恐れを知るものは、無限の空を目指す   作:めんつゆ

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 第7話 「賢、拒絶される」

      ◆            ◆

 

 ・・・晴香が逝ってから、僕は悲しみに浸る暇もなく、怒涛のような雑事に忙殺された。

 

葬式の手配、告別式の手配、晴香の残した楽曲の権利に関すること、俺が海外で行っていた研究の引き継ぎ、大学への連絡などやることはいくらでもあった。

 

 それらがひと段落して、ようやく僕はハルと向き合えた。

あの事故の後、ハルも病院で入院していた。

医者の話によるとどうやらPTSD、心的外傷ストレス障害と診断された。

それも、症状はかなりひどいらしい

 

 拒食症、パニック障害、対人恐怖症、不眠症など、かなりひどいらしい・・・

それも、医者がさじを投げるほどに・・・

 

「加藤さん・・・陽くんの病状についてなんですが・・・」

「はい」

「現状から判断するに、入院ではこれ以上の回復は見込めません」

 

僕は驚いた。この医者はあの事故のあと

さも、自信満々で自分に任せるように言っていたのだから・・・

 

「なぜ、ですか?あなたあの時、自分たちに任せれば問題ないって言ってましたよね?それにこの病院には腕の立つカウンセラーがいるから、彼に任せれば大丈夫だって!」

 

医者はすまなそうに顔をゆがめ

 

「その件に関してはこちらからは謝罪することしかできません・・・ですが、カウンセラーも手を焼いていまして・・・それに・・・」

 

「それを何とかするのが医者の仕事だろう!!」

「それはおっしゃる通りなのですが・・・何分カウンセリングどころか、明るい部屋にいることにすら拒否反応がでまして・・・ためしに夜にカウンセリングを行っても、顔を合わせるだけで嘔吐される始末・・・もうお手上げです・・・」

 

「そうですか!じゃあハルは連れて帰りますね!今までお世話になりました!」

そういいつつ、体が熱くなるほどの怒りをにじませ、僕は診察室から出て行った。

 

 そうして、久しぶりに会ったハルは、あの時よりこけた頬をして、あの時と同じように焦点の合わぬ目で僕の顔を見つめ・・・唐突に手に抱えていたバケツに顔をむけて、吐いた。

 

「っ!ハル!!」

 

いそいで近寄ろうとする僕をハルは手で制して、

 

「大、丈夫、です」

 

「大丈夫なわけないだろ!!」

 

そういいつつ近寄る。

僕は医学には詳しくないが嘔吐した内容物が水だけ・・・つまり胃液だけというのは、かなりの頻度で嘔吐しているあかしだ。

昔、海外で水にあたってこれと同じような経験をしたことがある。その時僕もとてもつらかった。

 

だからハルが辛くないはずがない、それがわかっ

た。

だが・・・僕は・・・

 

「だから、近づかないで、って言っているじゃ、ないですか!」

「・・・どうして、だい?」

 

 拒絶、された・・・

 

「人の顔を見ると、はいちゃうんですよ」

 

そういいながら、ハルは僕に背を向けた。

 

「今日は何の御用でいらしたんですか?」

 

おかしい―――僕の息子は―――こんな言葉遣いだったか?

久しぶり会うからとかそういうレベルじゃない・・・何か、とても強い隔意を感じた。

 

「退院が・・・決まったよ・・・一緒に家に帰ろう」

 

「はい、わかりました」

「それより・・・どうしたんだい?・・・その口調?久しぶりに会ったっていうのに悲しいじゃないか?」

「そんなこと・・・どうでもいいじゃないですか・・・」

 

僕は自分の耳を疑った。やっぱり・・・おかしい?

なんだ?この違和感は・・・?

 

その時、愛する息子が得体のしれない人形の様に感じてしまった。

 

「それに・・・あなたには関係ない・・・」

 

小さくそれだけ言うと、ハルは口を閉ざした。

 

「関係ない・・・関係ない、訳あるか!!僕たちは家族なんだぞ!!」

 

だがその後、ハルは僕が何を言っても反応も返してくれなかった。

 

 




 はい今日は短いですね~
すみません・・・鬱表現が自分で書いてて辛くなっちゃって・・・まぁそんなことより、ハルのPTSDはすべて自責の念から来ているものです。
さて・・・父は息子を立ち直らせることができるのか!
とあおるだあおって、今日はこの辺で失礼します。

おやすみなさい
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