創造神教育係の日常   作:如月モヘンジョ

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第1話 日常的な非日常-2

えあ!?!?ちょっと待って冷静に考えさせてくれ!?

カメが喋るという珍事もそうだが、なぜ見ず知らずの女の子がこんなところでしかも薄い布一枚でいるんだ?

 

やっちゃった……やっちゃったのか俺!?

ついに少女を家に連れ込んでしまうような人間になってしまったのか!?

 

「……るしふぁー、本当にこの人でいいの?」

「……下級天使たちに調べさせて最も納得のいく人物だったはずだが…」

 

生ゴミを見るかのような目で少女は俺のことをじっと見た。いや、きっとそんな汚い目はしていない、ただ怖がってるだけだ…と思って見てみたがやっぱりそういう目でした。

 

いったいどのタイミングで入ってきたんだ?

冷静に考えてみろ。扉は閉まっていた。俺は冷蔵庫に食べ物を取りに行って、戻り、チンして開けた。

ここまでの間に違和感は無かっ……いや、あった!うん!間違いねぇ、絶対この時間だ。手段は見当もつかないが、少なくともなんらかの方法で奴らは侵入したに違いない。

 

なんか人智を超えてる的な発言もしてるし……。

 

 

「か……神様とはいえ人の家に不法侵入するのは良くないですよ」

「神は所を選ばないのです。お告げをするときも、いつどこに現れるか自由に選ばれる。神が望んだ時に望んだ場所に降臨なさるのです」

 

なんだか酷い言い訳を聞かされたような気がしなくもない。なんだ、神はそんなに自由なのか。

 

ここまでの時点で。

何だ、つまり今喋ったそこのカメが、神であるということか?

 

「おい、るしなんとか」

「るしふぁーだ」

「えっと……よく分からんけど、神さまならここから帰ってください。それが僕の精一杯のお願いです。頼みます。今すぐ帰ってください」

「駄目です」

 

what's!?!?と頭の中のボブが言った。いや違う。僕が反応しそうになった。とにかく、主語が僕やら俺やらボブなどに入れ替わるくらい混乱している。

 

「か……神様は下界の人に興味ないんじゃないですか……ソドムとゴモラみたいに焼き捨てたいんじゃ…」

「あんたの中で神っていったいなんなんですか…日本人は無宗教の人が多いと聞いていましたけどここまで混沌としたとは思ってませんでしたよ…ねぇ、お嬢様」

「……るしふぁーが選んだんでしょ。知らないわよ。それに教育係って何よ! 私こうみてももう340歳よ! 少しくらい世界のことがわか…」

 

少女が続けようとしたのを遮るように、さっきのカメが立ち上がって少女の口を塞ぐ。体格とかその辺的にどう考えても異常な状態なんですがそれは……。

 

「……本題に入りましょう」真面目な口調に戻ると、突然そのカメが姿を変身させる。まばゆい光と共に姿を現したのは、ぃわゆる「天使」だった。高貴な貴族を思わせる出で立ちに、明らかに人智を超えた風格を思わせる羽、そして凛々しい青年がそこに立っていた。

 

「改めまして、三鷹小路様。私は熾天使、天使の総長を務め、またお嬢様の執事を務めています、るしふぁーです」

「えっ……あっ……はい。なんだっけ、教育係だっけ? 断りたいんだけど……」

「駄目です」

「なんでですか?」

 

あまりにも予想外の質問に困惑したような様子で、るしふぁーその容姿に似合わぬ早口で答える。

 

「いや、神託だよ!? そこはもうちょっとさー、常識的に考えてよ。人智を超えた超越的な存在が来たんだよ!? そこはさー、ちゃんと受けてくれないと困っちゃうよ」

「るしふぁー、言葉、崩れてる」

 

少女の反応とともに、突如としてるしふぁーが体をひねくらせ、その後アイーッとでも言うと、

「す……すみません」と、また天使らしい態度に戻った。

「……こんなんで家庭環境大丈夫なのか……」

「神って皆変だから、るしふぁーも疲れてるんだよ」

 

言われてみればこっちの世界でも、変な上司の長い自慢話に付き合わされて帰ってきたときにはこんな口調になる気がしなくもない。……いや、どちらかといえばしないな。うん。

 

「……君がその……創造神…だっけ? 」

「そう、私が創造神。だから崇めなさいっ」

 

少女が俺の目と鼻の先に指を突き出してくる。正面から見て思ったが、目鼻立ちが良く、世間的には美少女、と呼ばれる姿をしている。

ただ……この傲慢な態度はまだこどもだな……。

 

「おい、るしふぁー」

「は……はいぃ……」

「……分かった、俺がこいつをまともにすればいいんだろ」

「ということは、受け入れてくださるのですか!?」

 

るしふぁーが目を輝かせ、そして顔を覆う。ハンカチのようなもので涙を拭いているようだ。情緒不安定だなこいつ。

 

俺は少女の首根っこを掴んで、そして横に立たせる。

 

「こんなわがままな奴に、世界を任せるなんてできないだろ。自信はないけど、やるだけやるよ。お前も苦労してるみたいだし…」

 

るしふぁーの苦労は、今話してる中でだいぶ滲み出ていた。だったら少しくらいは、手伝ってやったほうがいいだろう。ただ、それだけの理由だ。

 

「……で、食費とか、生活必需品の拡充についてはどうすればいいの?」

「え……あ、そ、そうですね、それについては…」

 

るしふぁーが分厚い書類を出そうとしたところで、突如部屋にぼんっ、という音ともに大量の荷物が出現する。本来窓になっているはずの……つまり、ありえない場所に扉が現れている。

 

「めんどくさいから、私、ここに住む。あと、るしふぁーうるさいから、私がおーけーって言った時以外はカメのままでいてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁっ!????』

 

出会って1時間。天使と始めて意見があったのはそれが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

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