フレームアームズ・ガール外伝~その大きな手で私を抱いて~   作:コマネチ

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ep2『ヒカルと量産型スティレット』(中編)

「えー!マスターと遊園地ですか?!」

 

 翌日、いつもの集合する模型店でいつもの様にFAG達が会って思い思いの時間を過ごす。当然スティレットは遊園地に誘われたことを話した。

 

「そうよ。まぁFAGとデートなんて寂しい男のする事だから、私は断ったんだけどね。どうしてもってマスターが言うもんだから仕方なーく了解してあげたの。私って罪な女ね」

 

――絶対二つ返事で了解したよね――

 

――よくこんな風にいけしゃあしゃあと嘘をつけるわよ。しかもマスターをだしに使って――

 

 と冷めた態度で見抜くアント姉妹。割とスティレットは単純だったりする。

 

「そこ!勝手な事言わない!」

 

「で、どうするんですか?服装は?マスターとおでかけなんて憧れます!」

 

「そうね。店内のアゾンコーナーを見て回るつもりだから皆も来るかしら?」

 

 アゾンというのは専門ドールやドールの服飾等で知られるメーカーだ(※実在します)。規格があってるのでFAGにも当然着せることが出来る(※実際にコラボもしました)。

 

「私も見て回りますスティレット!アサルトリリィのアームズコレクション『トリグラフ』が欲しかったところです!あれがあれば『深夜の大きいお友達向け魔法少女ごっこ』がもっと盛り上がります!リリカルなんたらに出てきそうな武器セットですから!」

 

「アサルトリリィごっこじゃないんかい!!どっちにしても変な遊びね!」

 

 スティレットと轟雷の漫才。それも昨日と打って変わってどこか微笑ましい。お互いの仲が本当は良いのだというのがイノセンティア達にも解った。

 

「嬉しそうだね。スティレットさん」

 

「うん。あそこまでマスターが好きな人って初めて見たわ」

 

 生き生きとしたスティレットを興味深そうに見る。それにレーフが付け加える。

 

「そうね。あの子はマスターが本当に大好きだから。それは見て解るでしょう?」

 

「でもさ。こんな事を言うのもあれだけど……」

 

 それにライが付け加える。

 

「FAGが遊園地行くのにチケットって必要なの?私達は人間じゃないよ?」

 

「それだったら……問題ないね……」

 

 次の瞬間、レティシア達の前に一体のFAGが降りてくる。前回轟雷と戦った迅雷だ。

 

「ボクもマスターと一緒に映画を見に行った事があるけどね……。その時はあらかじめ申請して、ボクだけ精密検査して、なんらかの処置を施されて映画見たから……」

 

「それ、映画の盗撮されたら困るからの処置でしょうが……」

 

 私達精密機械なんだから、とレーフは呆れた。

 

――

 

 そうこうしてる内に日曜日がやってきた。

 

「遅いなー、あいつ先に俺を向かわせるとか何考えてんだ?」

 

 遊園地の入り口でスティレットを待つマスター。そしてそこから少し離れたしげみの中。

 

「スティレット来ませんねー。なにやってんだか」

 

「デートで先に彼氏を待たせておく演出でしょ?本当にあざといわねあいつー」

 

 スティレットのマスターの友人兼、轟雷のマスター(※冒頭で昼食を食べていた友人ね)の鞄から身を乗り出して轟雷とライは眺める。

 

「あんま身を乗り出さないでくれよ。君らのマスターから預かってる以上、万が一にも落とすわけにはいかないんだからさ」

 

「解ってますよ。今日はよろしくお願いします」

 

「轟雷さんのマスターがスティレットさんのマスターと友達だったとは知りませんでした」

 

 と、レティシアが鞄から顔を覗かせて言った。

 

「俺が様子見して皆に報告する役なんだ。面白いシーンがあったら撮影しないと」

 

「趣味が悪いですよマスター。スティレットにばれたら怖いどころじゃないですよ」

 

「お前らが言えた事かよー。見に行きたいって皆ゾロゾロ来てさ」

 

「友人のデートですよ!面白そうに決まってるじゃないですか!」

 

 轟雷の発言に全員がうんうんと頷く。鞄に入ってるのは轟雷、レティシア、イノセンティア、そしてアント姉妹の五人だ。

 

「あ、見て。来たよ」

 

 ライが言うと、スティレットがマスターに飛んでくるのが見えた。

 

「ごめんね。待った?」

 

 おろしたての青いワンピースを着たスティレットがバスケットを抱えて飛んできた。彼女の力では持ちきれないのか装備はサブアーム部と、飛ぶ為の背中のジェットエンジンだけはとりつけてある。

 

「ってお前が先に行けって言ったんでしょうが」

 

「もう。そこは『俺も今来たところ』って言いなさいよ」

 

「まぁお前が楽しそうで何より」

 

「フンだ。彼女役になってあげたんだから感謝なさい」

 

 そうこうしてる内に他の家族連れやカップルはどんどん園内に入ってる。開園時間はとっくに過ぎていた。

 

「とにかく入ろうぜ。高校生一枚です」

 

 入口の受付にフリーパスを手渡すマスター。それにスティレットもわくわくしながら続く。

 

「なんて言うべきかしら。あ、FAG一枚」

 

「あの、お客様?」

 

 受付の女性がマスターに話しかける。はいとマスターは応じた。

 

「人間で無いのでしたら、園内の入園は自由ですが。ですがもし壊れてしまっても自己責任となりますが……」

 

 所持品としての扱いだった。その扱いに一瞬でスティレットの笑顔が消える。

 

「あ!すいません大丈夫です!ホラ行くぞスティレット!」

 

 スティレットのコンディションを見るや少年はスティレットを掴むと一目散に園内に走っていく。

 

「しょ、しょっぱなからキツイわねスティレット……」

 

「やった!じゃあ私達はタダで遊園地遊べるねお姉ちゃん!」

 

「ネタで言ってんでしょうけど、空気読みなさいライ」

 

 轟雷達が聞いた事のないドスの聞いた声で答えるレーフ。ライは萎縮して「はい……」と力なく答えた。

 

「そんな顔すんなよ。とりあえず来たんだから遊ぼうぜ」

 

「FAGなんかと遊園地来たら皆に笑われちゃうわよ……」

 

 今ので不機嫌になるスティレット。

 

「何言ってんだよ。お前あんなに熱心にどこを回るか楽しみにしてたじゃないか。弁当まで作ってさ」

 

「……うん」

 

「じゃあ行くぞ。まずお前どこ行きたい?」

 

「あ、じゃあジェットコースター!」

 

 

「申し訳ございません。身長制限で135㎝以上は乗れません」

 

「」

 

「じゃ!じゃあコーヒーカップ!」

 

 

 今度は普通に乗れた。丸い座席にマスターは座り、スティレットは反対側にちょこんと座る。

 

「ほらマスター!せっかくだからハンドル回して回転加えましょう!」

 

「え?だってお前回したら」

 

「いいから!周りは皆やってるわよ!」

 

「よーし、しっかり捕まってろよ!せーの!」

 

 マスターがハンドルを回した瞬間。スティレットは遠心力ですっ飛んで行った。

 

「わー」

 

「スティレットォォ!!」

 

 その後……。

 

「キャー!マスター!怖い!」

 

 お化け屋敷でマスターにわざとらしくしがみついて

 

「ほらマスター!写真撮るからしっかり笑いなさい!」

 

「いいけどお前。顔が小さすぎるぞ」

 

 ペア用の顔出しパネルで記念写真を撮って

 

「うさぎと戯れるっていってもお前のサイズだと猛獣だよな」

 

「そう思うなら助けなさいよ!ぎゃー!よだれが!!」

 

 ふれあい動物コーナーで小動物と戯れて。

 

「マスター!見てみて!」

 

 メリーゴーランドの馬に跨りながら、スティレットは満面の笑みを、外側で見ていたマスターに見せつける。来てよかったと心から思う。しかし……。手を振ってるマスターの周りの通行人が、クスクス笑ってるのが見えた。

 

――あ……マスター……笑われてる?――

 

 マスターの周りの通行人達はマスターを見て笑ってる。FAGとデートみたいに遊園地に来てるのが変に思うのだろう。

 

――……そっか……やっぱり私……人形なんだ……――

 

 そう思うと虚しくなる。そしてマスターが笑われるのが悲しくなる。そう思うとスティレットはメリーゴーランドから飛び立ち。ふわふわと飛んで行った。

 

「あ・あれ?スティレット。どうしたよ」

 

 少し離れた木の上で、スティレットは体育座りで顔をうずめていた。目で追っていたマスターは難なく発見する。

 

「どうしたんだよ。いきなり飛んで行って」

 

 頭上のスティレットに話しかけるマスター。スティレットは涙を流していた。

 

「……マスター、笑われてた。私を連れていたから……皆から馬鹿にされていた」

 

「なんだ。そんな事かよ。気にすんなよ。どうせ皆すぐ忘れるさ。こっちは変な事してるわけじゃないんだ。会った事の無い奴にいちいち気にするなよ」

 

「見てる側は変だって思ってるわよ!……もう帰りましょう。これ以上マスターが笑われるなんて、私嫌よ」

 

「そんな事いったってお前、まだ弁当も食べてないんだぞ」

 

 マスターは空を見上げる。太陽は真上の昼だ。そして入道雲が見えた。

 

「……確かにそんなに時間は無いかもな」

 

 雲を見ながらマスターは呟く。とはいえ、せめて二人で弁当を食べる位はしたいと思うマスター。いい場所はないかと辺りを見回す。そこへある物が目につく。同時にある閃きが浮かぶ。

 

「そうだあれだ!行くぞスティレット!」

 

「え?何マスター!」

 

 戸惑うスティレットを尻目に走り出すマスター。スティレットは待ってよと追いかけた。

 

 

「そっか。観覧車なら」

 

 ゴンドラの中でスティレットは感心する声を上げた。今の二人は密室の中。誰も見て笑う奴はいない。

 

「ここでなら誰も見ていないだろ?ほら、食べるぞ」

 

 そう言って弁当を広げるマスター。そして座席に置くと床に胡坐をかいて座った。

 

「どうしたのよそんな所で座って」

 

「食べさせてくれるんだろう?ほら、あーん」

 

 真っ赤になるスティレット。FAGは飲食が出来ない。こうなるのは必然だった。

 

「な!何甘えてんのよ!バカじゃないの?!」

 

「……弁当の中、全部俺の好きな物ばかりじゃないか。折角二人でいるんだからさ」

 

「……しょうがないわね。ほら、あーんして」

 

 両手で身の丈以上のフォークを抱えるスティレット。最初は複雑そうな顔でマスターの口に弁当を運んでいたが、数度運ぶと笑顔に変わっていた。

 

 

 弁当も食べ終わり、座席に座るマスター、その肩に座るスティレット。そのまま景色を二人は眺める。

 

「こういう景色なのか。お前の飛んでる風景」

 

「もっと低いわよ。むしろ、これがマスターの目線なんだなって私は思うわ」

 

「……来て良かったって思ってるか?」

 

「……当たり前でしょ」

 

 そう言いながら、スティレットはマスターの頬に頭を、体重を預ける。しかし密室の距離間に、次第にもの凄く恥ずかしくなっていた。

 

――よ!よくよく考えたらマスターとめっちゃ近いじゃない!これからどうする?!どうすんのよ!観覧車と言ったらあれでしょ?!恋人同士がキスする場所ってなもんでしょ!でも私達恋人じゃないし!でもでも私は人ですらないわ!FAGよ!やっても無問題よね!無問題!――

 

 意を決してマスターの頬にキスしようとするスティレット。しかしその時だった。

 

 カッ!!!

 

 稲光が周囲を真っ白に染める。そして轟く轟音。雷だ。

 

「ッ!!」

 

 スティレットの体がビクッと強張る。と同時に土砂降りの雨が降ってきた。夕立だ。

 

「ぁ……ぅぁ……」

 

 スティレットが両耳を塞ぎ、恐怖に歪んだ表情となる。マスターは「思った以上に早い!」と自分の判断を呪った。そのまま力なく肩から落ちるスティレット。それをマスターは手で受け止めた。

 

「俺の判断ミスだ。ごめん!スティレット!」

 

 

「夕立が降ってきたな」

 

 観覧車の見える屋内で轟雷のマスターと轟雷達は休んでいた。

 

「私達の防水技術は上がってますけど。これだけの土砂降りは歩けませんねー」とレティシア。

 

「っ!待ってください!じゃあ今のスティレットは!」

 

 轟雷が慌てた声を上げた。マスターも同じ様な表情となる。

 

「何々?どうしたんですか?」

 

 イノセンティアが聞こうとすると、降りてきた観覧車からスティレットのマスターが飛び出してきた。スティレットを雨から守る為に、自分の胸に、シャツの中に入れて、そのまま一目散に入口に走っていくのが見えた。

 

「あ、あれ?帰っちゃうんですか?もう?」

 

「スティレット……そうか、この夕立で」

 

「あの……スティレットさんに何かあったんですか?」

 

「スティレットは、今のマスターに引き取られる前に……ちょっとありましてね。その時に雨と雷に過敏に反応する様になってしまったんです」

 

「なんですかそれ?」

 

「マスター……話していいですよね」

 

 そうだな。と頷くマスター。

 

「スティレットはですね……。第一世代型のFAGなんです」




中々話を分けると分配が難しいですね。もっとうまく分けないと。
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