転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
出発場所へ着いたテスタントは、変化魔法を唱えドラゴンへと姿を変えたが、
そのドラゴンは小さく、二人は困惑。
そんな中、メルは出発の挨拶をしてテスタントドラゴンへと飛び乗ったのだが……テスタントドラゴンはメルの体重に耐えきれずに潰れてしまったのであった。
(*ノ▽ノ)
もうすぐ、もうすぐ旅立ちますから!!(フラグ)
―――小鳥の鳴き声が聞こえるワルプ村北のはずれ。
喉かな風景にポツリと存在している悲しきトカゲの亡骸。
メルは黙祷を捧げた。
ああ、テスタントさん、貴方は結局よく分からないキャラのまま逝ってしまいましたね……。
『いやいや待て待て!まだ助かるはず!というか助かれ!』
しかし“テスタントドラゴン”は今にも命の灯火が消えそうだ。
可愛らしく囀ずる小鳥の餌になるのも時間の問題である。
『おいおいー!どうするよ!?ミルザも来てないし、俺はメル以外の奴に回復系魔法が使えないし』
ルベルアはそう言いながら一応周りを見渡すがやはりミルザは来ていない。
メルは無惨な姿となったトカ……、テスタントをマジマジと眺めながら言う。
「ルアさん、私がヒールするからルアさんの魔力を一緒に重ねられないかな?」
確かに俺の魔力量をメルの魔法に重ねて使えるなら、メルのヒールでも強力な効果を出せるかもしれないな。
『よし、やってみるか!』
メルの体と俺の魂は繋がっている。
なのでメルの魔力の流れを見つけて、そこに俺の魔力を重ねてやれば良いんだな。
でも魔法を使うときにメルが必要とする魔素はエレメントで俺はエレメントとマナの両方、
メルの体にマナが混じっても体は大丈夫なのか?
いや、考えても仕方ない。今は集中しなきゃ!
ルベルアが集中する中、詠唱を始めるメル――
「癒しの女神よ、我に奇跡の力を授けたまえ!」
あれ?前の時と詠唱の言葉違くねーか?
っとと、もっと集中しなくちゃ!
メルは渾身の魔力をトカゲに向ける、その手の平からは緑の光が滲み出している。
ルベルアの集中力も最高まで高められ、メルの体の中にある魔力の流れから本流を探す。
メルが叫んだ―――
「ヒーーーーーーール!!」
その瞬間ルベルアは、メルの魔力の流れのひとつが一気に太い光の線となるのを感じ取り、
ルベルアがそこに魔力を流し込むとメルの魔力の流れが爆発的に大きくなった。
辺り一面が緑の閃光に包まれる。
―――――――!
眩しい程の光が消えた後、皆の目に映り込んだのはペタンと座り込んだテスタント、傷はどこにも見当たらない。
どうやら、トカゲの墓を作る必要は無くなったようだ。
周りで見ていた村人も「腰痛が取れたー!」とか「ずっと痛かった肩が治った!」等と騒いでいる。
『メル、大成功だな!』
俺の言葉にメルの返事が無い。
『メル!?』
ルベルアが見ると、メルが頭を押さえて踞っていた。
テスタントも未だ動けないでいるが、今のルベルアにはそれを気にする余裕が無い。
『メル!?どうした!大丈夫かっ!!』
俺は焦った!とにかく焦った!
「う、うん……。ルアさん……頭が、痛くて……」
メルの意識はあるようだが、辛そうに両手で頭を押さえている。
焦るルベルアが辛そうなメルへと両手をかざす。
効果が有るかは分からないが一か八か、
『
ルベルアは祈るように魔法を唱えた!
―――。
「あ……、治ってきたかも」
『おお!心配したぞ!おあっ?』
立ち上がるメルを見ていたルベルアは、メルの眼がいつもと違う事に気付く。
メルの眼がオッドアイになっていたのだ。
元々、両眼とも綺麗な青だったメルの眼が、右眼だけ淡い紫色に変わっている。
メルの魔力の流れにルベルアが大量の魔力を直接入れたのが原因なのかもしれない。
『メル!お前の眼、右眼だけ淡い紫色になってるんだが体の調子は大丈夫か?眼は見えてるか?』
心配し、続けざまにメルへ質問を投げ掛けるルベルア。
「うん、ありがとう。もう大丈夫みたい。右眼だけ?すごい、オッドアイじゃん!青い眼も好きだったんだけど、とにかく見えてるし眼は大丈夫みたい」
メルはそう言いながら“パンパンッ”と膝元に付いた埃と草を払った。
見た感じフラフラしてないし、もう大丈夫かな。とりあえず眼はしばらく様子を見るとするか。
さて、テスタントは?
思い出したようにルベルアがテスタントの方を見ると、テスタントは村人達に介抱されていた。
「テスタント殿、大丈夫ですかの!?」
村長のジジイがテスタントの耳元で大声を出している。
あんな耳元で……なんて迷惑極まりないジジイだ。
「は、はい……。一体私に何が起きたのか、こんな事は今まで無かったのですが……。詠唱を終えてからの記憶が無いので、すみませんが何が起こったのか説明して頂けますか?」
そう言いながらテスタントは立ち上がったが、少しふらついている。
「ふぅむ!そうじゃのう。テスタント殿に離れてろと言われたでな、ワシは500メートル程離れていたでの。
だから良く見えていた訳ではないのじゃが、光に包まれてからお主は消えてしまったんじゃ。
その後、何故かメルがお辞儀をして地面に座ったんじゃ」
村長のジジイは自分から見えた光景をありのまま話す。
が、先程の出来事が見えても聞こえてもいなかった様でテスタントを理解させるのは無理な内容であった。
村長は何故、500メートルも離れたのかは誰にも分からない。
「光ったということは魔法は……。いや、魔法自体を………ううむ……しかし……」
テスタントは話を聞きながらブツブツ言っている。
村長のジジイは話を続けた――。
「その後に突然メルが慌てはじめてのぅ、なにやらブツブツ言った後に地面に向かって魔法を使ったんじゃ。
それは大きい範囲のヒールじゃった、するとお主がまた出てきたという事じゃ!
それ以外の事はワシには分からんよ」
村長のジジイは身振り手振りを混ぜながら自らが分かる全ての事を話した。
そこにメルが加わり話を付け足す。
「えーとね、テスタントさんはすっごく小さなドラゴンになっちゃったんです。それに乗るのかと思って跨がったら潰れちゃったんです、ごめんなさい」
プギィーー!とか言ってたな、よく復活したもんだ。
テスタントはメルの言葉を聞き、またブツブツと考え始める。
「なるほど、やはりドラゴフォームに失敗したようですね。私に残った最後の記憶だと、詠唱の時に一気に私と周囲の魔力が枯渇したようで、
その原因は不明ですが魔法発動の瞬間の魔力切れでドラゴンになりきれず、小さな姿になってしまったと考えられます。
しかし何故……。ともかくドラゴフォームが使えない状態で浮遊城へ向かうには……」
難しい顔をしたまま、悩むテスタント。
あれ?詠唱の瞬間の魔力切れ…………?そう言えば、何か心当たりがあるような。
あっ!!緊張して超大量に空気を吸ったような……。俺が空気を吸うと……。
途端に挙動不審になるルベルア。
そんなルベルアに斜め後ろから痛い程の視線を送る者が居た。
「ルアさん、急に慌て出したみたいだけどどうしたの?
テスタントさんが魔法失敗したのって、あの瞬間にテスタントさんと辺り一面の魔力が無くなったからなんだってさ。
ルアさん……、何か知ってるんじゃ?」
オッドアイへと進化した7歳女児は小声だというのに迫力も以前の1.2
メルに問い詰められたルベルアは笑って誤魔化す。
『いや~、ハハハ。わざとじゃ無かったんだよ』
何があったかは言わずに、少しの間この場所から離れておくとしよう…。
ルベルアは離れた場所へ飛んでいった――。
その後ろ姿を確認するように眼で追うメル。
ルベルアが遠くへ行ったのを確認したメルは、混乱しているテスタントに声をかける。
「えっと、テスタントさん!もう一度魔法を使ってみて貰えませんか?
きっと次は大丈夫だと思うんです。私、先程ヒールを使う際に魔力を使いすぎちゃって。
その時に余分に溢れた魔力はまだ周りにあると思うので」
メルにはもう、テスタントの失敗の理由が分かっていた。
「むう、メルや!その眼はどうしたんじゃ!?」
「わっ!本当だ!メル、その眼はどうしたんだい!?ちゃんと見えてるのかい?痛くないかい?」
「あらぁ!メルちゃんその眼、とっても素敵じゃない!凄く綺麗!」
村長のジジイとモルドーとエリスがぐいぐいとメルに近寄り、話に横槍を入れる。
「うん!見えてるし、痛くないし大丈夫だよ!皆、テスタントさんがまた魔法を唱えるから離れて!」
そろそろ出発したいメルは、半ば強引に三人を押し返す。
余り時間をかけたらルアさんが戻って来るかもしれないし。
そうなったら、またテスタントさんがピクピクする事になるかもしれない、それだけは避けなきゃ!
テスタントは少し不安気な顔をしながらも、メルの提案に頷いた。
「やってみましょう、村人も離れてくれたようですし。ただ、メルさんには言っておきましょう。
今から使う魔法は私の体をドラゴンに変化させる魔法なのですが、通常だと翼を合わせ約十メートル程の大きさになります」
テスタントの言葉を申し訳ない気持ちで聞くメル。
あ、そうですよね。
ちょっとおかしいなぁとは思ったんだけど……。
さっきは踏み潰してごめんね、テスタントさん。
「はい!分かりました!」
メルは返事をしながら大きく頷いた。
テスタントは自分の魔力を確認し、魔法を詠唱した。
「では。行きます。ドラゴフォーム!!」
カッ―――!!閃光が辺りを包む。
バサッ!!――空を叩く轟音と共に砂埃と草が舞い、周囲からの視界を塞いだ。
――やがて視界が開けると大きな白い竜がそこに居た。
「成功です」
謎の声が響く。その声は特徴的だがテスタントより低い声、
そう“テスタントドラゴン”の声だ。
「わぁ!凄い!!竜なんて初めて見ました!!」
私は本当に感動した、自分の目の前に竜が居るのだから!
元の世界では架空の存在であり、それでいて数多の物語や映像に使われるあの竜が!
いや、実際は小さいドラゴンをさっき見たけど、あのトカゲはノーカンだし!
大きなドラゴンはもう、本当にすごいっ!!
メルは眼をキラキラさせて興奮している。
メルだけではなく、村人達も大歓声を上げて騒いでいる。
――すると、テスタントドラゴンの成功に気付き、ルベルアが戻ってきた。
ルベルアも一目見るなり大興奮、
『ふぅおおおおおおお!スゲェェェェェ!カッケェェェ!竜だぞ!これが竜だぞメル!!!すげーよ!練習すれば俺もなれるのかな!?ハァ、ハァ!ムハー!』
俺はこの世界に転生できて良かった!
心からそう思えるほど感動している!!
「ちょちょ、ちょっとルアさん、あんまりハァハァしないでね!気持ちは分かるけど、ね!?」
メルは小声で興奮するルベルアを制止した。
メルの声に、ルベルアは“ハッ”となる。
確かに、またテスタントがドラゴンから小鳥の餌に降格するのはマズイ!気を付けなければ。
――バサッ!!
テスタントが出発を促すかのように翼を羽ばたかせる。
その羽ばたきでまたも砂埃が舞う。
いい加減しろよコイツ!何回うちの可愛いメルを砂まみれにすれば気が済むんだ!トカゲにシテヤロウカ!!
いや、落ち着け俺!ドラゴンのカッコ良さに免じて許してやろう!
「行きましょう、さぁ乗って」
テスタントドラゴンはメルが乗りやすいように気遣い、片翼を地面につくまで下ろした。
「はいっ!失礼します!」
ダンッ!―――スタッ!
返事と共に勢いよく地面を蹴り、テスタントドラゴンの背中に飛び乗ったメル。
テスタントドラゴンの気遣いは無駄に終わってしまった。
すまん!うちの子、そういう所あるから!!
「フフ、元気が良いですね。ではしっかりとお掴まり下さい!」
赤と黒の瞳でメルが乗ったのを確認し、羽ばたき始めるテスタントドラゴン。
バサッ!!バサッ!!
テスタントドラゴンが浮き上がッていく――
「皆ぁーー!行ってきまーーす!!」
メルは集まっていた村人達に大きく手を振る。
それを返すように村長のジジイ、モルドー、エリス、そして村の皆が盛大に拍手をして手を振った!
段々と皆が小さくなっていく。
おや、あそこに居るのはバースじゃないか!
見送りに来ていたのか、一途ないい子だ。
と、弟も居るなぁ。むむむ…。
『
………!
やっぱり鼻に指突っ込んでる!!
雰囲気台無しだよ全く!!
色々あったがこうしてメルとルベルアは天使族の住む場所“浮遊城”へと向かい飛び立ったのであった――
転ツイpoint12
【ルベルアの魔力構造】
実態の無いシャドウの様な見た目の悪魔 ルベルア。
大気中のエレメントやマナを吸気により根刮ぎ吸収することができる。
現時点では、吸収できる魔力の許容限界に達したことはない。
その魔力吸収率は尋常ではない程高く、ルベルアの暮らしている間、ワルプ村周辺からモンスターの自然発生が無くなったほどである。
勿論、メル以外でその事実を知る者は誰もいない。