転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
以前ではメル以外に姿が見えなかったルベルアが、戻ってきた後は他の人達にも姿や声が分かるようになっていたのだが、
それを知ったルベルアは悪戯心を抑えきれず、調子に乗った結果ミルザに嫌われてしまった。
(*ノ▽ノ)のほほーんですw
ピチュン…ピチュン…ピィ、ピィ、ピチチチ…!
モンスターが一掃されたワプル村では可愛い小鳥たちが気持ち良さそうに唄っ――
『ぬぁんだってぇぇぇぇえ!?』
―――バサバサッ!
喉かな村に何者かの裏返った声が響き渡る。
◇◆◇
ワプル村の南側・小高い丘に数本の木が立っているだけの場所
ここはメルが家の外へ出られるようになってから、人目を気にせず俺と話すために良く来た場所だ。
昨日、メルと再開を果たした後には、村人や天使族達との挨拶が忙しくて話す時間が無かった。ということで、今日は朝早くからこの場所へやってきたのだけど、話の中で俺が驚く事実が明かされた。
何故かリエルの姿もあるけど、リエルに気を使う必要は無さそうだ。というのも、メルは俺の居ない間、リエルに色々相談していたみたいで、メルが転生者だということも俺との関係も全て知っているんだとか。
メルと俺の“秘密共有者”みたいなものね。
それで何故俺が驚いていたのかというと……。
『ほ、本当にあれから八年も経っているのか?』
まだ信じられない俺は改めてメルの姿を見る。
確かに皆の雰囲気が結構変わったかなとは思ったけど、あんなに小さかったメルもなんか凄く身長伸びたなーとか、村長のジジイのシワも増えたなーとか………。
けど、八年も経っていたなんて!!
唖然とする俺の反応を流してメルは話を続けた。
「うん、まさか元の世界に戻されてリハビリしてたなんて……でも、生きててくれて良かった!でもそのルアさんの元の体は別の人になっちゃったんだよね?」
メルは顎に手を添えたり、腰に手を当てたりしながらその事について考え込む。
リエルは聞き覚えの無い単語に不思議そうな顔をしながらも、口を挟むこと無く、大きなポケットから木の実を取り出し食べている。
『ああ、バースの弟のマドカ……って言っても覚えてないんだっけか。その少年に譲ったんだ。自分で決めたことだから気にしなくても良いぞ』
マドカの言った通り、ワプル村でマドカの事を覚えている奴は一人も居なかった。
俺の脳裏には元の世界に戻っていた時の事が思い浮かんだ。
◆
“
彼女の話を持ち出すとメルがまた辛い事を思い出すかもしれない。たしか、元々の歳は17才だったよな。
この世界でのメルも既に15歳だし、
これだけ多くの愛を受けている今のメルなら大丈夫か。
よし、一応伝えておこう。
◆
『なぁ、メル。俺、自分の事を調べていた時にさ、向こうでの
俺の言葉にピクッと動揺を見せたメル、綺麗なオッドアイが分かりやすく泳ぐ。
「あ…いや…。隠してた訳じゃ………」
『いや、責めるとかじゃ無くてさ。俺、あっちの世界でメルを助けられなかった事が気がかりだったんだけど、メルも死んだ訳じゃ無かったんだよ』
動揺するメルの言葉を遮り、俺は続けた。
「……ルアさん。…怒ってるんじゃないの……?だって、私の所為でルアさんは…」
メルの手が小さく震えだす。
木の実を食べているリエルだが、メルの様子の変化を察して、噛むのを忘れて木の実を頬張り続けている。
きっとメルからの相談に
どう返して良いのか分からず困惑するメル、その言葉を待たずに話を進めた。
『いや、だからそういうんじゃ無いよ。俺さ、
「ほごご…もがっか…じゃふ」
リエルが何か言った。けどゴメン、全然聞き取れないぞ。
あと……口から二個、木の実が落ちたよ。
「ルアさん、ごめんなさい!私、本当はルアさんがあの時に助けてくれようとした男の人だって分かってたの!何度も謝ろうと思ったんだけど言えなくて!本当にごめんなさいっ!」
ようやく言葉を口にしたメルが、泣きながら俺にしがみついてきた。慣れない状況に不謹慎ながらもドキドキする。
「もごもも…んがん…が…んぐっ!!」
リエルが心配そうな眼をして駆け寄り、メルの背中をさすった。
何かを言おうとする度に、口からポロリと落ちる木の実。
ちょっと雰囲気壊れるからじっとしててくれないかな。
『謝ることなんてないぞ。俺はこの世界に来れて、お前の相棒になれてさ。毎日がすげぇ楽しいと思えたんだから』
俺はそう伝え、泣いているメルの頭を撫でた。
「う……ぐすっ。ルアさんには……ぐすっ……助けられてばかりだね……。ずず……でも……私……この世界に来たとき……ルアさんが……一緒に居てくれて心強かったの……!本当に……ありがとう……!」
メルは涙を拭い、ぐしゃぐしゃになった顔を上げると、今できる中での最高の笑顔を見せてくれた。
馬鹿だなぁ……。俺だって救われてるんだよ……。
『メルもありがとうな。もう一度お前の側に来たかったから、人間やめて悪魔に戻ったんだぜ?だからもう泣くなよ。やっぱり笑顔の方が可愛いんだからさ』
こんなに素直な悪魔など、他には居ないだろう……。
クッサー!恥ずかしー!!またやっちまった!!
こんなん、他の奴に聞かれたら……、居たー!
横でアホみたいにモグモグしてる奴、居たーっ!
「………モグ……モグモグ……。コキュッン……」
リエルは無表情で俺を見ながらモグモグしている。
無表情はやめなさい、無表情は!
「人間をやめて悪魔に?どういう事ですかルベルアさん!?」
――ふぁっ!?
突然、俺達三人の背後から、細身で背が高い男が話しかけてきた。
驚いた俺は思わず声を張り上げ問いかけた。
『なんなんだねっ!
「あっ、いきなり失礼しました。僕はガリバーと言う者でワプル村で雑貨屋をやっております」
男は“ハッ”として名乗ると、小さくお辞儀した。
ガリバー……。ガリガリガリバーか!
ってかコイツの名前、ガリバーだったのか。
ガリガリガリバー、略してガリバーとか言ってたけど、普通にガリバーだったのか。
って、ガリガリしすぎてややこしいわ!
相手がガリガリガリバーだと分かった俺は、聞かれた内容を誤魔化すことに決めた。
そこには一切の迷いも罪悪感も存在しない。
『ガリバー、さっき聞いたことは皆には内緒にしてくれないか?実は俺は元々、人間の英雄だったんだが悪魔王を倒したときに呪われてしまってな、それで今の姿になったというわけさ』
俺は遠い昔を見るような眼でガリガリガリバーに語る。
我ながら、なかなかの演技力だと思う。
「そ、そうだったんですか!!あの古の英雄とこうして話せるなんて……光栄です!!」
ガリバーは膝を付き、眼をキラキラさせた。
ガリガリガリバーは相変わらず騙されやすいんだな。
スマンな、本当は英雄なんかじゃなくてただの建築作業員なんだよ。
あっさり誤魔化すことに成功した俺はガリガリガリバーに尋ねた。
『それで、どうしてここへ?』
聞かれたガリガリガリバーが“よくぞ聞いてくれました!”といった様子で身を乗り出して喋りだす。
「はい、村の自警団が見張っていたところ、遠くからこちらへ向かうホーンバードやブルームヘッドの群れを見つけたんです!」
興奮するガリガリガリバーが唾を飛ばしながら答えた。
なっ、緊急事態なら早く言えよ!!
隣で話を聞いていたメルとリエルも慌てて立ち上がり、小さな草が付いた服を雑に払う。
「ルアさん!リエル!急ごう!」
置いていたショートソードを身に付けたメルは、まだ少し涙の跡が残る顔を一叩きし、村の中心部を指差した。
「私はドラゴンになる?」
木の実を食べ終えたリエルが聞く。
「ううん、リエルは本職で良いよ!」
『本職?リエルも剣士か?』
俺は耳(的な感覚)を向けながらも、二人が乗りやすいように背を下げて待つ。
「違うよ、リエルはソーサラーなんだよ!ふふ、凄いでしょ!」
俺の背に跨がりながら、何故か自慢気に言うメル。
「まだ、少しの魔法しか使えませんけど」
メルがポンポンと俺の背を叩き手招すると、リエルも遠慮がちに跨がり、ポツリと呟いた。
『よし!行くか!!俺と合わさってからがメルの全力なんだからよ、皆の度肝を抜いてやろうぜ!』
「うんっ!」
「頑張ってね、メル」
フワァッ――――ビュンッ!
メルとリエルを乗せたルベルアは村の自警団と合流するべく颯爽と飛び立っていった。
置いていかれて寂しそうな男の視線を受けながら……。
転ツイpoint25
【ガリバー】ワプル村の雑貨屋の次男として生まれ、覇王歴1391年時点で28才となった。
側頭部(サイド)と後頭部(バック)を短く刈り上げ頭頂部(トップ)だけにポッと髪を生やしたパイナップルみたいな髪型は、小さい時からお母さんの手によって施されている。
人族(ひとぞく)としてはかなり背が高く、二メートルちょっとある身長。そのくせ細身で色白なので、二十歳頃には村の子供達からガリガリガリバーというあだ名で呼ばれていた。
また、村一番の騙(だま)されやすい奴。として有名になるほど純粋な心を持っている。
「あなたが何を企んでいるのか知りませんけど、僕だけは騙されませんよ!!」