世界で二番目に店舗数の多いことが自慢な、ファーストフード店で手早く食事を済ませた俺は、地下鉄を乗り継いでとある病院に来ていた。
これから会う人は、当日ベイヨンの自宅アパートで火災に巻き込まれ助かった人だ。
急なインタビューにも快く応じてくれ、自分の現在入院している病院を明かしてくれた。
―――っと、ここか
軽いノック。木製のドアが軽い音で鳴り響く。
「はいは~~~いッ!!!どっ、ぉぞぉ~~!!」
「……し、失礼します」
部屋の主による軽い、いや……軽すぎる声で入室を促された俺はその声に疑問を抱きつつドアを開けた。
扉を開けた俺の前に……ベットに寝転んだままギブスで足をつるされた黒髪にサングラスがどこか陽気な印象を与える男と、くつろいだ様子で新聞を手に読んでいる茶髪の男……二人の男たちが満面の笑みと歓迎するような雰囲気共に俺を迎えてくれている。
おれも笑顔を浮かべながら、自己紹介を始める。
「初めまして、ジミー・ゴードンです。え~っと……どっちが“イールさん”?」
自己紹介はコミニュケーションの基本だ。これをせずに誰かと親しくなれるなんて聞いたこともない―――ただし……
「「やぁやぁやぁ!!ぼくがパトリック・オブライアン、通称―――
はじめましてだね!俺がラルフ・ディブニー、呼び方はそ―――」」
「おい、ラルフちょっと黙ってくれよ!僕が記者さんと話しているんだから!!」
「へんっ!お前みたいなうるさい奴の話より理知的な俺の話のほうが記者さんだってわかりやすいに決まってる!!」
「…なんだとぉ!!」
「……やる気か?!」
―――相手に親しくする意志がある場合を除く、が……
それが戦いのゴングになったようで、さっきまで脇で新聞を読んでいた優男が新聞を投げ捨てて黒髪に掴みかかる。
テレビのチャンネルやら、枕やらが飛び交う取っ組み合いの喧嘩を始めた二人をまえにした俺は……いきなり騒然とし始めた状況についていけず、騒ぎを聞きつけた
◆ ◆
「で、記者さんがききたいのっていうのは……あれだろ?」
顔に大きい青あざを作り、特徴的だったサングラスも歪んでずれ落ちそうだ。それを直しつつ彼が話を切り出した。
婦長がやってきてから一瞬でみっともない大の大人の大喧嘩は鎮圧され、百獣の王のお仕置きという名の暴力が二人を襲った―――人ってあんなに簡単に空を飛ぶんだなぁ……
今度の取材のネタとしてどうだろうか?
それはひとまず放っておいて……俺も彼に返答を返す。
「ええ、あなたが“あの日”出会ったヒーロー達のことです」
「そう……だとおもったぜぇ~~~!!」
一気にテンションが上がった様子でまくしたてようとする彼を手で制し、やれやれと言いたげな呆れ顔でさっき新聞を読んでいた茶髪の彼が話を切り出す。
「記者さん…コイツはあの人たちに助けられたとき、もう気絶しててな…だから俺のほうがあいつらについてはよく見えてたぜ」
そういって笑みを浮かべるラルフ…一瞬、空いた口にのぞいた歯が光った気がした。
そのスマイルは“意外と”整っているルックスともに見せれば、女性はイチコロだろう
―――鼻に鼻血をとめるためのティシュを突っ込んでいなければ、の話だが
「……とりあえず、自己紹介をお願いできますか?」
彼は、合点が言ったように手を叩き
「これは失礼、俺はラルフ・ディブニー。探偵だ、ラルフって呼んでくれ」
「なるほど……ではそちらが“イール”さん?」
なぜかふりふりと手を振りつつイールが答える。
「はぁ~い、そうよぉ~~ん」
「悪いな、記者さん……コイツ、売れないコメディアンでな、いっつもこんなんなんだ」
ラルフさんの補足がなかったら…からかわれてると思とことだった。
……そんなことよりも取材、取材っと!!
俺は気持ちを切り替えて取材を続けるために口を開いた。
「そうなんですか……お二人はご友人なのですか?」
「ああ、そ~な……」
「いいえ、記者さん!俺とコイツはせいぜい悪友がいいところです!!昔からの腐れ縁ってやつです!!」
イールの肯定の言葉をかき消すように、ラルフが俺ににじり寄りつつすごい形相で否定する。
「おいラルフ!俺が話してんだから口出すなよ!」
「いやだね~~!!お前が話すと事実を曲解して話すだ~ろ!!」
「なんだとぉ!!」
「やるきか~い?」
・・・・・・さっきの状況に戻った、だと?
こういうのをジャパニーズ・コトワザの“ケンカスルヨリナカガイイ”というのか?
これはじゃあ……“ガセネタ”に引っかかったかなぁ?
再び喧嘩を始めた二人に呆れつつも、伝家の宝刀をきらめかせる。
「お前、このあいだの家賃はらってやっただ~ろ!!」
「だったら一週間前に貸したランチの金今返せ!!」
「売れないコメディアンに宵越しの金を期待してんじゃねぇ~!!」
「こっちも仕事がねぇんだよぉ!!」
それすなわち―――
「お二人とも……あんまりうるさくするとまた
俺の指摘を正しく理解した二人は見る見るうちに青くなり……手を取り合って何事もなかったかのように話し始めた。
「「さぁ!!記者さん!話の続きを!!」」
その様子があまりにもぴったりと合っていてつい口角が上がりそうになる。それを堪えつつ、俺も口を開いた。
「はい……では、本題と行きましょう―――まずはイールさんあなたはあの日、いえ…あの夜何をしていたのか、可能な限り詳しく話していただけますか?」
目の前のイールは、その情景をより鮮明に思い出そうとするようにベットに腰かけ、上半身を起こし腕組みし少し、う~んと一回うなったあとポツリポツリと話し始めた。
「たしか…あの夜は……寝ていた時に、急にあたりが騒がしくなったと思ったら、ラルフにドアをガンガンって叩かれて……」
「そうそう、あの日は仕事の報告書の作成で遅くまで起きててな……あたりがやけに騒がしいと思って窓を開けると、遠くのほうでごうごうって燃え広がる火柱が見えたんだ」
うろ覚えのイールの話を補足するように、すらすらと話すラルフへそのまま続けるように頼みつつ、内容を収めるためにペンを走らせる。
「それで、ウチのアパートはひとぉ~り残らず非難することがで~きたんだよ~ん」
「なるほど……では、そのまま避難なさったのならなぜイールさんは怪我をなさったのですか?」
イールの足には、痛々しげにプロテクターがのぞいている。
彼がそのまま避難することに成功したのならそんな怪我をすることは無かったはずだ。
少し、口ごもった様子のイールの代わりにラルフが呆れ顔で
「こいつ、とっと逃げればよかったのにダチの家が燃えてるって気が付いた途端、駆け出していきやがったんですよ」
「あ、あはははは~ん」
「あはは、じゃねぇぞ!あんなことして……」
どこか居心地悪そうに笑いつつ、ラルフの思い返したような口撃を受けている彼にその軽薄そうな見た目とは違う、一種の強い芯のようなものを感じた。
彼への評価を上方修正しつつ、俺は話を切ってそのあとに何があったのか―――
すなわち、“本題”を早く話すように促した。
サングラス越しの視線に真剣みが増す。
「そのあと、俺はダチの家に付いたら案の定燃え上がってて……子供がいないって泣いてるおばさんがいたから……」
「まさか―――燃える建物に突っ込んだんですか?」
「そのとおりだ……まったく、一歩間違えたら死んでかもしれないっていうのに……」
苦々しげに言い放ったラルフの意見ももっともだ。燃え盛るアパートの中に突っ込む?
とてもじゃないが常人の思考とも思えない。
「消防は?……消防隊は何をしていたか、わかりますか?」
苦々しげにゆがめた表情はそのままに、ラルフが教えてくれた。
「消防は……警察とごたごたしてたらしくってな…動こうとしても、非難する人の波が邪魔になってほとんど動けずじまいだったらしい……」
「ま~あ、ガイは謝ってくれたしいいじゃ~ん」
「よくはないだろう!!」
「ラルフさん抑えて……では、そのアパートの中であなたは何かで下敷きになったんですね?」
怒り心頭といった様子のラルフをなだめつつ、俺は確信をもってその言葉を紡いだ。
イールは乾いた笑みを浮かべて、肯定する。
「そうだよ。僕は……“ヒーローじゃない”から映画みたいに、子供を助ける……どころか、その手前で炎のおかげで脆くなった柱におし潰されてね。熱いし、煙いし、情けないし……正直、もうここで死ぬんだろうなぁ……って思ったよ」
「でもね………」
彼の笑みは消え興奮を抑えられぬほど紅潮し、彼は言った。
「その時、彼らが……“ファンタスティック・フォー”が来たんだ!」
「やっぱり!彼らがあなたを助けてくれたんですね!!」
「ああ、そうなんだよ!俺の上に乗っかってた木材をザ・シングがどかしてくれて俺はMrファンタスティックののびーる腕で地上に戻された、ってわけさ!」
「ッ!腕が…実際に伸びたんですね?!」
「う…うん、ほんとコミックみたいにね」
「それで、そのMrに助け出されたイールと燃える人型……」
口をはさんだラルフにイールは「ちが~う!」と大声で否定して
「燃える人型じゃなくって“ヒューマン・トーチ”だって!!それで彼が取り残されていた子供を助けてくれて……」
「俺が担いで安全なところに避難したって、わけさ」
「その子供にけがは?」
「少し煙を吸ったくらいだったらしい、その……トーチ?ソイツに会ってすぐはしゃぎだしたよ」
「なるほど…では色は?コミックスの様にカラフルでしたか?……」
俺はいったん話を切って持ち物の中からデジカメを取り出した。
俺が撮れた唯一の、そして……この取材を始めるきっかけにもなった、
“緑色に輝く”ファルコンが滑空しつつビルから人を救出する写真を表示させて二人の前に突き出す……そして、この写真を撮ってからずっと感じていた疑問を投げかけた。
「彼らは……こんな風に緑色に光り輝いていませんでしたか?」
「こりゃぁ……」
ラルフがファルコンの画像に食い入るように見つめてから…深くうなずいた。
やっぱり、か……
俺はもっともありあえないと考えていた回答を―――再び熟慮する不必要があることに気が付いた。
これは“もしかすると、本物かもしれない”
それから十分ほど雑談を続け最後に、”ステンに聞いたのと同じ質問”をした後、俺はそろそろ時間だから次の取材に行かないと、そう謝り彼らに別れを告げ病院を出た。
次の取材先に向かう地下鉄の中で俺はこれまでの取材をもとに、この事件の真実について考えていた。
俺は最初この奇跡のヒーロショーには、“政府”か“マーデル”このどちらかが関わっていると考えていた。
これが個人のコスプレをした連中が真夜中に始めたボランティア活動である“はずがない”
火災などの緊急時救助活動を、何のノウハウもなく行う?
はっきり言って―――そんなことは不可能だ。
技術が足りない、死に瀕する覚悟が足りない、人数が足りない
本来人命救助というのは自分の身の安全を確保して“初めて”他者を助けられる。
たかだか、数人のコスプレをした人間が炎の中に突っ込んで行って何ができる?
イールの様に、煙に巻かれて窒息し最後には死体が一つ増えるだけだ。
だから…ステン・リーに会うまで、マーデルが起死回生の一手として放ったコスプレして行った避難活動の宣伝をたまたま見た市民の流したデマか、これは政府主導の極秘組織のようなものが関わっている……この二つのどちらかだと思っていた。
しかし、三人の話で確信した。
これはそのどちらでもない
その確信はある、だが…実際のところわかっていることは一つ。
わかっているのは謎のコスプレした人物たちが消防隊よりも先に救助をした、という信じがたい事実だけだ。
真実はいまだ闇の中―――か………
“強大な力を持った何者”かが行ったことかもしれない、そんなバカげた考えがふとよぎった。
「フッ……そんなわけないよな」
思わず、独り言と失笑で否定してしまったこの回答が……
正しかったことを後に知ることとなる。
“最悪”の形で………
□ □
白を基調にした会議室に幾人もの男たちが、顔を突き合わせて激論を交わしている様をしり目に私は部下にコーヒーのお替りを頼んだ。
その様子が目についたのか、私の上司にしてこの国の“最高責任者”が不快そうな視線ともに不満をぶつけるように意見を求める。
「ハモンド!君はこの案件についてどう思っているのかね!!」
手渡されたコーヒーを一口飲み、上司のほうに視線を向ける。
でっぷりと肥え太った肉体を揺らした老人―――仮にも“合衆国大統領”であるその男の目にあるのは、気高い決断力の澄んだ光でも、国民を思いやる優しさからくる視線でもない―――どす黒い野心の淀んだ光だけだ。
だからこそ、制御しやすいのだが……ここまで、バカなのではなぁ……
内心、“彼を選んだ”ことにほんの少しの後悔を感じつつ口を開いた。
「私の意見ですか?私は……この案件にかかわるのは時期尚早だと考えます」
幾人かの敵意に満ちた視線を、完全に無視しつつ言葉を続ける。
「理由は、この彼“グリーンマン”を捜索し、仮に見つけだすことができたとしましょう」
一度話を切り、リモコンを操作―――大型スクリーンに“緑色の光”により輝く幾人かの人物写真と宇宙まで伸びる緑色のドームの写真を表示させる。
「ですが……“これだけのこと”ができる存在を“他国に知られずに”拘束できますか?」
今日、首をすえ変えたばかりの国防長官が顔を真っ赤にして反論した。
「それは、軍に対する侮辱ですか!“ヘクター・ハモンド副大統領”閣下!プレジデントの決断がいただけるのならあんな男一人絶対にとらえてごらんにいれます!!」
「いや……この案件、“グリーンマン”に関することは慎重に当たるべきだと、そういっているのです」
「その通りです。“グリーンマン”を手に入れることのできたのなら!わがアメリカは再び世界に強いリーダーシップを発揮することのできることでしょう!」
「同感です、そのためにわざわざ救出された作業員を拘束し、各メディアに圧力をかけ、国を挙げた情報統制を行っていたのでしょう」
「新国防長官殿はその費用と労力をすべて水泡に帰させるおつもりですかな?」
「そ、それは!……プレジデントも命令とあれば、と言っただろう!私は無理に行動すべきだと言ったわけではない!」
“こちら”の影響下にある閣僚からの多数の反対意見を受けて、新国防長官は先ほどの勢いを失い、すごすごと自己保身に走った。
ふっ……それでいい……悪いが“彼を”アメリカに渡すわけにはいかないのだよ。
分をわきまえていれば、ストライカーの様に“不正の証拠は見つかることもなく”任期を全うできるだろう。
分をわきまえていれば、な……
「―――ハモンドの意見はわかった。すぐに捕まえられないのは残念だが…万全を期すべきだろう。今後コードネーム“グリーンマン”に関する情報はA級の国家機密として扱う」
禿げ頭が特徴的な国防長官が口を開く。
「プレジデント、では…今までと変わらず情報操作は続けても構いませんか?」
「むろんだ……それと、国防長官!軍のIS操縦者、グリーベレー、デルタフォースから優秀な物を選抜し、実働部隊として編制しておいてくれ…いつでも動かせるように、な」
「はい!」
アメリカ合衆国大統領が席から立ち上がり、閣僚を見渡す。
「君たちの努力にこの国の将来がかかっていることを忘れるな、よろしく頼むぞ」
「「「はい!」」」
閣僚が一斉に立ち上がって、返した返事を満足そうに見つめたプレジデントはのしのしと自分の執務室に向かって歩き出した。
―――せいぜい、気持ちよく踊るといいさ……その椅子を尻で磨いて、な……
“彼を手に入れるのは”お前ではない、“アイツでも”ない!この――――
“私”だ!
◆□ ◆□
「はぁ゛あ゛あ゛……つ、つかれたぁああ」
何人もの取材を終えて、帰ってきた俺は着の身のままベットに突っ伏した。
正直、今日は過密スケジュールだったと思う……午後だけで5組の目撃者に接触してインタビューをしたんだ。
「その成果はあったけどな」
五組にインタビューした結果、いくつかの事実が浮き彫りになった。
「
イールとラルフのインタビューの後、実際に交通整理にあたっていた警察官や、消火活動のために出動していた消防隊員たちにインタビューを行った結果、出火してから30分ほどでベイヨン地区の火災が鎮火したの事実だと、告げられた。
黒人の落ち着いた消防官が「あんなことは考えられない―――まさに奇跡だ」
と言っていたのが印象に残っている。
「それだけの短時間で、火災が鎮火したにもかかわらず一日もニューヨーク市内の混乱が収まらなかった原因は“不自然に”同時多発的に起こった暴動のせいだったつーこと」
大柄な白人の警官がイライラした顔を隠さずに、俺に教えてくれたことだが、昨日は市内のそこかしこで暴動が発生して、大混乱になっていたらしい。
そのせいで本来は別管区の自分たちまでニューヨーク市の暴徒鎮圧に駆り出されたと愚痴をこぼしていた。
俺は望遠で“彼ら”の写真を撮ってから、必死にベイヨンに向かおうとしていたからそんなことになっているとは知る由もなかったし、ほかのニュースでも特に取り上げてなかったから、気が付かなかったが……警官の相棒から聞いた話を聞いて強い違和感を感じた。
黒人の真面目そうな警官の話によると暴動の起こった場所は、タイムズスクエアをはじめとしたNY市内の15か所にも及んだらしい。
ベイヨンはNY州の中でも最もNY市に近い―――だが
それがなぜ隣のNY市内の暴動につながったのだろう?
ベイヨンにあったのは住宅街とクイーン産業の工業施設のみ、それ以外に特筆してあげるようなものはなかった。
なのに―――それが、15か所もの場所で同時に起こった大暴動につながった?
いくらなんでもおかしいだろう。陰謀論のように聞こえるが“誰かが意図的に”起こしたというほうがしっくりくる。
「やっぱ……コレかなりの厄ネタだよなぁ……」
仮にこの仮定が真実だったとしたら、これを起こせるだけの力を持ったものの存在を立証することになる上に……こんな面倒くさいことをしてまで“隠したいこと”
―――たぶん、スーパーヒーロー達のことだと思うが……それを隠さなければならなかった理由が存在するはずだ。
「まぁ、そんな奴らに負けるつもりはないがな……」
それと……そこまで考えたときに、ふいに形態の電子音が部屋に鳴り響いた。
思考を切り替えてポケットから携帯を取り出し液晶画面の名前を確認すると
この携帯を買ってから一度もかかってきたことのないけれど“知っている”名前が瞳に映り込む。
一瞬の逡巡ののちに―――通話ボタンに指をかけた。
「……ひさしぶり」
「―――あ、ああ……その…なんだ……」
電話越しに聞こえる声が4年前、喧嘩別れして家を飛び出した時よりもよりも少し老けたように感じられる。
当然か……もう60、こえてるんだもんな
未だにもごもごと口ごもっている電話の相手に、かつての面影は無い。
でも……なんだかあの人が“口ごもる”なんてイメージに無い姿に一抹のおかしさを感じている自分がいて……
なんだか、“俺の迷い”もどうでもよくなってきちまった。
「4年ぶりだね、“父さん”」
【そう、だな……】
だから
未だに重たい口をしている父に俺のほうから話題を振る。
電話越しだろうと関係ない―――四年ぶりの肉声をかみしめるように
「母さんは元気?」
【……ああ、元気だよ―――ジミー……四年前は、すまなかった】
四年前―――俺はジャーナリストになることを両親、いや父に反対され…勘当同然の体で家を出た。
父さんは“あの街で”市警本部長にまでなった傑物だ。
反対した理由はたぶん、俺の身を案じてのことだろう。
あの街で―――正義を志した人は“次々と殺されてしまった”から
だから……ジャーナリストなんて恨みを買いそうな仕事につけさせたくなかったんだ、と今ならわかる。
「―――父さん、なんで俺がジャーナリストを目指したか……わかる?」
【…ああ、“彼の影響”だろう】
それもある―――でも、それだけじゃない
「ちがうよ…彼、いや……“バットマン”だけじゃない」
【違がかったのか?】
「うん、俺がガキの頃はなんで“悪いことをしてない”彼を
【それは………】
「でも、今ならわかる。父さんは……彼の、いや……“彼ら”のしたこと無駄にしたくなかったんだろ」
もし、仮に“壊れてしまった”ハービー・デントの悪事が明らかになっていたら……今もあの街はヘドロのような汚職と、弱者をからめ捕る蜘蛛の巣のような悪事で満ちていただろう。
そして、“バットマン”のやってきたことも、そのために死んだ命も―――そのすべてが無駄になってしまうかもしれなかった。
「だから―――父さんは…口を噤んでいたんだろう?―――ずっと、自分の心と戦って」
【……グスッ……ず…ずま゛な゛い……】
電話の愚痴の声が、ぶるぶると震えた涙声に変わる。
【わ゛たしは……私は、父親として…あの時何もできなかった…グスッ……ただ、お前に“かけらも信じていない言葉”を―――投げかけることしかできなった……私は―――】
「……父さん、もう―――いいよ。
もう、あの日のことは―――いいんだ。
父さんがすごく苦しんでいるのを見ていたから……必死に頑張っていたのは……知っていたからだから……俺はジャーナリストを目指したんだ」
【だがッ!―――】
「いいんだよ。俺はそれを受け入れることができたから……それよりも、いいことを教えてあげるよ。きっと―――父さんも気に入る話さ」
【グスッ……何…だ?】
「この世に“彼以外の”ヒーローがいるかもしれないって可能性の話さ」
涙声と鼻水をすする声以外何も聞こえない受話器の向こう側に向けて俺は続ける。
「だから……明日、今やっている仕事が終わったら……俺が、俺のほうから電話するよ」
あの日、父は言った。
「その時―――また、
彼はヒーローじゃない、と……でも俺はそうだと思わない
「彼が、
“静かなる守護者”も“目を光らせる番人”も、もう必要ない
【ああ……わかった。楽しみに…してる】
もう、そろそろ……
「じゃあ、父さんお休み」
今度は称賛の言葉と共に
【お休み……ジミー】
日の目、いや……再び月光を浴びる日も近いはずだから
そうして俺は電話を切った。時計を見ると午後六時……ちょっと夕飯には早いが……
「どうせ、今夜は徹夜だ。外で精が付くもんでも食ってくるとしますかね」
とりあえず、取材用のバックをおいてカメラだけ首に下げて部屋の出口に向かう。
いい気分だった俺は勢いよく扉を開けた―――“開けてしまった”
次の瞬間、バンッと大きな音が鳴り響き……
「……おうっ!!」という驚きに満ちた声と共にグチャッと何か粘性のあるものが床に落ちる嫌な音が聞こえた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ヤッチマッタ……恐い人じゃないといいなぁ……
俺はその一心でドアの向こうに飛び出し、顔も見ずに頭を下げる。
「すまない!俺が勢いよくドアを開けたばっかりに!!」
「い、いや…この程度大丈夫だよ。顔を上げてくれ」
実直そうでよく通る声が聞こえる。
すごすごと、顔を上げた俺の前には“どう見ても”田舎から出てきたばかり、という風体の立派な体躯をした若者が苦笑いをしつつ、突っ立っていた。
穿き古して青色の薄くなったジーパンに、白い厚手のインナーシャツ、そしていかにも年代物といったジャケットに付着しているどろっとした薄茶色のソース。
そして地面に転がっている、テイクアウトの紙ボックスから茶色と黄金色の―――そう、あんかけチャーハンだ。それが広がっているのが見て取れた。
さっきのグチャッて音はコレだったのか。「とりあえずこれを使ってくれ」と彼に玄関に常備しているタオルを放る。
「ありがとう」
俺が、ぶちまけてしまったあんかけチャーハンをかたづけていると、彼が不思議そうな声色で尋ねた。
「君、なんで君が、かたづけてくれているんだい?」
「いや…俺がやっちゃったことだし……もしかしてあんた、都会の人間は薄情だって信じてる口か?」
「いや……それは、その……」
途端に言いづらそうに言葉を濁した、その様子からして……間違いなく図星だろう。
そういえば、俺もNYに出てきたばっかの時はそんなんだったなぁ……などと感慨にふけっているうちに、“とりあえずのレベル”であんかけチャーハンが片づけ終わり彼も服の汚れをある程度落せたようで、俺に向かって礼と一緒に差し出してきた。
「これ……ありがとう」
「いや、いいんだよ。こっちが悪いんだし……アンタ田舎から出てきたばっかりなんだろ?」
「ああ、そうなんだ。今日、田舎からNYに越して来たばかりでね……それよりも、そんなことよくわかったね?」
カメラを誇示するように見せつつ、満面の笑みを浮かべて
「おれ、記者ですから!」
「なるほど……“記者”、か……」
「まぁ、記者っていうよりカメラマンっていう感じだけどね―――それよりも、コレ……アンタの晩飯だろ?」
「……そう、なんだが……」
非常に残念そうな顔をする彼がなんだか捨てられて犬を思い起こされる。そんな顔をしている彼に、俺はある提案を口にした。
「じゃあ、一緒に飯食いにいかないか?俺が奢るからさ……実をいうと俺もこれから夕飯にする予定だったんだ」
「そんな……今日いきなりあったばかりなのに……悪いよ」
謙遜するように体の前で手を振って遠慮する彼に、俺は安心させるように口を開いた。
「俺も、イギリスの実家から…引っ越してきたばかりの時はこの街に圧倒されて、結構こっちに友達を作るのに苦労したんだ……だから、さ……」
彼は少し考え込むように、顎に手を当てて
「―――まぁ、いいか。せっかくの好意だし、甘えさせてもらうよ」
そう、素朴な笑みを浮かべた。
「よしっ!」
ガッツポーズをした俺に彼は不思議そうに聞く。
「なんで、ガッツポーズしたのさ?」
「なぁに……久しぶりに“誰か”と食う飯だからさ!」
「ふふっ……なんだ。君も友達いないんじゃないか」
「悪いかよ?」
「いいや―――全然」
そして、自室のゴミ箱にあんかけチャーハンの残骸を突っ込んで俺と彼は、近場の上手い中華料理屋に向かってあるきだした。
「……そうだ!まだ、名乗っていなかったな。俺は―――“ジェームズ・ゴードン.Jr”。
“ジミー”って呼んでくれ」
そういって彼に向かって右手を突き出す。
彼はそれを握って、自分の名前を少し照れくさそうな笑顔で話してくれた。
「僕は―――」
「僕の名前は、“クラーク・ケント”。
僕も、“クラーク”でいいよ」
俺はこの時、ただ新しい友人との出会いを心の底から楽しんでいた。
「よろしく“クラーク”」
「こちらこそ……“ジミー”」
この出会いが、待ち望んでいた“スーパーヒーロー”との初めての出会いと気が付かずに
ドーモ、読者=サン。
めんつゆ=デス。
いかがだったでしょう?今回の外伝とある新聞記者の一日、楽しんでいただけたのなら幸いです。
さて、上を読んでいて”こいつだれだよ!!”と思ったお方、お待たせしました。ネタバレです。彼の正体―――それは映画ダークナイトで出ていた、ジェームズ・ゴードン本部長の息子、ジミーでした!!
びっくりしてでしょう!?え…バレバレだって?
……まぁ、冒頭部でわかる方はわかると思いますよ……うん…
―――テンション入れ替えていきましょう!!彼を登場させた理由は二つ!あれだけダークナイトの中で目立っていたのに、ライジングでは出番ゼロの扱いの悪さ。
もう一つは…愛称が”ジミー”だったことです。
ジミー……コアなアメコミファンの方以外には分かりにくいかもしれませんが、実はもう一人、ジミーの愛称を持つDCコミックスの有名なキャラクターがいます。
それは…”ジミー・オルセン”。スーパーマンこと、クラーク・ケントの相棒のような立場の人間です。
このネタは、どうにかバットマンを登場させられないか、と情報量が少なめなダークナイトを見返しているときに思い付いたネタです。
”彼”の登場にワンクッション置きたかったので、その役割として登場させました。―――一応言っておきますが、彼の出番はこれで終わり、というわけではありませんよ。また登場するので、どうかその時をお楽しみにお待ちください。
裏話として……実はこの外伝、もっと長いはずだったんですよ!!
当初はインタビューするシーンを、あと4組やる予定だったのですが……さすがにテンポが悪くなりすぎ!とバッサリカットしました。
ちょこちょこと文中に搭乗してますが、登場する予定だったキャラはネタ紹介で紹介します。
では、今後の予定です。
まだ書き始めてもいないのですが、次の本編では何とか代表決定戦半ば、までは行きたいところです。
まぁあくまで予定ですので……もしかしたら途中の場面で切って投下するかもしれません。
では、本日ネタ紹介!!
パトリック・オブライアン”イール”
この人だーれ?っていう人も多いでしょうが、彼も元ネタは立派なDCコミックスのヒーロー”プラスティックマン”です。
能力は全身を好きなように伸縮・変形できるというもの。長く伸ばしたり顔を変えたりなどというのは序の口で、液状化して平べったくなったり、指先を万能鍵に変えたり、体を風船のようにして腹の中に大量のものを入れて運んだり、果てはバイクや飛行機に変形したりと応用範囲がとんでもなく広い。当然、銃で撃たれても簡単に復元できるため、殆ど不死身に近い。ただし、色は赤や黄色から変えることが出来ない―――簡単に言えばルフィ=サンの上位互換です。無論弱点もありますが
名の由来は化学物質としてのプラスチックではなく、「Plastic Substance(可塑性物質:粘土や蝋のこと)」である、らしいです。(ウィキより抜粋)
ちなみに”イール”はウナギの英語役だということらしいです。
私は、彼に関する書籍はDCスーパーヒーローズしか持っていませんが、にやけ面と、サングラスが特徴的なキャラクターです。
ラルフ・ディブニー
彼もDCコミックスのヒーローです。
名前はエロンゲイテッドマン。
彼の能力は南米ユカタン産の果実“ジンゴ”の成分から抽出したエキス“ジンゴールド”を飲み、身体が伸縮自在になった―――つまり、まんまどこかのゴム人間です。(「Elongate」とは、英語で「伸びる」という意味)
ヘクター・ハモンド
彼に関しては存在自体がネタバレに触れるので、”重要人物だと”男ぼいておいていただければ幸いです。
ちなみに、彼もアメコミのキャラです。
黒人の落ち着いた消防官
彼の設定した名前はジェイソン・ラッシュ。もう一人セットで設定していた白人消防官ロニー・レイモンドと共に融合してファイアストームというヒーローになります。
能力は能力は命が通わない物体の原子変換。これも相当なチートですね。
彼らの活躍はヴィレッジブックスのnew52;ジャスティスリーグで!一話しかありませんが、先の展開が気になるお話ですよ。
彼らはX-menと接触する予定でした。
大柄な白人の警官がイライラした顔……
実は以前、彼は登場しています。本名、ガイ・ガードナー
彼も、グリーンランタンの一員です。メトロポリスから友達と一緒にNYに出てきたっていう設定で、本来はキャプテン・アメリカに遭遇する予定でした。
黒人の真面目そうな警官
彼も、グリーンランタンの一員で名前はジョン・スチュアート。
ガイと一緒に一度だけ名前だけでていますよ。
ガイとは凸凹ながらいい関係を維持している、という設定で書いていました。
彼も警官ですのであっているのはキャップです。
名前も出なかった二組
一人はバリー・アレン。もう一人はビリー・バットソンです。
バリーは以前本編で取り上げたことがあるので省きますが、本来ここが初登場の予定で、今度の夏映画に出演する”クイック・シルバー”に助けられる予定でした。
まだ予定ですが、彼の話に一話割くかもしれません。
―――登場予定ですので
ビリー・バットソン
殻は十歳の子供で、スパイディに助けられる…設定だったのですが尺の予定で泣く泣く没になりました。
彼も、DCコミックス所属のヒーローで、キャプテン・マーベルと言います。
インジャスティスをプレイしている方にはシャザムのほうが有名かもしれません。
能力は魔法使いシャザムから与えられた呪文「SHAZAM」を唱える事でキャプテンマーベルへと変身することと、その文字に呼応したスーパーパワーを得ることのできる力です。
SHAZAMはギリシャ6柱の神々の加護を表し、Sはソロモン王の知恵、Hはハーキュリーズの怪力、Aはアキレスの勇気、Zはゼウスの力、Aはアトラスの体力、Mはマーキュリーの駿足を与えらるという設定です。
めちゃめちゃかっこいい彼の活躍はDCスーパーヒーローズにて!!
最後に……今まで勘違いしていたのですが、ベイヨンはNY州であって、NY市ではないことが調べていて判明しました。
別に修正するようなことではありませんが、もし違う!と違和感を感じられている方がいらっしゃるのでしたら、この場で謝罪させていただきます。
では、長くなりましたが本日はここまでとさせていただきます。
感想やご指摘など、いただけたのなら幸いです。
では、おやすみなさい。
いーやっはー!!これでどMヒーロースレをよめるぜぇ!!