「それにしても……ハルくん、映画見て泣いちゃうなんて相変わらずかっわいぃ~~」
町で評判のレストラン、そこで昼食を済ませ食後のお茶を楽しんでいると目の前でそびえるほど大きなパフェを美味しそうに口に突っ込みながら、彼女は思い出し笑いでもするように可笑しそうに漏らした。
彼女に俺は仏頂面で答える。
「傷口に塩、どころかデスソースを塗りたくるようなこと言わないでください……オレノバカ」
覚悟をしていても結局は、我慢が出来ずハンカチのお世話になることとなった自分の醜態にアンニュイな気持ちになっていると、右手から追い打ちのストレートが飛んできた。
【それで、口止めのために店で一番高いパフェを奢っているんでしょう?】
「―――そうだよ。悪いかよ 」
【プギャー】
「…………」
殴りたい。
内心でそんなことを思っていると、盾無さんが急に頬を膨らませて怒る。
「二人で、楽しそうにしているの禁止!!」
「いや……別に楽しんでいるわけじゃ―――」
そう話を続けている最中に、先ほどまで彼女が楽しそうに口に運んでいたパフェ専用の柄が長いスプーン、それが俺の目の間にずいっと突き出された。
先端には白くてふわっとしたホイップクリームと、赤くてどろっとしたフルーツジャム。その下からサイコロ状に切り揃えられたスポンジケーキがちょこんと顔をのぞかせる。
……で、これをどうしろと?と思いつつ、目を白黒させていると更に突き出すようにぐいっとスプーンが顔の前に押し出される。
スプーン越しに見える彼女の顔は幸せそうに笑っている。
そして、“その言葉”がやってきた。
「あーん」
「あぁぁん?」
あぁぁん?……はっ!?これはまさか……俗にいうチンピラやヤクザの常套句!敵を威嚇し噛み付くように出される―――って、そんなわけはないよな?
ってことは……これを―――
その事実に気が付いた瞬間、心臓の脈打つ音が何倍にも早く大きくなったかのように感じ、背中に冷や汗がぶわっと吹き出した。
「あーーん」
「………………」
これはやはり、アレなのだろうか?俗にいう“バカップル”という世間の目を気にも留めない、者たちがするうらやま……こ、公序良俗に反し!青少年の育成に悪影響を与える様な、非常にけ……
「あーーーん」
「あ、あの。たて……なし、さん?」
「あーん」
「ちょっと、落ち着きません?」
「あ・あ・ん!」
ダメだ。話を聞く気がない。それどころか……
感じた疑問を確認するために、向かい合う彼女の顔をまじまじと見つめてようやく気付く。
楯無さんの顔は、笑っている……だが、目は全然笑っていない。
ゾクッとするくらい真剣なまなざしでまっすぐにこっちを見つめて―――俺は確信する。
これは引く気もないな。
「あーん」
「………………」
この状況をどう打開するか、という命題について脳内で模索の糸を手繰っていると……更にスプーンがずいっと押し出される。もう唇につくかつかないかギリギリのとこまで来ている。
さっきまで、楯無の口に入っていたスプーンが。
「………!!!」
思わず、身を引いてスプーンとの距離と開けてしまった。しかし……それが失策どころか、愚作だったとすぐに気が付く。
「あーーーーん!」
すぐに彼女のスプーンが、俺の口めがけて追いかけてきた。
ウカツ!これで俺の
しかし
「あーん」
「ッ!……」
押し出されるスプーンから距離を取るために、また身を引く。
ヤバイ!実際問題として考えると、
しっかりと、そのことに気が付いているらしい楯無さんは、いかにも楽しんでいる風体でおかしそうに笑っている―――猛禽の様に冷徹な目以外は。
どうする?どうする、どうすればいいんだ俺は!?
そんな俺の気持ちを代弁するかのように相棒が、思考に割って入ってくる。
【回答1、ダメダメなハルは突如、この状況を切り抜けるアイディアを思いつく】
音として耳から入ってくるような感じとは違う……心の中にふっと湧いているようなこの感覚……
【回答2、誰かが来て助けてくれる】
そうだ、俺には頼れる相棒がいる!頼むス―――
【あ、私は助ける気ないので……あしからず】
え、ちょっと……お前!!相棒を見捨てるのかぁ!?
【回答3、かわせない。現実は非情である。個人的には3ですね。では失礼します】
…………がってむ。いいもん、自分で何とかするから……ぐすん。
さて、回答3は勘弁したいとして……回答2はどうだ。
店員が助けに割り込んでくれる可能性は―――だめか、さっき食べた皿を持って行って、伝票も置いて行った、トドメのごとく御冷はいっぱいまで注がれている。
―――店員は来ない。
さりとて、俺と助けてくれるような仲間はいないし……はっ!?
その俺の視界に入ったものは、俺が頼んだ食後の紅茶。まだ、中身が半分近く残っている。
これだ。悪いなスプー!回答は1番。この状況を切り抜けるアイディアを思いつく、だ!!
するすると、気が付かれないように静かに、静かに“右手で”カップに手を伸ばす。
名付けて“あーんしたくないなら口をふさいちゃえばいいじゃない作戦”!
俺の頼んだ紅茶を口元に持っていき、それで入りませんよ~アピールをするんだ!
きっと、楯無さんもクリームがだれるころにはあきらめるはず!!
―――完璧だ。
あと少し……もう少しで……カップに指がかかる。そうすれば……
しかし、俺は……甘かったんだ。
「あーーーーん!」
ふいに、彼女が身を乗り出した。
そんなことなどはどうでもいい!あと少し、ほんの少しでカップの取っ手に指が届く!
勝った!第三部完!!と言う奴だ。
瞬間。柔らかい彼女の手が覆いかぶさる。
「え?」
「あーん」
「あの、楯無さん……?」
“俺の右手”に。
覆いかぶさった彼女の手が、万力のように感じる。
それと同時にぺたりと背中がソファの背にくっつく感覚―――
じりじりと削られていたデッドラインが、たった今……ゼロになった。
「あーーーん!」
「ッ…………………!?!?」
脳内にさっきスプーの言っていた言葉がリフレインする。
か わ せ な い 現 実 は 非 情 で あ る
いや、まだだ!!!まだ……終わってない!
その瞬間、雷が落ちるように俺の頭に在るアイディアが降ってきた。
いや、これ……やっていいのか?それは、実際は変わらないことじゃないのか?
しかし、もう楯無さんは空いたスペースを埋めてチェックメイトをかけるために、スプーンの侵攻を今にも再開させようとしている―――迷っている時間は、ない。
いま、決断しなければ……ならない。
「あぁ――」
「ええい、ままよ!!」
俺は
空いている左手で―――
楯無さんが先ほどまで“口にしていたパフェの器を掴む”と……
ビールの大ジョッキでも飲むかのように―――あおった。
「んぐ、んぐ……んぐ……んぐんぐ……」
背の高い器に三分の一くらい残されていた、半ば溶けかけのアイスクリーム、だれて柔らかくなったホイップクリーム。大ぶりなフルーツ、フルーツソースにスポンジなどが傾けた勢いと共に、俺の胃めがけて邁進して来た。
「んぐ、んぐんぐ……んぐ、んぐ……んぐんぐ……」
正直に言うと―――死ぬほどキツイ。口を離せないから、フルーツやスポンジは噛まずに飲み込むしかないし、溶けかけ、と言ってもまだ半固形といった体のアイスクリームがなかなか入って行かずに、口元を汚す。
しかし……あーん、だけは御免こうむりたい!!
「んぐんぐ……んぐ、んぐ……んぐ―――ぷはぁ……」
やりきった。
その確信と共に完全に空になったパフェの器をテーブルの上に、ゆっくりとおろす。
肝心の彼女は、あっけらかんとしたようで驚いて目を丸くしている。
いつもは、からかわれる側の自分が楯無さんをあっと驚かせたことがうれしくって……つい天邪鬼が囁いた。
「御馳走様」
からかいまじりに言ったその言葉に、彼女は少しむっとしたご様子で自分の椅子に体を落とすと、手に握っていたスプーンを自分の口に突っ込んだ。
大・勝・利!!と内心で喝采を上げる。
しかし、不機嫌になった彼女をどうすればいいのか……そんなことを俺は知らない。
そう……つまりは……
「…………」
「…………」
空気が固まった。
やばい!さっきとは別の意味でやばい!!なんか体感温度で2、3度くらい室温が下がった見たく感じちゃう!?
さすがに、やりすぎたかな?
自分の行動に反省しつつ、おそるおそる彼女に声をかける。
「……楯無さん?」
「なによ」
声色からはっきりと察せられるほど、怒ってる。実際恐い。
「怒ってます?」
「怒ってないわよ」
ぷい、と視線を逸らした嘘だろ、と言ってやりたい。
でも、言ったら火に油を注ぐようなものだとわかりきっている俺は、おろおろとしてきょろきょろと周囲を見渡す。しかし……なにか役に立ちそうなものはない。
へ、ヘルプ、ミィィイイイ!!!
助けを呼ぶ声に、
もう、こうなったら手段は一つだ。
謝ろう。
「楯無さん、その………」
「ぷっ!ぷぷ……ぷ、あはははははは!」
「へ?」
急に笑い出した彼女に今度はこっちがきょとんとしてしまう。
そんな、俺の顔が余計にツボにはまった様子で彼女は可笑しそうに笑いながら抑えきれないように、テーブルをバンバンと叩く。て、店員の視線が……刺さる。
「あの、楯無さん?」
「ああ、ごめんごめん。いやーハルくん“見事に引っかかる”んだもん。思わず爆笑しちゃった」
「ひ、っか……る?」
おい、まさか……また、そんなオチか!?
「って、ことは……ホントに、怒って―――」
「ないない。まったくそんなに素直じゃ……また、悪いお姉さんに騙されちゃうぞ?」
「じゃあ、騙さないでくださいよ!!」
「う~~ん……イ・ヤ☆」
そう言った彼女はイキイキとした笑顔で……まるでさっきまでの状況の再現だ。
立場はてんで逆だけど。
「いや、ってそんな子供じゃないんですから……」
「ま、ちょっとむっと来てたのはほんとかな。もう!なんであそこでパフェのほうに手を出すかなぁ」
「いや、そんな……あんなことなんて、できませんよ」
「いいけどね。これで許したげる」
彼女が、その言葉と共に取り出したものを見せる。全身の毛が緊張と共に粟立ったのを感じる。
それは―――
「なんで……それを……」
「さっき、君が紅茶に手を伸ばした時に、ちょっとね。ねえハルくん―――“コレ”、ちょっと私に貸してよ。無くさないから」
俺の“リング”だった。
「返してください」
「どうして?これは単なる“人の思考を模倣した新生代AI”、それの……端末でしょ?」
「ええ。ですが、大切なモノなんです」
「どうしても、“コレ”を渡せないの?」
いつの間にやら、彼女の顔から笑みは消え真剣な表情でまっすぐとこっちを見つめている。多分……俺も、同じような顔をしているのだろう。
引けない。これを手放すわけにはいかない―――だって、そんなことをしたら、俺の……ん?
そこまで、考えて俺はとあることに疑問を感じる。
だが、そのことについて熟考を重ねる暇はなく……彼女は言う。
「“お願い”、今日一日だけでいいの」
頼み込む彼女の顔が今にも、泣き出しそうに見えて、思わず……たじろぐ。
クソッ……あんな顔するなんて、やっぱり女の子は卑怯だ。いや、俺が甘いだけか。
オーケー、認めよう……俺は―――馬鹿だ。
「さっき、映画観る前の“お願い”はこれでチャラですよ」
「わかったわ。ありがとう、ハルくん」
結局、折れたのは俺だった。でも……彼女の浮かべる笑みは花の様で、まあいいかなという気にさせてくる。
しかし、解せないな。彼女の態度じゃない……俺は、なぜスプーを手放すことを渋った?
俺と、スプー。それに翠煌は精神リンクでつながっている。
だから
“俺がリングを手放したところで―――どうということはない”。
リンクの繋がっている限り、地球上のどこにいようと、リングを手元に呼び寄せることができるからだ。
さすがに、異空間とか密室とかじゃできなと思うし、翠煌に同じことができるとは思わないけど……リングが通るだけの隙間があるのならどこにいようと手元に呼び寄せる自信がある。
と、いうか……実際、訓練してたしな。
にしても、変だな……それをわかっていながら、どうして俺は、リングを手放したくなかったんだ?
まるで―――“そうしなければならない”と深く思い込んでいたみたいに……
お前は、どう思う?そんな風に相棒に疑問を投げかけるが……返事はない。
そのことが、余計に勘繰りを加速させた。
なにか、あったのか?そんな思いで口を開けかけたとき……
不意に前から、俺の唇めがけて指が伸びてきた。無論のごとく、気を取られていた俺に避ける余裕なんてなく―――彼女のやったことがコマ送りの映画のようにゆっくりと、何十倍もの時間をかけて行われたように感じた。
そう……楯無さんのほっそりとして指が、俺の唇をするりなぞって彼女の瑞々しい唇に白いクリームを運び……指についたクリームを舐めとる。その、見ほれるほど艶やかな動作が……俺の脳内を駆け巡って―――思考というコンピュータがブツン、と落ちる。
「はい、ごちそう様……って、ハルくん?大丈夫?」
【ああ。これは完全にフリーズしてますね。楯無女史、ほおっておきましょう】
「うふふ。そういうとこもかわいいんだけどね」
「………………」
「でも、今日はデートなんだから……ある程度はしっかりとさせとかないとね」
「………………」
【それはわかりますが……この状態になったハルを、元に戻すのは手間ですよ?】
「大丈夫。魔法の言葉、一言ですぐに動き出すから」
【ほう。お手並み拝見と行きましょう】
「ハルくん、ここに―――カメラがあります。さて……これから私は何をするでしょう?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ カメラ?
おい待て、俺。冷静に状況を分析しろ。俺は今……どんな状況だった?
椅子に座っている―――オーケーそれなりに冷静だ。で……さっき、俺は楯無さんに何をやらされた?
口についているクリームを指ですくわれた。うん、オーケー。
俺はそのあとにクリームがどうなったかについては関知しない、うんこれもオーケー。
では、俺の今の顔は?
結論。クリームだらけの白いヒゲサンタ状態。
で、カメラ―――導き出される最終的な結論は……
「ストォーープッ!!そんなことされたら、俺が恥ずかしくって死んじゃいますから!!」
「あ、戻ってきた。別にいいじゃない。一気に学園の人気者になれるわよ?」
【おー、これはお見事なお手前で……】
けらけらと笑いながら話を続ける彼女とさっきは
無論、今や何もついてない右手でおしぼりをかっさらい、口元を乱雑に拭って話のタネを抹消することも忘れずに。
「今だって、“ある意味”人気者ですよ!それにスプー!お前、さっきはなんで話に割り込んでこなかったんだよ!!!」
「えーほんとーおねーさんしんぱいだなー」
【いやー電波が届かなくってー】
「二人とも、棒読みすぎです!!!」
あまりにバレバレな嘘をつく二人に憤慨して、つい大声で怒鳴ってしまう。
それがいけなかった。何者かに肩をぽんぽんと柔らかく叩かれ感覚、怒り冷めやらぬと不機嫌を顔に張り付けて俺の肩を叩いた主に顔を向けると……その先には、ひきつった笑いを浮かべる店員の顔、胸には店長と書かれたネームプレート。
無論のごとく、追い出されました。
◆ ◆
少し傾きだした日の灯りと……髪を揺らす海からの潮風が心地いい。
ベンチに腰方俺が、時間を確認すると時計の針は、もうすぐ四時に差し掛かろうとなっている。
そろそろいい時間だな
そうぼやいた心の声に、どこからかツッコミがやってくる。
【なーにを憂鬱ってるんですかこのヘタレ】
スプーだ。携帯を取り出して、耳元に当てる。
「別に憂鬱ってわけじゃないさ。ちょっと疲れた、って感じかな」
【へー……いつもの超過密スケジュールに比べたら、楽なくらいのはずですが?食事を済ませた後、楯無女史のウィンドウショッピングに付き合っただけじゃないですか。もし反論がおありなら、いつものスケジュールを言って差し上げましょうか?】
「…………いい、負けたよ。正直言うと、何かな」
【今が幸せすぎて、自分がこんなに楽しんでていいのか、とでも思ってます?】
「…………わからん」
【リンクでつながっているんだからごまかしは要りませんよ】
「違うんだ、なんというか……“そういう気持ち”もある、でも―――」
【それとは、また逆にずっと……この時間を過ごしたい、と思っていると】
相棒が的確に表現した言葉に、黙ってうなずくことしかできない。
【そんな自分が、ヒーロー失格だとでも思っているのですか?】
「…………いや、そういうわけじゃ……」
【自信を持ちなさい、ハル。貴方は立派にHEROをやっていますよ。いつだって私はそう思っております】
「…………さんきゅ」
【そんなことより―――映画館で考えた案、実行しないでいいのですか!】
「あ、えっと……それは、その……」
【そんなんだからヘタレDTダルなのです!いいですか、この海に面した絶好のロケーション、もうすぐ来るであろう夕日とシチュエーションは完璧です!あとは貴方の勇気だけですよ!!】
「わかってる」
【では、あと3分で楯無女史がそちらにもどります。気合入れて、頑張ってください】
「……誠意、努力する」
悶々とした気持ちを抱え、何を話すか考えていると三分なんてないも同じようなもので……すぐに彼女は、やってきた。
「はい!ハルくんは……ブルーベリーでよかったよね」
その言葉と共に彼女は俺にクレープを差し出す。楯無さんはさっきまで街で有名らしいこのクレープを買いに行っていたんだ。
「ええ。ありがとうございます、俺が行くべきだったのに」
「いいよ~別に、食べたいって言い出したのは私だし、何よりお金を出したのはハルくんじゃない」
「そりゃそうですけど……」
おもむろに、クレープに口をつける。量多めのクリームにブルーベリーの風味が負けていない、うん。おいしい。
じゃなくて!!―――話を切ってどうする!?
もくもくとクレープとぱくつきながら、隣に腰かけた彼女を見ると彼女もちびちびとストロベリーのクレープを食べながら、ちらりとこっちとみていた。
ど、どどどどうしよう!?雰囲気的におかしくないか?この状況で……貴方の事を教えてください、なんて!!
でも、今いかなきゃ……ダメだろ!!
“まずは、自分が動く”―――そう、動くのは……今だ!!
そう、決意を固めて彼女のほうに顔を向け……震える口を開く。
心なしか、彼女も真剣な面持ちで少しばかりの緊張がうかがえる。
「た、楯無さん!」
「は、はい!」
「俺に!」
「お、おれにぃ!?」
「貴方の!」
「あなたのぉぉ!?」
「事を――――」
しかし、その瞬間。俺の決意をさえぎる様に先ほどまで静かだったこの場所に
「ひっく……ひっく……うわぁぁぁぁああああんっ!!!」
子供の泣き声が鳴り響いた。思わず目を白黒とさせてしまう。彼女も同じようでぷいっと顔をそむけた。ここなしか顔が紅かったのは気のせいだろうか?
気恥ずかしさで爆発しそうな俺も、鳴き声の主を探して顔を振った。
【ヘタレ】
反論する言葉もございません。っと……そこか。
見つけた彼は、まだ小学校にも上がっていないほど小さい男の子で、輝くような金髪が目につく子だった。
「ひっく……ひっく……ぅぅううぅう……」
「まわりに……親の姿はなし、か……」
大方、親とはぐれたのだろう。きっと心細くて、周りが怖くてしょうがないはず。
行かなきゃ。
腰を上げかけた瞬間、不意に……心の中に声が響く。“あの時”―――代表決定戦の後と、アリーナで聞こえた、“あの声”。
―――それでいいのか?
そうだ。俺があの子の下に向かったら……楯無さんはどうする?ほおっておくのか?
彼女にショックを与えるだけじゃないだろうか?
それは、やっちゃあだめなんじゃないのか?
俺がそう考えてしまい固まったその瞬間。隣で彼女が立ち上がる。
当然のように
「……何やってるの、ハルくん。行くんでしょ?」
「え、あ……それはその……」
「だったら、さっさとクレープ食べちゃう!」
「は、はい!!」
そう俺をたしなめると俺を取り残して、先に少年の下にすたすたと足を進める。無論のごとくさっきまで食べていたはずのストロベリーのクレープは何処にもない。
…………かてないなぁ。
【まったく……さあ、さっさと片付けてください】
おーらい。
呆れたようなスプーに言葉を返しながら、残りのクレープを口に無理矢理突っ込み、彼女の後を追う。
楯無さんは、彼に話しかけているようで……笑っている。そこに割り込んだ。
まずは膝をついて、なるべく視線を合わせる。
「初めまして!俺はハルっていうんだ。君の名前は?」
「ぅぅうう……ひっく……ひっく……」
「大丈夫だよー。一緒にお父さんかお母さんのとこ行こうね」
優しく語りかけるが……少年が泣きやむことは無い。
まだ、俺たちのことを警戒しているんだろう。そう思って、なるべく話を発展させようと口を開いた瞬間。困ったような楯無さんが驚くような話を始めた。
「ハルくん……この子、言葉がわからないみたい」
「え?日本語が、ってことですか?」
「ううん。最初は私もそう思ったの。でも違うのよ……日本語だけじゃない。私が知っている欧州圏の言葉全部を試したのに、“わからないそぶり”をするのよ」
「それって、どういう―――」
その答えは、俺の脳内に響く、相棒のテレパスによって伝えられた。
【ハル、落ち着いて、よく聞いてください】
なんだ。スプー?
念を押すような話しぶりの相棒をいぶかしみながら、先を促す。
【いいですか。彼は、“ヒト”ではありません】
確かに―――聞かされた答えは、予想をはるかに超えていた。
ドーモ、読者=サン。めんつゆデス。
いかがだったでしょう。第28話は?精一杯甘くしたつもりです。楽しんでいただければ幸いです。
さて、今回のお話はデート回。彼女との関係に踏み込む彼と、何やら思惑のある彼女。そして飛び出した新キャラ!(スポット参戦なので次の登場は不明です)
次回は、あの少年の親探しとなります!さて、これに面したお邪魔虫ーずは!
とひっぱって終わります。
次回の投稿は、一応九月以内に投下できれば、と考えております。
この後、といいたいのですが予定がありまして明日、セカヲワの投下したのち、セ顔羽の世界観に対する補足を作成してからの次回作成となりますので少し遅れるかもしれません。
今回のネタ紹介(いつ振りだろう)
プギャー
>m9(^Д^)この顔文字の事。ザ。煽り。
回答一……
>ネットでご存知の方は多いかと思われる、ジョジョ第三部のキャラクターポルナレフの台詞をもじったもの。
第三部完!
>これもジョジョ。詳しくは原作を見てね!ぶっちゃけストーリーは面白いよ!!
こんな感じでしょうか。ではこのあたりで今日は失礼します。
感想、ご指摘、質問、読了報告などはいつでもお待ちしております。
では、読了ありがとうございました。
失礼します。