RED DEAD GOBLIN REDEMPTION 作:パトラッシュS
ゴブリンとは低下級のモンスターに過ぎない。
だが、その繁殖力は凄まじく、時には人間の村すら壊滅させられる事すらある。
しかし、それで仕方がないと済ませてしまうのか?
国が動かず、民が苦しめられている。
それでは誰が起つのか? 奴らに対する報復は、怒りは、憎しみは、誰が担うのか?
「ヒィィィィィィ!!ハァァァァァ!!」
「GOOOOO!! GOOOOORB!」
それは、彼らの役目だ。
ギャングと呼ばれた彼らの縄張りで、好き勝手な略奪をするのならば、それ相応の末路が用意されているのは容易に想像ができるだろう。
首にロープを括り付けられたゴブリンはゴミ切れのように馬に引き摺られ血だるまにされていく。
両足が撃たれ、使い物にならなくされたゴブリンの悲鳴が木霊する中、その悲鳴を心地良さそうに奏でている男達は笑みを浮かべる。
「ハッハー! 実に良い光景だなオイ!」
「おいおいー!くたばるにはまだ早いぞー!」
「GOB…。GOOOORB……」
血だるまになったゴブリンは力無く、声を上げる。
だが、彼らはそんなゴブリンの事など知らぬとばかりに再び馬を走らせ始めた。
ゴブリンの血が引き摺られた道にビッシリとこびり付く、だが、それでも構わず馬はただただ走り続ける。
そうしているうちに馬から引き摺られたゴブリンは死に絶えた。
「…あーあ、くたばっちまったか」
「さて、それじゃ行くか、ジョン」
「あぁ、さっさと顔の皮を剥いで夜に奴らの巣の前に吊るしてやろう」
より残虐に殺し、恐怖を奴らに植えつける。
誰の縄張りで、誰の許可を得て、好き勝手に略奪を繰り広げているのか?
徹底的に晒し、殺しつくし、嬲り殺しにする。
人間を舐めてかかった者達に分からせる。
それが、彼らのギャングのやり方だ。例え同じ人間であっても彼らは同じように晒すだろう。
これは、人間は報復しないと思い込んでいる奴らへの警告に過ぎない。
巨大なキャンプの中心の椅子に腰掛けている男は静かに葉巻を咥え込み煙を吐き出す。
ゴブリンに攫われた女達や貴族から奴隷として扱われていたエルフや人間、そして、ドワーフや蜥蜴人間など、様々な人種を受け入れるためそれにつれてキャンプがだんだんと大きくなっていった。
今では、ここで商売も成り立ち大きな集落になりつつある。
それは、この男が差別をしない平等を掲げる人間だからだろう。
「それで? アーサー、ホゼア、ギルドはなんと?」
「報酬は払ってくれるそうだ、ダッチ」
「まあ、端金だろうが塵も積もればなんとやらだな、害獣に関しても私達が出来るだけ討伐に協力すると話しておいたよ」
「そうか」
ダッチと呼ばれた男はそう言うと笑みを浮かべ椅子から立ち上がる。
民を外敵から救い、皆から尊敬される平等な正義のギャング。
かつて、目指していたその夢をこの地ならば叶えられるかもしれない、このギャング団のトップであるダッチ・ファン・デル・リンデはそう思っていた。
かつて、失ってしまった仲間達と共に選んだ再スタートの道はまたしても血に彩られてはいるが、それでも、家族同然の彼らとこうして一緒にこの地に生きていける事は幸運と言えるだろう。
この地を必ず全員が安心できる地にしてみせる。
ギャングのリーダー、ダッチはそう考えていた。これは、彼なりの償いでもある。
「ゴブリンスレイヤーと呼ばれてる彼は実に奴らについての理解が良くて助かるよ、今度の私達の討伐にも同行してくれると快く受け入れてくれた」
「奴らのせいで、襲うはずだった輸送中の奴隷馬車の奴らが殺されてしまったからな…、全く」
「それに折角、苦労して確保した馬も攫われる始末だ、タチが悪いったら無い」
「それは、奴らが俺達を舐めてるからだろう、わからせてやれば良い話だ」
そう言うと、ダッチは肩を竦め、ホゼアとアーサーに静かに告げる。
ダッチが何故ゴブリンに拘るのか? それにはもちろん、理由があった。
かつて、このキャンプ地が大きくなるににつれ、ゴブリン達からの襲撃を受けた事があるからである。
その時は、アーサー、ジョンを始めとしたメンバーを中心にガトリング砲、銃やダイナマイト、火炎瓶とあらゆる物を用いて全員皆殺しにした。
だが、その際、キャンプからファミリーとして受け入れていたエルフの少女や人間の娘達が何人か攫われた挙句、襲撃の際、死んだ者も何人かいた。
もちろん、報復はしたが、洞窟で攫われた女の死体が二人も見つかり、これが、ダッチの怒りに火をつけてしまったのである。
それから、ここら一帯のゴブリンは一人残らず虐殺し、殺し尽くし、晒し首にするという方針に決まった。
現在、ジョンとビル達を中心に渡りと呼ばれるゴブリンや、洞窟に住むゴブリンを縄張りで見つけ次第、屠殺し、奴らの住処の目と鼻の先に晒し首、吊るし首にして見せしめにしている。
ゴブリンの寝ぐらにしている洞窟やアジトを徹底的に探してあぶり出す。
ダッチの右腕であるアーサー・モーガンはキャンプの中でメンバーと打ち合わせをしていた。
それは、とある怪物の住処が見つかったという報告が挙がってきたからだ
「アーサー、洞穴が北のほうに見つかった。トロールの連中の寝ぐらだそうだ」
「ほう…、トロールの? ゴブリンよりは金になるな」
アーサーはそう言うとテキーラを一気にクイッと飲み干すとドンッとテーブルにグラスを置く。
こうして、前もって情報を仕入れておくことで後で討伐後にギルドに報告すればそれなりの報酬が貰える。
ギャングの仕事は何もゴブリンを倒すことだけでは無い。
縄張りにしている地域住民の脅威となる怪物も本意でないが殺しに行かなくてはいけない時もある。
特にダッチは人間の尊厳を大切にする。それはファミリーであれば女性、男性、亜人、変わりなく平等だ。
それが、踏みにじらるのであれば、徹底的に踏み躙る奴らと戦う、貴族だろうと、商人であろうと、ゴブリンといった怪物であるなら尚更、ダッチは許しはしないだろう。
「メンバーは?」
「今、レニーとショーンが集めてくれている最中だ」
「人数分のライフルとマグナム、ショットガンは用意しておかないとな、出立は?」
「明日だな」
アーサーはホゼアにそう言うと、深くウエスタンハットを被る。
エルフは弓の扱いが上手い、なので、弓の扱いに関して触った事がないエルフにはインディアンにルーツがあるチャールズに弓の扱いを教わっている。
そうやって、弓の扱いが上手くなったとなるエルフの中には報復に進んで参加してくれる者もいる。
「エルフ達も何人か連れて行くんだろう?」
「まあな、出来るだけ連れて行くさ、戦力になるんなら誰でもな」
アーサーはそう言うと、タバコに火をつけて煙を吐く。
銃の製造についても、キャンプにいるドワーフ達に部品の作り方や銃の構造について教えているためそう遠くない内に他の者達に渡せるほど出回る事になるだろう。
弾薬の作り方もアーサー達は逃亡生活をする中で身に付けた作成の仕方をキャンプにいる者達に広めている。
このキャンプにおいて、力無い女、子供であったとしても銃の引き金さえ引けばゴブリンをいとも容易く葬り去る事が出来る。
そんな日が来るのはそう遠くはないだろう。
「ここに居たかアーサー! 実はな、悪徳領主とやらが近々、金銭を積んだ馬車を走らせるそうなんだが! …取り込み中だったか?」
「いや、話を聞こうか」
そう言うと、テントに入って来たレニーにホゼアとアーサーの二人は互いに顔を見合わせ、アーサーは笑みを浮かべその場から立ち上がる。
こんな話が毎回、アーサーに舞い込んで来るが、彼は決してそれらを無下にするような事はしない。
いつだって彼らは貧しい民達の味方だ。
特にアーサーはダッチの右腕として仲間達から尊敬を得ている。
「ねぇ! アーサー! 頼みがあるんだけど!」
「あぁ、カディア、また後で話は聞くよ」
アーサーの周りにはこうやって自然と人が集まってくる。
何故なら彼には信頼があるからだ。仕事を必ずこなし、仲間を大切にする。
怪物に女が攫われた、村にモンスターが襲撃してきたと話を聞けば彼は単身で乗り込みいつも困っている人々を救ってくれる。
彼は真の無法者であり、偉大なガンマンであるとキャンプにいる者達はダッチも含めて誰でも知っているのだ。
ダッチもまた、そのカリスマ性から人々を惹きつけてはいるが、アーサーは別の形でこのギャングの中心に常に居る。
それが、キャンプにいる人々の安心にも繋がっていた。
そんなアーサーは、レニーと共にテントを出ると、キャンプから少し離れたところで先ほどの仕事の話を続けていた。
「それで、馬車を襲う場所なんだがな、ここから南西ほど先に行ったところに人目につかない山道がある」
「そこで待ち伏せするわけか」
「あぁ、そうなんだが…」
「なんだ問題か?」
レニーは顔を渋らせる。
いつもこのような表情をレニーが浮かべる時は大体何かしら問題が起きた時だ。この場合は障害がある時だ。
レニーはしばらくしてゆっくりと口を開き、アーサーにその事について語り始める。
「ゴブリンの巣が近くにいくつかあってな…」
「またゴブリンか…」
アーサーは忌々しそうにそう呟く。
良い仕事であったとしても、障害があればそうと言い切れない。しかも、ゴブリンは繁殖力が無駄に高い上に厄介だ。
より良い仕事をするために排除する必要がある。アーサーは深いため息を吐くとレニーにこう告げた。
「今の仕事をとりあえず片付けてからだな、それに関しては熟練者が必要だ」
「ってことは?」
「皆殺しには業者を雇うさ、ベテランのな」
アーサーはそう言うと、吸い終わったタバコを草むらに投げ捨てる。
ダッチ達が絡む今ある仕事の何割かには今のように必ずと言っていいほど、ゴブリンが絡んでくる。
それは、彼らにとっても忌々しい存在であり、解決したい問題だ。
アーサーはそう言った意味で、街の有名人であるギルドにいるゴブリンスレイヤーという狩人には一目置いている。
「ユートピアというにはまだ程遠いな…」
「あぁ」
アーサーの言葉に静かに同意するレニー。
話を終えた二人はウエスタンハットを深く被ると仲間達がいるキャンプへと戻ってゆく。
金を稼ぐには働かなければならない、それはどの場所、どの国でも共通の事実だ。
仲間や家族達が安心して暮らせる場所を守る為なら外道な事もやってのける。
それが、彼らの変わらないこの世界での無法者としての生き方であった。