転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
ご注意下さいm(。_。)m
生まれ育った街のとあるビルの屋上。
ある日、私はそこに立っていた。
理由は特にない。
けど、無理に理由を付けるとするならば、この世界が私を拒絶したからだ…。
何があっても自殺をしてはいけない。
それは分かっている。
だから、私はきっと地獄に落ちるだろう。
けどね、どちらも同じ地獄なら…人より鬼に苦しめられたい…。
ただ、親が離婚しただけで。
ただ、お母さんの再婚相手から心も体も汚されただけで。
ただ、妬んだお母さんから身体中を痣だらけにされただけで。
ただ、新しいお父さんがお母さんの事をもう要らないと言い、お母さんを包丁で刺し、殺人未遂で刑務所に入っただけで。
ただ、血も繋がっていないお父さんの起こした殺人未遂事件で、周りの人、学校の人、いつも遊んでいた友達、それらから人間扱いされなくなっただけで。
ただ、お母さんが私を置いて家を出ていく時
“あなたなんか生まなきゃ良かった”
その言葉を最後に残していっただけで…。
たったそれだけのこと、自殺していい理由になどならないのだろう。
自殺なんかしたら、残された人が一生悲しむのだから。
残された……人が?
お母さんは口癖の様に言っていたね…。
“いい子にしていれば痛いことしないよ”って…。
私はとても痛いの…。本当に…、心が痛いよ…。
「こんなに苦しいのは、私がいい子じゃ無かったからなんだよね……?お母さん…」
私はそこに立っていた。
一歩前に出れば、この地獄ともお別れだ。涙はもう枯れた。
キキィッ!
車のブレーキの音が辺りに響く。
車から体が大きくて顔の険しい男性が降りると、こっちをひと睨みしてからすごい速さで私のいるビルに向かって走り出した。
「ここに来る気だ……!」
口から心の声がこぼれ落ちる。
とたんに私は背中に嫌な汗を滲ませる。
男性は怒っているのか、口をパクパクさせて走ってくる。
何を言っているのかは聞こえない。
あっという間にこの場所へと届きそうな勢いだ。
私は…。私は、これ以上今の地獄と付き合う気はない。
けど、あの人は私を助けようとしている。もし私が死んだらあの人は悲しむだろうか?あの人は…。
“残された人”など居ない私なのに、他人の為に迷うなんて…!
このままだと、私は見知らぬ男に助けられてしまう。
何度も何度も裏切られたのに、また希望を持ってしまう!
そう思った時、私は飛んでいた。
(見知らぬ男の人。ごめんなさい。私のことを気にすることなく。
今日の事を引きずる事なく。過ごしてください…!)
最後の瞬間、覚悟を決めた私はギョッ!とした
男性が、私の落ちる先に入るように飛び込んできたからだ!
「よけ…!」
避けて!と言おうとしたが、遅かった…。
ゴッッ!!
私は、きっと死んだのだろう。
考えたくないけど…あの人も…。
本当に最後まで…周りに迷惑をかける“悪い子”だったなぁ…私。
ここがどこかは分からない。何もない、白く霧がかかった空間。
確かに死んだと思うのだけど。ここが死後の地獄なのかな…。
もしそうなら、さっきまでの地獄よりずっといい。
私はそこに座り込んだまま長い時間をボーッ、と過ごした。
《愚かな人間よ、汝は何を恐れる》
急に変な声が聞こえた。
《変な声とか言うな!ばかちんが!》
あっ、ごめんなさい。
私は……私が命を捨てた時に助けてくれようとした男性。
あの人が死んだと思うと恐ろしいです……。
あなたが神様ならどうかあの人だけは助けて頂けませんか?
《我を神などと同じにするでないわ!》
《ふむ、しかし面白い。悔しいが、我はもう終わる存在である》
《長き封印により、我が肉体も消滅(しょうめつ)した今》
《ここに残るは莫大(ばくだい)な魔力のみ…。》
《最後に奴らに何をしてやろうか考えておったが…。》
《うむ、貴様を我が生きた世界へと転生させてやろう》
《但し、我が全魔力を注いで作り出す呪いと共にな…!》
《フハハハハハハハ!ハーハッ「あの……。」ハッ!?》
《急に話かけるでない!高笑いと被るではないか!》
ごめんなさい。あの、私はどうなっても良いので、どうかあの男性にだけは悪いことをしないで下さい。
《ふん、其奴がどうなったかなど、行けば分かるわ》
《我が最後の魔力よ、存分に世界を乱すが良いぞ…!》
《クハハハ、フッハハハハ…!ハーハッハッハッハ…》
《ハー…ッ……ハ…ッ……ッ》
霧が晴れてきた。
すると夢心地だった意識が、現実味を帯びてくる。
◇
グイッ! 誰かに抱き上げられた感覚が体から伝わる。
「おめでとうございます!元気そうな女の子ですよ!」
先程とはガラッと変わって明るい女性の声が響いた。
「あふ、えああ、ああ」
えっ!?喋れない!?
ボンヤリした視界では私は誰かに抱かれ、別の誰かに見せられている。
ふと、先程の怪しい声の主が言った事を思い出す。
“転生”
転生だ!私は別の人間として生まれ変わったに違いない!
状況を理解するとボンヤリしていた視界が少し見えるようになってきた。
少しずつ……。
視界が……。
…………!?
「あきゃっん!」
ビックリしたぁ!!生まれた瞬間に心臓が止まるところだった。
転生した私の目の前で、おぞましい影がふわふわと浮遊している。
生まれて始めて見る光景がこれなんて!
転生した娘はそう思うと、つくづく自分の不運が嫌になった。
悪魔だ……!いや……。呪いだ……。そうか、呪いだ……!
あの人の言っていた通りに、私は呪いの悪魔にとり憑かれているんだ……!生まれ変わっても結局呪われたままなんて!
どうせ呪われているのなら、私1人しか居ない世界なら良かったのに……。また周りの人まで不幸にするのは嫌だよ!
悪魔さん、どうか今この瞬間殺したりはしないで下さい。
きっとこのお母さんが悲しみます…。そうしたら私はまた……。
私が周りに事情を喋れるようになるまで待って欲しい。
それに、やっぱり死ぬのは怖いよ!
今ここで生き延びるには、なるべく目を合わせないように……私が“気付いた事”を悪魔に気付かれないように……。慎重に振る舞う必要がある…!
スィーー!
!!
転生した娘の思いが通じたのか、呪いの悪魔は離れていき天井まで飛んで行った。
ああ、良かった。どうか心の準備が出来るまでは痛くしないで下さい……!
ふわふわ、ふわふわ
私の視界には、なんとも落ち着かぬ悪魔が浮かぶ景色がある。
このまま何処かへ行ってくれれば、と願わずにはいられなかった。
ギンッ!
呪いの悪魔はしばらく私を見つめた後、突然目を細めた。
スィ!ススィ!!
呪いの悪魔は、そのまま勢いをつけて私に迫る。
「きゃ!」
出すまいと心に決めたばかりなのに、思わず出る声。
「あうぅあぁ」
どうしたらいいのか分からない、呻き声にも似た声が私から出る。赤ん坊から一転、まるでゾンビだ。
ここは一度平和的に……!
「んにぃ。」
笑ってごまかす作戦!
……悪魔が、止まった。
黄色い目で。ジッと見つめてくるだけ。…助かっ…た?
その日から怯える日々が続くと思った私ですが、予想に反して呪いの悪魔は何もしてこなかった。
それどころか、まるで見守ってくれているかのように暖かみさえ感じさせてくれた。
私が授乳してもらっている時には特に熱い視線を。
両親もとても優しく私を育ててくれている。
いつかこの日々が急に壊れて絶望に落ちる。
とかいう呪いなのだろうか?
どうか、私以外には手を出さないで下さい。呪いの悪魔さん……。
……
……
7歳になった私。
私はワプル村のメル!
華麗に剣を振り、光魔法を操る才色兼備の乙女!
なんて、自分では言えないけど。
そんな私には誰にも言えない秘密があるの。
7歳だけど、前世も合わせると親より年上!
もう、立派なお姉さんなの!
そして大きな秘密がもう1つ!
誰にも見えない、黒い彼。
その実力と安全性は私の保証付き!
いや、安全性は保証しないでおこうかな……。
自由自在に宙を舞い、大木も大岩も一撃の下に粉砕しちゃう!
それなのに、見た目と裏腹にとても優しい。
本当は彼に言えない秘密もあるのだけど……。
“呪いの悪魔”にして私の相棒、ルベルアの存在だよ!
ルアさんはね、私と双子のようにお母さんから一緒に生まれた悪魔さんの名前だよ。
私と同じ“転生者”のルアさんと過ごすうちに、名前が無いのはお互い困るじゃない?っていう話から私が3歳の時、夜更かししてルアさんと考えた名前なんだ。
けど、今思うと深夜のテンションで考えたせいか、由来はちょっとルアさんの“アレ”が出ちゃってるけど。
生まれ変わった私はそんな呪いの悪魔ともお友達になれて、今のところ不安になるくらい恵まれた生活をしています。
『メル、さっきから空を見上げて。何考えてるんだ?』
「ううん、ルアさん。何でもないよ!10才までにもっと色々覚えておきたいなぁと思って!」
『そっか、そうだな!頑張れ!』
今、私は広い世界を見てみたい。
こんな風に素敵な思いを持てたこの世界を旅してみたい。
きっと楽しいに違いない!
今はただの強がりな私も、いつかきっと本当に“強くなれる”筈。
もう、一人じゃないのだから!
そのためにも、色々な準備は必要なんだ。
まずは元・学生らしく、勉強かな♪
転ツイpoint⑤
【ルベルア】呪いの悪魔の“俺”につけられた名前。
メルが3歳4ヶ月の時にずっと“悪魔さん”じゃ困るからと、二人で暇潰しを兼ねて付けた名前。
ルシファ、ベルセブブ、アモン等の前世で有名だった悪魔的な名前を雑に混ぜて付けられた名前である。
通称・ルアさん