転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。 作:高ノ宮 伏魔殿
テスタントが巻き上げた砂埃の中から、なぜか髭おじちゃんが姿を現した。
だが、髭おじちゃんは腕に酷い怪我を負っていた。
その事に気付いた村人達はザワザワと騒ぎだし、テスタントへと疑いの目を向けていた。
犯人は、この中に居る!
推理小説も好きですが、私が書くとすぐに犯人が自首するストーリーになりそうです(///∇///)
太陽の気持ちいい5月の中頃、
普段は穏やかな筈のこの小さな村は騒然としていた。
「これを危害と言わずになんというのですか!!?」
ガリガリガリバーはワプルの中心で叫んだ。
その叫びの対象になっているのはこの男、
テスタントと名乗る魔族のような見た目の彼は、状況が理解出来ないといった様子で顎に手をやり首を傾げる。
テスタントは特徴的な声でガリバーに答えた。
「すまぬが、私はこの者に危害を加えた覚えがない。しかし面倒事は起こしたくないので、この者の腕は私が治してましょう…グラン・ヒール!」
テスタントが魔法を唱えると、髭おじちゃんの腕が緑の魔方陣に包まれていった。
――――変な方向を向いていた髭おじちゃんの腕が正しい方向に戻ってゆき、綺麗に塞がった傷口。
テスタントが使った魔法に感心するルベルア
『凄い!あんなに酷い骨折が一瞬で治っちまうなんて!』
「うぉお!治ったべ!元通りさなったべさ!!あんがと!あんがと!んだども、ミルザさんどこさ行けねぐなっづまったか」
髭おじちゃんは訛りが強い。
「これで私に敵意が無いと分かったでしょう?」
やれやれといった様子のテスタント。
「ぁああ……、奇跡……。僕は奇跡を見ました!貴方は素晴らしい人だ!聞きたいことがあると言ってましたね、何なりとお答えします!!」
ガリガリガリバーは興奮しながら返答しているが、ミルザが人を治癒するところを見たことが無いのだろうか。
先程まで疑っていた相手をこうも簡単に信用してしまうのだから、コイツの純粋度は世界に通用するレベルかもしれない。
『メルも早くあんな回復魔法覚えてくれよな!ともかく髭おやじの腕…治って良かったな』
まるで他人事のようにルベルアが言うと、
「うん、凄かったね。私もあれくらいの怪我を治せるように頑張る」
とメルが小声で返した。
「聞きたいことなのですが、実は先程もう見つけてしまいましてね。そこの小さき女の子よ、少し私と手合わせしていただきたい」
そう言いながらテスタントが指をさす。
テスタントの指が向いた先に居るのは―――――
「やっぱり、私…だよねぇ…?」
メルは“嫌な予感が当たった”という風に、自分を指さす。
「手合わせですと!?この子は確かに凄い才能を持っていますが…!まだ七歳の…!それも女の子ですぞ!そんな子に手を出すなど黙って見てらいれる訳がありませぬじゃ!」
どこから湧いたのか、いつの間にか居た村長のジジイが叫ぶ。
「ふむ、それは困りますね。私としても主の命により来ている訳ですから」
テスタントはチラッと村長のジジイの方を見て一言呟き、またメルの方に視線を戻す。
周りに集まっていた大人達は困った様子で皆キョドキョドしている。
その様子を見ていたルベルアは、野次馬の中にお馴染みの顔を見つけた。
―――ん?集まっている連中の中にモルドーとエリスの姿も在るじゃないか。何やってんだあの二人、娘のピンチだぞ?
「ええっ…と…。」
テスタントの“誘い”に、メルはどうしたら良いか分からずモジモジしている。
困ったメルを助けるでもなく、ルベルアが余計な情報をメルに教える。
『メル、左の方。モルドーとエリスがいるぞ』
悪魔は場面など気にせずに、すぐに囁きたがるのだ。
“自己中でも良いじゃない、悪魔だもの”である。
「本当だ…!」
メルも二人を見つけたようで、ボソッと言う。
モルドーとエリスもメルの視線に気付に気付いた。
ルベルアはその様子を黄色の眼でジッと見つめている。
モルドーは堪らなく不安な様子だが、隣に居るエリスは…心配……してる様子じゃねぇなアレは……。
エリスは子供の運動会に来た親みたいなノリで手をブンブンしている。
声は聞こえないが行けー!やっちゃえー!ぶっ◯せー!と言わんばかりで顔も凄く笑顔だ。
それを見たメルがボソッと言う。
「クス。何あれ……普通心配するよね。まったくもう、ふふ」
文句を言いながらメルも少し楽しそうな顔をしており、その顔からは少し緊張感が取れていた。
「よしっ!」
一呼吸したメルがテスタントに向かって歩き出す。
『まぁ、これでも神童さんだからな。親 (特にエリス)からも信頼されてるって事だな、ククク』
ルベルアがそう言うと、メルはにやけて頷いてみせる。
「くうっ、メル!皆の者、もしメルが危険になったら分かっておるな?」
村長のジジイはエリスの分までシリアスを演じているようだ。
―――。
「手合わせして頂けると判断しても良いのですね?」
テスタントが目の前へと歩いてきたメルに問いかけた。
その問いに対して、メルも問いで返す。
「まず、理由をお聞かせ願えませんか?」
テスタントは一瞬考えてから語りだした。
「分かりました。実は我が主はあなたが誕生した時から、今までずっとあなたに興味があったんですよ。
7年前、双竜星という物が現れましてね。
それは長く生きている者にとって少し特別な出来事だったのです。
それの落ちた日、落ちた方向に生まれた子供は我が主君が臣下に命じて探させた限りではこの村のあなただけでしてね。
つまり、あなたが危険な存在なのかどうかを確かめる為に手合わせして頂きたいのですよ。
見たところ、小さな体の割りに大きな力を持っていそうですしね」
テスタントは嘘か真かは分からないがそれなりの理由を話した。
そして話が長えぇ!!
話終わりに、もう一度聞きますか?はい/いいえ
がありそうなくらい長ぇええ!
自分のボスの名前は言わないように誤魔化してるし、どういう時にメルを危険な存在と判断するのか言わないし……27点ってとこだな。
ルベルアの思いとは裏腹に、ガリバーだけは納得したように何度も頷いている。
「えーっ…と、よく分かんないけど分かりました。やらなきゃ帰ってくれなさそうなので、やりましょう!」
メルは修行用の木刀をギュッと握りしめると体を落とし構えた。
その姿にルベルアも何か惹かれるモノを感じた。
俺以外の奴と実践するのは初めてなのに、なかなか度胸あるじゃないか。
よし。初の実戦だ、俺も集中するか!
実戦、
メルにとって、ルベルアと対しているいつもの練習と違い実戦においてはルベルアの力をメルと共有できると言うことだ。
といっても魔法は使用者が自ら作り上げたイメージで唱えるものであり、ルベルアの魔法はルベルアにしか使えないのであるが
相手からすればメルの姿しか見えない。が、実際はルベルアも同時に相手にする事になる。
そういった意味で、ルベルアが手を貸すことでメルの戦闘力は大幅に跳ね上がるという事だ。
「では、お相手願おう!そこの髭のお方、開始の合図をお願いする!」
テスタントが武器も持たずに構えながら言うと、髭おじちゃんが頷いた。
――――息を飲む村人達。
「だっぺ!!」
髭おじちゃんが合図を叫んだ!
「相手の力量が分からないから、少しずつお願い!」
メルはそう言うと素早く後ろに跳び、テスタントから距離をとる。
『任せとけ!とりあえず、
メルの強化レベル1といったところか。
俺の声はメル以外には聞こえないので、相手からしたらメルが無詠唱で身体強化したことになる。
ククク。こちとら悪魔だ、卑怯なんていうなよ!
ルベルアは強化魔法だけ使い、戦う二人を傍観した。
手を貸すことでメルの実戦での成長に悪い影響を与えるのではないかと危惧したからだ。
身体能力が強化されたことを感じたメルが、今度は前方に全体重を乗せるとテスタントへと向かって跳び込んだ。
テスタントは後ろへ下がったメルに急接近して蹴りを出そうとしていたが、突っ込んできたメルを見て脚を出すのを止めた。
テスタントはそのまま身体を半分ひねり小さく後ろへ跳ぶと、メルの攻撃を受ける体勢をとった。
一瞬のうちにメルとテスタントで駆け引きが行われる。
元冒険者である村長も、二人のスピードを目で追うのがやっとな様子だ。
村人に至っては速さを目で追いきれずに、何処を向いているのか分からない。
うおー、コイツ、ポッと出のモブ野郎かと思ったら結構強そうじゃねぇか。
メルは分かりやすく突きの構えを見せ、テスタントの反応を見ると首を狙った上段斬りからの中段斬り――とフェイントを入れて木刀を振った!
テスタントは透かさず突きを受け流す素振りを見せたがフェイントに気付いて紙一重で頭を後ろに引き上段斬りをかわし――さらに後ろへ跳んで中段斬りも避けた。
「ほぉ、すでに中々のモノですね。剣の腕前もさる事ながら……あなた、まさかとは思いますが、無詠唱が使えますか?」
テスタントは息も切らさずにメルへ問う。
「はぁ、はぁ、んー……無詠唱? 私は剣の方が得意ですので」
メルは少し息が上がっているがまだ大丈夫そうだ。
『もう少し強化しようか?それか、俺も攻撃に参加しようか?』
俺とて心配な訳じゃないが、テスタントはまだまだ本気じゃなさそうなので、一応メルに聞いておく。
「ふぅ、まだ大丈夫。けど、この人の方が強いみたい。もし相手が本気出してきたらルアさんが守ってね」
メルがテスタントに聞こえぬように小声で俺に答える。
「まだイケるようですね、では!」
テスタントは先程より格段にスピードを上げて、メルの顔めがけて突きを放つ――!
メルはその腕を剣で払ったが、その隙をつかれて脇腹に蹴りを喰らってしまった。
「ケホッ!」
メルからひとつ咳が出る。
その隙を逃すまいと、テスタントは小さな突きでメルの顔を狙う。
メルはそれを紙一重で避けることに成功したが、
避けた拍子にほんの少し足を縺れさせた。
あまりのスピードに村人達は時間が止まったかのように、先程までテスタントが居た場所を見続けている。
汚い手を使わぬ二人の攻防は称賛に価するだろう。
が、汚い手を使ったわけでもないテスタントの攻撃に、傍観者の悪魔は腹を立てている。
この野郎!いきなりスピード上げて来やがって!
しかもこんな小さな女の子相手に顔面狙いかよ、
酷い真似しやがって!!
テスタントはさらにスピードを上げて、距離を取ろうとしているメルヘ、追い打ちの蹴りを繰り出す。
――チッィッ!
辛うじてそれを避けたメルの頬が少し切れ、うっすらと血が滲む。
遂に我慢出来なくなったルベルアが、テスタントには聞こえ無いということも忘れ言い放つ。
『遊びは終わりだ!』
――ルベルアの眼が怒りで黄色から赤へと変わる――
『
ルベルアは七年で編み出した強化魔法の中でも、特に強力な魔法を連続詠唱した――!
「ちょっ!ルアさん!?」
突然体の軽くなったメルは、“わっ”となりながらも地面を蹴り体勢を立て直すと、再び低く腰を落とし剣をかまえた。
ッッ――!瞬間放たれたテスタントの蹴りを横目に見ながら前に踏み込んだ!
前に踏み込んだメルは、そのままの勢いでテスタントの胴体目掛けて木刀を一振りした!
バキィッ―――!
テスタントの横腹へ思い切り当たった木刀は先っぽが折れ―――折れた剣先は回転しながら飛んで行く。
その剣先は離れて見ていた村人の間を縫って飛ぶと、やがて宿屋の壁を突き破った。
「ウッグハッ!」
――――ドォッオン…!!
まともにメルの攻撃を受けたテスタントは呻き声を上げ、身体をひしゃげたまま村の北西の防風林へと吹っ飛んだ。
「あっ……ちゃ~!強すぎた!」
メルが心配そうにテスタントの元へ向かう。
村人達がやっと現状に気付き ざわつき始めた。
テスタントは口から血を流し、地面に倒れたまま動かない。
死んでしまったのだろうか。
アーメン!
と、テスタントが震えながら口を動かす
「ぐ……ハァ……。私は…本当に木刀でやられたんですか……?」
そうメルに尋ねた後、テスタントは起き上がること無く気絶してしまった。
『あっ、生きてたか。木刀には違いないぞ!』
魔法の効果で普通より固かったかもしれないけどな…(小声)
「木刀…だったんですけど…。ちょっとやりすぎてしまいました。ごめんなさい!」
メルはそう言いながら “キッ!”とルベルアを睨んだ。
『すまん、やりすぎちゃった!てへ』
怒ったメルを可愛いと思いながらも、謝るルベルア。
沈黙したままのテスタント、ちょっと手を貸しすぎたかも知れないが、メルの勝利だ!
「え……と、とりあえずトドメさしますね!」
そう言うとメルはギュッと唇を噛みしめ眼を瞑り、折れた木刀を高々と振り上げた!
―――えっ!?トドメさすの!?
俺の無いはずの心臓は飛び出て、そのまま宿屋の壁にめり込んだ!いやそうじゃなくて、
トドメとかさしていい相手なのか!?
メルが勢いよく木刀を振り下ろした!
アヒィーーー!
『
――ギィィイン…!!
ルベルアは咄嗟に魔法を唱え、防壁魔法がメルの木刀を弾いた。
『メルみたいな小さい子供はまだ、トドメとか刺しちゃらめぇぇぇぇえ!!』
俺の心の叫びがメルの頭に響き渡った……
転ツイpoint⑧
【魔法】使用には種族毎に必要な力が違うが、習得方法は既存の魔法を他の者に習う 又は自身のイメージを練って習得する。の主に二通りの方法がある。
後者の場合は本人が効果と詠唱のイメージを崩さぬように唱える必要があるために必ず魔法に名前を付けておく必要がある。
なので、訛りの強い人、滑舌が絶望的な人がゼロから魔法を考えた場合 ちょっとだけ独創的な技名となる。