◆ ◆
・・・晴香が逝ってから、僕は悲しみに浸る暇もなく、怒涛のような雑事に忙殺された。
葬式の手配、告別式の手配、晴香の残した楽曲の権利に関すること、俺が海外で行っていた研究の引き継ぎ、大学への連絡などやることはいくらでもあった。
それらがひと段落して、ようやく僕はハルと向き合えた。
あの事故の後、ハルも病院で入院していた。
医者の話によるとどうやらPTSD、心的外傷ストレス障害と診断された。
それも、症状はかなりひどいらしい
拒食症、パニック障害、対人恐怖症、不眠症など、かなりひどいらしい・・・
それも、医者がさじを投げるほどに・・・
「加藤さん・・・陽くんの病状についてなんですが・・・」
「はい」
「現状から判断するに、入院ではこれ以上の回復は見込めません」
僕は驚いた。この医者はあの事故のあと
さも、自信満々で自分に任せるように言っていたのだから・・・
「なぜ、ですか?あなたあの時、自分たちに任せれば問題ないって言ってましたよね?それにこの病院には腕の立つカウンセラーがいるから、彼に任せれば大丈夫だって!」
医者はすまなそうに顔をゆがめ
「その件に関してはこちらからは謝罪することしかできません・・・ですが、カウンセラーも手を焼いていまして・・・それに・・・」
「それを何とかするのが医者の仕事だろう!!」
「それはおっしゃる通りなのですが・・・何分カウンセリングどころか、明るい部屋にいることにすら拒否反応がでまして・・・ためしに夜にカウンセリングを行っても、顔を合わせるだけで嘔吐される始末・・・もうお手上げです・・・」
「そうですか!じゃあハルは連れて帰りますね!今までお世話になりました!」
そういいつつ、体が熱くなるほどの怒りをにじませ、僕は診察室から出て行った。
そうして、久しぶりに会ったハルは、あの時よりこけた頬をして、あの時と同じように焦点の合わぬ目で僕の顔を見つめ・・・唐突に手に抱えていたバケツに顔をむけて、吐いた。
「っ!ハル!!」
いそいで近寄ろうとする僕をハルは手で制して、
「大、丈夫、です」
「大丈夫なわけないだろ!!」
そういいつつ近寄る。
僕は医学には詳しくないが嘔吐した内容物が水だけ・・・つまり胃液だけというのは、かなりの頻度で嘔吐しているあかしだ。
昔、海外で水にあたってこれと同じような経験をしたことがある。その時僕もとてもつらかった。
だからハルが辛くないはずがない、それがわかっ
た。
だが・・・僕は・・・
「だから、近づかないで、って言っているじゃ、ないですか!」
「・・・どうして、だい?」
拒絶、された・・・
「人の顔を見ると、はいちゃうんですよ」
そういいながら、ハルは僕に背を向けた。
「今日は何の御用でいらしたんですか?」
おかしい―――僕の息子は―――こんな言葉遣いだったか?
久しぶり会うからとかそういうレベルじゃない・・・何か、とても強い隔意を感じた。
「退院が・・・決まったよ・・・一緒に家に帰ろう」
「はい、わかりました」
「それより・・・どうしたんだい?・・・その口調?久しぶりに会ったっていうのに悲しいじゃないか?」
「そんなこと・・・どうでもいいじゃないですか・・・」
僕は自分の耳を疑った。やっぱり・・・おかしい?
なんだ?この違和感は・・・?
その時、愛する息子が得体のしれない人形の様に感じてしまった。
「それに・・・あなたには関係ない・・・」
小さくそれだけ言うと、ハルは口を閉ざした。
「関係ない・・・関係ない、訳あるか!!僕たちは家族なんだぞ!!」
だがその後、ハルは僕が何を言っても反応も返してくれなかった。
はい今日は短いですね~
すみません・・・鬱表現が自分で書いてて辛くなっちゃって・・・まぁそんなことより、ハルのPTSDはすべて自責の念から来ているものです。
さて・・・父は息子を立ち直らせることができるのか!
とあおるだあおって、今日はこの辺で失礼します。
おやすみなさい