仮面ライダーDREX   作:柏葉大樹

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仮面ライダーDREX 氷牙序章

 大都市東京。その中心地にある警視庁、その地下に新たに開設された未確認生命体特別対策班、通称=未特班の訓練場に装甲に身を包んだ男が居た。

 対未確認生命体特殊装甲戦闘服「氷牙」、現在クトローリアンに関係する未確認生命体に対抗するために新しく開発されたこの装備の性能テストを行うところである。

 

 「氷牙最終性能テストを行う。双葉君、始めましょう。」

 

 訓練場を管理するモニタールームから指示を出すのは未特班に所属する勝山絵里。彼女が氷牙の開発を行い、メンテナンスなども手掛けている。

 絵里から指示を受けた氷牙を装着した人物=警視庁に所属する警察官の双葉裕二が動き始めた。

 氷牙が動き始めたのに合わせて、訓練場には鉄球を撃ちだす発射台や巨大なロボットアームなど様々な設備が出てくる。

 

 「勝山、これはやり過ぎじゃないか?」(双葉)

 

 出てきたものを見て双葉がそう言った。その彼を気にすることなく性能テストは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 様々な人々が行き交うこの街、首都東京として華やかな一面を持ちながらも、一度煌びやかな場所から外れると闇よりも深い漆黒と思える世界がある。人間の法から外れたその世界に、クトローリアンが潜んでいた。

 東京新宿、街の一角にある古びた教会。そこにクトローリアンの幹部、インスマース達が集まっていた。

 

 「北海道における生贄の確保が進んでいないな。」

 

 その場を仕切るのは一際巨大な存在、インスマース達の長であるディゴンである。そのディゴンの声はしわがれており、人間には何を話しているのか分からないが同族であるインスマース達にははっきり伝わっていた。

 ディゴンの発言にその場に集まっているインスマース達がどよめく。

 

 「良いか、我らが主であるクトゥルフ様復活まで時間に猶予はない。決して抜かるな。」

 

 長老であるディゴンの一喝にその場に集まっていたインスマースたちは蜘蛛の子を散らすようにそこから離れていった。

 

 「ふむ、どうしたものか。」

 

 そう独り言ちるディゴン。彼にとって北海道にいるという龍の戦士は脅威である。

 龍の戦士=仮面ライダーディレックスはディゴンを始めとしたインスマースの天敵である。不老長寿の彼らを容易く屠ることができる恐竜たち、その恐竜たちの力を受け継ぐディレックスは最大の脅威であり、真っ先に排除すべき相手である。そのため、計画の本命である東京での活動を推し進める一方で北海道にいるディレックスの排除を進めようと考えていた。

 

 「龍の戦士と対等に渡り合えるのは我らが主クトゥルフ。そして、我らが主と同じくこの宇宙の各地で眠る神々。ならば,,,。」

 

 老獪なるインスマースであるディゴン。その脳裏には北の大地にいるディレックスを排除と己が主であるクトゥルフ復活、二つの目的を達成するための策略を巡らせ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 警視庁、未特班の訓練場では氷牙の最終テストが進められていた。

 砲丸を撃ちだす発射装置からはボウリング大の鉄球がかなりのスピードで撃ちだされる。

 氷牙を装着した双葉は専用装備である獣銃(ジュウガン)で狙い撃つ。

 ジュウガンの銃口から撃ちだされた弾丸は向かってくる鉄球を次々と粉砕していく。

 

 「へえ、なかなか良いじゃない。じゃあ、これはどうかしら?」

 

 勝山が危機を操作すると新たに発射装置が現れ、別方向から砲丸が撃ちだされる。

 

 「っ!」

 

 新たに発射された砲丸に気付いて躱す双葉。

 次々と撃ちだされる砲丸を躱しては、ジュウガンで狙い撃つ。死角に放たれた砲丸には寸での所で察知し、裏拳で弾き返した。

 

 「じゃあ、次はこれよ。」

 

 新たに出てきたのは大型ロボットアームを備えたショベルカーである。

 ショベルカーは自動操縦で動いており、本来ではあり得ない速度で大型のショベルを振り回す。

 真正面に繰り出されたロボットアームを勝山は両腕で抑え込んだ。

 

 「くっ!ぬうう!!」

 

 本来であれば自殺行為であるこの行動は特殊戦闘服「氷牙」を身に纏った双葉にとっては多少の衝撃を感じた程度でその肉体を無事に保っていた。

 特殊戦闘服「氷牙」は装着者を護る装甲と人工筋肉で作られた特殊スーツで構成された装備である。装着者を護る装甲は特殊な合金で作られており、ボウリング大の鉄球を受けても無傷である。だが、全身を覆うこの装甲の総重量はかなりのもので本来であれば装着者の動きを大幅に制限するほどの代物である。そんな装甲を身に纏いながら見事な動きを見せたのは双葉が来ているスーツに秘密があった。

 双葉が着るスーツは人工筋肉で作られたもので、これは人間の筋力の10倍もの力に耐えることができる。それを元に作られたスーツを身に付けたものは最小限の力で自身の何倍もの重量のものを動かすことができる。元々は介護現場での活用が進められていたものである。

 氷牙に使われているものは本来であれば別の分野で研究が進められていたものである。それを警察官の装備に転用、開発されたのはとある組織が関わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新興宗教団体九頭竜神教団、又の名はクトローリアン。アメリカ合衆国に本部を置くこの教団は日本に入って来た当初は特別目立ったことは無かった。それが変化したのはとある事件がきっかけである。

 この教団に入った若者による誘拐事件が発生、警察はかつてこの国で起きたカルト事件の再来として捜査を開始した。捜査の中でついに誘拐事件の被害者が遺体となって発見された。遺体の損傷は激しく、見るも無残な状態だった。それから程なく誘拐犯の若者を逮捕、裁判で無期懲役を受けた彼は「すべてはクトゥルフ復活のため」と言っていた。その若者も拘置所内で自殺した。自殺した若者の遺体は後に首にえらに様なものや魚の鱗が見られた。

 この事件と同時期に東京近郊にてクトローリアンが関与する誘拐・殺人事件が続出するようになった。それと同時期に関東一帯に半魚人が目撃されるようになった。そして、この半魚人による女性の誘拐事件も発生するようになった。

 警視庁はクトローリアンを要注意団体に指定、関東一帯にて警戒するように通知した。そんな中で、遂にクトローリアンの信者が半魚人と共にお台場の警察署を襲撃したのだった。SATも投入されたこの事件は双方に多大な犠牲を出した。全国だけに関わらず世界中に報道されたこの事件は大きな衝撃を呼んだ。

 この事件を機に政府はクトローリアンを危険団体として認定したのだった。そして、この半魚人=インスマースに対抗するために氷牙の開発が決定されたのだった。

 

 

 

 

 性能テストの項目が全て終了し、双葉は休憩室でスポーツドリンクを飲んでいた。

 

 「はあ、人をこき使いやがって。俺は機械じゃねえぞ。」

 

 性能テストのことを思い出し、愚痴をこぼす双葉。

 タンクトップにジャージと鍛え上げた肉体をさらすその姿は警察官と言うよりもアスリートを思わせた。

 

 「聞こえていたわよ。」

 

 奥の廊下から勝山が歩いて来た。スーツに身を包んだ彼女は双葉とは対照的だった。

 

 「お前、俺のことは氷牙のパーツとしか考えていないだろ。」

 「何を言っているのよ?安全性を確認するためのテストよ。双葉君のことをパーツなんて思わなかったわよ。」

 「それと、双葉君は辞めろ。俺の方が年上だぞ。」

 「はいはい。」

 

 軽い掛け合いをする二人。その様は仕事の同僚よりも親しい関係に見える。

 

 「それで、配備は進みそうか?」

 「それは上層部の決定次第。でも、配備を急がないと。」

 

 そう言って勝山は双葉に自身が持っていたタブレットを見せる。

 そのタブレットにはあるニュースが出ていた。そこには「半魚人、北海道に現る!?」と大きな見出しが出ていた。

 

 「関東だけじゃなくて北海道でも半魚人の目撃情報が出てる。それだけじゃなくて...。」

 「仮面の騎士の目撃、だろ。どんなもの好きかは知らねえが。」

 

 二人の話題は北海道へと変わる。北海道での半魚人=インスマースの目撃情報、謎の仮面の騎士と二人にとって氷牙の実戦配備を急ぐ理由がそこにはあった。

 

 「実戦配備が出来たら、改めて頼むわ。」

 「お前の下で働くなんて御免だ。」

 

 そう言って立ち上がる双葉。飲み終わったペットボトルをゴミ箱に投げ捨てる。

 背中を向けて歩いていく双葉を勝山は見続けていた。

 

 「あなたなら、あなたはきっとやってくれる。彼のためにも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 性能テストから1か月、警視庁内での複数の会議を経て氷牙の実戦配備は進められていた。その一方で双葉は警察官としての職務を全うしていた。

 都内某所、そこでは年若い女性の惨殺死体が見つかった。

 双葉はその捜査に加わっており、以前から共に捜査をしている捜査一課の刑事である丹波とともに聞き取りを行っていた。

 年配の刑事である丹波は事件とは関係の無いことを双葉に聞いていた。

 

 「それで、絵里ちゃんが進めてる例の奴は大丈夫か。」

 「上層部からGOサインは出ましたし、後はSATを中心に配備を進めるだけっすよ。それと、絵里ちゃんってアウトっすよ、丹波さん。」

 

 氷牙の話題の中で勝山の呼び名についてたしなめる双葉。

 

 「あのな、裕二。絵里ちゃんがお前を呼んだってのはお前を頼っているってことだろうが。」

 「そんなもんじゃないっすよ。まあ、俺としては多少なりとも立ち直ってくれたのはありがたいっすけど。」

 

 二人の話に何かあったような様子が伺われる。

 

 「例の仏さん、行方不明になっていた女子大生だとはな。遺族の胸中を考えたら痛ましいよ。」

 

 そんな中で話題は例の惨殺死体に移った。

 遺体は都内在住の大学生の女性で半月前に行方不明となっていた。家族から捜索願が出ており、そんな中で発見されたのだった。

 

 「まだ、報道されていないってことと家族の元へ帰れたのがせめての救いかもな。」

 「そんなの救いなんかじゃないっすよ。」

 

 丹波の言葉に双葉が強く反論した。その表情はまるで猛獣のようだった。

 

 「お前だけが悔しいじゃねえぞ、裕二。てめえのその感情をしっかりと向けるべき場所に向けろ。少しでも遺族が救われるようにって思うならな。」

 

 丹波も厳しい表情で双葉を睨みつける。

 

 「良いか、お前が絵里ちゃんに呼ばれたのはお台場のヤマだけじゃねえぞ。お前は絵里ちゃんのそばでクトローリアンのヤマを追え、良いな。」

 

 刑事としての助言、だけではない。そのことを双葉は感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 双葉が丹波との捜査を終えたその夜だった。

 

 「半魚人たちか!!」

 

 警視庁内にまだ居た双葉は半魚人が複数体姿を現したことを聞いた。半魚人たちは都内渋谷にて民間人を襲い始めていた。それを通報により知った警視庁は機動隊を現場へ急行させたのだった。

 双葉は現場に急ぐべく動こうとした時だった。

 

 「双葉君!!」

 

 丁度そのタイミングで勝山が来た。

 

 「すまん、今は無理だ。」

 「渋谷のことでしょ。良いから来て!!」

 

 勝山の強い言葉に双葉は勝山の指示を聞くことに。

 勝山は双葉を連れて地下にある未特班の部屋へ行く。

 

 「おい、ここに来てどうするんだ。氷牙の配備なら進んでいるだろ。」

 「まだ、配備の途中よ。機動隊への配備はまだよ。」

 「じゃあ、どこに!?」

 「SATよ。でも、SATでも訓練の最中だから間に合わないわ。」

 

 話す中で二人は氷牙の保管庫へ来た。

 

 「おいおい、配備中のもんを無断で使うか!?」

 「あいつらに機動隊がどこまで保つと思う!?訓練中のSATなんて使うと思う!」

 「だからって。」

 「それに、あんなことは二度とゴメンよ。」

 

 勝山の言葉にあきらめたような、けれど強い決意を宿した表情を見せる双葉。

 

 「分かった。二人そろって謹慎処分を受けるか、絵里。」

 

 そう言って双葉は氷牙の装着準備を行う。その双葉を見て驚きの表情を見せる勝山。

 

 「ほら、手伝ってくれよ。俺一人じゃあ全部は装着できねえって。」

 「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渋谷、そこでは機動隊が民間人を襲う半魚人=インスマースへの対処に追われていた。隊員たちは懸命に対処するも次々とインスマース達の牙に掛かり傷を負っていく。

 機動隊の包囲網が崩れる中でインスマース達は逃げ遅れた民間人へとその魔の手を伸ばす。

 渋谷は多くの人々が逃げ惑い、血を流し、果てに命を落とす地獄へと変貌したのだった。

 多くの人が絶望に暮れる中、一台の装甲車が渋谷のスクランブル交差点へ勢いよく来た。

 

 「なんだ、あれは!?」

 「おい、気を抜くな!!」

 

 突如として姿を見せたその装甲車にその場にいた多くの人々が視線を向けた。

 装甲車のドアが開くとそこから氷牙を装着した双葉が姿を見せたのだった。

 

 「機動隊は民間人の避難を優先してくれ!半魚人どもは俺が何とかする!!」

 

 双葉の装備を見た機動隊は即座に彼が警視庁の関係者であることを察した。実戦配備が進められている氷牙については彼らも知っていた。

 双葉がジュウガンを構えてインスマース達を銃撃し始めたところから機動隊が民間人の避難を進めるようになった。

 

 

 インスマースとの戦闘を始めた双葉。彼の身を護る氷牙の合金製装甲はインスマース達の牙や刺、爪を一切通さない。向かってくるインスマース達をジュウガンで撃ち、装甲と人工筋肉によって強化された拳で殴りつける。民間人の避難を進める機動隊も警棒や拳銃を使い、双葉の援護を行う。

 

 「よし、これならなんとか押しとどめられる。」

 

 攻撃をしたことで勝山が開発した装備がインスマース達に有効であることが分かった双葉。

 双葉が入って来たことで形勢を立て直すことが出来た機動隊。そのままインスマースから民間人を避難させる。

 インスマース達も形勢が思わしくないことを悟る。だが、彼らは皆口を不気味な笑みの形にする。

 インスマース達は笑みを浮かべたままで不気味な笑い声を上げる。カエルのような、しわがれた人間のような、あるいはその両方を混ぜたかのような笑い声が渋谷中に響き渡る。

 

 「気持悪い笑い方しやがって。おい、絵里。SATはいつ来る?」

 

 インスマース達の動きに一瞬動揺しながらも攻撃を続ける双葉。その中で氷牙に内蔵された通信機で警視庁に居る勝山と連絡を取る。

 警視庁の未特班にいる勝山は双葉にSATを含めた警視庁の動きを伝える。

 

 「SATじゃないけど、応援が今そちらへ行くわ。でも、あまり十分とは言えない。」

 

 勝山の話を聞いて双葉は気を落とすことなくインスマース達を攻撃する。

 

 「まあ、良い。ただ、こいつらがただでやられるわけでもない。なぜ、笑ってやがるのか理由が分からん。」

 

 なぜ、笑っているのか。双葉はそこに引っ掛かっていた。そのことに気を取られていたために近くに来ていた新たな危険に気付くことが遅れてしまった。

 それは一瞬のうちに双葉を強烈な衝撃が襲ったことでその存在を知らしめた。

 

 「なっ!」

 

 真横からの強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされた双葉。そのまま停車中のバスに激突する。

 システムの警告音を聞きながら、突如襲った攻撃の主を探す双葉。

 

 「何が起きたんだよ、クソ。」

 

 バスから出て辺りを見回しても攻撃した相手は姿を見せなかった。

 

 「どこにいる?」

 

 周囲を警戒する中で双葉の体に見えない何かが巻き付き、あらん限りの力で全身を締め上げて来た。

 

 「何!?」

 

 見えない何かの攻撃に氷牙の装甲が軋み歪み始める。全身を覆う人工筋肉のスーツもここまでの攻撃でその機能が半分ほどまで落ち込んでいた。

 

 「何も分からぬ愚かなホモ・サピエンスよ。そんなガラクタを着て我らに対抗するつもりだったのか?」

 

 どこからかしわがれた声が聞こえる。ギリギリと締め上げられる双葉は周囲を見渡してその主を探す。

 

 「この私の姿を探せないのか?仕方ない、特別に姿を見せよう。」

 

 声の主がそう言うと双葉の目の前に徐々に姿が見えて来た。透明だったのが半透明へ、半透明から茶色へ変化した。

 

 「おいおい、半魚人の次はイカ人間かよ。」

 

 遂に目視できるようになったその姿は正しくイカだった。正確には人型のイカというべき姿でくちばしを器用に動かして話していた。

 

 「お前たちが半魚人と呼ぶのはインスマースだ。偉大なるクトゥルフ様に仕える高貴なる種族。そして、私はそのインスマースの上位に君臨する者である。故に私はお前よりもはるかに優れた存在なのだ。」

 

 イカ人間=スキッドインスマースは大げさな身振りを交えながら話す。

 スキッドインスマースが双葉を抑えたことで何とか保っていた均衡が崩れ始める。またもインスマース達が民間人、今度は機動隊までも襲い始める。

 何とか拘束を振りほどこうともがく双葉。だが、スキッドインスマースの触腕はあらん限りの力で双葉を締め上げる。

 あまりの強さに声を上げることも出来ない双葉。ついには氷牙の装甲が完全に破損する。

 

 「そのような玩具で我々に楯突くとは、お前はここで見せしめとしよう。」

 

 スキッドインスマースはそのまま双葉を地面に何度も叩きつける。

 叩きつけられる中で頭部を保護するヘルメットが半壊、それ以外の装備も使うことが出来ないほどだった。

 ボロボロになった双葉はそのまま地面に投げられた。アスファルトの上に倒れる双葉。それを見て、スキッドインスマースは愚かな人間が死んだと見た。

 

 「さて、我が同胞よ。生贄となる人間どもを集めろ。愚かなる人間どもに恐怖と絶望を与えてな!!」

 

 スキッドインスマースは周囲のインスマース達に指示する。その中で銃声が鳴り響いた。

 

 「まだ、生きていたのか。」

 

 スキッドインスマースは倒れていたはずの双葉を睨みつける。

 双葉はボロボロになりながらジュウガンを手にしていた。

 

 「生憎、お前らみたいな高尚な化け物相手に下げる頭は無いんでな。」

 

 息が上がり満身創痍の双葉。

 ボロボロに相手が楯突いたことに苛立ちを覚えるスキッドインスマース。

 

 「ほう、ならば惨たらしく死んでもらいましょう。」

 

 スキッドインスマースは全身の触腕を双葉に向ける。

 流石に死を覚悟する双葉。だが、その闘志を折ることなく銃口を向ける。

 そんな時だった。

 双葉とスキッドインスマースの間に何かが現れた。その瞬間、世界の時間が止まった。正確にはその何かだけ止まったままの世界で動いていた。

 その何かは双葉の方を向くと双葉の方へ歩み寄る。

 その何かは止まった世界の中で双葉の表情を見る。紛れもない戦士の表情を見た何かは双葉に二つの結晶を渡した。

 その何かは双葉にそれを渡した後、姿を消した。その次の瞬間には世界の時が動き始めた。

 世界の時が動き始めた瞬間、双葉の手にある結晶が強い光を放った。

 

 「何!?」

 

 強烈な光を浴び、見悶えるスキッドインスマース。光が晴れるとそこには新たな装甲を纏った双葉が居た。

 

 「どうなってやがる。」

 

 突然のことに驚く双葉。彼が来ていたボロボロだった氷牙はその姿を大きく変えていた。その姿はまるで新生代の大型猫科動物スミロドンそのものだった。

 

 「まあ、分かんねえが今度はこっちの番でいいだろ。なあ、イカ野郎。」

 

 スミロドンを模したアーマーとなった氷牙を装着する双葉、仮面ライダー氷牙スミロドンフォーム。ここに誕生である。

 

 「調子に乗るな、人間風情!!」

 

 突如のことに混乱するスキッドインスマース。その触腕を伸ばし、仮面ライダー氷牙に襲い掛かる。

 向かってくる触腕をさばく仮面ライダー氷牙。徐々に距離を詰め、狙いを外さない距離まで近づく。

 ジュウガンから弾丸を5発撃ち込む仮面ライダー氷牙。

 全身が筋肉でできているスキッドインスマースに深々と強化された弾丸が体を撃ち抜く。

 

 「よくも、よくも!!」

 「うるせえ!!」

 

 攻撃されたことに怒りをあらわにするスキッドインスマース。そのまま仮面ライダー氷牙はスキッドインスマースの顔面を思い切り殴り飛ばした。

 今度は自分が吹き飛んだスキッドインスマース。乗り捨てられた車に激突すると体色を変化させて、周囲の背景に溶け込む。

 

 「さあ、これで私を姿を見ることは出来まい!!」

 

 スキッドインスマースの挑発に乗ることなく、仮面ライダー氷牙は周囲の音に集中する。様々な雑音が響く渋谷の街の中でスキッドインスマースが発する粘着音を探す。

 

 「このまま締め上げて貪り喰ってやる!!」

 

 姿を消したスキッドインスマースは全身の触腕を伸ばし、仮面ライダー氷牙に襲い掛かる。その次の瞬間、スキッドインスマースのいる方向に向かって銃弾を一発撃ち込んだ仮面ライダー氷牙。

 当たった銃弾は破裂し、中にあった液体がスキッドインスマースの肉体に掛かる。その瞬間、液体は氷へと変化、スキッドインスマースの肉体を拘束するのだった。

 

 「な、なに!?」

 「氷牙の名前の由来になった氷結弾だ。弾の数が少ないんで無駄打ちが出来ないもんでな。これで、姿が見えなくても外さねえぜ。」

 

 そのまま仮面ライダー氷牙は氷漬けで動けないスキッドインスマースに弾丸を撃ち込む。全ての弾丸はスキッドインスマースの頭部に集中して撃たれていく。

 

 「ま、待て!あ!ギャア!!」

 

 何発も何発も撃たれていく弾丸。それによってスキッドインスマースの頭部に大きな傷ができる。

 

 「や、やめて、くれ。」

 「残念だけどな、人間じゃねえ相手には逮捕権も無えんだ。地獄で閻魔様に扱かれてきな。」

 

 息も絶え絶えになったスキッドインスマースに容赦なく正拳突きを放つ仮面ライダー氷牙。

 大きな傷口に向かって勢い良く放たれた正拳は傷口の奥深くにある脳を砕きながらスキッドインスマースの後頭部まで貫通した。

 

 「ギャアアアアアああああああああああ!!」

 

 痛みからか、恐怖からか叫び声を上げたスキッドインスマース。流石の彼も全ての生命活動を命令する脳が大きく損傷してしまった以上は人間と大差なかった。そして、スキッドインスマースの肉体は急速に崩壊し、ドロドロのゲルへと変わった。

 スキッドインスマースが倒されたことでインスマースが急いで逃げていく。

 既にボロボロの仮面ライダー氷牙は逃げるインスマース達を追うことはしなかった。

 インスマース達が姿を消して、初めてジュウガンに視線をやる。

 

 「あ、これなんだ?」

 

 ジュウガンにはまっていたものに気付いた仮面ライダー氷牙。そこにはスミロドンの絵が描かれた結晶、スミロドンダイノクォーツがはまっていた。

 

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