RED DEAD GOBLIN REDEMPTION   作:パトラッシュS

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無法者達の報復

 

 

 

 トロールの洞窟での仕事が終わり、一時の平穏がキャンプに訪れていた時だった。

 

 ダッチ達のキャンプにある人物がやってきた。

 

 全身を鎧で覆った、街で有名な対ゴブリンの殺しを専門で行なっている男。

 

 ゴブリンスレイヤーである。

 

 彼は椅子に座り、葉巻を咥えているダッチと彼の右腕であるアーサーと卓を囲むと、話をし始める。

 

 

「では、はじめようか」

「うむ、ベテランのゴブリン殺しの専門家がいるのは心強い、…なぁ? アーサー」

「あぁ、そうだな」

 

 

 今回、彼らが街からゴブリンスレイヤーを呼んだのは、大規模なゴブリンの集落を発見したという報告を仲間から受けたからだ。

 

 ならばと、彼らの行動は早かった。

 

 ギルドに依頼を無理矢理発注させ、それを自ら受注し、街の冒険者であるゴブリンスレイヤーに依頼を受けて貰い殲滅に乗り出すことにしたのである。

 

 よって、そのゴブリン共を一人残らず殺しつくし、全員、吊るし首にしようと目論んでいた。

 

 

「…あなたがよく話に挙がるアーサー・モーガンか」

「ん…? あぁ、そうだ…、話に挙がる?」

「あなたの話はよく街で耳にする、白磁ながら凄腕の冒険者だとな」

 

 

 ゴブリンスレイヤーは真っ直ぐにアーサー・モーガンを見据えながら告げる。

 

 そんな中、アーサーはタバコを口に咥えると肩を竦め苦笑いを浮かべていた。

 

 

「俺はギャングだ。冒険者ってわけじゃない…。それなら凄腕のガンマンと言われた方がしっくりくるな」

「そうか」

「あぁ、そうだ」

 

 

 アーサーはそう言うと煙を口からゆっくりと吐き出す。

 

 ゴブリンスレイヤーは彼の話をよく耳にしていた。

 

 たびたびソロで活躍し、たった一人で危険なモンスターや怪物を撃ち殺しては住民達の信頼を高く得ているギャング団の副団長。

 

 その実力は明らかに銀等級以上だと言われているはずなのにも関わらず、ギャングの一員であることと素行の悪さからか白磁として扱われている人物だ。

 

 

「それで? 攫われた娘達だが、ここと、この場所で間違い無いのか? ジョン」

「あぁ、チャールズ達と偵察した感じだと間違い無いな、大量の奴らの足跡が襲撃された村から続いてやがった」

「だそうだ」

「…そうか」

 

 

 話を聞いていたゴブリンスレイヤーは冷静にジョン達の話を聞きながら、納得したように頷く。

 

 正直な話、この規模のゴブリン達はソロで狩るにしても骨が折れる。大規模なゴブリンの集落、しかも洞窟という狭い場所ではない。

 

 となれば、彼らの協力はゴブリンスレイヤーとしても非常にありがたかった、大規模な戦闘に優れ、頭が切れる精鋭の者達ばかりだ。

 

 団長であるダッチは口に咥えた葉巻を吸い終えると、椅子から立ち上がり、静かな声色でアーサーに指示を出す。

 

 

「メンバーを集めろ…、報復の時間だ」

「わかったよ、リーダー」

 

 

 テーブルに置かれたリボルバーを慣れた手つきで回し、ホルスターに仕舞うダッチの言葉にアーサーは苦笑いを浮かべ肩を竦める。

 

 このギャングのリーダーであるダッチが報復という言葉を使ったという事はそういう事なのだろう。

 

 ふざけた小鬼どもを皆殺しにするという明確な意思表明だ。

 

 

「ゴブリンスレイヤーはアーサーの背後に乗せてもらえ」

「わかった」

「さて、出立前にこいつをお前さんに渡しといてやろう」

「…これは…」

 

 

 そう言って、アーサーが片手で取り出し、手渡してくる拳銃を見て首を傾げるゴブリンスレイヤー。

 

 それは、アーサー達が使っているようなリボルバーではなく、筒が二つ付いた変わった拳銃だった。

 

 アーサーはゴブリンスレイヤーに手渡したその拳銃についてこう語り始める。

 

 

「ソードオフショットガンだ。射程は短いが近接では一撃で脳天を吹き飛ばせる。片手で扱えるしお前さんにはおあつらえ向きだろう?」

「なるほど…」

「単発か2発が限度だ。装填にも時間がかかるが、まぁ、慣れだな、これなら、ホブだろうがチャンピオンだろうが顔面吹き飛ばして仕舞いさ…」

 

 

 アーサーはそう言って、ソードオフショットガンを見つめるゴブリンスレイヤーの肩をポンポンと軽く叩く。

 

 チャンピオンやホブを一撃で屠れるとんでも兵器、引き金さえ引けば、奴らの命はそこで終わる。

 

 こんな武器を手渡されてゴブリンスレイヤーとしてもアーサーに対して何も返せるものは持ち合わせてはいない。

 

 後ろめたいと感じたゴブリンスレイヤーはアーサーにこう問いかける。

 

 

「良いのか? こんなものを貰って…」

「別に構わないさ、弾薬なら俺のテントにあるから好きなだけ持っていくといい。あんたは口数が少ないから気に入ったんだ」

「…そうか、助かる」

 

 

 アーサーの返答に頭を下げるゴブリンスレイヤー。

 

 どこか、自分と同じ匂いがする。

 

 アーサーの心情としてはそこが、なんとなく彼を気に入ったところであった。

 

 ギルドという組織に所属していながらもゴブリンを殺す事に執念を燃やしている口数少ない職人という点において非常に好感が持てる。

 

 だからこそ、アーサーは彼に拳銃を渡す事にした、背中を安心して任せられる人間には長生きして欲しいという事だろう。

 

 一方、アーサー達より先にテントから出たダッチは声を上げて、集落にいる者達に声を上げて宣言をし始める。

 

 

「…報復の時は来た! 男どもは武器を取れッ! ゴミ供をこの手でぶち殺しに行くぞ!!」

 

 

 ダッチがそう言うと、集落からはエルフを始め、ドワーフ、そして、ギャングの男達が彼の後を銃や武器を担いでやってくる。

 

 それを聞いたアーサーとゴブリンスレイヤーも顔を見合わせて、頷き合いテントを出ると馬の元へ駆けて背中に飛び乗る。

 

 そして、馬に跨がったダッチは自分の元に募った者達の顔を一望しながら、ゆっくりと語り始める。

 

 

「奴らは無害な住民を殺し、辱め、そして、尊厳を踏みにじったッ! 俺達に尽くしてくれた農家の者や住民達に対してだッ!」

「あぁ!」

「そうだ! 許せねぇ!」

 

 

 ダッチの言葉に同調するように周りの者達からも怒りの声が上がる。

 

 ここにいる者達は全て、ゴブリンに対して怒り、憎しみ、殺意を持っている者達である。

 

 奴らが何をしてきたのかを目の当たりにし、その行為を決して忘れない者達だ。

 

 ダッチも心もまた、それは、彼らと同じであった。

 

 

「奴らはわかっていないッ! 何故なら俺達を見下しているからだッ! ならばどうするか? その答えは一つしかないッ! わからせてやるしかないのだッ!」

 

 

 ダッチは力強くそう告げる。

 

 ギャングを贔屓にしている村をゴブリン達が壊滅させたという事はダッチに対する侮辱である。

 

 暖かく、自分達に感謝してくれた人々に対しての仕打ちをギャングの者達は決して忘れない。

 

 

「身体を引き裂き、嬲り、血祭りに上げッ! 奴らがしたよりもより徹底的に一人残らず残虐に殺すッ! それこそが報復だッ! さぁ行こう諸君! ゴミ供を処刑する時間だッ!」

「よし! ダッチに続けぇ!」

「ヒィィィィィハァァァァァァ!!」

 

 

 拳銃を上に向けて発砲し、ダッチの後に続いて馬を走らせるギャング団。

 

 アーサーとホゼアはダッチの横に控えるように走り、それに続くように相当な数の男達が馬を走らせて拳銃を天に向かって撃ち放つ。

 

 それは、ゴブリンの大群よりも何倍も恐ろしい光景であった。

 

 声を上げて、ゴブリンの集落を目指す一同は道中見かけたゴブリンも容赦なく撃ち殺していた。

 

 緑で動く者が見えたなら即発砲、蜂の巣にしていくのである。

 

 そうしているうちに、ゴブリンの集落がある場所からしばらく離れた場所にダッチは馬をゆっくり止める。

 

 

「アーサー、双眼鏡で人質がどこにいるか確認しろ」

「わかった」

「ビル、ホゼア、人質の近くにいるゴブリンはライフルで全部射殺しろ、殺し次第合図を出せ」

「あぁ、わかった、ビル行くぞ」

「おう」

 

 

 そう告げると、ビルとホゼアの二人はお供を数人連れてダッチの隊列から離れていく。

 

 しばらく双眼鏡を眺めていたアーサーは縛られている傷だらけの村娘や冒険者の女の姿を目で確認した。

 

 それは今もなお、ゴブリン達から嬲られている真っ最中である。

 

 涙を流しながら声を上げ、悲痛な表情を浮かべている彼女達の姿を見ていたアーサーは静かな声色でダッチにこう告げた。

 

 

「居た、右側に10人程捕まってるクソ野郎どもも同じくらいだな、14、15くらいか…」

「よし、わかった、右側だな、ビルとホゼアの発砲と共に乗り込むぞ」

 

 

 そう告げると、ダッチはゆっくりとゴブリン達の集落の側まで近寄り、馬から降りる。

 

 この先まで馬を連れていくと流石に奴らにバレてしまうことは明白だ。よって、徒歩で奴らの側まで静かに近づいて一気に乗り込む。

 

 先ほど、確認した右側から一気に乗り込み人質を奪還、そして、ゴブリン達は皆殺しだ。

 

 逃げるゴブリン達を殺す為、馬で追撃する者達もしっかりと控えさせている。

 

 ダッチ達はゴブリンの集落近くの森林に身を潜めてその時を待つ。

 

 そして、ズドンッ! という音と共にゴブリンの悲鳴が上がったその時だった。

 

 

「今だ! 皆殺しにするぞ!」

「くたばれ! クソ野郎!」

 

 

 ゴブリン達の集落に向かって、一斉に銃や武器を持った男達が雪崩れ込む。

 

 ゴブリン達は次々と顔面を撃ち抜かれ、顔が吹き飛び、顔が引き千切られ、ナイフで首を掻っ切られてゆく。

 

 

「GOB!? GOOOOORB!!」

 

 

 それはゴブリン達にとっては地獄絵図に近いものだった。

 

 ある者は頭をナイフで何度も抉られ、倒れているゴブリンにすら容赦なく弾丸を何発もぶち込まれる。

 

 死んだフリなど意味を成さない、その場に居るだけで殺される。

 

 隠れていようものなら火炎ビンを投げつけられて燃やし殺された。

 

 特にやばいのは帽子を被り、タバコを咥えている男とその男と背中合わせになっている全身甲冑の男だ。

 

 

「……………」

「GOOB!! GOOOOORBッ…!?」

 

 

 あのゴブリンチャンピオンが、なんと一瞬で脳みそを撒き散らしながら天を仰いで殺されてしまっている。

 

 しかも、顔の原型がわからないほどぐちゃぐちゃにされているのだから、これにはゴブリン達も戦慄した。

 

 わかっているのは、凄まじい爆音が絶え間なく鳴り響き、火薬の立ち込める匂いがこの集落に蔓延している事くらいだろう。

 

 爆音が鳴ったかと思えば、わけもわからず仲間が血を吹き出して死んでるというのは恐怖でしかない。

 

 

「GOOB!! GOORB!!」

「邪魔だ」

 

 

 戦意を失ったゴブリン達が武器を捨て降伏するように頭を下げてもギャング達は容赦なく頭に向かってそれをブチ込み、蹴り上げる。

 

 この集落にいるホブやチャンピオンに関してもそうだった。

 

 顔面が抉れるわ、体の半分が吹き飛ばされるわとロクな殺され方をされていない。

 

 唯一の魔法が使えるゴブリンシャーマンもいつのまにか脳天を撃ち抜かれ、死んでしまっていた。

 

 そして、残されたゴブリン達は当然、敗走しようとするが…。

 

 

「全員だ、全員殺せ」

「GOB!! GORB!?GOOOB」

 

 

 背後から、ギャング達から容赦なく銃弾を撃ち込まれ、皆殺しにされた。

 

 一方、ゴブリンスレイヤーはアーサーから貰ったショットガンを早速、実用でホブゴブリンに向かって使っていた。

 

 どのくらいの威力があるのかは、使ってみればわかる。

 

 ゴブリンスレイヤーに向かい武器を振り上げるホブゴブリンだが、それが、彼に当たることは無かった。

 

 

「ゴブリンは皆殺しだ」

「GOOOOB!!…GOB…?」

 

 

 ガウンッ! という凄まじい音と共に、武器を振りかぶっていたホブゴブリンの両手がゴブリンスレイヤーが持っていたソードオフショットガンにより、吹き飛ばされてしまったからである。

 

 

「GOOOB!GOOOOB!」

 

 

 悲鳴を上げて地面をのたうち回るホブゴブリン。

 

 しかし、ゴブリンスレイヤーはゆっくりとショットガンに弾を装填するとその銃口をホブゴブリンの顔面にガチャリと当てる。

 

 

「GOB…!?」

 

 

 次の瞬間、凄まじい音と共にゴブリンスレイヤーから銃口を突きつけられたホブゴブリンの頭が吹き飛び、身体から大量の血が撒き散った。

 

 ゴブリンスレイヤーは死体となったホブゴブリンを見つめながら、自分の手の中にあるソードオフショットガンを見つめる。

 

 

「これは使えるな」

 

 

 どんなにデカイ図体をしていようとも、これならば屠る事ができる。

 

 チャンピオンであろうとも、ホブであろうともこれさえあれば距離さえ詰めれば一撃だ。

 

 おまけに片手剣も難なく扱う事ができる、いい貰い物をしたとゴブリンスレイヤーは改めてそう思った。

 

 あらかた、集落にいたゴブリンは撃ち殺され、さまざまな場所で死体から切り取られた首が晒された。

 

 それでもなお、瀕死となったゴブリンの生き残りは何人か残っている。いや、残っているのではない、わざと残しているのだ。

 

 それはもちろん、他の集落や洞窟を寝ぐらにしているゴブリン達に警告するためである。

 

 

「このゴブリンチャンピオンの首と、この死に損ないのゴブリン供を引きずり回して始末した後に奴らの仲間の居る巣の前に吊るし首にして晒してやれ」

「了解だ、ダッチ」

「俺も付き合おう、こいつらの胸糞悪い顔を見てると吐き気がするがな」

 

 

 ダッチの指示に仕方ないといった具合に頷くホゼア。

 

 ホゼアと同行すると言い出したジョンは死に体のゴブリンに唾を吐きつけると馬に跨る。

 

 彼らが襲撃したゴブリンの集落には大量のゴブリンの死骸と硝煙の匂い、そして、悲惨さを物語る大量のゴブリン達の血痕があちらこちらに付着していた。

 

 そんな最中、集落をしばらく散策していたアーサーは物陰に隠れているゴブリンの子をたまたま見つける。

 

 

「…ん? やっぱり居たか」

 

 

 アーサーの姿に怯えるゴブリンの子供達。

 

 すると、アーサーは口に咥えていたタバコを使って火炎ビンに火をつけ始める。

 

 そして、アーサーは怯えるようにしているゴブリンの子供達に向かって、それを何も抵抗なく放り込んだ。

 

 火炎ビンを放り込まれた場所はたちまち炎上し、その場から逃げようとしたゴブリンの子供は容赦なくアーサーは撃ち殺した。

 

 

「ゴブリンの子供が居たぞ! まだ居るかもしれん、探して殺せ!」

 

 

 そして、アーサーは声高に周りの者達にゴブリンの子供を殺すように指示を送る。

 

 徹底した報復。

 

 ゴブリンはどんな者だろうと必ず殺す、子供であろうと、なんであろうとも。

 

 ギャングのリーダーであるダッチが言った事は絶対だ。

 

 アーサーは無残にものたうち回るゴブリンの子供を見ながらタバコの煙を吐き、一仕事終えたとばかりに一服する。

 

 煙が立ち込めるゴブリンの巨大な集落、それは、半日足らずでゴブリンスレイヤーという狩人と、ダッチ率いるギャング団の手によって壊滅させられたのである

 

 

 翌日、他の巣を住処にしているゴブリン達は残虐な殺し方をされ、首を吊るされている仲間達を見て戦慄する。

 

 そして、彼らは理解する。自分達よりも残忍で残虐な者達がいるという事を。

 

 バカな彼らでもここまでされてその警告の意味をわからないわけがなかった。

 

 そう、これを自分達の巣の前に晒している人間達は暗にこう告げているのだ。

 

 

 次はお前達の番だと。

 

 

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