ポケットモンスター 4人の冒険者   作:ココリンク

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ライトの家出!? オタチの群れ

-ファイアの家-

「そう、旅ねえ……。」

「ああ!いいだろ、かあちゃん!!」

あの後、真っ直ぐ家に帰ったファイアはヒトカゲを回復させて、お母さんに旅の事を伝えていた。

お母さんはわざと考えたような仕草をすると、

「うん、わかった!いってらっしゃい!!」

と意外にもあっさりとOKした。

「え!?いいの!!やったなヒトカゲ!!」

「カゲエ!!」

ファイアはヒトカゲとハイタッチをし、素直に喜んだ。

「そうだファイア。さっきからヒトカゲって読んでるけど、名前つけないの?」

「名前かあ。うーーーーーーーーん………」

ファイアは腕を組み、ヒトカゲを嘗めるように眺めて、うんと考えている。

初めてのポケモンだから、いい名前を与えてあげたいのだ。

これは結構、時間がかかりそうである。

 

 

 

 

 

-海岸-

小波の音とホーホーの鳴き声だけが聞こえ、海面には星と交信するヒトデマンの赤い光や深海のランターンの光がうつされる。

もう夜になっていた。

リーフは砂浜の岩に座り込み、フシギダネのモンスターボールを片手に持って、一人で悩み込んでいた。

「何してんだ。こんなとこで。」

声をした方を振り向くと、そこにはアクアがいた。

アクアは元気がないリーフが心配で、声を掛けずにはいられなかった。

「別に………なにも。」

「嘘言え、リーフがここに来るのはいっつも悩んでたり考え事してるときだろうが。」

「う………うん。」

リーフは何も言い返さず、俯いてしまった。

アクアはしばらく間を置いてから、遠慮がちにリーフの隣に座った。

「何が嫌なんだ。ポケモントレーナーの。」

「え…?………なんで?」

リーフは一瞬戸惑ったような仕草をしたあと、平然を装ってアクアに聞き返した。

「だってリーフ、爺さんがモンスターボールを出してから、ずっと落ち込んでただろ。」

「あ………うん。気付いてたんだね………。」

「まあな。」

「ふふ。やっぱり、アクアくんには隠せないか。」

リーフはアクアに悩みを当ててくれたお陰で少し気が楽になったのか、今までずっと暗かった表情が少しだけ笑顔に変わった。

「お………おぅ。」

アクアは、笑顔を見ると何も言えなくなった。

しかしそれは、不安や、心配ではなく安心からであった。

リーフはひと呼吸すると、モンスターボールを握り締め、立ち上がった。

「ありがとね、アクアくん。

そろそろ帰んないと、ママが心配する。」

「あ………あぁ。じゃあな。」

「うん。本当にありがとう。

それと………いや、何でもない。またね。」

「ああ。」

リーフはアクアに手を振って別れを告げると、モンスターボールを腰につけながら、家に向かって急いで走っていった。

アクアは手を振り返し、見えなくなるまで、ずっと目で追い続けていた。

そして、心の中である決意を燃やすのであった。

(これで大丈夫だったかな?

ファイアもライトも鈍感だから、俺が護ってやらないと。あいつの………リーフの、笑顔を。

そういえば、リーフ。最後、なんて言おうとしてたんだ?)

 

 

 

 

 

-アクアとライトの家-

あの後、アクアは暫く考え込んでいたが、答えは見つからず、埒が明かないため、家に帰っていた。

「ただいま。」

「アクア!どこほっつき歩いてたの!!」

アクアが玄関を開けると、姉のナナミが鬼の形相で出迎えた。

「仕方ないだろ………ちょっとリーフのようすが……………」

「人のせいにしない!!全く、ゼニガメの回復をライトに任せてポケモン持たずにどっか行っちゃって!もしもの事があったらどうするの!?」

「だから、リーフが……………」

「リーフリーフって、いっつもリーフちゃんを言い訳にして!

どうせまた悪い人と何かしてたんでしょ!」

「ちげぇーよ!!だからあのときも……………」

「リーフちゃんでしょ!もう何回も聞いたよ!

何なの?そのリーフちゃん作戦は!?」

「知らねぇよ!!」

アクアはまともに話を聞かないナナミにイライラして、つい反抗的な態度を取ってしまった。

そして、無言の靴を脱ぎ、2階にある自分の部屋に戻ろうとした。

「待って、アクア!ご飯は!?」

「いらねぇ!!」

アクアはそう言い捨てると、大きな音をたてながら階段を上り、部屋に入ると、イライラをぶつけるかのように扉をバタンと閉めた。

「全く。何怒ってるの…!」

ナナミはそう呟くとリビングに入り、一つの写真立てに目をやった。

(安心して、アクアもライトも大きくなったよ。

反抗するのも、成長している証拠だよね。

だから………いいよね。

お母さん、お父さん。)

 

翌日

日の出からまだ時間が経っていないのにライトは、パジャマから着替えていた。

まだナナミもアクアも眠っている。

そして何故か床には靴が裏返して置いてある。

ライトは机の中に隠していたお菓子を無造作にリュックの中に入れると、尻尾を揺らしライトの準備を待っているフワに小声で話し掛けた。

「みんなズルいよね、わたしだけ仲間外れにして。」

「ブイブイ。」

「フワはわたしの味方だよねー!」

「ブイ!」

ライトはフワと微笑み合うと、リュックを背負い、靴を持って、窓の前に立った。

「わたしもバトルしたいもん。

すぐに帰ってくればいいよね!」

「ブイ!」

ライトは窓を開けると、靴を履きそのまま外へ飛び出して行った。

フワもライトを追い掛けて楽しそうに窓から出る。

「よし、行こ!“1ばんどうろ”に!!」

「ブーイ!」

ライトとフワは窓を閉めずに、そのまま元気よく駆けて行ってしまった。

 

 

 

 

 

-リーフの家-

「はい、ご飯だよ。」

「プラァ!」

「マイマイ!」

リーフは両親のポケモンのプラスルとマイナンに朝ごはんをあげていた。

“プラスル”は母親のポケモンで“カホ”

“マイナン”は父親のポケモンで“ゲン”と、それぞれにニックネームがついている。

二匹は皿の中にポケモンフーズが入ると、顔をフードに埋めてガツガツと食べ始めた。

「そんなに急いで食べると詰まらせるよ。」

リーフはそう言い捨てると不安げな顔をして、物陰に隠れてこちらを見ていたフシギダネに歩み寄った。

フシギダネの前には既にポケモンフーズが入った皿があるが、手を付けた痕跡がない。

リーフが心配そうにフシギダネを見ると、また物陰に隠れてしまった。

(やっぱり食べない………。昨日も何も食べてないのに………。)

リーフの表情がまた暗くなってしまった。

そして、更に奥へと行ってしまうフシギダネをずっと見詰めることしかできなかった。

「プラプラ!」

「マイマイ!」

そんなリーフを尻目に、カホとゲンは皿をそのままにして、満足そうにリビングへ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―1ばんどうろ―

〜マサラとトキワをむすぶみち〜

 

「お兄ちゃーーーーん!!」

ショルダーベルトを握り締め、泣きべそをかきながら歩くライト。

「ブイ…。」

一緒に歩くフワも、あたりを見回し、怖がっている。

「もう………ポチエナなんか追い掛けるんじゃなかった…………。」

野生のポケモンとバトルしたくて、追い掛けていたら、知らぬ間に道に迷ってしまったらしい。

旅のトレーナーが迷わないよう、整備された道ではなく、所々に大きな崖がそびえたつ危険な場所だ。

自然の迷路はライト達を惑わせ、歩いても歩いても同じような景色が広がっている。

「お兄ちゃーーーん!!」

ライトは助けを求め叫び続けるが、周りには誰もいない。

声に驚いたポッポの群れが大きな音を立てて飛び去った。

「うわ……!」

ライトはその音にビックリして、尻込みをしてしまった。

再び歩きだすが、足取りが重い。

「ブイ…?」

フワはすぐに気付き、不安そうにライトの顔を見た。

ライトの瞳には、うっすらと涙の膜が張っている。

「どうしよう………。このまま帰れなかったら………。」

恐怖と不安がライトの小さな心を襲う。

ライトは、そのまま下を向いて泣いてしまった。

「ブイ……。」

心配したフワは、ライトの肩に乗り、涙をなめて拭き取ってくれた。

「フワ……。」

「ブゥイ。」

フワの心配する気持ちがライトに伝わった。

「うん。ライト、がんばる……。」

ライトは涙を流したままリュックからお菓子を取り出し、それを頬張るとまた歩き出した。

行き先もわからないまま、ただ真っ直ぐと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―マサラタウン―

 

-アクアとライトの家-

「ライト、起きろ朝だ…………

ん?」

アクアはライトを起こしに部屋に入った。

だが、すぐにライトがいない事に気付き、キッチンで朝食を作るナナミに聞いた。

「姉貴!ライト、もう起きたのか?」

「なんで?」

「いや、ライト、部屋にいないから。」

「そう、今日はまだ見てないけど。」

「ああ、そうか。

ライト、悪ふざけはやめてすぐ飯食いにくるんだぞ。」

アクアはライトがどこかに隠れてドッキリに掛けようとしていると思い、扉を閉めようとしたが、窓が開いていることに気付いた。

(アイツ………。)

アクアは窓の外にライトがいると思い、面倒くさそうに、部屋に入った。

(パジャマも脱ぎ捨ててあるし、リュックもねぇ………。アイツどんくらい待つつもりなんだよ。

フワもいねぇし、グルだな………アイツ。

ったく、これじゃあ誰のトレーナーかわかんねぇっての。)

そう思いながら窓の前に立ち、呆れがちに言った。

「ライト。出てこい。」

だが、窓の外から応答がない。

「(そりゃそうか、こんくらいでヒョイと出るくらいなら、わざわざリュックなんて用意しないな。)おい、ライト。今すぐこんな無駄なことやめて今すぐ……………」

そう言いながら窓の外を眺めたが、ライトどころか人っ子一人いない。

(いないか………。)

アクアは何もなかったかのように、無表情で窓を閉めた。

すると、一本の茶色い毛が窓の桟から舞い上がり、床に落ちた。

(これは、フワの毛?

ってなんだ、床汚れてんじゃねぇか!)

アクアは毛を拾うと、床が靴の形に土で汚れていることに気付いた。

(アイツ………やっぱり窓から……。

しかも靴って……そういえば、俺が夜中に隠れて飯喰ってたとき、フワがなんかしてたな。

あん時に密かに持ってきたに違いない……。

ったくアイツ。多分家の前でスタンバイして待ってんだろ。

しゃーない。掛かっといてやるか。)

アクアはそう思うと、部屋を出た、玄関に来た。

玄関はキッチンから見える位置にあるため、ナナミが気付いて聞いた。

「あれ?アクア、ライト居たの?」

「いや、多分どっかに隠れてるよ。

例えば、家の外とか。」

アクアは得意げに、扉を開けた。

しかし、そこにはライトはいなかった。

「あれ…?」

「いないじゃん。」

ことごとく予想が外れるアクアは動揺し、恥ずかしさで顔が赤くなった。

「た………例えばだよ……。例えば。は、はははは。」

「ふーーん。」

それを隠そうと、とりあえず笑うがナナミは冷たい視線を送った。

「ま、いいけど。はやく連れて来てよ。ご飯もうすぐできるから。」

「あ………ああ。分かってる。」

アクアは扉を閉め、ライトの部屋に戻るとポケモン図鑑を開いた。

(クソッ!アイツら………どこ行ったんだ…!)

この図鑑には、自分のポケモンとはぐれても合流できるよう、ポケモンの位置が表示される機能を持つ。

フワがライトと一緒にいると考えたアクアは、これでライトを探そうとしたのだ。

(な………なんでこんなとこに!?)

ポケモン図鑑が示す場所は1ばんどうろの外れの方だった。

たまに4人でマサラタウンの外を探検するときがあるが、一度も立ち入ったことのない場所だ。

(あのバカ………!!)

アクアは部屋を飛び出し、再び玄関に向かった。

「アクア、ライトは?」

「悪い姉貴、えー。

カノンが脱走したんだ。すぐ戻ってくる!!」

アクアはナナミを心配させないように、嘘をついてしまった。

因みに“カノン”は“ゼニガメ”のニックネームでアクアが夜中に付けた。

「えぇ。しっかりしてよね。」

「ああ、ちょっと目、離したすきにスーッとな。じゃあ、行ってくる!!」

アクアはそう言うと、全速力で1ばんどうろへ駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―1ばんどうろ―

 

口の中のお菓子がなくると、一個、また一個と、リュックの中からお菓子を取り出す。

ポケットの中はお菓子の袋で一杯である。

あれから結構歩き、ライトとフワは坂道を上がっていた。

「フワ!見てあれ!!」

「ブイ!!」

坂を登りきったライトが嬉しそうに前方を指さした。

見晴らしのよい景色の先に建物が見えたのであった。

「やったー!」

ライトは安心して笑顔になり、全速力で走った。

しかし、その笑顔も一瞬で凍り付いた。

道の先は崖であり、しっかりと確認していなかったライトは崖から足を踏み外してしまった。

「うわっ……!?」

「ブイ…!」

フワはリュックを咥えて引き上げようとするも、小さな体ではライトの体重を支えきれず、引きずり込まれてしまった。

「うわああああああ!!」

「ブイィィィィィ!!」

1ばんどうろに、ライトとフワの叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―マサラタウン―

 

-広場-

昨日男女二人がバトルをしていた所の近く。

そこのベンチで、買い物袋を横に置き、リーフが座っていた。

なかなかポケモンフーズを食べないフシギダネのために、口に合いそうな食材を買ってきていのだ。

「は〜ぁ……。」

リーフはため息をつくと、ぼんやりと目の前の風景を眺め、昨日のバトルを思い返していた。

(ファイアくんも、アクアくんも、今さっき知り合ったポケモンと、あんなに凄いバトルをした……。

特にファイアくん。バトルすら初めてなのに、ヒトカゲとのコンビネーションがばっちりだった……。

もしもあのとき、アクアくんがZワザを使わなかったら粘り勝ちしてたかもしれないな……。

……………“Zワザ”………か。)

リーフはポケットの中から腕輪を取り出した。

アクアと同じ、“Zリング”である。

だが、台座の所には、Zクリスタルがはめこまれていなかった。

リーフはZリングを上に掲げて、それを見詰めた。

(アクアくんは、初めて一緒にバトルしたゼニガメと使い、成功させた……。

私は……………“Zクリスタル”すら持ってない。

そもそもバトルは苦手……。

なのに私………なんで持ってんだろ……?)

リーフの表情がまた暗くなる。

そのとき、そんな事を全く気にしない男が、リーフの肩を叩いた。

「よっ!」

ファイアである。

「ファ………ファイアくん…!?」

リーフはファイアの方を振り向くと、驚いた表情をしながら立ち上がり、急いで背中に、Zリングを隠した。

「ん?リーフ、なんか今隠さなかったか?」

「い………いや。何にもなくしてないよ。」

リーフはそう言うと、ベンチの買い物袋を持ち、その中にZリングを落とした。

幸い、ファイアは気付いてないみたいだ。

「何だ、かんちがいか。

なあリーフ!バトルしようぜ!!」

「え……!?」

またファイアが唐突にバトルを挑み込むから、リーフは固まってしまった。

そんなリーフを気にもとめず、ファイアは勝手に話を進める。

「昨日、バトルできなかっただろ!

だからそのリベンジだ!!」

「ちょっと待ってよ…!ファイアくん…!

私……バトルは………。」

「なんだ、イヤなのか?」

「嫌じゃないけど………

知ってるでしょ。私、争い事は苦手で……………」

「苦手なら、得意になればいいじゃん!!」

「そう簡単に言わないでよ……!

私はファイアくんみたいに……………」

その先を言おうとしたら、大半がファイアの姿で埋まる視界の端に、うっすらと、アクアの姿が見えた。

遠くからでも急いでいることがよくわかる。

(アクアくん……?どうしたんだろう……。)

「どうした?俺みたいになんだ?」

いつもは相手がどんな状態でも勝手に話を進めるファイアだが、会話を途中で切り、違うところをみるリーフには、流石に対応を求めた。

リーフはアクアが視界から外れると、ファイアが不思議そうにこちらを見ているのに気付いた。

「ん………ああ、ごめん、ファイアくん。」

「なんだよ、リーフらしくねぇな。」

「えへへ、ごめんごめん。」

リーフはファイアに謝ると、買い物袋を持つ手をギュッと握り締め、ある決意をした。

「はー…………ふぅ……。

ファイアくん。私………やる!」

「やるって……………バトルか!」

「うん。」

「よっしゃーバトルだ!!燃えてきた!!」

ファイアはリーフの急な心変わりの理由も聞かずに、ただただはしゃいだ。

単純なファイアは、経緯がどうであれ、バトルができればそれでいいのだ。

「じゃ、リーフ来いよ!」

ファイアはリーフの手を握ると、南の方向へ走り出した。

「ちょっと、ファイアくん…!

どこ行くの?」

「バトルフィールドだよ!

俺専用のな!」

そう言うと、ファイアはニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

―1ばんどうろ―

 

「うわああああああ!!…………う…。」

「ブイイイイイイ!!……………ブュ……。」

崖から落下してしまったライトとフワ。

下には何故かきのみが山積みになっており、そこに頭から思い切りつっこんだ。

「うう…………ぷはぁ!」

「ブイィ!」

柔らかいきのみばかりだったので、落下の衝撃を減らすことができ、二人は無事だった。

二人はきのみの山から、顔を出した。

どちらも、きのみから出た果汁が、顔にかかっていた。

二人は互いを見詰め合い、笑った。

「ふっふふ………あははははは!!」

「ブ………ブイブイブイ!!」

「フワ、変な色!」

「ブイブイ!」

ツボに入ったのか、二人共笑い転げた。

手足をばたつかせるものだから、更に果汁が飛び散り、体中をピンクや紫に染めた。

「あはははは…………はは………は……………。」

急にライトは笑うことをやめると、瞳から涙を流した。

「ブイ…?」

心配したフワが寄り添った。

「フワ………。

わたし………帰りたい……………。

帰りたいよ…………………。」

今までの疲れと、希望を奪われた悔しさがライトの胸を苦しめた。

「ブイ…。」

フワもさっきのように涙をなめて励まそうとするが、自分自身の寂しい気持ちが抑えきれず、涙を流してしまった。

「オタッ…!?」

するとその時だ。

草むらから一匹のオタチが飛び出して来たのだった。

オタチは荒れたきのみの山を状態を見ると、

「オタアアアアアアアア!!」

と、鋭く声を上げた。

「なに…?」

ライトは体を起こし、涙目のまま、オタチを見詰めた。

「………!ブイ!!」

その瞬間、フワは何かに気付き、警戒の体勢を取った。

ライトも、それを見て身構えた。

次の瞬間、草むらの中からオタチの群れが、二人を囲むように現れた。

オタチ達は、きのみの惨状を見ると、四つん這いになった。

敵意を剥き出しにし、怒ってるようにも見える。

「え…………なになに?」

ライトは現状の把握ができておらず、戸惑っていた。

フワはそれを見るなり、ライトを護ろうと威嚇の体勢を取り、必死に吠える。

臆病な性質で知られるオタチは、そのほとんどが、フワに怯えて尻込みをしてしまった。

だが、自然界の中にも例外というものもある。

「オタ………オタ!!」

一匹のオタチが、怯むことなく、フワに対して【ひっかく】で襲い掛かってきた。

「ブ………ブイ………!?」

フワも【たいあたり】で応戦しようと走り出そうとしたが、果汁で足が滑ってしまい、転んでしまった。

「オタッ!!」

「ブーーイ……!」

そんなフワに、オタチの強烈な爪の一撃が炸裂し、フワは吹き飛ばされてしまった。

「あ……………フワ……!!」

宙を舞うフワをライトはなんとかキャッチすると、強く抱き締めた。

「フワ………。」

「ブ…………ブイ……………。」

無抵抗なまま、攻撃を受けてしまったために、フワにかかったダメージは大きかった。

息遣いが荒く、苦しそうであり、これ以上戦うのは無理に等しい。

「オタァァ!!」

怯える対象がいなくなったオタチの群れは、それに追い打ちを掛けるかのように、一斉にライトを飛び掛かった。

「う…………うわああああ!!」

ライトは咄嗟にフワを護るような形で身をかがめた。

(お願い…………助けて……………お兄ちゃん!!)

そう心の中で叫び、祈った。

すると次の瞬間だ。

「カノン!【こうそくスピン】!!」

「ゼニ………ガア!!」

その声と同時に、カノンがライトの頭上あたりまで、大きくジャンプし、甲羅の中に篭もると、高速回転してオタチの群れを薙ぎ払った。

「あ………ああ……………。」

ライトは、声をした方を見ると笑顔になった。

アクアが、“頼れるお兄ちゃん”が来てくれたからだ。

「ライト!!大丈夫か?」

「うん…!でも………フワが!!」

「そうか………。ちょっと待ってろ、今片付ける。」

そう言うアクアが睨む視線の先では、オタチ達が、立ち上がり攻撃をしてこようとする姿だった。

「カノン、いくぞ!」

「ゼニ!!」

アクアは昨日のように、Zリングを装着した左腕が、前になるように腕をクロスをさせた。

それに反応し、Zリングに嵌め込まれたノーマルZが光り出す。

「行け行け!お兄ちゃん!!」

「ああ。

純粋無垢な穢れなきマサラよ。我に力を与えたまえ!!」

ライトの声援を受け、アクアは気合十分にポーズを決めると、体中からオーラを発生し、カノンに移した。

「行くぞ!

【ウルトラダッシュアタック】!!」

「ゼニイッ!!」

オーラを受けたカノンはオタチの群れに向けて、超スピードで突進する。

「オタァァ…!!」

オタチ達は途中でビビり、足がすくんでしまったため、避けることができずに、全員纏めて、空高く打ち上げられた。

「はぁ…………はぁ…………。」

「ゼニ………ゼニ………。」

Zワザを使った代償で、アクアとカノンはかなり息が上がっていた。

だが、その顔は清々しい程の笑顔だった。

「ありがとう、カノン。」

「ゼニゼニ。」

そして、労いの言葉をかけながら、カノンをモンスターボールに戻した。

「お兄ちゃーーん!!」

危機を脱し、安心したライトはアクアに向かって駆け寄ってきた。

アクアは一度迎える姿勢を取るものの、果汁で汚れた姿を見ると、手で静止させた。

「お、おい。ちょっと待て! 

何してたんだおめぇら……………汚れてんじゃねぇか。」

「えへへ。」

呆れた声でアクアが聞くと、ライトはいたずらに笑った。

アクアはそれを見て安心したような笑みを見せるとフワをボールに戻した。

「おめぇもよく頑張ったな。ライトを護ってくれてありがとう。」

そして、ひと呼吸をすると、ライトを厳しい表情で見下ろし

「おめぇな!こんなとこで何してたんだよ!?」

ライトを怒鳴り付けた。

「え…………いや、それは………………」

「かろうじてフワが一緒だったから見つけられたものの、行方不明にでもなったらどうすんだよ!!」

「う…………うん。でもね……………」

「でもじゃねぇ!それになぁ……………」

その続きを言おうとした時、昨日の自分とナナミのやり取りを思い出した。

(そうか、姉貴も……………)

今のアクアの状態は昨日のナナミと似ている。

相手の言い訳を聴かないで、ただただ自分の主張を押し付ける。

でもそれは、本気で相手を心配してるから。

どうでもいい相手に、本気で怒りはしない。

アクアはそう思うのだった。

我に返ったアクアは、怒られて泣きそうになるライトに優しく微笑んだ。

「ライト、おめぇは、“今は”悪い子だ。

勝手に出て行って、俺に迷惑かけた。

さあ、ここで問題だ。

ライトが良い子に戻るため、

こう言うとき、なんて言うんだ?」

「え………?」

ライトはしかめっ面をして、必死に考えた。

悪い子のままだったら、また怒られてアクアに嫌われてしまうかもと思ったから。

「あ………!」

ライトは答えを見つけたのか、一瞬笑顔になった。

そして、アクアを真剣な顔で見ると

「お兄ちゃん…………

“ごめんなさい”!!」

と頭を下げた。

アクアは微笑みながら静かにライトに歩み寄ろうとした。

そのとき、近くの草むらから1匹のオオタチが現れた。

オオタチは、出現と同時に、ライトに襲いかかった。

頭を下げつづけているライトは未だ気づいていない。

「ライト、危ない!」

アクアは咄嗟にライトの前に立ち塞がり、ボールを二つ投げた。

「カノン!フワ!【たいあたり】!!」

「ゼ………ゼニ…!」

「ブイ…!」

ボールから出てきたカノンとフワは同時に【たいあたり】をし、オオタチの攻撃を防いだ。

だが、カノンはZワザの反動で、フワはオタチとのバトルで体力を消耗おり、十分に戦える状態じゃない。

それでも2匹はやる気満々だ。

ライトを護りたい気持ちが限界を超えさせていた。

「お兄ちゃん……!」

ようやくライトも気付き、アクアの後ろに隠れる。

「安心しろ、俺達がアイツをぜってぇ追っ払ってやる。」

アクアは、足にしがみついて震えるライトを見ながら勇ましい笑顔でそう言った。

(ちっ………感動的なシーンを台無しに水差しやがってよ!

なんでライトを狙うか分からんが、ライトは俺のもんだ、おめぇらに指一本触れさせねぇよ!!)

アクアは、手を握り締め、そう決意するのであった。

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