

望むところだ、とこの女の顔面にこぶしをたたき込みたい衝動に抗いながら

努めて無表情に表情を抑える。

 

「わかった。それは“ブラック・ハンド”からの命令か?」

「ええ、そう受け取ってもらって構わないわ」

「了解した」

「ああ、それと……」

 

まだあるのか、そろそろ終わりだとおもっていたのに……

 

「これから私たち、“バーズ・オブ・プレイ”はあなたの逃した“グリーンマン”を追うわ」

「それも、ブラック・ハンドからの指示なのか?」

「ええ、そうよ…じゃあねM、せいぜい次の任務まで体を休めておきなさい」

 

それだけ吐き捨てるように言い残しスコールは私の部屋を出て行った。

―――まったく騒がしい奴だ。

ふいに目の前がチカチカと光り、戦友が空間投影ディスプレイを投射する。

 

『まったく相変わらず小うるさい奴だな』

「同感だ―――ゼフィルス、奴はもう自分の部屋に戻ったか?」

『ああ、私のハイパーセンサーで精査をかけたから大丈夫だろう』

「そうか」

 

戦友との会話もそこそこに、私は備え付けのベットに体ごとダイブした。

そんな私に、戦友が新しい文字を表示させる。

 

『卿よ―――なぜ“グリーンマン”を見逃しのだ?』

 

また、この話題か……疲れのたまった私はうんざりして無視をしていると

アイツがまた文字切り換えた。

 

『卿が言ったことも理解できる。だが…それだけではない“気がする”のだ』

「“気がする”か……」

 

今更ながら、“気がする”なんて抽象的な表現をする機械に一抹のおかしさが込み上げてくる―――話してやるとするか。

そうして私は、薄い笑みを浮かべてうつぶせの状態からけだるげにひっくり返り、虚空に向かってしゃべりだした。

 

「私はあの作戦はああして横やりが入ればいいと思っていた」

『……なるほど、確かに悩んでいたな』

「それに…他人のために自分の体が傷つこうとも、必死になって頑張る彼の姿を―――」

 

なんだか思い返すと、ほほが熱くなってくる。

そう、あの時の彼は、まるで……

 

「邪魔するべきではない、と思ったんだ」

 

昔、父さんに読んでもらった“おとぎ話のヒーロー”みたいだった

 

『ふむ……そういうことにしておこう。それよりも―――なぜ顔の温度が上昇しているのかな?』

「そ、それは……」

『そうか…卿とておなごなのだからなぁ……』

「うるさい!もう寝る」

 

からかうゼフィルスを真っ赤になってしまった顔で一喝し、ウィンドウを目にしないように瞼をを閉じ、抑えていた睡魔に身を任せた。

 

意識が失せる寸前、優しい声で誰かから

 

【お休み、マドカ】

 

そう、優しい言葉をかけられた気がした。

 

 

           □                 □

 

 

やっとだ―――ようやく“見つけた”

 

俺はこの艦に備え付けられた玉座に深く腰掛け……やっと“終わりの見えた因縁”に歓びを感じながら、はるか遠くに瞬く恒星の光を楽しむ。

 

無論、星々の光など珍しいものでもなんでもないが……今ならばどんなことでも楽しめるだろう。

 

【××××サマ】

 

終わったか―――浮かべていた笑みをさらに深めながらAIに話を続けさせる。

 

「どうだ…“奴”はこの先にいるのだな?」

【ハイ、間違イアリマセン。デスガ……】

「なんだ?」

【アノ黄色イ恒星ヲ中心トスル惑星群ノ外縁ニ強イ“フォース・フィールド”ガ張ラレテイマス】

 

先ほどまで浮かんでいた愉悦に満ちた笑みが一瞬で消える。

 

「AI、詳しい情報を表示しろ」

【了解シマシタ】

 

焦る必要はないもうすでに長い時を待ったのだ―――“奴”がここにいるのがわかったのなら……あとは追い詰めて“殺すだけだ”

そうして、私はフォース・フィールドを超えるための方法を模索し始めた。

 

“わが種族の悲願”のために

 

 

           □                 □

 

 

マーデル社でのインタビューを終わらせ、雑踏に踏み出した俺に急に着信が入った。

立ち止って、相手を確認すると同業者でかつ友人名前が―――メール見てくれたみたいだな。

そんなことを考えつつ、通話ボタンに手をかける。

 

「よぅ……ヴィクどうした?何時もの胡散臭い笑顔が番組から消えたんでクビにでもなったか?」

「からかうなよ、ジミー……上層部のアホども、俺が昨日の事件に対して特集組むって提案したらキャスターから資料室に島流しにあった―――それだけだ」

 

明らかに神経質そうな声で俺の数少ない友人、チャールズ・ビクター・サースが声を返した。

俺と彼との付き合いは長く…故郷を出て単身NYに出てきた俺が初めて入社試験を受けたテレビ会社の同期だ。

俺は試用期間中にヘマやってすぐにやめさせられた、という言葉が頭に付くが

今では、レポーターとしてそれなりに人気なはずだが……

 

「それだけでか?」

 

取材の提案をしただけで、人気レポーターを閑職に追い組むなんてありえないだろ?

 

「ああ、理由はわからんが…前々から目を付けられていたようだ」

「そうか……ならこんな話を持ちかけるんじゃなかったな……悪い」

 

一拍、間をおいて心底不思議そうな声でヴィクが

 

「何を言っている?無論、協力させてもらうぞ?」

「いいのか?自分で言うのもなんだが……“ヤバいぞ”」

 

電話口の向こう側でヴィクが深いため息をつく音が聞こえる。

 

「この世に命を懸ける価値があるのは“真実”だけだ―――」

 

かつて、俺が誓い、彼に教えたその言葉を俺の口から継ぐ。

 

「そして、“真実”は―――常に勝つ」

 

顔がにやけてくる。きっと電話の向こう側でアイツも同じような顔をしているんだろう

 

「その通りだ。“妥協せずに”行くべきだろう?」

「ああ、じゃあインタビューのアポ取った先、教えてくれ」

「わかった。すぐにメールする。だが…それだけでいいのか?」

 

拍子抜けになったような声色のアイツに

 

「おう、今度酒でも飲もうぜ」

 

そう笑って別れの挨拶を交わし、電話を切る

すぐに送られてくる。いくつかの連絡先―――さて、それじゃ…行ってみますか!!

そんな風に気合を入れた矢先、ぐぅっと気持ちのいい音が鳴る。

 

「……まずは腹ごしらえだな」

 

雑踏の多く行きかうNYの俺は飲食店を探して歩き出した。

 




ドーモ、読者=サン。
めんつゆ=デス。

いかがだったでしょう?
今回の外伝、とある新聞記者の一日(上)は?
楽しんでいただけたのでしたら幸いです。今回はハルがNYを大火事から救った影響は?というお話でした。ちなみに複線回も兼ねてます。
さて、今回の主人公は冒頭のシーンでお分かりかと思いますが”ダークナイト”の彼です。

あの彼が成長して…ほかの人々にどんな影響を与えていくのでしょう?
次回出てくる”重要人物”と合わせてお楽しみに!

マドカ視点で出てきた”ブラックハンド”の正体とは?
宇宙からやってきた謎に人物の正体とは?
謎の解決はこれからです。

えー本編が進むことをご期待なさっていた皆様、申し訳ありません。
書いていたら想像以上に長くなってしましまして―――分割しました。
本編の再開は来週になるやもしれません。
お許しを

本日のネタ

冒頭シーン

ダークナイトのラストシーン……さて、皆様お気づきかもしれませんが、彼の正体とは?待て、次回!!

ストライカー氏

元ネタ…X‐menのヴィラン、ウィリアム・ストライカー大佐です。
原作での彼はウルヴァリンにアダマンチウムを与え洗脳。非人道的な任務や実験に従事させてきた男です。私にはアルティメット版の情報しかありませんが、暇つぶしにウルヴァリンに向けて銃をぶっ放すキチガイ。
更に”少なくとも”400人のミュータントを実験目的で殺して「この壁を400人のミューティ(ミュータントのこと)の地で染め上げたやったぜHAHAHAHAHA!!!」
とか書き残すイカレポンチ

ルーシャス・フォックス

彼のことを知らない人は少ないかもしれませんが、かつて”彼”を技術面から支え彼が闇の騎士となるための装備を作り上げた人物です。
詳しくは映画を見よう!!(露骨な宣伝)
今作では会社を退職後、”オウル・コーポレート”というコングロマリットを開き、暗躍している模様。
オウルの名称はNEW52でリランチされて新しく登場したゴッサムシティを昔から支配してきた謎の組織”梟の法廷”からとりました。

オウル・アイ

オウル・コーポレート傘下のインターネットニュース配信会社。今回の主役の”彼”を含めたくさんの優秀な記者が在籍していて、危険なネタにも果敢に挑戦するネットニュース。
オウル・アイ(目)以外にも技術部門のブレイン(脳)運送会社のウイング(翼)警備会社のクロウ(爪)がオウル・コーポレートの傘下の企業として存在している。

ビクター・ストーン

チョイ役として登場。元ネタはDCコミックスのスーパーヒーロー”サイボーグ”
再登場の予定は今のところなし。

ステン・リー

この人に対して説明がいるのか!?いや、いらないだろう。
映画へのカメオ出演が大好きな、グラサンジーさんです。

バーズ・オブ・プレイ

DCコミックスのヒーローチームの名前。今回はヴィランになりましたが。

チャールズ・ビクター・サース

この人もチョイ役です。たぶん再登場はしないでしょう。
DCコミックスのヒーロー、”クエスチョン”の本名、青いトレンチコートとスーツにのっぺらぼうのような顔を覆うマスクが特徴。クエスチョンが誰かって?


「大衆は享楽にふけるばかりで、まるで気づいちゃいない」
「自分達がペットにされていることに」
「道理、真実、正義――自由」
「今や人々の心は千々に砕け散った。ベルベットに包まれ、甘い毒に浸されて」
「悪の誘惑に駆られた人々は、安い売春婦さながらに尻を振って見せた」
「それでも、俺だけは屈するものか。俺はこんな世界を絶対に認めない」


「――妥協はしない」

―――そう、絶対に妥協しない男、ロールシャッハの下キャラとなったキャラクターです。記者とか報道関係で使えるキャラクターを探していて彼に行きつきました。……正直この人自体もかなり過激で動かしづらい!!
バットマン・ブレイブ&ボールドじゃあハードボイルド系イケメンカンフーヒーローって体だったのに……どうしてこうなった。

ではあとがきも長くなりましたがこの辺で失礼します。
感想などいただければ、とても助かります。

おやすみなさい
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