クタクタに疲れたあなたは、基地を彷徨うかのように歩いている。目指すは布団だ。体の疲れを癒す布団に救いを求めてしまう。
このところよく眠れていない。この前だって、夜間に鉄血の陣地を突破したり、正規軍の作戦支援のために陽動をしたりした。おかげで体内時計が狂ったようで、よく眠れなくなってしまったのだ。昼は昼で仕事があるから眠気との格闘で、どうしても仕事に身が入らない。
溜まるばかりの疲労で、ついこの前も倒れたばかりだ。また同じことを繰り返してしまう。これじゃ部下に示しがつかないと溜息をつき、ぼんやりと歩くあなたの袖が突如引っ張られ、引き寄せられた。
「いらっしゃい……指揮官……」
はにかみながらも、あなたの袖を両手でくいっとつまむように引っ張るM4A1は、メイド服に身を包んであなたをカフェに迎え入れようとしている。宿舎を改造したカフェだ。
「お疲れのようですから、少し休んでください」
M4A1の誘いを無下に断る訳にもいかず、あなたは誘われるままに扉をくぐる。そこには、待っていましたとばかりにAR小隊の面々がメイド服であなたを待っていた。
「お帰り、指揮官!」
M4 SOPMODⅡは持ち前の人懐っこさであなたの腕に組みつき、ソファーへとエスコートしてくれる。AR-15がそっと椅子を引いて、M16A1はさりげなくメニューを渡しつつ、いつも通り男前な笑顔を見せてくれる。
姉御肌のM16にメイド服というギャップがまた魅力的で、M4以上に恥ずかしそうなAR-15も清楚なメイド服がよく似合っている。SOPも見て欲しいとばかりにその場でくるりと回ってあなたにアピールする。M4は穏やかに、あなたに優しい笑みを見せてくれた。
「指揮官、だいぶクタクタじゃないか。また倒れる前にゆっくりして行きなよ。オススメは……AR-15、なんだったかな?」
「もう、忘れたの? カモミールティーよ。不眠症対策としてよく用いられて、心身をリラックスさせてくれるそうよ。今の指揮官には、それが1番ね」
じゃあ、それにしようか。折角自分のために選んでくれたのだから、きっとよく眠れるだろう。あなたはそんな優しさに今は甘えることにした。甘えることの許されない戦場に身を置いているのだ。今くらい、優しさに縋ってもバチは当たらないだろう。
ちょっと待っててね、そう言ってM4はキッチンへと姿を消す。暖かいカモミールティーを準備に行ったのだ。淹れたてを楽しませてくれるだろう。それが、少し楽しみだ。
「眠れないなら私が抱っこしてあげるのに。指揮官、我慢しなくていいんだよ?」
椅子の後ろからSOPがぎゅっと抱きついてくる。不思議とやましい気分にはならず、むしろ胸のあたりが暖かい感じがして、ポカポカとしてくる。
「こら、SOP……!」
AR-15が少し顔を赤くしてSOPを咎めようとするが、あなたはそれをそっと静止する。悪くない、そう思っていたら、今度はM16が肩を組んできた。いつも通りに豪快だ。姉御らしい。
「じゃあ指揮官、今度は私と晩酌でもどうだい? 酒飲んで嫌なことは吐き出しちまえば楽になるのさ。いつも頑張ってるんだ。仕事終わりくらい愚痴をこぼしてもいいんじゃないか?」
指揮官としてみんなを率いる立場なのに、部下に愚痴を吐いていいのだろうか。不安にさせてしまいそうでそれはなかなかできない。そんなことを言ったら、M16はやはり豪快に笑った。
「どこまで真面目なんだい。指揮官が頑張っているところなんてみんな知ってるんだ。むしろ心配なくらいさ」
「指揮官、休息だって大切な仕事です。私たちのためにも、少しは休んで、息を抜いてください。私たちは壊れても直せますが、指揮官はそうではないんです」
AR-15がずいっと顔を寄せてきて訴える。確かに、色々抱えすぎたかもしれない。頼ってもいいのか二の足を踏んでいたから、話し相手になってくれる人は沢山いたのに、頼れずにいたのだ。
そこへ、トレイを持ったM4が戻ってきた。テーブルにソーサーとカップを並べ、カモミールティーを注いでくれる。カップに落ちたカモミールティーの香りが広がり、あなたの鼻孔をくすぐる。硝煙やオイルの匂いではない。ハーブの良い香りが、心を落ち着けてくれる、そんな気がするほどだ。
「どうぞ、指揮官。熱いので、火傷にはお気をつけて」
M4は微笑みながらカモミールティーを勧める。いただきます、そう一言言い、火傷に気をつけて一口啜れば、甘い味わいが口いっぱいに広がる。
「この前、任務の合間に摘んできたジャーマンカモミールです。廃棄された図書館の蔵書に書いてあったので、お疲れの指揮官にと思って……」
「あの本だね。ローマンカモミールは苦味が強いから、ジャーマンカモミールが飲みやすいんだって!」
へへん、と得意げなSOPが少し可愛らしくも思える。わざわざ自分のためにここまでしてくれたという事実は、やはり嬉しいものだ。
「私としては眠酒と行きたかったけど、どうもそれは眠りが浅くなるらしくてね。それはまた今度だ」
M16は少し残念そうだ。今度晩酌に付き合おうかとあなたは思いつつ、だんだん眠気が迫ってくるのを感じる。暖かいカモミールティーが体を温め、少しずつ強張っていた体を弛緩させてくれている。
もう少し話をしていたいな。そんな残念な気持ちを堪えて、部屋に帰ろうとするが、立ち上がろうとするあなたをM4は制止して、その体をそっとソファーに横たえさせた。
頭をM4の膝が受け止めてくれる。視界いっぱいに、照れて赤くなりそうな顔のM4が見えた。規則正しく、穏やかに頭を撫でてくれる。聞こえてくる、どこか懐かしい子守唄。あなたを癒すためだけに、覚えたのだろう。
「今は、ゆっくり休んでください。私の、私たちの指揮官」
M16は満足そうに笑うと、SOPとAR-15を引き連れて片付けに取り掛かる。あなたはその背中を見送り、M4の優しい笑顔を眺めながら、久方ぶりに穏やかな眠りへと落ちて行った。
ちなみに次回はUMP姉妹に甘やかしてもらうお話を予定しております!