転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。   作:高ノ宮 伏魔殿

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メルとルベルアがこの世界に転生者として誕生してから、早いもので七年の年月が経っていた。



一章開けての一話空けで二人が登場です(ノ´∀`*)


#7 来訪者は砂埃とトモニ。

覇王暦1383…

 

エンドルゼア東の大地にある小さな村、ワプルには僅か7歳にして神童と呼ばれる女の子が居た。

 

その女の子の名は“メル”

神童と呼ばれるその子は優しく、礼儀正しく、動物や草花を愛し―――

 

「ああああ!危ない髭おじちゃぁぁん!!」

 

神童(メル)の叫びごえがする。

メルが見ている先では、勢いよく宙を舞う太い木の枝が一人の男性めがけて飛んでいる。

 

「うっうわあぁあ!」

男性も叫んだ。

 

バキッ…!

 

「うっぐぅあ~、痛たた…ぁぁあ!?腕が!腕が折れたぁ!」

運悪く木の枝が直撃してしまった男性はその広い額に大粒の汗を浮かばせながら腕を押さえている。

 

「もぉー!避けてって言ったのに!

(※言っていない)

せっかく村の外れで練習してたんだから、もっと離れた所に立って見ててよ…。ちょっと腕見せて?髭おじちゃんは大袈裟だからね!」

 

神童(メル)が言うと男性は痛そうに顔を歪めながら腕を見せた。

 

「うぁぁ…これは…折れてるね…!」

神ど……メルはゴクリと唾を飲んだ。

 

「だから言ってるべや!痛ぇべさぁ!メルさ、何とか出来ねぇんだべか?」

髭おじちゃんは訛りが強い。

 

「ちょっとまってね…。癒しの精霊よ、大地の民に手を差し伸べよ。奇跡を信じる子羊のお肉は美味しくて、あっ。子羊に癒しの光を与えたまえ!!ヒール!!」

メルが仰々しく唱えると、髭おじちゃんの腕が緑の光に包まれた。

 

「おど!?痛みが引いていくべさ!いんやぁ、助かったべぇ。…んだどもメルや、この腕さ変な方に曲がったままだど?」

髭おじちゃんが腕をぷらぷらさせながら呟いた。

 

「うん、痛みを取っただけだからね!後はミルザさんの所に行って治してもらってね!」

メルは事後処理をミルザへ丸投げした。

 

ミルザとはこの街唯一の教会に居るビショップであり、メルに回復魔法を教えている師匠でもある。

 

さらに言うと美人で、淡いグリーン色の美しい髪を払いながら振り向く様はセクシーな黒淵眼鏡と口元のホクロも相まって、村に多数のファンを持っている。

 

 

「んだか!したら行ってみるべさ!」

ミルザに会う口実ができたからだと思うが、髭おじちゃんは鼻歌を歌いながらスキップして教会へと向かっていった。

 

 

その様子を心配そうに見るルベルア。

 

あんなにスキップしたら、腕ちぎれるんじゃね?

ちょっと骨見えてたし。

 

 

「ふぅ~!危ない危ない…」

メルはわざとらしく、額の汗を拭う仕草をする。

 

 

『危ない危ないじゃないよ。ごめんなさいくらいは言っとかなきゃだろ?』

ルベルアの声にメルは「あっ」という顔をする。

 

 

「髭おじちゃぁぁぁぁぁん!謝るの忘れてたぁぁぁぁ!ごめんねぇぇぇぇ!」

メルは叫んだ。260デシベルくらいの声の大きさで叫んだ。

 

 

「ぉー!ぃぃょーぃ!」

髭おじちゃんはごぎげんである。

 

 

『しっかし、離れた位置から木を斬れるか試したらあの太い枝が、あんなに簡単に斬れてぶっ飛んでいくんだからな…ビビったよな!』

俺がやってみようぜ!って言ったのが原因なんだが…。

髭おじちゃんが死ななくて良かったよ。枝が当たったのが腕じゃなかったらあの訛りが聞けなくなる所だった。

 

まぁ、メルの成長は喜ばしい事だけどな。

 

 

人並み外れた身体能力を持っているメル。

 

それは転生者であり、子供以上の知力を持っていた為にあらゆる物事の習得が速いからだ。

というだけでなく、生まれたときからルベルアの魂と繋がっていて、ルベルアの力の一端を自分の力に変えることが出来るのも大きな要因である。

 

ルベルアと直接繋がっている事により、他の人には姿を見ることも声を聞くことも出来ないルベルアの存在を知っている唯一の人間ということになる。

 

体と魂で繋がった転生者。

 

そんな特殊な二人ではあるが、3年後に予定しているローグ協会、つまり冒険者の育成支援学園への入学に向けて日々修行中なのであった。

 

剣も魔法も他の子供達とは比べ物にならない速度で習得していくメルを大人達は神童と呼んだが、イタズラ好きでヤンチャに育ったメルはむしろ他の子供達より怒られる事が多い。

 

そんなヤンチャなメルだが、ルベルアが心配している事もある。

 

メルは転生前に辛いことがあったようで、前世の事をあまり話したがらない。

 

その辛い前世が原因なのか、同世代の村の子供達と一緒に遊んだりすることが殆んど無いのだ。

 

とはいえ、村の同世代の子供達とは実際の年齢が離れすぎているのだから仕方ないのかもしれない。

 

この世界では幸せな人生を歩めると良いのだが……。

 

あれ?そう言えばメルは元々何歳だったんだろう……。

 

まぁ、何歳でも良いか!

 

ともかく今のところは明るく育っているのだから。

心配するだけ無駄だろう。

 

三年後には学校かぁ。平和な村でのんびりやってちゃ三年なんてあっという間に過ぎてしまうだろうな。

 

俺も7年間、毎日のマナ吸収を怠ってはいないが、今のところマナの許容量に限界は来ていない。限界が来るまではマナ吸収を続けるとするか。

 

 

ルベルアの心配を知ってか知らずか、メルは誰に言われるでもなく日々の鍛練を止めはしなかった。

 

メルの剣の腕はとうに師匠である村長を越えており、ルベルアが相手をしなければ、メルの練習相手を出来る者も村には居ないのだった。

 

しかし、魔法はミルザから教えてもらった回復魔法の“ヒール”しか使えていないようなので、魔法より剣が得意なタイプであるらしい。

 

 

 

とりあえず日課のマナ吸収が終わったらメルの剣の修行に付き合ってやるか。

ルベルアがそんなことを考えていた時、二人の体にピリリと何かが走った。

 

それは普段感じることの無い感覚。

 

 

これは……!

俺はこの感覚に似た覚えがある。

 

 

それは俺が生まれたばかりの頃、ある事情で“悪霊退散魔法”みたいなモノを使われた時に受けた感覚と同じだ。

 

いや、やっぱり違うかも?

んー。まぁ、気にしたものじゃないか。

 

 

得意の”まぁ、いいか理論“で深く考えないルベルア。

 

 

 

その時、“ギラリ!”と空で何かが光った。

 

 

 

 

『ん?なんだ?メル、今あそこで何かひか…』

 

 

 

――ドドォォオン!…ォォ…ン!!

 

 

 

「キャアッ!」突然大地が揺れ悲鳴をあげるメル。

 

 

『何か空から落ちてきたぞ!?なんだ!?ヤバくないか?』

ルベルアが感じる“ピリピリ”が先程よりも強くなる。

 

 

血も汗も無いはずのルベルアだが、全身からブワッと何かが込み上げた。

 

 

「ルアさん、村の皆が心配!」

メルが村の中心を見て、ルベルアに“クイッ”と合図を出す。

 

 

『体を預けろ!飛ぶぞ!』

ルベルアはメルの体を絡ませたまま宙に浮くと、そのまま村へと向かい飛行した。

 

衝撃音の聞こえた場所の近くへと、すぐに到着した二人。

 

 

『これ以上は人に見られる、ここからは走ろう!』

 

ルベルアが飛行を止め、メルに言う。

 

この世界に浮遊魔法が存在するのかは分からないが、魔法もよく知らぬ子供が空を飛んで来たらそれはそれで騒ぎになるだろう。そう考えたのだ。

 

メルはルベルアの言葉に頷き降り立つと、力強く地面を蹴り一気に駆け出した!

 

体は偽りのない7歳の少女だというのに、その足の速さはルベルアが昔応援していたオリンピック選手など比にならない程の速さだった。

 

 

村の中心地、何かが落ちてきたと推測できる場所には砂埃が上がっていた。

 

 

 

「みんな!大丈夫!?」

 

メルが声をかけるが集まっていた大人達は砂埃の方をを見据えたまま振り返らない。

 

 

 

「この村の諸君よ、驚かせてすまない!私はテスタントという者である!君達を害する気はないので安心してくれたまえ!」

 

砂埃の中から声が聞こえてきた。物音一つ立たぬ程静かな場に、村人たちの緊張感が漂う。

 

 

砂埃はまだ舞い上がっており、ぼんやりとした人影しか見えない。

 

 

「この村に、少し気になる者がいたのでね…。」

まだハッキリとした姿は見えない“テスタント”だが、言葉の内容が少し嫌な予感を匂わせる。

 

 

「テスタント殿!危害を加えないと言うのは本当ですかっ!?」

質問したのは村で一番 騙されやすいと噂される雑貨屋の次男坊。音を聞きつけ、野次馬に来たのだろう。

彼は背が高いのにとても細く体重も軽いので、村の子供達は彼の事をガリガリガリバーと呼んでいる。

 

可哀想なことに、本人はそのあだ名があまり好きでは無いらしい。

 

 

「もちろん、危害など加えません。ただ、私の期待通りの者がこの村に居たなかったならば、少し残念ですがね…。」

少し特徴的な声でテトンタスが返事をする。

 

 

中々収まらぬ砂埃に、ルベルアは少し苛ついていた。

 

この砂埃は一体いつ収まるんだよ!コイツはどんだけ凄い勢いで落ちてきたんだか。

 

 

「そうですか…。」

少しホッとしながらテントスタへ返事をするガリガリガリバー。

 

 

まだ立ち込める砂埃の中から、姿を現したテスタント。

その姿を見た者達は、彼が人族では無いことを悟る。

 

 

白と黒が入り混じった髪色に褐色(かっしょく)の肌。その瞳は人間で言う所の黒目の部分が赤、白目の部分が真っ黒。

 

 

この見た目は…、きっと魔族ってやつなのだろう。

服装はジェントルマンって感じだが、こういう奴はどうせロクデモナイ奴と決まってるよな。

 

 

ルベルアは“ジェントルマン風”な格好に対する偏見が強い。

 

 

―――砂埃が落ち着いてゆく。

 

 

 

と、砂埃の中からもう一人が姿を表した。

後頭部まで続くオデコ、フサフサした立派な髭。つぶらな瞳は恐怖からか、涙でうるうるしている。

 

 

誰だ!誰だ!!誰だ!?光る頭に、黒い髭!!

 

 

「髭おじちゃん!!?」メルが目をパチクリさせて言った。

 

 

「んだぁ……べぇ…。」

硬直していた髭おじちゃんが消えてしまいそうな声をだす。

 

 

「ランドルフさん!?なんでそんなところに!」

ガリガリガリバーが続けて言う。

 

 

というか…髭おじちゃんの名前、立派だなオイ。

 

 

話の腰を折るように砂埃から沸き出た謎の人間。

その存在にトンタコスも少し驚いている様子だ。

 

 

そんな中、村で一番純粋な男が、髭おじちゃんの異変に気付いた。

 

「あ、あ、ランドルフさん…!う…腕がぁぁぁぁあっ!」

ガリガリガリバーが麦わら帽子を貰えそうな勢いで叫んだ!

 

 

どうしたんだ、ガリガリガリバー!略してガリバー!!

 

 

「ランドルフさんその腕、やられたんですか!?」

 

ガリガリガリバーは震えながら髭おじちゃんの腕を指差した!

 

集まっていた村人も髭おじちゃんの腕に注目した!

 

髭おじちゃんの腕が……今朝まで全然平気だったはずの腕が……!

 

折れているではないか!!それも見事にとんでもない方向を向いて折れている!!!これは事件である!!!

 

“首に尋常じゃない量の麻酔針が刺さっている探偵”を呼ぶ必要がある!!

 

村人達も口をパクパクさせて唖然としている!

 

 

そんな中、ガリバーは渾身の力で叫んだ、

「危害は加えないって言ったのに!僕たちを騙しましたねぇぇぇぇぇえ!?」

 

 

 

「………。」

メルはお口にチャックをしている。

『………。』

俺は言ってもどうせ皆には声が聞こえないしね、しょうがないよね。マジで黙ってるつもりは無いんだけど、本当にしょうがないし。

 

「………。」

『………。』

 




転ツイpoint⑦
【ワプル村】村の人口は全体で約600人位居る。
エンドルゼアに点在する村々の中ではそれなりに人口が多い部類の村となる。
しかし、近年は18歳で成人を迎えた子供達は村を出て街で暮らす事が増えており、村長は頭を悩ませている。


私(筆者)の“こんな村で暮らしてみたい”な村です。
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