スペースアヴェンジャー   作:アサルトゲーマー

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↓スペースバズーカはこんなゲーム↓

・プレイヤーはマイケルの相棒となってロボットバトルを行う
・世界は経済破綻と天災が同時多発的に起こりもはや国が機能していない
・スーパーファミコンとソフトのほかにスーパースコープが必要
・難易度は高いが必ず攻略法が複数存在し、敵のアニメーションも相まって飽きにくい
・たのしい


リベンジャーとアヴェンジャー

 私は、人間の屑だ。

 復讐に狂い、人を殺し、自らに火をつけ自殺した。

 

 だから私は地獄に落ちたのだと思う。

 

 

 

■■■

 

 

 

 足元には血のしみ込んだアスファルト。前を向けばガラスの割れた高層ビルたちが目に入り、後ろに傾いた自由の女神像が空を見上げている。

 自分の記憶が確かならここはアメリカのニューヨークなんだな、と。どこか遠い出来事のように考えていた。

 

 私は死んだ。しかし私は生きている。

 

 復讐を遂げ自身を焼いた私は、この世界にただ一人放り出された。

 知人に合おうにも電話は通じず、交通機関は完全に死に、治安すら街中に居ながら追いはぎに出会う始末。国は完全に崩壊していたのだ。

 日常的に誰かが殺されたという噂話が耳に入り、そして首を切られて処刑され並べられた人たちを見て、ここが地獄なのだと確信を持った。

 

 しかしながら私は幸運なのか、この世界にやってきてから不思議な力を持っていた。言ってしまえば、魔法だ。

 地面を蹴れば自身の伸長の十倍は飛び上がれたり、自らの存在を薄れされて他人に意識されなくなったり、とても飲めないような汚い水を浄化できるようなものだ。これのおかげで私は孤独でも生きていられるのだろう。

 自ら死んだ手前、かなり自分勝手だと思うが…今の私には死にたくない理由がある。しかし生きるための理由もそれだけで、暇を持て余した私は魔法を使えるのをいいことに海をまたいで散歩をしていたのだ。

 

 そしてたどり着いたのはどこかの港。自らの存在を薄れさせながら上陸すると、さっそく誰かが袋叩きにされているのが目に入った。

 この世界の日本でもよく見た光景だ。末法の世というのはこのような事を言うのだなと観察していると一人二人とその場を離れていき、最後に血まみれの男が残った。

 若い白人の男だ。手の指を全て折られ、右膝が逆に曲がり、額からどくどくと血を噴き出している。

 

 酷い事をするものだ。たとえ生き残れてもこの怪我ではまともな生活は送れまい。

 私はどうするべきなのだろう。次にやるべきことを考えるために視線を巡らせた。

 足元には血のしみ込んだアスファルト。前を向けばガラスの割れた高層ビルたちが目に入り、後ろに傾いた自由の女神像が空を見上げている。

 適度な大きさの割れたガラスを手に取り、顔を映しながら自らに問いかける。

 

「私ならどうする」

 

 ガラスに映る顔。かつての私の妻が、分かり切った質問をしていた。

 

 

 

 

 結局。私は男を助けた。

 魔法とは便利なもので、なんの下準備もなしに骨折した患者を完治させるだけの力がある。

 適当に廃ビルの中に連れ込んだ私は頭、手、足の順番で治していった。頭蓋が陥没していたので放置していれば間違いなく死んでいただろう。

 

 やる事はやった。あとは彼次第だとその場から離れようとすると、目を開けた彼と目が合った。

 英語は喋れない訳でもないが、私は無言でその場を立ち去った。男も何も言わなかった。

 

 

 

 

 それから数日が経った。

 私は何をするのでもなくニューヨークをフラフラしていた。日本と違って住人同士のいざこざが起こるとすぐに発砲音が聞こえるあたりに国際色を覚えながら廃ビルの中を漁っていた時だった。私がドッグフード入りの缶詰を鞄に入れようとしていたところで一人の男がガラスを突き破って入室してきたのだ。

 突然のことに目を白黒させながら男を見ると、ばっちりと目が合う。

 

「お前はあの時の…」

 

 飛び込んできたのはどうやら治療してやった男だったようだ。部屋に鉛玉が次々と押し寄せてきている状況に退っ引きならない状況だと理解するのに時間はかからなかった。

 私は男の手を引き、魔法で風を起こして部屋のドアを乱暴に開けた。喋らないように無理やり手で口を押さえ、存在を極限まで薄めさせる。

 

 しばらくすると銃声が止み、銃を持った男たちが窓から入ってきた。男たちはテーブルの下やベッドの裏などを見ているようだが、まさか部屋の真ん中で息を殺しているとは思わなかったのだろう。男たちのうち一人が開いたドアを見つけ、やがて全員がその場を後にした。

 

 ぷは、と息を吐く。流石に鉛玉までは魔法でどうこうしたことがないので緊張していたようだ。

 何が起こったのかわかっていない男と顔をあわせる。撃たれたのか腕から血を流していたので、そっと触れて治してやった。

 ころん、と転がり落ちる鉛玉を信じられないような目で見る男。

 

「あんたは触るだけで人を治すことができるのか?」

 

 私ができるのはここまでなので、部屋の中を漁りなおそうとしていたら男から質問された。そうだ、という意味で首肯する。

 

「どうして二度も俺を助けてくれたんだ?」

 

 そんなもの、ただの偶然だ。肯定も否定もせず、棚を漁る。

 

「なあ、あんたに礼をしたい…。俺のセーフハウスまで来てくれないか。水もメシもまともなものがある」

 

 その言葉に私の動きがピタリと止まった。棚から出てきた消費期限切れのパスタソース缶と男の顔を見比べる。

 

「俺はマイケル。マイケル・アンダーソン。あんたは?」

 

 右手を差し出し、握手を求めるマイケル。少し悩んだ私は、マイケルの手にパスタソース缶をぽんと置いた。

 

「私はアザミ」

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 マイケルのセーフハウスは巨大な地下倉庫だった。

 地面から天井まで軽く10メートルはあり、様々な機械部品が所狭しと並んでいる。そして何より目立つのが中央にある巨大なロボットだ。

 

 スタンディング・タンク。通称STと呼ばれるそれはこの世界における娯楽品であり、また権力の象徴だ。

 この世界において武装グループには必ず一台はSTを持っていて、武力衝突を起こす前にこれを使って決着をつける。

 抗争とは相手から物資を手に入れるチャンスではあるが、この世界においてはもはや残り僅かな自らと奪う先のリソースを食いつぶすだけの行為であり、忌避される傾向にある。そこで生まれたのがSTを使った「バトルゲーム」だ。

 バトルゲームの勝者は栄光と新たなる地位を得、敗者は勝者に跪かなければならない。当然敗者側にはそれを受け入れない者がいる。そういった輩は始末されるか奴隷よりもなお酷い扱いをされるかの二択なのだが、稀に第三の選択肢を取れる者が居るのだ。

 

「驚いたか?俺の自慢のSTさ」

 

 それは勝者に反逆するという事。マイケルは私と出逢う前から逃亡生活を続け、そして運よくここを見つけたのだ。

 しかして幸運は続かず。必要なパーツを手に入れようと地上に出たところを見つかりなぶり殺しにされそうになったのだ。

 

「君、なかなかハードな人生を送っているね」

「ハードじゃない人生を送れてるやつの方が稀だろう」

 

 マイケルの言葉にそれもそうか、と納得をする。

 彼の言うまともなメシとやらを食べながら話をしていて分かったことがあった。

 

 

 こいつは私と同じ復讐者だ。

 

 

 彼はバトルゲームで父を殺され、その仇を討つ(アヴェンジ)ためにSTを利用しようとしている。

 いや、それだけではないのも分かっている。彼は正義感あふれる好漢であり、今アメリカを支配しているST乗りを降して弾圧の無い平和な治世を実現しようとしているのだ。そしてそれを足掛かりに世界中のST乗りを支配して恐慌政治を行う、父の仇でもあるアヌビスを斃そうと計画している。

 なんともはや壮大な話だ。復讐(リベンジ)に狂っていた私には世界を救うついでに仇討ちなんて思いつきもしなかっただろう。

 

「なあアザミ。一緒に世界を変える気はないか?」

 

 その言葉で思考の海から戻り、マイケルの顔を見る。その瞳には力があった。

 

「あんたは…見ず知らずの俺を治すようなお人好しだ。少なくとも死体から物を盗るような悪人なんかじゃない」

「人と違う特別な力があるから余裕があるだけだ。それに私は……」

 

 私怨に狂った人殺しだ。その言葉は口の先から空気が漏れただけで、音にならなかった。

 

「アザミ。俺は協力者が欲しい」

 

 マイケルは私の手を取って、STを見上げた。つられて私もSTを見る。開いた胴体部には前後に分かれたコクピットが二つあった。

 古い設計だ。最近のSTに複座式は無いと聞く。コンピュータの高性能化によってパイロット一人分の重量を浮かせれる分装甲や武器を積めるため、今のSTと言えば一人乗りを指すものがほとんどだ。それに息の合わないパートナーと組みなんかすれば上半身と下半身がぶつかり自壊する可能性もある。

 

「コクピットが二つなんて古い設計だろ?これはな、親父の設計図で作ったんだ」

「通りで。それでバディが見つからないなんて思いもしなかったのかい?」

「まあ、そうなんだ」

 

 ハハ…と笑いながら頭を掻くマイケル。

 こいつはいい奴なんだろうが、愚か者でもあるようだ。そうでなければ二度も死にかけてはいないが。

 手を握るマイケルが私の顔をじっと見た。

 

「俺はこのクソッタレの世界であんた以上のお人好しを見たことが無い。だから俺の相棒になってほしい」

 

 まっすぐな言葉が私を貫いた。しかし。私は。

 

「私は、復讐に手を貸すことはできない。すまない」 

 

 その手を振りほどき、逃げるようにその場を後にした。そのときのマイケルの顔が、妙に頭から離れない。

 

 

 

 

 

 

 

 私は廃車の上に寝転がって夜空を見上げていた。文明崩壊により排ガスの薄くなった空には色とりどりの星が瞬いている。

 

「私は…」

 

 どうすればいいのだろう。この世界に救いをもたらす者はいない。いるとしたら彼のような愚か者だけだ。しかし愚か者だけでは何も成せやしない。

 

 目を閉じると、今でも殺した男の顔が鮮明に浮かぶ。

 私の妻を車で轢き殺した男。その男が誠実で、罪を償おうという心があれば恨みはすれども、殺すまではしなかっただろう。

 だがあの男は、金で目撃者を買収し、のうのうと暮らしていた。裁判の判決は執行猶予4年の実刑2年。これだけだ。

 

 奴は酔っていた。奴は明らかに制限速度を超過していた。そして愛する妻がすぐそばで轢かれ、尻もちをついて茫然としていた私にこう言い放ったのだ!

 

「あーくそ、やっちまった。いくら払えばいい?」

 

 思い出すだけでも腸が煮えくり返るようだ。

 その日から私はあの男を殺すと決意した。探偵を雇い、家の鍵を手に入れ、そして夜中に忍び込み…。胸を、刺した。

 

 

 何度も何度も刺した。ドロドロした気持ちが晴れる思いだった。そして私は…何もかも無くした事に気が付いた。

 

 復讐に金を使い込み。殺すために家族や親族とも縁を切り。会社には連絡すらせずに無断欠勤を続けている。

 そして目の前の死体だ。金も、家も、親類も、愛する人も、復讐する相手すら失った私には何も残っていなかったのだ。

 

 目を開ける。いつの間にか夜は明けていたようで、黄金の光が摩天楼の街から顔を覗かせていた。

 

「私ならどうする」

 

 車から降り、顔をミラーに映す。かつての私の妻が、分かり切った質問をしていた。

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「マイケル」

 

 私は再び地下倉庫にやってきた。酒でもやっていたのか、ビール瓶を握ったまま机に突っ伏して寝ていた彼はびくりと体を揺らして顔を上げた。

 

「アザミ!」

「君に聞きたいことがあったから戻ってきた。いくつか質問をしたい。いいか?」

 

 私の言葉にマイケルは姿勢を直し、頷いた。

 

「君に家族は?」

「おふくろは俺を産んだ時に死んじまったし、親父も殺された。兄弟もいない」

 

「配偶者や親友は?」

「いない。そんなことを考えている暇もなかった」

 

「では仇を討った後、君はどうしたい?」

「それは…」

 

 彼が言いよどむ。やはりだ。彼には復讐のあとのビジョンが無い。…私と同じで、何もないのだろう。そう思って質問を切り上げようとしたとき、マイケルが声を張り上げた。

 

「世界をもっとよくする!アヌビスを斃せば次の支配者は俺だ!だから、まずは独裁状態をぶっ壊す!」

 

 ……ああそうか。こいつは馬鹿だった。馬鹿で、愚か者で、お人好しで…だからこそ、放っておけない。

 

「本当にできるのか?」

「できるさ!」

 

 即答。あまりの無思慮っぷりに笑いさえこみ上げてくる。

 くつくつと笑った後、私はマイケルの手を握った。

 

「正直、復讐に手を貸したくはないが…。世界を救うためだったら協力してやってもいい」

「アザミ…」

「それに正直、放っておいたら直ぐに死にそうだからな。夢見が悪くなる」

「こいつ!」

 

 彼に頭を掻きまわされた。しかしそれは決して気持ちの悪い物ではない。

 かつて私と妻がやっていたじゃれ合うような行為に私の心には喜びすら浮かんでいた。

 

「じゃあこれからよろしく頼むぜ、アザミ!…いや、相棒!」

 

 マイケルの言葉に私はひとつ大きく頷いて見せた。

 

 




スペースバズーカおじさんがいたら今すぐスペースバズーカの二次創作を書こう!!
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