仮面ライダーDREX 第1話 始まり=Beginning
西暦2020年、夏。我々の知る世界とは多少違う点がありながらも世界は紛争やテロが起きる中で平穏な時を過ごしている人々も数多く居た。
北海道大学の大学院に通う三笠龍太は卒業に向けて卒業論文の研究を進めていた。龍太は北海道の鵡川穂別町で発掘されたカムイサウルス、新たに発掘されたカムイサウルスの化石の研究を行っていた。卒業論文のテーマでもあるその恐竜の研究を日々行っている龍太。
日々の研究を行っているそんな中、龍太はカムイサウルスの化石が発掘された場所で新たな発掘調査に参加することになった。かねてから発掘調査に行くことを熱望していた龍太はこの発掘調査は大変楽しみでもあった。
研究室で準備をしている龍太は発掘調査で使用する道具を始めとした必要なもの、発掘調査のスケジュールの確認を行っていた。
「よし、これで良いかな。」
龍太は荷物の最終確認を終えると研究室の隣にある教授室の扉をノックする。
「三笠です。入ってもよろしいでしょうか。」
龍太は部屋の主に伺いを立てると扉の向こう側から入っても良いという許しが出た。
「失礼します。」
龍太が扉を開けて、そこへ入るとパソコンを前にデスクに座っている人物が居た。
彼はここ北海道大学にて恐竜の研究を行っている福井竜也である。海外の研究者からはファルコンアイ=ハヤブサの眼と称されるほどの慧眼の持ち主である。
「必要なものの準備は終わったかい?」
「はい。後は車に積むだけです。」
「じゃあ、荷物を車に積んで。他のメンバーにも声を掛けておいて。」
福井の指示を聞き、龍太は他の学生に声を掛けに行く。
「クリス、荷物の準備は?」
「That's OK!もう、速くしましょう!」
龍太が声を掛けたのは同期の学生のクリス・アルバータである。イギリス出身の彼女は何を考えたのか日本のこの大学に来たのである。まあ、龍太も同じく恐竜好きの彼女のことは好ましく思っており、特にトラブルになったことはない。
クリスに声を掛けた後、他に同行する学生に声を掛ける龍太。全員の準備が完了したことを確認した彼らは荷物を車に積み、明日の出発に備える。
この時、龍太はこの発掘調査を機に自分のこれからの人生が大きく変わってしまうことを知らなかった。
翌日、龍太たちはカムイサウルスが発掘された北海道鵡川穂別町へ向かっていた。2年前の2018年北海道胆振東部地震で少なからず被害のあった地域でもある。現在でも地震の痕とも言える地滑りや断層などが街の郊外に見える。
今回の発掘調査はそんな地震の痕から新たなカムイサウルスの化石が発見されたことで決まった調査である。
「それにしても地震で化石が見つかるなんてね。そんなラッキーなこともあるのね。」
「あまりラッキーって言葉を使わない方がいいよ、クリス。今でも家族が見つかっていない人や苦しい生活をしている人達が居るんだから。」
車を運転するクリスの言葉に注意する龍太。悪意が無いとはいえ、そう言った発言はあまり良くは思われないことを伝える龍太。
「分かってるわ。今はあなただけだから言っただけよ。」
「悪気はないのは分かってるよ。外では気を付けて。」
「OK。」
その後は互いに趣味のことを話して龍太たちは発掘調査の拠点になる鵡川穂別町にある旅館に到着した。
旅館に荷物の一部を置いた一行は今回の発掘調査を共同で行う鵡川町立博物館へ向かった。
「皆さん、今年もよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ毎年ありがとうございます。」
福井が館長に挨拶をした。龍太たち学生も挨拶をすると博物館のスタッフも加わって化石の発掘調査を行うべく、目的の場所へ向かうのだった。
龍太ら一行は武川穂別町内にある道有林(北海道が管理している森林のこと)へと到着した。この道有林の奥に、今回の発掘調査の目的地がある。
険しい山道を、大量の荷物を持って進んでいく龍太たち。
発掘調査は、整備された道ではなく険しい山道などを移動することが多い。また、キャンプも設営する場合もあり、荷物が多くなる。かなり体力が必要とされるため、龍太はトレーニングしていた。
龍太たちは2時間ほどの道のりを進み、発掘調査地へと到着した。
龍太たちは協力してキャンプを設営する。1時間ほどでテントの設営を終えるとすでに日が沈み始めていた。
本格的な発掘調査を翌日にすることを決め、龍太たちは旅館へ戻り休むことにした。
鵡川穂別町のはるか沖合、太平洋に無数の影があった。その影は町の灯りに気付くと海面から町を見る。
その影はまるで魚のような頭部と人間に近い体を持つ異形だった。その異形たちの中で特に異質な姿をしているものがいた。その異形は一言で言えば、騎士。巻き貝のような鎧をまとった騎士が異形たちを率いていた。
「ここに、忌まわしき龍の魂がある。それをなんとしても破壊しろ。行け、我らが眷属たちよ。」
異形たちを率いる騎士の声は憎悪の色に染まっていた。その声を聞いた他の異形はそのまま海へ潜り、町の方へ向かっていった。
翌日、龍太たちは発掘調査を本格的に始めていた。
険しい崖から発掘する場所を決め、そこを重機で大きく削っていく。
重機であらかた地層を露出させた後、出てきた土砂の中から化石が無いか確認していく。
学生たちがそうやって化石が無いかを確認、福井がそのまま重機を操作する町の職員に指示を出す。
龍太は他の学生たちと同じく出てきた土砂から化石が無いかを確認する。
注意深く大小様々な岩石を観察していく龍太。些細な違いすらも見逃さないように集中していた。
そんな中、龍太はある岩石に注意を引かれた。
「なんだ、これ。」
龍太たちが発掘調査を行っている地層は泥岩層と言われ、元は泥だったものが長い年月をかけて岩石に変化したものである。
龍太の注意を引いた岩石も泥岩層から出た岩石である。だが、その岩石の中から明らかに岩石とは違うものが露出していた。それは化石ではなかった。結晶に酷似したそれを龍太はより観察しやすくするために、動くのだった。
ハンマーとタガネを使って慎重に岩石を削り始める龍太。その岩石の中にあるものを破損させないように、慎重にハンマーを叩き始める。
硬い岩が剥がれるに連れて、岩石の中にあったものが出てきた。
「結晶、か。」
岩石には琥珀色をした正六角形の結晶が埋まっていた。
龍太は慎重に岩石からその結晶を取り出していく。
丁寧に岩石を除去していく龍太。徐々にだが、岩石に埋まっていた結晶がその全体像を見せ始めた。
「なんだこれ。」
龍太は掘り出した結晶を丁寧に取り出す。結晶は思いの外、簡単に取り出すことができた。そして、陽の光にかざして見たその結晶にはなにかの生物、その全身骨格が浮かんでいた。
龍太は当初色合いから琥珀、それに似た結晶だと思っていた。だが、出てきたものは龍太の知識には一切ないものであった。
「とりあえず、持って帰るか。」
そう言って龍太は結晶をズボンのポケットへ入れた。
龍太が結晶を発見した時と同じく、太平洋の沖合から武川穂別町に向かっていた無数の影が河口から川へ入り、武川穂別町の市街地へと侵入した。
町の人々は海に繋がる川に無数の影が映ったことにすぐに気がついた。
人々は川に映る影を見て、北海道各地に伝わる河童を連想した。不気味な影はそのまま市街地を通り過ぎて、武川穂別町の山中、龍太たちが発掘調査をしている現場へと向かっていた。
龍太が琥珀のようなものを見つけた後、発掘調査に来ていた面々は休憩を取っていた。
「それにしても、なんだこれ。」
龍太は先程見つけた琥珀のようなものを観察していた。正六角形のその結晶の中には恐竜の全身骨格、観察してそれがカムイサウルスの骨格のように見えるものが刻まれていた。
「どうしたの龍太?」
結晶を観察していた龍太の元にクリスがやってきた。
「ああ、さっき見つけた結晶なんだけど。琥珀だと思ったんだけど。」
「へえ、見たところAmberよりもCrystalみたいね。」
クリスも龍太が見つけた結晶を見るもそれが結晶に近いものくらいしか見当が付かなかった。
結晶を観察していた龍太はそれを手に取り、眺めた。その瞬間、龍太の脳裏に見たこともない風景が駆け巡った。どこかの海岸線、無数の恐竜たちとそれと戦う魚と両生類が混ざり合って人型になったような怪物達が激しい戦いを繰り広げていた。
龍太とクリスが見つけた結晶について頭を悩ませている頃、福井が館長と共にこの後の発掘計画について相談をしていた。
「それでは、次はこの区画を発掘しようと思います。ここには歯の化石が複数発掘されているので他の部分が発掘できる可能性はあると思います。」
「そうですね。それで時間はいつまでやりますか?」
「この区画を発掘したら今日の作業は終了します。館長、それで良いですか。」
「はい。それでは、それで行きましょう。」
福井と館長が発掘現場へ戻る。それを見た龍太たち学生も発掘を再開しようとする。
その時、何か重苦しいものが覆いかぶさるような息苦しさをその場に居た全員が感じた。
ある学生が突如その場でうずくまったのを皮切りにその場にいる学生たちにパニック症状が出た。
「な、なにこれ。」
「クリス!?大丈夫!!」
「館長、しっかり!」
「あああああああああ!!」
龍太は頭を抱えたクリスの方を抱き、介抱する。福井は隣で発狂する館長に気をしっかり持つよう声をかけ続ける。
突然の出来事に龍太はクリスの身を案じながら、何が起きているのかさっぱり理解することができないでいた。ただ一人、現状の原因を理解している人物が居た。
「まさか、奴らが近くにいるのか。」
そう言う福井は周囲を見回す。薄暗い森の中、その中で開けている発掘現場からその様子が見えてくる。
「何かいる。」
龍太が森の中にいるそれらに気付いた。遠くからでは正確に全体像を把握することができなかった。だが、何かがいることだけはすぐに理解することができた。
グコココココココココココココココココココココココココココココココココココココココ...
周囲にまるでカエルの鳴き声のような、それよりも遥かに耳障りな音が響き渡る。その音が大きくなるに連れてその何かが姿を見せた。
「何だ、あれ。」
「半魚人たちか。」
龍太の言葉に答えるように福井が言った。森の中から現れたその何かは龍太がこれまでの人生で一度も見たことがない生物たちだった。
まるで魚とカエルと人間を混ぜ合わせたような生物が数え切れないほどの数でその場に並んで、龍太たちを囲んでいた。
半魚人たちの中から、特にその姿が特異な者が龍太たちを見据える。その姿は魚類の一種であるサメ、特にホオジロザメを思わせた。
「ここに、原初の解放器があるはずだ。他にも忌まわしい龍の魂が封じられた結晶もあるはずだよなぁ?」
ホオジロザメの半魚人が龍太と福井に目的のものを聞く。なお、その声色からそれがお願いではなく、命令であることが容易に伺いしれた。
「三笠君、動ける者と一緒にパニックになっている者たちを連れて逃げるんだ。」
「先生?」
そんな中、福井が龍太に耳打ちする。耳打ちの内容を聞いて、龍太は福井がどうなるのか、彼を置いていくことができなかった。
「先生を置いて行けないです。」
「今、まともに動けるのは君だ。皆程度に差はあれど満足に逃げるのが難しいだろう。それに、俺はこいつら相手に負ける気はしないよ。」
そう言うと森の中から赤い影が猛スピードで向かってきて、半魚人たちを攻撃した。
赤い影は龍太たちの前に着地すると半魚人たちを威嚇する。
赤い影は尻尾が銀色の刃をした小型の肉食恐竜のようなロボットだった。
「カリバーサウルス。みんなを守ってくれ。三笠君、これから見ることは他言無用だ。大体の人間は信じてくれないし、今から見ることを話すことで君や君の大切な人たちに危害が及ぶ。」
そう言うと福井はどこから黒い大型のバックルを取り出し、腰に当てた。
バックルから白色のベルトが伸び、福井の腰に装着された。
そのバックルにはハドロサウルス科の頭骨に似たパーツがついていた。福井は右手側にあるバックルのレバーを引く。すると、口を閉じていた頭骨が大きく口を開ける。そこに現れたくぼみに福井はあるものをはめた。
《ハドロサウルス!!》
くぐもった機械音声がベルトから発せられた。福井は半魚人たちを見据えたまま、レバーを押し込んだ。
「変身。」
変身の掛け声に合わせて、頭骨が結晶を噛み砕くように動き、結晶が展開した。中からハドロサウルスの姿が見える。
《バイトアウト。ダイノジーン、リメイク。仮面ライダーザウラー、ゴー。》
ベルトからハドロサウルスの幻影が飛び出し、福井と一体化する。ハドロサウルスの幻影はそのまま鎧となって、福井の全身を覆った。
緑色の大きな複眼、黄緑色がベースの鎧は金属のような質感をしていた。
変身した福井はファイティングポーズを取った。
「さあ、来い。俺の学生たちには指一本触れさせない。」