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神々の世界……
それは、天上でも地下でもない、この宇宙を超越したところからさらに遠く、というよりその周り……まぁ、そういうとこにしておこう。とにかく、人間とはほとんど縁のないようなものだ。
とにかく、そんな世界がある。
そして神は、霧から湧いたり、突然現れたり、消えたり、漠然としてるかと思いきや気分で世界をぶっ壊したり、喧嘩の最中に沢山子供を産んだり、そんな変なことをしている。
何をしているんだ……と思うかもしれないが、読者諸君がよく知っている日本神話のスサノオノミコトだって、姉(アマテラス)の神殿にウンコを撒き散らしている。つまり、神は何をしてもいいのである。
そんな世界にだって、当然リーダーみたいなのは存在する。ちょうど、オリュンポスの頂点がゼウスであるように、その世界では神のリーダーが存在している。
だが、この世界はもうすでにその存在を忘れてしまっていた。
「だからさ、わかる? 俺に酒をくれよ。酒をたーんまりと、わかるかい?」
「あんたは飲みすぎなんだよ。少しは自重しなさいよまったく」
火の神と嫉妬の女神。いいことがあったもんじゃない。火の神はいつも赤い顔をしているが酒を飲むとその顔をさらに業火のように赤く染める。そして褌をなくして裸になると、宮殿の女中を片っ端から追っかけ回すのである。
しかし神の世界ではそれは日常だ。
誰も咎めるものはいない。
「おいおい、今度は何だ? 6のゾロ目じゃないか? てこたー、俺の勝ちだな」
「てめぇ、またサイコロの数字をごまかしやがったな!!」
賭けの神と、商売の神。2人はいつもボードゲームで遊んでいる。嵐の神であるオーディンがそれを眺め、横からぶつくさと何やらつぶやいているのもわかる。
酒宴の席では、今日も神々が騒がしく浮かれ遊ぶ。一角獣はその様子を眺めながら大きなあくびを浮かべて、常に明るい部屋の隅でいびきをかいて眠る。
神のまにまに、憩いは久遠の果実なれ。
そんな言葉すらこの世界には存在する。
「え〜、皆さま、ちょっと時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
ひとりの天使が神々に呼びかけるがまったく反応がない。
「あの……その……どなたかー、すみませーん、こちらを向いて……」
コツン…と頭にシャンパンのコルクが当たる。鈍いイライラが心の中に募るが、天使はその程度では動じない。
やがてそのイライラを落ち着かせるため、彼は大きく一声、言葉を放つ。それは音ではなく、脳内に直接語りかける力だった。
「皆さま、お時間を頂きたい。今日は特別な報告がございます」
鶴の一声に皆、ようやくその天使の方を向く。女神たちはその天使の姿に、顔を思わず緩ませる。
世界一の美貌を持つ天使、るしふぁーである。
「それでは皆さま、ここ数百万年のことを思い返して頂きたい。私たちの生活には何かが足りなかったと思われませぬか?」
「……女だな!」
酒の神が言うと、周りの神たちもそれに対して笑い出す。しかし、るしふぁーは表情1つ変えることなく続ける。
「創造神です。私たちは過去97万年に渡って、創造神が存在しない状態で生活していました」
「正確には96万9587年と11ヶ月だ」
暦の神が不満げに漏らす。
「訂正ありがとうございます。とにかく我々はその創造神を失った状態で、これまで世界を管理してきました。でもどうです? 我々はこの97万年になにかを生み出しましたか?」
神たちが黙り込む。
彼らはあくまでその道を極めたものだ。そして、過去に創造神に作られた存在である。
火の神は火を自在に操れても、それをもちいて別のものを生み出すことはできない。
それは他全ての神にも言えたことであり、まさに彼らにとっての問題だった。
「ましてや、世界の創造も行われていません。97万年前に起きた戦争で、創造神は失われました。我々はそれからなにをしましたか? なにもしていませんよね?」
誰も言い返すことはない。
「……そんな皆様に、朗報があります」
るしふぁーは改まると、こう告げた。
「創造神が出現しました」
「なっ、なんと?」「それは本当か?」
「一体どこの誰なんだ…」
神々の間にざわめきが広がる。
「ですが……少々問題が多い…」
「というと……」
突然、酒宴の間の扉が大きく開かれる。
どすどすと足音を立てた幼女が走り込む。
「る〜しぃ〜ふぁ〜っ!!」
少女はるしふぁーの前に立つと怒った顔で見上げる。身長が1.5倍はあるだろうか、るしふぁーは面倒そうな顔をして少女を眺める。
「私をずっと門の前で待たせるってなによ! 用があるなら早く呼びなさい!!」
「……どうやら呼ぶ手間は必要なかったみたいですね。ほら、皆さまがいますよ…」
えっ……と小さく呟き、少女は振り返る。
集中した視線に顔を真っ赤に染めるとそのままるしふぁーの後ろに隠れてしまう。
「えっと……今の少女は?」
「あぁ……この子が例の神です。半神半人……人間と神のハーフですが…」
一同が唖然とする…そんなバカな、とさえ言うものさえいる。
「実は、昨日だけで既に7つの世界を作っています…」
「……!?」
一同は唖然とする。
誰もがそんなの嘘に決まっている…と口を揃えて言う。
「えぇ、数千万年に一度の逸材です。ただ…少々世間を知らなすぎる」
るしふぁーは少女を無理やり前に押し出すと肩の上に手を置く。
「ですので、彼女に特別な教育係をつけるというのはどうでしょうか? 」
「教育係……というのは、天使のか?」
「いいえ、この子はこの通り、精神年齢が人間と同じです。しかし、神としての素質はそれ以上です。神を教育したことのある天使はたくさんいますが、人間を教育したことがあるのはほとんどおりません…。そこで、彼女を人間界に送り、現地の者……十分な教育を受けており、口が硬く、外部との接点の少ない人間に育てさせるのが妥当と思われます」
「しかし、そう都合のいい人間がいるかね?」
「……既に候補は絞っています。あとは皆様の許可があればいつでも……」
神々は揃って顔を見合わせ、1つの答えを出した。