転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
村長達との話を終えて一家団欒の昼食を始めたメル達。
その団欒を抜け出し、村を飛んでいたルベルアは村長のジジイの家に入っていくマドカを見つけた。
気になったルベルアはマドカの後をついていったのだが、そこで予想外の事態が起きたのであった。
◇
――日本、北海道のとある病院――
田舎にしては大きな規模のその病院に意識不明の重体患者が運ばれた。
それ自体は悲しい話ではあるが、珍しい話では無い。
少し変わっていたのは、警察の調べでも彼がどうやってその状態になったのか分からない事と、彼は極希な“身寄りの無い人“だったという事だ。
病院理事長も、身寄りの無い事実が纏められた書類と彼の容態を見た時に、お金の事は諦めた。が、せめて最後の刻まで見届けようという精神で治療が続けらていたのだ。
それは彼を預かってから一ヶ月と二週間が経った日だった。
◇
「先生来てください!
静かな5F病棟にそんな声が響いた―――
――――天井が見える…。
木造の優しい造り……ではない。
白のボード天井に白い蛍光灯が二本並んでいる。
俺は周りを見渡した。……痛っ、体が痛い。
まるで自分の体では無いように固まっている。
「今こちらに先生が向かってるので、まだ寝ていてくださいね。ずっと寝たきりだったから……体、硬くなってますから。」
清楚な雰囲気の女性看護師さんが優しく語りかけてくる。
なんて優しい口調、彼女は“天使族”よりずっと天使だ…。
……!!天……使族………?メルは……?……メル!!
俺の脳裏に、つい先程までの事が鮮明に甦る。
しかし、ここはどう見ても元の世界、俺は微かに動く手を持ち上げ、自分が“影のような悪魔”じゃないことを確認した。
俺は長い夢でも見ていたのか?
そう思った時、この世界で最後に見た光景を思い出す。
「あの、看護婦さん……、俺と一緒に病院に運ばれた女の人は助かったんですか?」
俺はなんとか掠れた声を絞り出し、看護師さんに尋ねた。
それを聞き看護師さんが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「えっと、深澤さんが運ばれた時、一緒に運ばれた人は居ないですよ?」
居ない……?
あぁ、そう言えば二人一緒に倒れていたとしても同じ病院に運ばれるとは限らないんだっけか。
「そう……ですか。違う病院かもしれませんが、一緒に倒れていた女の人が居るはずなんですけど、助かったかどうか分かりませんか?」
俺は少し質問を変えて尋ね直す。
看護婦さんは変わらず不思議そうな顔をしている。
そして教えてくれた、
「多分、まだ少し混乱していると思うのですが、深澤さんは一人で倒れていたんですよ。頭に怪我をして倒れていたので、警察が色々調べたみたいですけど、今も詳しいことは分かっていない様ですね」
そんな……そんなはずは……!
シャッ!――
ベッドの周りを仕切っていた薄いピンク色のカーテンが勢いよく開けられ、そこから医者が顔を覗かせるとポッカリと口を開けた。
「驚いた…。深澤さん、お帰りなさい!あなたが目を覚ましてくれたのは奇跡ですよ!」
医者は興奮気味にそう言うと俺の手をギュッと握りしめた。
思い返せば俺の人生は不幸と奇跡から始まったんだよな。
俺は悟った、これが自分に起きた第三の転機なのだと。
第三の転機は酷く曖昧で、それでいて確かに感じさせた。
もう可愛い相棒と一緒にはなれないのだと……。
それからの俺はリハビリの毎日。
祖父母が残してくれた遺産と、相手も居ないのに貯めておいた結婚資金により、お金の心配が無かったのは幸いだった。
一日の入院費二千円上乗せでインターネット環境付きの一人部屋にしてもらった俺の元には、たまに建設業の仕事仲間が見舞いに来て面白い話をして行くくらいで、それ以外の時間は備え付けのパソコンで暇を潰した。
リハビリ、ネット、リハビリ、ネット。そんな暮らしだ。
二ヶ月が過ぎ、毎日のリハビリの甲斐もあり、体も普通に動くようになった頃、
ネットの中で俺は一つの気になるモノを見つけてしまう。
自分に起こった事件の手掛かりが何か無いかと、この街の情報を色々探していた時だ。
小さな街なので必然と同じような事ばかり書かれた掲示板、
そこには行方不明の人の情報を交換するための欄があった。
そこに並ぶ数名の名前、そのひとつ。
俺は全身の毛が逆立つような感覚を覚える。
情報は警察から出されたもので、時期は一ヶ月と少し前。
俺が倒れていた時期と重なる!
俺は“自分の街”の名前と
検索結果で出てきたのは
5年前に起きた殺人未遂事件の犯人の名前だ。
浮遊城でのメルの言葉を思い出す。
“私のお父さんは殺人未遂で――”
俺の足から背中までが一気に鳥肌を立てる。
メル……。あの時、ビルに居た女の子がメルなんだ!
愚か、あまりにも愚かすぎる!
俺は何故 今までそれを考えもしなかったんだ!
あの日同じタイミングで転生した俺達、
同時に死んだ人と考えるならあの娘しかいないじゃないか。
しかし彼女はこの世界の記録では死んでは居ない、となると神隠しというやつなのか――
あれはやはり夢じゃ無かった…。
気付くと俺の両目からはボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
“
街の名前を入れ忘れた検索に出てきたのは、知りもしない地下アイドルのブログと、
何やってんだ俺は、今調べたいのはそんなことじゃない!
街の名前を入れなきゃ……。ん?
瑠は一文字だけでは意味を持たぬ文字……。
一文字だけでは意味を持たぬ……。
俺の心に何かが引っ掛かる。
そこで俺に衝撃が走った。
ラピスラズリ!!
何かに駆り立てられた俺は、軋む体で椅子から立ち上がり、すぐに病院からの外出許可を貰うべくナースステーションへと向かった。
それを手に入れたからと言ってどうなる訳でもないだろう。
けど……俺が今、何よりも欲しいのはラピスラズリだ!
俺の個室からは直線通路から一度左へ曲がらないとナースステーションには行けない。
焦る必要など無いのだが、俺の足はこの二ヶ月の間で一番速く動いている。
左へ曲がり、あとは真っ直ぐ行くだけ!!
―――!!そこで俺は足を止めた……。
角を曲がると目の前に小さな少年が立っていたからだ。
「なんで、なんで君がいるんだ……」
立ち止まった俺は見てはいけないものを見たかのように呟いた。
その少年は鼻に指を入れ、こちらをジッと見ていた。
「僕には中身が無いの。本当はあったはずなんだけど。おじさん、僕に中身を頂戴……」
少年は表情を変えることもなく、まるで感情が無いかのように淡々と言った。
あの世界を知る前の俺だったなら、幽霊の類いかもしれないと思い必殺の“
いや、この軋む体じゃそれは無理、ローキックが放てれば御の字といったところか。
そんな事、どうでもいいよな……俺は少年を知っているのだから。
この少年はあの世界が夢じゃ無かったことを、今ここで証明している。
「俺はあの世界で、俺がメルを一人にはさせないって約束したんだ。だから俺に渡せるものなら渡す。その代わり、あの日のあの場所へ戻して欲しい」
戻ってきたこの世界に何の未練も感じない訳ではない。
仲の良い奴も居るし、本やゲーム、言い出したらキリがない程好きなことも多い。
けど俺はあっちの世界で大切なものを見つけてしまったから、守りたい約束があるから、その為に出来ることをしたいんだ!
「あの日にはもう戻れないよ?」
相変わらず表情こそ変えないが“当たり前だろ?”といった様子で言う少年。
「それでも、俺は行かなきゃならないんだ!」
俺はすがるような気持ちを少年にぶつけた。
「なら、僕が
少年は言った。善意も悪意も感じさせない声で言った。
「そうしたら俺はこの世界での記憶を無くしちゃうのか?」
祖父母に貰った沢山の幸せ。それを捨てるのはここまで大切に育ててくれた大好きな祖父母に対して酷い仕打ちではなかろうか……。
俺の心に祖父母への罪悪感が生まれる。
「違うよ。
少年は俺の心の奥まで見透かすように言葉を発している。
俺は少年の眼を見て心を決めた。
「…………。分かった、それで良い」
……。この世界で今まで助けてくれた皆、ごめん!そしてありがとう、新しい俺の事も宜しく頼む……!
少年が服に付いた大きなポケットから青く光る石を取り出し――
その石を両手で持ち上げた、あの時のように――。
栓の抜かれた彼の鼻に見えない何かが吸い込まれていく。
やがて少年はグングンと大きくなり、鏡でも見ているかのように俺と同じ姿になり
「じゃあな、“悪魔さん”。向こうの奴等は俺のことを忘れると思うけど、俺はもともと居ない存在だったから気にしないでいいよ」
“さっきまで少年だった俺”が俺のような口調でそう言い ニカッ と笑う。
ああ、銀歯の場所まで同じだなぁ―――
俺も意識が遠くなる中 ポツリと言った。
「俺を宜しくな。
俺は額に新しい傷のついた見慣れた顔に別れを告げる―――
光が……眩しい………
待ってろよ……メル!
そうして俺は“第三の転機”を自分で選び光の中へ消えていった――。
転ツイpoint21
この部で一章は終わりとなります。
ここまで読んで頂き本当に感謝しかありません。
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これからも精一杯楽しんでもらえる様に頑張りますので、
是非とも宜しくお願い致します(๑^ ^๑)
ー二章へ続くー