転生っ娘にツイてしまった転世した俺の話。   作:高ノ宮 伏魔殿

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ワプル村へやって来た謎の男、テスタントと戦うことになったメル。

少し苦戦しかけたメルだったが、ルベルアがハイレベルの強化魔法を使った事で、最後は愛用していた木刀が折れる程の一撃を浴びせ圧勝したのだった。

メルはテスタントにトドメを刺そうとしたが、ルベルアはそれを阻止した。




実は結構テスタントは好きなキャラですw(*//艸//)


#9 オトコの象徴。

ワプル村の村長は走った!息を切らせて走った!

 

村の神童(わるがき)がまたとんでもないことをしでかしたのではと血の気を引かせながら走った!!

 

 

―――ワプル村北西の防風林。

 

 

「痛っ……、手が痺れたぁ!ルアさんいきなり防壁陣なんか出さないでよぅ…!」

 

本気で振りかぶった木刀が、硬い防壁魔法に弾かれた為に、手首を痛めて不満顔のメル。

 

 

『いやいやいや!メル、ちょっと落ち着け!簡単にトドメなんか刺しちゃいけないだろ!この人も命の取り合いまでするつもりじゃ無さそうだったし、聞きたいことも沢山あるし…それに―――絵面的に!』

 

ルベルアは初対面の魔族もどきを全力で庇った。

 

 

「だって、ルアさんだって”遊びは終わりだ!“って言ってたじゃん!眼真っ赤っかにしてさ。あれはヤル気満々の顔だったよ?それに、私は村を守ろうと思ったから……」

 

似非7歳児が的確にルベルアの痛い所を突きながらゴニョゴニョ言う。

 

 

 

「ゼェ……ハァ……メルよ、お前は無事なのか!?何が起こったんじゃ!?テスタント殿は?」

 

全力で走ってきた村長のジジイが喉をヒューヒュー言わせながらメルに問いかけた。

 

 

「私は大丈夫だよ!テスタントさんはほら、そこでピクピクしてる」

 

 

「なわぁー!!テスタント殿!息は有りますか!?なんという……、メル!やりすぎじゃ!すぐにビショップ ミルザをここへ!」

 

テスタントの状態を見て驚き飛び上がった村長のジジイは甲高い声でメルに叫んだ。

 

 

「村長、私ならここにおりますよ。この御方を治療すれば良いのですね?」

 

声の方に目をやると緑の髪の妖艶な美女がこんな所に!!けしからん!あっ。ミルザか。

 

ミルザがまるで用意されていたかのようにすぐ後ろに立っていた。

 

「おお!ミルザ殿!来てくれておったのか!すまぬがすぐにこの者を治療してくれぬか!」

 

 

頼み込む村長のジジイだが、視線はミルザの顔より30センチ程下の方を凝視している。

 

 

その様子を見ていたルベルアは憤慨した。

 

このエロジジイめ!

まったく…何処を見ているんだ……ふむむぅ…!ぉぉ、全く…けしからんふふ、ハァハァ。

 

変態二人の熱い視線を意に介せず、ミルザは魔法を詠唱した。

 

「この者に光の加護を!グラン・ヒール!」

 

ミルザが魔法を唱えるとテスタントが緑の魔方陣に包まれ、瞬く間にその傷を癒してゆく。

 

 

そこでルベルアはあることに気付いた。

 

ん?そういえば…この魔法ってテスタントが髭おじちゃんに使ったのと同じだよな?気になったルベルアはメルに尋ねた。

 

『メル、そういやメルもミルザも光の加護がなんたらって詠唱の時に言ってたけど、テスタントは言ってなかったよな?同じ魔法なのに。魔法の覚え方の違いか?』

 

ルベルアの質問に、メルが小声で答える。

 

「えーと、多分意味はないと思うんだけど、光の加護がーとか言った方が雰囲気がでるからだと思う」

 

『そ、そうか。なるほど。』

ルベルアは無駄な事を聞いたようだ。

 

 

ルベルアが無駄な所に気を取られていた間に、テスタントの回復が終わっていた。

 

「助かりました。私の油断が招いた結果、ご迷惑をおかけしました。あなた様がたの心遣いに感謝致します」

 

傷の癒えたテスタントが起き上がり丁寧に礼を述べた。

 

 

メルも謝るべきか迷ってモジモジしている。

 

 

「傷が癒えたようで、安心しました。もう大丈夫なようなので私はこれで失礼しますね」

 

ミルザはそう言うとゆっくりと教会の方へと戻って行く。

腰つき柔らかに歩くその姿を眼で追ったルベルアと村長のジジイ。

 

目の保養に満足した村長のジジイが、“キリッ”と顔を変えてテスタントに話しかけた。

 

「ふむ、それでテスタント殿は何者なのですじゃ?見たところこの辺りには居ない種族と見受けられますがの。ここは平凡な村、平和だけが取り柄みたいなものでして。面倒事はご遠慮願いたいのですが…」

 

村長のジジイは村長っぽい事を言った。

 

 

「始めにも言った通り、我が主君はこの村をどうこうする気はありません。ただ、先程は久しぶりに実力者と手合わせする機会が巡ったもので少々熱くなってしまいましたが…。それについてはお許し願いたい」

 

テスタントはその特徴的な声で丁寧に話した。

 

 

最終的に半殺しにしたのはこっちの方なのに、原因を作ったからと謝るなんて律儀な奴だ。

 

我が足元にひれ伏すならば許してやろう!クハハハ!

とか想像してたけど言わなくて良かったー!

 

 

「こちらこそ、テスタントさんの強さにビックリして加減を間違えてしまいました。ごめんなさい!」

 

 

「フフ、小さき女の子に挑み、負け、さらには頭を下げさせたとあっては私も何も言えません。全ては私の落ち度、お気になさらず」

 

テスタントが少し気まずそうにしながらメルに言った。

 

そのままテスタントは言葉を続けた―――

 

「我が主君、我が種族はここよりずっと北にある浮遊の大地に住まう天使族でございます」

 

 

――――天使族?え?どこの何方が?

 

 

「え?主君とその浮遊の大地に住む人が天使さんなんですか?テスタントさんは天使さんの…えーと」

 

ルベルアと同じ事を思ったのか、メルがテスタントにごにょごにょと聞き直す。

 

 

「はい、主君を含め私達“天使族”が浮遊の大地に住んでおります」

 

テスタントがこちらの意図を理解してくれたのだろう、的を射た返答をくれた。

 

 

しかし、天使!!?

 

 

ルベルアとメルは爪先から頭の上までテスタントを舐め回すように見つめる。

 

まず全体的に黒と赤を基調としたスーツというかタキシードというかローブというか…軍服というのがが一番近いか。

 

褐色の肌にほんの少しだけ鋭い爪。

 

白と黒が入り混じった髪色、そして極めつけがその瞳だ。

 

人間で言う所の黒目の部分が赤で、白目の部分が黒。

 

 

ふとルベルアとメルの目が合う。

 

『どうみても俺たちのイメージの天使じゃないよな』

 

ルベルアがそう言うと、メルが2回頷いた。

 

 

「天使族でしたか。わしも天使族の方は初めてお目にかかりましたのぅ」

 

そう言いながら村長のジジイはメルをチラリと目にやる。

 

「これ、メルや。そのように人をジロジロ見るものではないぞ」

 

村長のジジイに叱られたメル。

 

 

「して、テスタント殿は主君殿になんと報告するのですじゃ?

ワシらは変わらず今まで通りの暮らしをして行きたいだけなのじゃが。

村の何かが主君殿の迷惑となるのであらば出来る限り改善するように努力はしますがの」

 

村長のジジイはテスタントの眼をしっかりと見ながら、今回の騒動の行方を左右する芯を突いた。

 

 

テスタントは何かを考えている―――

 

 

「そうですねぇ。私も使いとして来ただけですので、それらの答えは我が主君へ直接お聞きになられてはどうでしょう。我が主君の居る浮遊城までは、私が案内致しますので」

 

テスタントは、ルベルアが面倒に感じるような提案を言い放った。

 

 

「なんと…それですと…。誰が行くかの折り合いもありますので、村の者と相談してからでも良いですかな?話が決まるまでは宿を用意しますので、そちらでごゆるりとお休み下さい」

 

村長のジジイは頭をポリッと掻きながらテスタントに言う。

 

 

その言葉にテスタントが返す。

 

「浮遊城へはそこの女性、名はメルと言いましたかな?メルさんをお連れしたい。本当は彼女が暴れても主君に危険が及ばぬか試したかったのですが、それを確かめるには私も全力を出さねばならないようですし。そうなると村が……。

ですので後は主君の力を信じる事に致します」

 

そう言ったテスタントはメルの方に手を差し出し軽く会釈をしてみせた。

 

 

その仕草にルベルアは少し苛立つ

 

やっぱりコイツらの狙いはメルか!

しかも、さりげなく“さっきは全然本気じゃなかったしー!”的な事言いやがって。

もう少しでトドメ刺されそうだったくせに。

 

村長のジジイも、まだ信用出来ないといった様子で、テスタントへ返事をした。

 

「待ってくれんかの?どちらにしても村の連中と相談はせねばなりませぬで。メル、テスタント殿を宿屋まで案内してくれんか。ワシは皆と話してくる。ではテスタント殿、後程…」

 

 

村長の一声で、メルはテスタントを宿屋に“連行”することとなった。

ただの案内ならわざわざメルに頼む必要はない筈で、村長のジジイの警戒が窺える。

 

 

「えと、それじゃあ行きましょう」

 

メルはテスタントに声をかけると宿屋に向かい歩き始めた。

 

 

『あんなに居た大人どもは途中から全く居なくなってたな。飽きて帰りやがったのか…適当な連中だよなぁ』

 

 

ザッ、ザッ、ザッ―――宿屋までは歩くと地味に遠い。

 

 

メルが無言で歩いていると、テスタントが口を開いた。

 

「ところでメルさんはどうやって無詠唱を習得されたのですか?」

 

まだ戦闘の時の事を気にしていたようで、テスタントは歩きながらメルに質問した。

 

 

「ええっと、小さい声で言ってただけですよ」

 

メルが咄嗟に嘘をでっち上げる。

 

 

「ふむ、途中、かなり高濃度の魔力を感じましたが…。なぜかあなたからはそれほどの魔力は感じませんし。その魔力の流れ方を見るに、自分の魔力を隠せる訳でも無さそうです……ふぅむ…」

 

メルの返答を聞き流しながらテスタントがブツブツと独り言を呟いている。

 

 

ルベルアはそれを聞き、考察する。

 

 

テスタントの独り言を聞くに、魔力は隠したり出来るのか。ということは隠さないと戦闘力が丸分かりになったりすんのかな?

 

俺の魔力は見えてないようだが、一応隠す練習もしとくか。

 

 

ルベルアがそんな事を考えていると、いつのまにか宿屋に到着していた。

 

 

しかし、宿屋の前では変な夫婦が騒いでいる。

 

 

それを見て何故か胸を熱くするルベルアはコッソリ実況を始める。

 

どーもー!見てください、宿屋の前で変な奴が騒いでますね!

 

夫は太っちょでオカッパ頭、奥さんはパンチパーマ、強烈夫婦と言ったところか!相手にとって不足は無い!!

その相手は一体どこのどいつなんだ!?

 

 

「んん!?おいおいおいおい!あんた!どうしてくれんだこれ!」

 

変な夫がテスタントの姿を見つけると、いきなりテスタントに突っ掛かったー!

 

 

テスタントは様子を見ている。

 

 

「あら?メルちゃん!さっきメルちゃんのお母さんから、見かけたらそろそろ帰るように伝えて。って言われてたのよ!早く帰ってあげなさいな!」

 

変な奥さんが早口で呪文を唱えたっ!

 

変な奥さんの呪文はメルに炸裂っ!

 

「あっ、じゃあ私は帰りますねー!」

 

そう言うとメルは足早に自宅へと逃げ出した。

 

 

『俺はもう少しここに残って様子をみておくぞ』

 

ルベルアは眼を煌めかせて(といっても黄色い眼は表情を変えてくれないが)様子を見ている。

 

 

「あんた!黙ってないで何か言ったらどうなんだい!?」

 

変な夫はなおもテスタントに突っ掛かる!

 

 

「いや、まずは…」

 

テスタントは反撃の構えをとった。

やるのか?やらないのか!

 

 

「いや、じゃないんだよ!!!まずは謝るべきだろ!!!」

 

戦闘力5くらいしかなさそうな変な夫の勢いは凄い!テスタントの反撃は失敗した!!

 

 

 

理由は分からんが凄い怒ってるなぁ、面白いから良いけど。

しかし、宿屋の親父と女将は一体どうしたんだ?テスタントとは今日初めて出会った筈だが。

 

 

テスタントは黙ったまま、宿屋の夫婦の顔を眺めている。

 

 

宿屋の親父はさらに叫んだ。

 

「ウチの宿はなぁ!今年建て替えたばかりなんだよ!!それがあんたの起こした騒ぎでこんなんなっちゃってんだよ!!」

 

熱くなっている宿屋の親父は、綺麗な壁の一部を指差す。

 

 

ルベルアもその指の先に視線を送った。

 

ほぅ、とても綺麗な壁に……なんということでしょう!何に使うよかよく分からない穴が!子供の頭くらいの大きさでしょうか!家の中からも外が見えるようにとの匠の心遣いが…ん?こ…これは…!!

 

 

一部始終を遊びながら見ていたルベルアだったが、興味本意で穴の空いた壁をすり抜けたその先で、見てはいけない物を見つける。

 

 

外壁のに空いた穴を抜けると客間の中になるのだが、客間と中通路の間の壁にこれまたポッカリと抉られたような穴が空いている。

 

さらにその穴を抜けると、宿の中心へと抜けるのだが…そこには一際太い立派な柱が立っていた。

 

 

その柱にそれはあった……。

 

 

まるで下ネタかと言わんばかりに柱の下部、人の腰くらいの位置に突き刺さりそびえ立っているソレ。

 

 

新築したばかりの宿の大黒柱に、折れた木刀の先っぽが!!!

 

 

 

事の原因を理解したルベルアは、この場から逃げることを決めた。

 

よし、メルの所に帰るか……。

スィーー!

 

 

夕焼けは今日も綺麗だなぁ…。

 




転ツイpoint⑨
【大黒柱(だいこくばしら)】家屋を建てる際に中央に立てられる柱。他の柱より太く、そこから十字に伸びる梁(はり)や屋根などを支える重要な柱である。

転生前の世界では現代建築の都合によりあまり使われなくなったである。
また一家を支えるという意味で、その家の主人を大黒柱と呼ぶこともあるが、その言葉もあまり使われなくなった。
理由はお察しーー。
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