RED DEAD GOBLIN REDEMPTION 作:パトラッシュS
続編はいつか書けたら良いなぁ(遠い眼差し)
アーサーさん社畜説。
アメリカ開拓時代。
無法者達が栄光を掴んでいたその時代で伝説と呼ばれるガンマン達が居た。
彼らは無法者ながら、文明化が迫る中で抗い、もがき、そして、その命を散らしていった。
文明化には彼らのような人間はいらない、不必要だと彼らはどんどん追い詰められていった。
皆でいつか見た夢のユートピア、それだけを追い求め、彼らは国中を逃亡し尽くした。
流浪のギャング集団、それが彼らであった。
だが、住む世界がもしも、彼らの様な人間を望むような世界であったならどうだろう?
時に神が振るダイスは気まぐれだ。
自分達の退屈を紛らわせるなら、そんなものまで受け入れてしまうことだってある。
これはそんな神さまの気まぐれで現れたとある無法者達の話だ。
暗く薄汚い洞窟。
血が飛び散り、悲鳴が木霊する中で一人の女騎士は剣を振り回して抵抗をしていた。
彼女の周りには先ほどまで仲間であった者達の姿があった。
共に夢を語り合い、いつかは、名の知れた冒険者になるのだと誓い合った仲間達。
そんな仲間達は既に話すこともできない亡骸となってしまっている。
同性であった魔法使いの一人は乱暴をされた挙句に殺され、神官であった男は怯えて腰が引けてしまい背後から刺されて死んでしまった。
辛うじて生き延びてはいるものの彼女の命運も底を尽きるのも時間の問題であった。
「近寄るなぁ! 誰かッ! 助け…!」
「GOBGOOOOB!!GORB!」
下衆な笑い声が洞窟内で響く中、恐怖に歪んだ女騎士は全滅したパーティーの亡骸を目の前に後ずさる。
乱暴に引き裂かれた服からは綺麗な白い肌が見えており、下衆な笑い声の主であるゴブリン達からしてみればそそる様な身体付きであった。
ゴブリン討伐という依頼を受け、こうやって新米の冒険者が犠牲になることは珍しい話ではない。
中堅の冒険者であっても時には殺され、嬲られるのはどこにでもある話だ。
そう、どこにでもある話、なんてことはない。
だが、そんなどこにでもある話であったとしても、時には幸運が働く事もある。
そう、それが例えば、とあるギャングの縄張りでの出来事であったならば、尚更のことだろう。
次の瞬間、複数人で女冒険者を囲んでいたゴブリンの一人の頭が反れるように弾け飛んだ。
「…辛気臭い洞窟かと思ったら先客が居たか」
そう言って、ゴブリンの背後から現れた男は片手に持ったリボルバーを構えたまま帽子を深く被る。
そして、彼の背後からは男が更に二人現れ、それぞれ、ボルト式ライフルとリボルバーを片手に現れた。
帽子を深く被った男は片手でタバコを吸い始めると深いため息を吐く。
仲間を殺されたゴブリン達は武器を手に怒りに満ちた表情を浮かべていた。
「貴方達……は…」
「ちょっとだけ伏せといてくれると助かるな、お嬢さん」
そう告げると彼らはすかさず持っていた銃をゴブリン達に一斉に構える。
女冒険者が帽子を被る男から言われた通りに伏せた瞬間。
それが、彼らの引き金を引く合図となった。
そこからは、ゴブリン達にとっては地獄絵図だ。
彼らが一斉に構えた銃から火花が出たかと思うと仲間達が次から次へと頭や体から風穴が空き血を吹き出しながら倒れていくのだ。
それも、最初に銃でゴブリンを倒した男は目に見えないような速さの早撃ちで脳天を正確に吹き飛ばしていくではないか。
そして、ゴブリン達が身体中に風穴を開けて死んだ事を確認すると帽子を被った男は咥えていたタバコを投げ捨てホルスターに拳銃を仕舞った。
「見事なもんだなアーサー」
「…大したことじゃない、的が良いからな」
「そうかい」
そう言って、黒髪の髭を生やした厳つい男は真ん中にいる帽子を被っている男の肩を叩くと笑みを浮かべる。
急に現れた彼らの姿に冒険者の少女は目を丸くしていた。
真ん中の男は身に纏っていた長いコートを服が破けた彼女にそっと掛ける。
「もう大丈夫だ、さあ、行こうか」
「…はい…、あの…貴方達は…一体…」
何者なのか、冒険者の彼女は優しくコートを掛けてくれる彼の顔を見つめたままそう問いかける。
だが、彼は彼女に何も言わないまま、優しくお姫様抱っこをするとそのまま彼女を洞窟の出口にまで運んだ。
そして、洞窟から彼女を運び出す最中、アーサーと呼ばれた男は「自分達は何者でもない」、と一言だけ、彼女にそう話した。
洞窟の前には彼らが乗ってきた馬達が出迎えてくる。
「…さて、ギルドにはなんて話す? 依頼を正式にとってなかったんだろ?」
「おいおい、ホゼア、何言ってる。俺たちはこの洞窟でゴブリンが出るから困ってると聞いたから退治したまでだ。それに、その件ならなんとかなる」
「なんとかなるではなく、私がなんとかするんだろう?」
ホゼアと呼ばれた年長の知的な男性は馬に跨りながら、アーサーの言葉に呆れたように肩を竦めた。
どうやら話を聞く限り、彼らもまた同じ冒険者なのだと、この時、洞窟から救い出された女冒険者は思った。
話を聞くと彼らは無法者だという、アーサーと呼ばれている男は自分達は冒険者とはまた少し違うと馬上で彼女に話をしてくれた。
「この世界じゃ強盗や殺人なんてしなくてもモンスターを始末しさえすれば給金は貰える」
「ギルドから…ですか?…それじゃ私達と…」
「……俺たちは住民から直接仕事を貰ってることが多いな、ギルドにも一応、名前はあるにはあるが、俺たちはギルドの中でもランクは低いんだ…なんといったか…、あー…」
「白磁ですか?」
「そう、それだ、白磁のまんまさ、別に仕事ができないってわけじゃないが、いかんせん素行が悪い連中ばかりでな」
そう告げるアーサーは頬を掻きながら、馬の後ろに座らせている女冒険者に照れくさそうに笑みを浮かべる。
盗みはせずともお金は貰える。だが、必要とあらば、王族の馬車を襲う事も躊躇わないし何だったら豪邸を襲う事もやってのける。
弱者からは盗まず、富を持ったものから奪いそれを貧しい者達に分け合う。
それが、アーサーという男が語る生き方であった。
「アーサー・モーガンだ。こいつはホゼア、そして、ジョン・マーストン」
「…は、はい、…あの先ほどは助けていただいてありがとうございます」
「別に構いやしないさ、ゴブリン退治ってのは人気も低くて金にはならんが、それに比べて被害は酷いからな、苦しむのはいつも農民や労働者だ」
そう告げるアーサーは帽子を深く被る。
そんなアーサーの言葉を聞いていたジョンは肩を竦めると左右に首を振り、アーサーの言葉に対して感想を述べ始めた。
「全くだ、ゴブリンの連中と言ったら、知能はコルム一味の奴等となんら変わりない野蛮な連中だ、報復するにしても良心が全く痛まないし、なんせ殺せば金になる分、有難い」
そう話すジョンの言葉に同意するように隣で馬に跨る知的な年長者であるホゼアと呼ばれる男は納得したように首を縦に振っていた。
彼らは大規模なコミュニティを作り、アジトを街の近隣に構えて生活しているらしい。
だからといって粗暴な振る舞いは決してしない彼らのギャングとしてのあり方は、近隣の村の人々から信頼を勝ち取っているという。
村がゴブリンに襲われたと聞けば、国が依頼を発注する前にすぐに全員が一斉に報復に動いてくれる。
さらにいうなら、それだけではなく、モンスターや怪物の被害がでればそれにも可能な限り動いてくれる彼らの存在は近隣の住人達に安心をもたらしてくれていた。
野盗の出現も彼らが現れてからというものこの近隣では数を減らしている。
無法者だからこそできる働きがあり、信頼がある。
彼らの存在意義はこの世界では不必要と断罪されることはなかった。
「さて、お嬢さん、もうすぐ目的地の街だが、大丈夫かな?」
紳士的な態度でホゼアはにこやかに笑みを浮かべて彼女の肩をポンと叩く。
アーサーの背後にいる彼女はそのホゼアの言葉に静かに頷いた。
彼女が大きな心の傷を負う前にあの洞窟から救えて良かったと彼らは思う、目的地まで着き、馬を止めたアーサーは手を差し伸べて彼女を馬上から降ろした。
そして、宿で彼女を降ろしたアーサーにホゼアはこう声を掛ける。
「さて、それじゃ私はギルドに交渉に行ってくるとしよう、後は任せていいか?アーサー」
「あぁ、俺は彼女を送ったらジョンとキャンプに戻ってる」
「そうしてくれ、お前達がこの間も派手に酒場で喧嘩したせいで受付のお嬢さんがおかんむりだったからな」
「すまんな」
ホゼアの皮肉が入った言葉にアーサーは苦笑いを浮かべると手を挙げて応える。
ホゼアは口も達者な上に頭の回転も早く紳士的だ。彼に任せておけば大抵の交渉ごとは上手くいく。
宿まで冒険者の女騎士を送り届けたアーサーはひと仕事を終えたとばかりに壁に寄りかかってタバコを口に咥えると煙を吐き出す。
そんなアーサーの横にジョンは寄りかかると静かに語り始めた。
「銃や弾薬が街で手に入らないのはやっぱり痛いな」
「だろうな、タバコも売ってないときた」
「でも逆に言えば、俺はこれはチャンスだと思う、嗜好品、銃、弾薬が作れるやつを確保できさえすれば俺たちは億万長者だ」
そう言って、ジョンは景気が良さそうにアーサーの肩に寄りかかりながら笑みを浮かべる。
この世界では銃やタバコ、弾薬は流通していない、その代わり、人々は魔法が使え、それを用いて魔物と戦うような世界だ。
逆に言えば、銃やタバコ、弾薬を作り、高値で売れば儲かる。
時代を遡ったようなこの世界でのビジネスチャンスはアーサー達には実に有難い話であった。
「まぁ頃合いを見てからだろうな、金細工に精通したドワーフは…?」
「レニーが見つけたと言っていたな、雇い金は問題ない」
「そうか、良い話だな、銃の部品さえあれば組み立てはできる。後は弾薬さえあれば問題無い」
タバコを吸い終えたアーサーはそれを路上に投げ捨てるとジョンの肩をポンと叩いて止めてある自分の馬に跨る。
ジョンもまた、それに続くように自分の馬に跨り、手綱を引いて方向転換させた。
そして、ホゼアに言われた通りに街の正面から馬を並べて、二人は街から出て行く。
そんな中、ある事に気づいたジョンはキャンプに帰る道中、ふと、アーサーにこんな質問を投げかけた。
「もし、弾薬が切れたらどうするんだ? アーサー?」
「その時は……、インディアンの戦い方に習うさ」
「おいおい…。よりにもよって弓かよ、勘弁してくれ」
そんな他愛のない会話を繰り返しながら二人は笑い合いキャンプへ向けて馬を走らせる。
時代の移り変わりの中で、抗い、そして、自由のために戦った無法者達。
これは、そんな無法者達が新たに築く、伝説の話である。
RED DEAD GOBLIN REDEMPTION