転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
エンドルゼアの時間も進んでいた。
ルベルアが居ない世界で、メルはどう過ごしていたのであろう。
(๑•᎑•๑)
ルアさんの居ない間、メルはどう成長しましたかね。
グレてなきゃ良いんですけどw
#22 セカイの時差、邂逅シ。
覇王歴1391年―――エンドルゼア北東部
そこには短い草の生い茂る草原と、所々に見える岩肌に囲まれ、簡素な木造の建物がポツポツと並ぶ小さな村“ハクヌカ”がある。
とても小さな規模であるその村の周りで白いドラゴンに乗った者達が一本角を生やした大型の鳥型モンスター、ホーンバードと戦闘していた。
「そっちに行った!素早いからよく狙え!」
白黒の長い髪をなびかせスラリとした女戦士は、逃げ惑うホーンバードを目で追いながら後ろに続く味方に指示を出す。
「任せてっ、リエル!右!」
ドラゴンに乗りホーンバードと戦っている者の中で唯一雰囲気の異なる少女が居る。
その少女は巧みに自分の乗るドラゴンに指示を出しホーンバードを追い詰めて行く。
「たあっ!」――ビュンッ!
「ギィェェエエ――――!」
少女が剣を一振りするとホーンバードが断末魔の叫びをあげて地上に落ちていった。
「良くやった!今ので全てだ、ハクヌカに戻るぞ!」
スラリとした女戦士はそう言うと、自らのドラゴンを翻し地上に見えている村へと向かい、他の四体のドラゴンとそれに跨がる男女の戦士達もそれに続いた。
モンスターの驚異から救われたハクヌカの村人達は歓声で戦士達を迎える。
「天使族の皆様!今回も本当にありがとうございました!」
集まる村人たちの中から一人歩みでたハクヌカの村長はお礼を述べ、戦士達に深々と頭を下げた。
「礼には及ばんさ、我々も食料や生活用品を沢山頂いているからな。今日狩ればまた数日は村の戦士達だけでも大丈夫だろ」
スラリとした女戦士は歯切れの良い言葉で返す。
「そう言って頂きありがとうございます。さぁさ、簡易なものですが食事を用意しましたので食べていってくだされや!」
そう言うと村長は用意してあった食事を村人達に運ばせた。
外に並べられたテーブルには、パンや肉。この辺りで取れる食用植物が彩りよく入れられたシチューなどの食べやすい物が並べられてゆく。
「みんな、ハクヌカ村からの厚意だ、喰おう」
スラリとした女戦士の言葉を聞き、周りのドラゴン達が姿を変えてゆく、
気付くとドラゴンは一体も居なくなり、9人の天使と一人の人族が食事を囲い、わいわいと喋り出した。
「アリエス様!私達の動き、どうでしたか?」
人族の少女がスラリとした女戦士・アリエスに尋ねた。
その横では少女と同じくらいの歳に見える天使の女の子が、パンをかじりながら女戦士の返事を待っている。
「ああ、メルもリエルも良い動きだったよ。もう
アリエスは笑顔でシチューを掬いながら二人を誉めた。
「しかし、この辺りもすっかりモンスターが増えたな!」
戦士の一人が行儀悪く、食べカスを飛ばしながら言う。
「そうだな、五年前にツナウ山脈界隈に黒い鳥の王がやって来たのが原因だろうな。すっかり鳥型のモンスターが増えちまった」
食べる手を止めアリエスが答える。
「いつまでも天使族の人たちにワプル村に居てもらう訳にもいかないんだけど…。私がもう少し強くなるまでは迷惑かけるね」
人族の少女メルが申し訳なさそうに皆の顔を見回す。
「何言ってるの、メルは私達の盟主なんだからそんな事気にしなくても良いんだよ」
ドラゴン化をしてメルを乗せ戦っていた天使の少女リエルはそう言いながらポンと胸を叩いた。
「その通りだぞメル!お前が来てからというもの、何百年も暇そうにしていた我らが王も楽しそうなのだから気にするな!」
男戦士の言葉に、他の戦士達も笑い頷く。
戦士達がそんな談笑をしている最中、そこへ猛スピードで向かってくる影がひとつ。
その影にアリエスが気付き、
「あれは、テスタント様か?」と眼を細め一言呟いた。
戦士達の間を割って降り立った白いドラゴン。
それを見たハクヌカの村長は慌てて近寄り挨拶を交わす。
「これはこれは!テスタント様!よくぞおいで下さいました。浮遊城に送れる分の食糧はまだ少し足りてませんが、良ければ持っていって下さいませ」
テスタントは白きドラゴンから天使へと姿を変え、村長に言葉を返す。
「いや、村長。お気持ちはありがたいが食糧を頂きに来たわけでは無いのです」
村長に軽く会釈を済ませ戦士達の方を向いたテスタント。
その顔は難しく、良い知らせでは無いと戦士達が察するには充分であった。
「何かあったのですね?」戦士の一人が尋ねる。
「うむ、戦闘で疲れているであろう皆には悪いが、ワプル村に常駐していた戦士の一人が浮遊城へモンスターが出たと知らせに来たのだ」
“常駐の戦士達”とは天使王ミハエル・カーライルの命を受け、ワプル村に滞在したままワルプ村を守っている天使達である。
その実力はアリエスを除き、今ハクヌカで戦っていた戦士達より一つ上をいく者達である。
その“常駐の戦士”がわざわざ浮遊城まで知らせに行かなければならない程のモンスター
となれば、通常のモノでは無い。
それはここに居る者にとって、想像に難くなかった。
「我らが主と直属の兵士は知っての通り、浮遊城を離れられない。よって、皆はワプル村へと加勢に行ってもらえぬか?浮遊城に居た戦士達も数パーティは向かっているのですが……」
特徴的な声で語るテスタント、その表情が“行けば無事では済まないかもしれない”と物語っている。
その言葉に一番慌てたのはメルであった。
「あ、あの!私は行きます!私だけでも行きます!」
「まぁ、待て、焦るんじゃない。みんな、腹一杯喰ったか?」
肉を頬張りながら戦士達に声をかけるアリエス。
「おう!」
「いつでも行けるぜ?」
「まぁ、なんとかなるさ」
ムグムグと急ぎ、皿の物を口に運んでいた戦士達から、そんな声が飛び交った。
「みんな……ありがとう!」
メルの眼に涙が潤む。
「お礼なんて要らないよ、メルの故郷をモンスターの好きにさせたらミハエル様に怒られるもん。それに私とメルはパートナーじゃん。ほら、行くよっ、ドラゴフォーム!」
リエルは早口気味にメルを捲し立てると、魔法を唱え体を竜に変化させた。
タンッ!――ファサッ。
身軽にリエルへ飛び乗ったメル。
「リエル、お願い!」
その一声を受けワプル村へと向かい飛び始めたリエルドラゴン。
「よーし!みんな続け!」号令をかけるアリエス。
それに応え、ドラゴン化したパートナーに乗り空を駆け出した戦士達も、見送るハクヌカの村人から激励の言葉を浴びながら南に進路を取る――
「待っててね!お父さん、お母さん!村のみんな!」
◇◆◇
エンドルゼア東部――ワプル村
「村人達は無事か!?」
ワプル村に常駐している天使の戦士達。
そのリーダーであるガッシリとした体つきの男戦士・トマスが緊張した面持ちで味方の戦士に確かめる。
「村人達は無事だ。しかし、なんだこれは……。何が起こってるんだよ」
戦士の一人が目の前の光景を呆然と眺めながら言った。
戦士達の耳にモンスターの叫び声が止むこと無く聞こえてくる。
「グエエェ!」
「ギェエエ!」
「クァアッ!」
いつも通りに、ワプル村の周りを飛び回るホウキ頭の鳥型のモンスター“ブルームヘッド”達を狩っていた天使族の戦士達。
だが、二時間と少し前にここらでは見掛けない、大型の異質なモンスターが現れたのだ。
その出現に呼応するかのように大量に集まってきた鳥型のモンスター達。
その異質なモンスターが現れた時、戦士達はついに“黒き鳥の王”が自ら襲ってきたのかと思った。
しかし――
「ギャャアア!」
「グルゥアア!」
「ガアアゥウ!」
また三体のモンスターが絶命した。
そう…モンスター達が
様子を伺う戦士達に異質のモンスターが何かを口にした。
『キイエモイエカ…オアアラエンシソクオ…』
大地の底で亡者が叫んでいるような、
言葉なのか呻きなのか分からない、そんな声で。
「消えてもらおうか、愚かな天使族よ……?」
トマスが異質な魔物の言葉をなんとか聞き取り繰り返す。
「やはり、こいつも敵なのか…!言葉を喋れないところを見ると知能は低そうだが、モンスターも俺達も無差別に殺するつもりか!?どうする……トマス」
戦士の一人が額に大粒の汗を浮かばせながら 小さな声で言った。
「奴が何者だろうと逃げるわけには行かないのだぞ!奴がこっちに攻撃を始めたら村人達だけでも守らなければならん!」
怖じ気付く戦士達に渇を入れるトマス、しかし、トマス本人も流れる程の汗を滲ませている。
異質なモンスターが再び何かを口にした。
『オォオ…カヌイガァオオアジャハァ…!』
「オオオ、下等種族共は邪魔だ……。って言ったよな?」
トマスは、とても言葉と言えない声を必死に翻訳する。
その行為に意味があるのかは分からないが、相手が相手だけに少しでも不安要素を無くそうと試みていたわけだ。
しかし、不安は無くなる所か増すばかり。
「本当かよ、だとすればいつ村を襲って来てもおかしくないぞ!応援はまだ来ないのか!?」
叫ぶ戦士は応援が向かってくるであろう北の空を見上げるが、そこには味方の影すら見えず途方の無い絶望感を覚える。
「仮に全速力で向かって来てたとしても、まだ来ないだろうな。皆、覚悟を決めろ、俺達は天使族のドラゴンナイトだろ!」
怯える仲間を、そして自分自身を鼓舞するように言ったトマスが力強く剣を握りしめると、その声に合わせてそれぞれの戦士達が竜化したパートナーに乗り武器を構えた。
天使族のドラゴンナイトである誇りが震える手足を鎮め、トマスの力強い言葉が覚悟を決めさせた。
「行くぞ!!」
「おおーっ!!」
勇ましく飛び出した戦士達が鳥型のモンスターの間を縫って異質のモンスターへと向かって行く――
「みんなぁーっ!大丈夫っ!?」
響いたのはメルの声――
ハクヌカ村に居た戦士達は、先ほど常駐の戦士が眺めた場所より遥か上空から滑空するように駆けつけたのだ。
その瞬間、異質のモンスターが一段と大きな雄叫びをあげる。
『オオォオオオォォォオエルルゥ!!』
『ダアアウハァウドォオ!!』
と同時に異質のモンスターから黒い腕が伸び、数体残っていた鳥型のモンスターを全て握り潰した――!
突然の出来事に攻撃を仕掛けようとしていた戦士達は体勢を崩してしまう。
「しまっ……、気を付けろ!次が来るぞ!!」
一際大きくゴツいドラゴンに乗ったトマスも体勢を崩し、必死な声が響く。
止まらなかったのはただ一人、メルだけだった。
「わぁぁぁあっ!!」
異質のモンスターを目の当たりにし、叫ぶメル。
その声は戦士の雄叫びと呼ぶにはあまりにも明るい声だった――
「わぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
タンッ――!メルがリエルドラゴンの背を蹴り異質のモンスターへと飛びかかった!
仕留めるつもりの特攻ならばあまりに無謀、危険極まりないその行動に、戦士達は皆等しく息を飲んだ。
パフッ……!―――
――――?
メルは異質のモンスターに抱きついていた。
「えええええぇ―――――――っ!?」
息を飲んでいた戦士達は目玉が飛び出るほど驚き叫ぶ。
メルは溢れる涙を隠しもせずに言った。
「グスッ…!おかえり……!ルアさんっ!!」
転ツイpoint22
【覇王歴(はおうれき)】
約三千年前、その頃からそれ以前の年代は現在でいう伝説の神竜や神獣、それに連なる猛者達が台頭している時代。
その時代に生きた、人種族最強と言われた獣人族とエルフの間に生まれた子、覇王と呼ばれるまでになった男ヴァレンタイン。そのヴァレンタインの没した年に、人種族に含まれる種族の王が数人と、全てを記録する者“レコード・ルーラー”によって新たな覇王の誕生を望む時代として
覇王歴と名付けられた。
この名称は本来であれば人種族の間のみで適用されるのだが、長い年月が経ったことにより、今では種族問わず認識されている。