転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
今回は説明多めですm(。_。)m
枯れること無い広葉樹が、緩やかな風に吹かれてわさわさと音をたてる。
俺もすっかりこの村に馴染んだと自負している。
いや、“馴染んだ”は少し違うか……メル以外の村人は俺の存在を知らないのだから。
メルも俺の事をルアさんと呼び、すっかりなついてくれている。
それと言うのも、俺の呼び名をルベルアと決めたからだ。
何故ルベルアなのかという話はまぁ、そのうちにでもしよう。
俺の見た目は端から見ると中々の怖さらしく、下手に他の人に見えていたなら村が大パニックになっていたんじゃないかとメルが言っていた。
それほど心配しているわけでも無いが、万が一見えちゃった時には何とかするとしよう。
とにかく、当面は世界の情報集めに焦点をおくつもりである。
目的が出来た途端に時間はあっという間に流れ、この世界に来てから三年を迎えた。
この世界に季節というものが無いのかこの村が特別なのか、春の終わり頃みたいな気候から変わる事なく三年が経った。
メルと共に世界について調べ始めて2年半。
その甲斐もあって、この世界のことがかなり分かってきた。
まず、この世界はかなり広く
東京ドーム500億兆個くらいの広さだ。
………。
すまん、適当だ。
田舎育ちは東京ドームの大きさなんて知らないのに
なんでもかんでも東京ドームの数で表しやがって!
おっと、熱くなってしまった、話を戻そう。
古めの地図で確認したところ、未開の地を除いても地球の倍はありそうだ。
物知りな雑貨屋のオヤジが言っていたが、海や砂漠などに暮らしている人々もいるらしい。
さらにモルドーの話が本当ならば、世界は今でも少しずつ成長しているらしく、古い地図を信用しすぎると思わぬトラブルを招くことがあるとか。
少し話が反れるが、メルが一歳を過ぎた頃からモルドーやエリス、村の物知り連中から話を聞きたい時は、俺が盗み聞きをするのではなく、直接メルに質問させている。
可愛いさ真っ盛りのメルに質問された奴らは、聞いていない事まで満面の笑みで答えてくれる。
その中でも群を抜いてデレるのが父親のモルドーに他ならない。
「ねぇ、お父さん?」の部分だけでも目尻が60°下がる。
「こんなこと聞くなんて!メルは賢いねぇ!自慢の娘だよぉ!
ご褒美に何か買ってあげようか!何が欲しい?」
質問される度にこんな感じになるモルドー。
世界一チョロい父親なのではなかろうか。
デレすぎて正直キモいが、折角だから搾れるだけ搾り取っておこうぜ!という作戦を発動した。
メルのお陰で今までの全作戦が成功している。
モルドーからの戦利品だが、この世界では高級な分類である“本”を数冊ゲットする事ができた。
モルドーはご褒美を買ってくれた時には必ず
“ママには内緒だよ”
と言うが、メルはいつもエリスの前で本を読んでいる。
お父さんの味方じゃないの!?と思うかもしれないが後々バレたりした方が怖いことになるんだぞ、モルドーよ。
メルは今もモルドーに貢がせた本を真剣に読んでいる。
それを後ろから眺める事に飽きたルベルアは、今まで得た知識の整理をすることにした。
◆
メルが入手した本とか村人たちの話によるとこの世界では各地に国が転々としていて、それぞれの国には王が存在する。
で、村や小さな街は一番近くに存在する国王とその国の所属になるという事だ。
俺のイメージだと市町村みたいな事だろう。
今、俺達が住んでいる“ワプル村”だと所属する国は“ベクール”で
ベクールの王はトーラス・ドラフォイという名前だとか。
日本の感覚で言うとトーラスが名 、ドラフォイが姓にあたる。
姓は貴族以上しか使うことが無いらしいから、何かの間違いでモルドーが貴族にならない限り、メルと姓は無縁だ。
俺達が気になったことは他にも沢山ある。
冒険者として世界を旅した事があるという、村長のジジイの話だと世界にはかなり沢山の種族が存在しているらしい。
俺の知ってるアニメやゲームでもお馴染みのドワーフやエルフ等の亜人も存在するとか。
種族の名前を聞くだけでもファンタジーを感じて心が踊る、ぜひ逢ってみたい!
ドワーフやエルフの女の子に囲まれてあんなことやこんなことに、グフフフフ……。
あっ、囲まれるとしても俺じゃなく、メルか……チィッ!
一番肝心な話だと、この世界の“安全度”についてだろうか。
メルと話しをする時の内容でも “いつか旅をしてみたい” という話になることが多々ある。
その時のためにも“安全度”は最重要事項であるのは間違いない。
建築現場でも“安全第一”が絶対条件だしな。
安全度について、モンスターの有無は重大な要素だけど、残念ながらモンスターは存在するみたいだ。
村の周りじゃ小さなモンスターすら見かけないけど、それはもしかしたら毎日マナを喰いまくっている俺の仕業かもしれない。
でも普通は街や村の外に出るとモンスターがいるとか。
モンスターの発生には大気中に多量に含まれる“マナ”と呼ばれるエネルギーが関係してて、そこから発生してると書いてあった。
本によると無から発生するモンスターも居れば、多量のマナを体内に宿した動物が変異してモンスターとなる場合もある。
モンスターや魔族と人種族は分けて考えられていて、人種族とは人間もエルフもドワーフもひっくるた総称だが、人種族にはモンスターに対抗するための様々な職業があるらしい。
俺の頭じゃ覚えるのが大変なくらいには。
商人や農民など生活を支える“
モンスターや魔族とかから人々を守る者、各地の洞窟や魔巣等に潜り珍しい宝などを持ち帰る者。
それらを総称して“
大きくはそのどちらかで分かれているらしい。
例えば人に職業を聞かれたとき、“あなたは何者ですか?”の返答は“私は商人です”で良い筈だ。
じゃあ、ライフとローグで分けてる意味は?と思うかもしれないが、単純に協会がライフ協会とローグ協会に分かれているだけなんだとか。
それぞれの職には異名持ちという各地のギルドの中においてトップレベルの者達が存在していて、
もし商人として世界に名を轟かせるほどの人物になれば、“商王”なんて呼ばれることになる。
俺の中の商王のイメージはぽっちゃり体型で紫の髪をしたおっさんなんだけどな。
ローグの方だと、例えば剣を極めに極めた者は“剣神”と呼ばれるらしい。
不思議なんだが、ライフでは極めても“王”の称号までなのに、ローグだと“神”と付く異名持ちがいくつか存在するってことだ。
それだけモンスターが脅威で、ローグが重要視されているという事なんだろう。
メルを危険に晒すわけにはいかないし、俺はどんなモンスターが現れても倒せるように鍛練を欠かさず行わなきゃならん。
といっても、俺の修行は簡単なんだよな。
魔法について勉強した時に気付いたけど、俺の体は魔力体。モンスターや魔族と共通でマナの保有量が直接的に戦闘力になるようだ。
しかも俺の場合は魔族と違って、人種族の魔力の源であるエレメントも吸収できる上に、自身の核の大きさが足りず、これ以上魔力を貯められない!という事態にならない。
なぜなら俺には核なんて無いからな、
マナとエレメントさえあればいくらでも魔力を溜めることができるのだ!
グフフ!
自由に姿や形を変えられる!
固さも自由自在に調整できる!
単純な攻撃としてなら影を剣のようにして伸ばす・飛ばす!
ハァハァ!
あらゆる攻撃の時に出すスピードも自由ゥゥ!
それら全てを魔力によって行えちゃうんです!!
奥様見てください!この完璧なボディーー!
無駄が無い!!
◆
知識を整理しているルベルアの呼吸が荒くなる。
「ルアさん、何か言った?」
『何も言ってないよ』
再び知識の整理を始めるルベルア。
◆
魔法使いになりたい人は魔法の勉強に数年を費やし、魔方陣や詠唱を覚え、さらに上を目指すならそこから派生を研究したりと天才じゃない限りは努力に努力を重ねないと強くはなれない。
だがしかし、
そぉーーんな努力も必要無いんです!!
そんな苦労や努力をすっ飛ばして大気中のマナを喰らい続ける!喰らったら体を自由に動かす練習をするだけ!
何故ならこの悪魔ボディーー!
体そのものが魔力体でありぃィ!
思い通りに魔力を使うことが出来るのだからァ!
その上、このマナ吸収機能を使えば
ここら一帯のマナを吸収することで村の周りで新たなモンスターが発生することも無くなるんです(多分)!!
奥様!?一石二鳥なんですよォォォォ!
◆
メルの隣でふわふわと浮かんでいる悪魔が“ふんふん”と息を鳴らす。
「ルアさん?」
『何も言ってないよ』
我に帰ったルベルアが再び自分の世界へと入る。
◆
ハァハァ…!興奮しすぎて少し
つまりこの体、想像以上に便利な作りだったということだ。
でも、実際にモンスターに遭遇したことがある訳では無い。
いざモンスターと出会ってみたら 俺より強い能力持ちばかりの世界かもしれないし……。
もし俺がやられたりして居なくなったら、メルはどうなるだろうか。
メルは女の子だけど、元・剣士の村長のジジイから剣を習っていて、筋が良いと誉められている事が多い。
力の弱い人族では、女剣士というのは少ないらしいが、村に攻撃魔法の使い手がいないので魔法の代わりの攻撃手段として、剣を習っている。
メルは普通の人族よりずっと力が強いので、このまま剣を鍛えても強くなれる可能性は大きい。
ビショップのミルザから回復魔法も習っていて、三歳とは思えない学習能力だと周囲の人間は驚いている。
すでに回復魔法のヒールを使えるようになったメルに大人達は村始まって以来の天才児だと騒いでいた。
それもそのはず。
本来、人間は長い鍛練により体内のエレメントというものを増やしていき、溜まったエレメントを使い魔法を生み出しているという。
三才児にはその体内のエレメントが魔法を使えるだけの量を持っているはずが無く、学力も無いのだから、大人達が騒ぐのも当たり前だ。
なので、少しでも怪しまれないようにするためにメルも努力している。
回復魔法のなかでも比較的簡単な魔法のヒールなのだが…
初めてヒールを使えた時のメルは、
“うわぁぁい!使えた!使えたよミルザ様ァーーー!やったぁ!”
と天才子役さながらの名演技を披露してくれた。
その子、チートやでぇぇぇぇぇぇ!!
中身は三歳児ちゃうでぇぇぇぇぇぇぇえぇ!!
と知ってるのは勿論、俺だけだが。
村人達は盛大にその成長ぶりを語り合っていた。
この世界では学校が義務化されている訳では無いらしいが、メルの神童ぶりに歓喜したモルドーは将来を見据え、学校へ行かせる事を決めた。
学校は“ベクール”に在り、10才から利用可能。という決まり事になっているみたいだ。
10歳から利用できるとはいえ、利用する人の多くは18歳から行くらしい。
説明を聞いた限りでは日本で言うところの大学にあたる役割だと思う。
それまではこの村でのんびり暮らすことになるのだろう。
とは言っても子供の成長は早い。
きっと、あっという間にその時は来るだろう。
モルドーとエリスはもちろんの事、村の連中もメルが学校に行ったら寂しがるだろうな…。
まぁ、心配するなモルドー、お前達の分までたっぷりメルを可愛がってやるよ!
◆
『メル~、グヘグヘヘグフフ』
…あっ。
ずっと頭の整理をしていたルベルアだが、余計な妄想の所為でうっかりと声を出してしまった。
本を読んでいたメルが“バッ”と本で顔を隠しながら言った。
「き、気持ち悪い笑いか方しないで…!こっち見ないで…!!」
メルは本の上から眼だけを出すと、ルベルアに凍てつく視線を放った。
その視線はルベルアを仕留めるに十分なモノであった。
改心の一撃!!
『グハッ!』
野生の悪魔(元おっさん)は倒された!!……完。
オイぃぃ!!
転ツイpoint④
【マナ】大気中に自然に湧き漂うエネルギー粒子で、魔物や魔族の魔力の源になる物。
【エレメント】マナと同じく、大気中に漂うエネルギー粒子で、人種族の魔力の源となる。
【魔物・魔族の核】魔物や魔族はマナから得た魔力によってあらゆる行動をできるようになるのだが、その魔力の総量は魔物・魔族が、生まれつき持つ核の大きさで決まる。
【人種族の魔力】人種族はマナから魔力を作り出すことが出来ない為、大気中に漂うエネルギー粒子の1つ、エレメントを変換して自身の魔力とする。
人種族には核も存在しないので、修行や経験などで魔力の総量を上げることになる。