今回もよろしくお願いします
モビル道の名門黒森峰女学園からモビル道の無い大洗女子学園へ転校した西住みほ。しかし転校して早々生徒会によってモビル道が復活させられ、彼女は半ば強制的な勧誘をされてしまう。黒森峰でのトラウマもあってもう二度とモビル道をやらないと誓っていたが、新しくできた友人の武部沙織と五十鈴華の存在もあって再びモビル道を始める事を決意した
授業が始まり新しく秋山優花里や途中から参加した冷泉麻子と友人になり他のメンバーが初心者ばかりなのもあって、皆と一緒に緩やかにモビル道を楽しんでいける……そう思っていたが突如聖グロリアーナ女学院との練習試合をする事になり結局西住流の選手として戦う事にみほは憂鬱な想いを感じる
案の定他のチームメイトから大きな期待を感じ、桃による無茶な作戦に嫌気が差してしまったが杏の言葉や聖グロリアーナの隊長ダージリンからの助言、母親から勘当されながらも進もうとする華を見てみほも前向きに向き合おうと心を入れ替えるのであった…
翌日……モビル道の訓練は午後からなので午前中みほ達は通常の授業に出席していた。昼休みになりみほは沙織と華と食堂へ向かいそこで優花里と麻子と合流して一緒に昼食をとることにした
「明日の今頃ってもう宇宙に向かってるんだよね!私宇宙行くのなんて初めてだから彼氏んちに泊まりに行くのより緊張する〜!」
沙織の言う通りロックオンの提案でモビル道既修者は皆で宇宙へ行く事になっていた
「沙織さん彼氏なんていた事ないでしょうに……私は大分昔になりますが華道の展覧会を見に低軌道ステーションへ母と行ったきりですね。」
「私は幼稚園の頃、家族旅行で行ったことがあります!宇宙から見た地球は未だに忘れられないくらい感動的でした〜!」
「華さんと優花里さんはもう行ったことがあるんだね。麻子さんは?」
「……私もまだ行ったことがない。宇宙なんて海外旅行よりも高くつくしこれまで行く機会なんて無かったからな…」
質問に答えた時麻子が普段見せた事の無い寂しそうな顔を浮かべていた事にみほだけが気づいた
「そういえばさ!みほってもう何回も宇宙に行ったことあるんでしょ?どんな所なの!?」
「えっと……真っ暗で空気もないし無重力だから何処かへ投げ出されて帰れなくなるかもしれないからどっちかと言うと怖い所かな……。」
「え、宇宙ってそんなにやばい所なの……私帰れなくなったらやだな…。」
「ああっ、でも低軌道ステーションには色んなお店がいっぱいあるし星とか地球全体が見れるから絶対楽しいと思うよ!」
残念そうにしていた沙織にすかさずみほはフォローを入れた
「でもモビル道は宇宙空間へ出たりするんですよね?そう思うと少し怖い気がしてきました…。」
「大丈夫ですよ。女子のモビル道は男子と違って白兵戦はありませんし、パイロットスーツも宇宙で安全に活動できるよう作られているので心配ありません!」
「無重力か………きっとフワフワしてて寝ると気持ちいいんだろうな……。」
「いやいやそんな寝てたりしたら絶対どっか飛んでっちゃうから………。」
その後昼休みが終わって5人は訓練の為MSの格納庫のあるグラウンドへ移動した。少し待っていると駐車場に緑と白のツートンカラーの車が停り、中からロックオンが出てきてこちらへやってきた
「お、皆もう集まってるのか?」
「まだ自動車部の皆が来てないけどもう始めちゃっていいよ〜。」
杏がそう答えるとロックオンは持っていたプリントとチケットを全員に配った
「今渡したのはリニアトレインのチケットと明日の持ち物を載せたやつだ。まぁもし用意出来なくても向こうで俺が買ってやるから安心してくれ。」
「「「キャー!教官カッコイイー!」」」
ロックオンに沙織や一年生達は黄色い声を上げそれを聞きロックオンは得意気な顔をしていた
「いやぁオンちゃんは優しいね〜。新しく可愛いパジャマ欲しかったし助かるよ〜。」
「な、バカ!そんな人の善意につけ込むようなことすんじゃねえ!つー事で今日の訓練は休みにして皆家に帰って明日の準備を……」
「あ、あの!教官!」
すると突然典子が挙手をした
「ん?どうした磯辺?」
「昨日の夜調べたんですが私と河西のアッガイたんは宇宙では使えないと出てきて………宇宙へ行ったら私達はどうすればいいんですか?」
典子と忍は不安そうな表情を浮かべロックオンに質問した。そもそも典子と忍の乗るアッガイは水中戦用に作られた機体だったので宇宙では使用不可とされていた
「なーにおまえら二人にはぴったりの機体が向こうで手に入るから心配すんな。つー事で今日の訓練は休みにするから皆は家帰って明日の準備をしてくれ。」
「出発は明日の朝8時だ。全員戦艦格納庫に遅れずに集合すること!以上、解散!」
こうして昼休みが終わったばかりにも関わらずみほ達モビル道の生徒達は帰宅する事になった
「今日の訓練も楽しみにしてたのに……ザクに乗れなくて残念です…。」
「てか凄くない!?向こうで4泊5日だって!」
沙織の言う通り宇宙には5日間滞在するとプリントに書いてあった
「ホントだ……なんだか修学旅行みたいだね。」
「私達だけ学校を休んで旅行へ行くなんて少し悪い気がします……。」
「生徒会が決めた事だし授業の一環として行くわけだしいいんじゃないのか?という事で沙織。私の分も荷造りしてくれ。」
「どういう事麻子の分までやんなきゃいけないのよ!ていうか明日こそちゃんと起きてよね!一人だけ宇宙に行けなくても知らないんだから!」
「……別にいいな、あまり遠くには行きたくないし。」
「いいわけあるかーーー!」
沙織はそう怒鳴りながら麻子の頭をチョップした
その後5人は帰り道に、必要な物や新しい衣服を見にショッピングモールで買い物をしてからそれぞれ家へ帰って行った。みほはモビル道を始めてからというもの宇宙へ行く事が楽しみになる事は全く無かったが、ここにきて幼少期ぶりに宇宙へ行く事がとても楽しみに思えた
北海に浮かぶ学園艦プラウダ高校。
小中高一貫校であるため生徒数は全国でもトップクラスのマンモス校であり人口は約20万人近くを誇っていた。古くからモビル道既修者用の校舎が設けられている程名門でもあった事から、モビル道の為にプラウダ入学する生徒も大勢であった
「すぅ……すぅ……。」
その晩学園艦の一角に位置する倉庫にて、横たわる1機の青いMSとおそらくそれを整備していたであろう一人の少女が散らばった工具の上で毛布にくるまって寝息をたてていた
「カチューシャ。」
「んん………あれ?三日月…?」
居眠りしていた少女、カチューシャが目を開けるとそこには一人の少年が立っていた
「あれ、じゃないよ。また一人で機体いじってたの?帰りが遅いからノンナも心配してたよ。」
「そういえばあんた達今日遊びに来るって言ってたわね……皆もうお家にいるの?」
「うん。もうメシもできてると思うから早く帰ろ。」
カチューシャの前に現れた少年、三日月・オーガスはカチューシャに手を差し出した。カチューシャは起き上がって出された手を照れくさそうに握り返し一緒に倉庫を後にした
しんしんと雪が降る中2人は手を繋ぎながら道を歩いていた。握っていた三日月の手はとても大きく手袋越しでも熱を感じる程彼の手は熱かった。そんな事を悶々と意識している内にカチューシャの顔はどんどん紅くなっていったが、三日月の方は全く気にしてる様子もなかった
「ね、ねぇ三日月!」
「何?」
何とか気を紛らわそうとカチューシャは静寂を破った
「大学のモビル道ってどんな感じなの?やっぱ高校よりもレベル高いんでしょ?」
「…どうだろ。あまり覚えてないけど先週やった選抜チームとかいうのはそこそこ上手かった気がする。」
「大学選抜をを覚えてないってあんたねぇ…。そんな感じならもうプロでもやっていけそうね。」
「だからさっさとプロ入りしたいんだけどオルガとビスケットがモビル道以外でも食っていくためにちゃんと卒業しろってうるさいんだよね。俺勉強なんて全然わかんないしどうしよう?」
「そんなのカチューシャに聞かないでよ……私だって勉強は苦手なんだから……。」
そう言うとカチューシャは少し寂しそうに夜空を見上げた
「どうしたの?」
「いや……学園艦にいるのも今年で最後だと思うとちょっとね……。」
「そっか。カチューシャももう3年生か。懐かしいな、初めて会った時なんてあの頃の1軍にいじめられててちょっと汚かったね。」
「うっさいわね!何回も言ってるけどいじめられてたんじゃなくて、敢えていじめさせてあげてたんだから!それに今じゃあの頃と比べ物にならないくらい強くなったもん!」
「わかってる。ホントに強くなったよ、カチューシャとノンナは。」
「そ、そうかしら?なんなら最後だしもう一回くらいここに優勝旗を持って帰ってあげようかしら。」
カチューシャは腕を組んで少し照れながらそう言った
「あー、そういえばチョコが言ってたけどモビル道辞めちゃった黒森峰の副隊長。転校して大洗女子学園とかいう所でまたモビル道始めたんだって。」
「………へぇ、あの子が。向いてないって教えてあげたのに何考えてんだか。」
「まぁ初心者ばかりのチームらしいし全国大会には出てこないでしょ。一応俺達もカチューシャ達の試合は見に行くから頑張ってね。」
「ホント!?い、いや嬉しくなんてないんだから!どうせカチューシャ達が優勝するし!」
「そっか。ていうか腹減ったし皆待ってると思うから急ご。」
三日月はカチューシャを持ち上げ肩車すると勢いよく走り出した
「キャー!ちょっといきなり走らないで……って聞きなさいよおおおおおおお!」
カチューシャと三日月の2人はそのまま雪が降る夜道を駆け抜けていった
月面都市フォン・ブラウン 島田家別邸にて……
「どうしたんだい亜里寿?もうおやすみの時間だろう?」
「衛おじ様。昨日言っていたテレビに出る話ですがやっぱり私も連れて行って貰えないでしょうか?」
「………別に構わないが一体どうしてだい?あまりこういう事興味無さそうだと思っていたが。」
「私はいずれ島田流を代表する身。自分自身から世間にその存在をアピールしていく必要があると思ったからです。」
「ははは。子供なのにそんな事を考えていたとは。そうだね、それじゃあ明日は僕と一緒にテレビ局へ行こうか。」
「ありがとうございます衛おじ様。」
「さぁ、ニュータイプとはいえ寝なければ生きていけないのだから早く寝なさい。」
「分かりました。それでは失礼します。おやすみなさい。」
亜里寿はそう言い残し部屋を出た
(お姉ちゃん………私も感じたよ……彼女が来る……。)
そして翌朝、みほ達モビル道チームの面々は戦艦を収容している格納庫に全員集合し船に乗り込み宇宙へ上がるため軌道エレベーターに向けて出発した。
「この世界では地上から3本軌道エレベーターが生えててな。それぞれダイクン、サハリン、デラーズという名前が付いている。そんで今回俺達は日本から一番近いデラーズタワーを使って宇宙へ上がるのさ。」
「オンちゃん誰に説明してんの?」
「教官殿ぉぉぉぉぉ!私のザクIIがMSデッキに積まれてないじゃないですかあぁぁぁぁぁぁ!」
ロックオンと生徒会の面々がブリッジにいると優花里が息を切らして勢いよく中へ入ってきて、その後に続いてみほ達も中へ入ってきた
「ゲッ……やべぇすっかり油断してた……。」
「え〜秋山ちゃんの機体積み忘れちゃったの?ちょっとオンちゃんダメじゃん〜。」
「アホンダラ!アホンダラ!」
「いや違うんだ秋山!実はおまえのザクは一足先に宇宙へ行っててな。多分今頃寂しがってると思うぜ……。」
「適当な事言って誤魔化さないでくださいよ!私のMSだけ積んでもらえないなんてひどいじゃないですか……。」
そう言うと優花里は腕で顔を隠してその場にしゃがみ込んだ
「わー優花里泣かないで!ちょっと教官さん!顔がいいからって何でも許されると思ったら大間違いなんだから!」
「よりにも人一倍モビル道に熱心な優花里さんの機体を忘れるなんてひどいです!」
「最低だな……。」
「うっ!グハッ!」
沙織と華と麻子からの罵詈雑言を受けてロックオンは膝から崩れ落ちた
「私、今から引き返して優花里さんの機体をここまで持ってきます!」
「駄目だ。今から引き返した所でリニアトレインの出発に間に合うわけがない。秋山には悪いが諦めてもらおう。」
桃の言葉を聞いて「そもそも今大洗の学園艦にもザクIIは無いんだけどね。」とロックオンは思ったが言えるはずもなくとりあえず優花里に謝り続けた
「すまない秋山!宇宙に着いたら特別に凄いMS借りてくるからそれで我慢してくれ!」
「……本当ですか?…………シナンジュでお願いします。」
優花里は顔を上げるとケロッとした顔でそう言った
「おう任せとけ!ってそんな凄い機体借りれる訳ないだろ!てか嘘泣きだったんかい!」
「ちょっと教官さん!自分が悪いのに女の子の頼みを聞けないなんてどうなの!?」
「何が狙い撃つぜですか!そうやって優花里さんを弄んで楽しいんですか!?」
「最低だな……。」
「ぐっ……女子高生からの暴言ほど心に刺さる物は他にないよな……。」
「あ、アハハ……。」
「はいはい悪ノリはここまでねー。まぁオンちゃんも色々忙しかった訳だし秋山ちゃんも何かしら借してもらえるって事で許して欲しいなー。」
「もちろん大丈夫であります!ザクも大好きなのですがそういう話しなら他のMSも操縦してみたかったのでむしろ感激です!」
「はぁ………何だったんだよ今のやり取り……。」
「ヨカッタ!ヨカッタ!」
こうしている内に大洗女子学園一向は軌道エレベーターに到着した。ホワイトベースとビーハイヴはあらかじめロックオンが連絡していたため、職員達が専用のリニアトレインに乗せるために運んで行き一向は発着ロビーにてリニアトレインを待っていた
「よーし皆、手続きは済ませたからもうちょっとしたらトレインに乗るぞ。今のうちにトイレとか行っとけよ!」
「「「はぁーい!」」」
「はぁ〜、ついに私達宇宙へ行っちゃうんだ〜!もうドキドキしすぎてまだ夢の中にいるみたいだよ〜!」
「ぐー…………ぐぅぅ………」
「麻子さんは現在進行形で夢の中にいるみたいだね……。」
「ちょっと麻子!ここまで来て寝てるなんてどうかしてるって!」
みほに寄りかかるように居眠りしていた麻子を沙織は頬を引っ張って起こそうとした。すると席を外していた生徒会の面々が大洗女子の制服を来た人物と共に現れた
「生徒会と一緒にいる人……一体誰ですかねぇ?」
「あの人は……。」
「はーい皆注もーく!新しいメンバーが来たから自己紹介してもらうよ〜。んじゃお願い。」
生徒会と共に来た人物はふわふわとした真っ白な髪をしており、俯いたまま恥ずかしそうにモジモジとしていた
「えっと………あの……今日からMSの整備士として参加します………せ、セイコと申します……よろしくお願いします……。」
「いひひっ。やっぱうちの制服似合ってんね。んじゃ皆拍手〜。」
「へ〜、あんな可愛い子学園ににいたんだ。一年生かな?」
「むむむ………。」
沙織がそんな事を言っていたが華はセイコと名乗る少女を凝視していた
「あの………もしかしてリュウセイさんですか?」
「え゙っ!いいえ人違いです!」
すると少女は杏の背後へ身を隠した
「えっ嘘!リュウセイくんなの!?」
「確かに似てるかも………」
「ありゃりゃ。案外すぐにバレちゃったね〜。」
そう言って杏は横へぴょこんと跳ねると顔を真っ赤にしたリュウセイが再び現れた
「では改めて紹介する。本日より我々の部隊に整備士として参加するリュウセイ・テラズだ。昨日連盟から彼の着任するとの連絡が入った為今日ここで合流して宇宙へ上がる事になっていた。」
「よ、よろしくお願いします………。」
「まずいですよ会長……リュウセイさんのお父さんは会社の社長らしいのでもしこんな事がバレたら……。」
「………マジ?……ごめんね〜リュウセイちゃん。本当はこんな事するつもりなかったんだけどあそこにいる男の人がやれって命令してきてさ〜。」
華がリュウセイの父親の事を言うと杏はロックオンの方を指差しながら罪をなすりつけようとした
「コラー!誰もそんな命令出てないだろ!でも可愛いから俺はその格好のままでいいと思うぞ!」
「そ、そんな〜!」
それを聞いてリュウセイが若干半泣きになってしまい少し可哀想になってきたのでトイレで元の服装に着替えて貰う事になった
「なんか出発前からすごい事になったね……。」
「リュウセイくん結構可愛いかったよね〜写真撮っとけばよかったかな?」
「…………まだ夢の中か?おやすみ。」
「ちょっと麻子!いい加減起きなって!」
「武部の言う通りだぞ冷泉。トレインの出発時間も近くなってきたしもう乗るか。皆俺にしっかり着いてきてくれ!」
ロックオンの先導の下、大洗女子一向はリニアトレインに乗車していき席へ着いた
『本日はデラーズ交通公社、D603便に御乗車頂き誠にありがとうございます。本リニアトレインは低軌道ステーション・ムンゾ直行便となっております。まもなく発車致しますので今しばらくお待ちください。』
「皆忘れ物はしてないな?もうちょっとで発車するからどっか行ったりすんなよー。」
「でもあたしら以外お客さん乗ってないねー。平日だからかな?」
大洗女子一向が使う車両は座席とテーブルが複数設けられた車両であったが偶然他の客人はこの車両の席を取っていなかったようで貸し切り状態になっていた
『大変お待たせいたしました。発車時刻になりましたので当リニアトレインは出発いたします。初期加速終了までは席を立たずシートベルトを付けて御着席するようよろしくお願い致します。』
ついにみほ達を乗せたリニアトレインは宇宙へ向けて発進したのであった
『リニアトレインの初期加速が終了たので本車両は緩やかな減速状態を開始し、車内が擬似的な無重力状態となります。シートベルトを外す際は十分ご注意ください。』
「えっ!嘘!体がプカプカする〜!!!」
沙織がアナウンスの入った後シートベルトを外してみた所体が宙に浮かび上がった。続いて華と優花里もベルトを外し他の面々もシートベルトを外して無重力を楽しみ始めた
「コラーおまえらー!あんまりはしゃぎすぎて怪我とかするんじゃないぞー!」
「ハハハハ。河嶋は皆のお母さんみたいだな。到着までまだ全然時間あるからゲームセンターとか喫茶店行ってもいいぞー。」
「「「「「はーーーーい!!!」」」」」
ロックオンの言う通りリニアトレインの中にはゲームセンターやコンビニ、博物館や飲食店等がいくつか設けられている車両もあった
「ここでしか食べれない物とかあるのでしょうか…なんだかお腹が空いてきました……。」
「さっきお昼食べたばかりなのに華さんは凄いなぁ……。」
「試しにちょっと探検しに行ってみますか?」
「ピピーッ!ちょっと待って二人共ー!」
突然沙織が何故か持っていたホイッスルを鳴らしながらみほと優花里を引っ張って
(沙織さんどうしたの!?)
(駄目だよ二人とも!せっかく華とリュウセイくんが二人きりになれるチャンスなんだから!)
(えっ……あの二人もうそんな関係なんですか?)
(いやまだだと思うけど!でも華の隣に座ってからリュウセイくんずっと顔真っ赤にしたままだもん!これはもう本命でしょ!)
(本命って……でもそうなのかなぁ……。)
「あの……三人共どうかしたのですか…?」
「いやいや何でもないよ!それよりも私達はもうちょっとここに残ってフワフワしようと思うんだよねー。だから私達は一緒に行けないなー。行くならリュウセイくんと一緒に行ったらどうかなー。」
「……ふえっ!僕なんかとですか!?でもせっかくですし友達同士で居た方が……。」
「いいのいいの!それにリュウセイくんだってもう私達と友達でしょ?だから気にしなくていいの!」
「リュウセイさん。ご一緒してもらってもいいですか?」
「ひ、ひゃい!もちろんです!ででででも、僕なんかと一緒で本当にいい、いいんですか!?」
「もー!くどいよリュウセイくん!男の人生は死ぬまで戦いなんだから!さぁ行った行った!」
沙織はそう言って華とリュウセイを部屋の外へ押し出した
「沙織さん何だか変でしたね。それじゃあリュウセイさん。一緒に行きましょうか。」
「は、はい!こちらこそよよ、よろしくお願いします!」
「ふふふっ。リュウセイさんもちょっと変ですね。」
華とリュウセイは美味しいお店を目指してその場を後にした
「いやぁ〜何だか恋のキューピットになった気分だなぁ〜。」
「沙織……さっきからうるさいぞ。」
「あ、麻子さん起きたんだ。まだ到着まで時間あるけどどうする?」
「……二度寝する。」
「んもー勿体ないなー。せっかくなんだからもっと宇宙を楽しむべきだよ!」
「フワフワしていたいっていうのは本当だったのですね……。」
沙織は再び無重力に身を任せて宙を浮かび始めた。気づけばみほ達の車両には生徒会の面々とロックオンと赤ハロ、沙織と優花里と麻子と自分を残し他の皆は遊びに行った事に気づいた
「到着すんのって夜の6時くらいだっけ?まだ結構時間あるね〜。」
「おまえらもどこか回ってきたらどうだ?俺は読んでない本消化したいからここにいるけど。」
「月でやってるニュースとか見てみたいからもうちょいここにいるよ。」
杏はそういうとモニターを付けた。リニアトレインの中では月面都市やステーションの居住ブロック等の地球圏外圏のみで放送されている番組やニュースを見る事ができた。みほも少し気になったので座席に座ってニュースを観る事にした
『続きまして最近密かに学会で取り上げられているニュータイプの話題です。本日はゲストとして現在休養中の島田流家元、島田千代さんに変わって代表を務めている従兄弟の島田衛さんと島田千代さんの娘であり、モビル道のプロチームをも撃破した特務研究機関所属チーム『
『よろしくお願いします。』
するとモニターに二人の姿が映し出された。少女の方はみほよりもまだ一回り年下なようだ、男の方は家元の従兄弟とは思えないくらいとても若々しかった。ライトグリーンの髪に美青年と思わせる様な容貌をしていた
「あの男は……!」
「……………。」
どういう訳か桃は画面に映るその男を睨みつけ柚子は不安そうな顔をして、杏も桃と同様に少し険悪な表情を画面に向けていた
『早速ですが本題に入らせて頂きます。島田さんが6年前に発表した人類の進化系とも言えるニュータイプ。それは通常の人々とはどのような違いがあるのですか?』
『ニュータイプは通常の人間よりも精神や意識が大きく拡張されています。これによって言葉を交わすことなく互いの心中を交換し合ったり遠く離れた場所にいても意識を送信、受信し合う事ができます。簡単に言えば超能力者と言うべきでしょうか。』
『そ、それはつまり相手の心を読んだりテレパシー等を送る事ができるという事でしょうか?す、凄いですね!』
『フフフ。思っていた通りあまり信じて貰えてないようですね。当然ながら6年前僕が発表した時と比べ話題になる事は少なくなりましたし、今では優れた人に対する比喩として使う事もありますからね。』
『い、いえそんな信じてないだなんて……。』
『とはいえこれで終わっては僕の来た意味が無くなってしまう。試しに貴方に何かテレパシーを送ってもよろしいですか?』
『えっ?そんないきなりですか!?』
企画外の言葉にアナウンサーは驚きスタジオのスタッフ達も困惑しているのが伝わってきた
『僕でも良いのですがここは島田流直系の完全なニュータイプである亜里寿にやってもらおうと思います。貴方の精神や身体に害は一切与えませんのでご心配なく。』
『そ、そうですか?ではお願いします。』
『亜里寿、いつも通りでいい。やりなさい。』
すると亜里寿は立ち上がってアナウンサーの前へ移動すると彼女の瞳をじっと見つめた
『……………えっ!きゃあ!!!』
するとアナウンサーは突如叫び声を上げながら勢いよく席を立った。さらにスタッフの何人かも同じような声を上げ少しだけ慌ただしくなっていた
『………やり過ぎだよ亜里寿。少し驚かせてしまいましたね。』
『そんな……台本ではそれっぽく反応しろって………嘘……本当に声が………。』
『ハハハハハ。いくら何でもテレビでそういう事は言わない約束ですよ。とはいえまだニュータイプに関してははっきりしない事が数多くあります。ただスタッフさんの中にも亜里寿の声が聞こえた人がいる様に多くの人がニュータイプの素質を持っているという事だけは断言できます。』
あきらかに異常な事が起こっていたためみほは画面から目を離すことができなかった。ロックオンは読書をしていた為気づいていなかったが、杏達も謎の現象を目を剥くように見入っていた。
そしてそれが起こったのは画面が亜里寿の方へ切り替わった時であった
『……………。』
亜里寿はカメラ目線になり視線をこちらへ向けてきた
『……………。』
何故かカメラは切り替わる事なく亜里寿を映し続けていた。亜里寿は逸らすことなく瞳をじっと向けまるで画面の奥からこちらを見ているかのように思えた
『おい!カメラ切り替えろ!CM入れないじゃないか!』
『それが変わらないんですよ!このカメラ新品なのにどうしてかあの子を映したまま変わらなくて!』
「何だか様子がおかしくないですか?………西住殿?」
「…………っ!」
優花里はみほに声を掛けたがみほは画面に映る亜里寿から目をそらす事ができなかった。さらにまるで金縛りにあったかの様に体も動かず声を出す事もできなかった
(………………………見つけた。)
すると突然みほの頭の中に誰かの声が響いた。この場にいる誰の声でもなかったのでみほはその声の主が画面に映る少女であると察しこの現象が恐ろしく思えてきた。
「あわわわわわわ止まんない!みほ避けて〜!!!」
すると天井を蹴った事で勢いがついたのか沙織がみほへ向かって頭から突っ込んでいった
「えっ…?」
みほは間一髪で頭を下げ激突してくる沙織を避けた。しかし沙織は減速できずそのまま部屋の壁に頭から追突してしまった
「沙織さん!」
「うわぁ!武部殿!」
「何だ?どうした!?」
みほと優花里の大声に居眠りしていた麻子も飛び起きた。壁に激突した沙織は力無く宙に漂っていた
「沙織さんしっかりして!」
みほは沙織の体を捕まえて声を掛けた。幸い座席が柔らかい素材で作られていた為出血は無かったが気を失ってしまった様で返事がなかった。
「ちょっと武部ちゃん大丈夫!?オンちゃんお医者さん!」
「わかってる!今呼ぶから待ってろ!」
ロックオンは車内電話を使って医務室へ連絡した。みほの意識がテレビから沙織の方へ移った丁度その時、画面に映っていた亜里寿はカメラから目を逸らし画面も通常通りに切り替わる様元に戻った
「………いてて…。あれ、ここは……?」
沙織が目を覚ますと自分が何処かの薄暗い廊下に横たわっている事に気づいた。周りに人の気配は一切無くリニアトレインの中とは思えない景色が周りに広がっていた
(あー………夢か……。)
先程までいた場所とは全く違う景色が広がっていたため沙織は自分が夢の中に居ると察した。沙織は起き上がり薄暗い廊下をとりあえず進んでみる事にした。
「どこなんだろここ?怖い夢じゃなきゃいいな……ってあれ?」
沙織は歩きながら夢の中なのに何故か自分の意識がはっきりとしている事に気づき違和感を感じた。すると辺りが薄暗いせいでよく見えない中、一つだけ半分程ドアが開いている部屋を見つけた
「…………なんだろあの部屋。」
沙織はその部屋の方へ進んでいくと表札が見えそこには『西住みほ』と書かれていた
「みほの部屋?でもこんな所に住んでなかったよねは…。」
表札をよく見ると名前がもう一人分書いてあるようだったが黒い霧に覆われており読むことができなかった。沙織は恐る恐るドアを開けて部屋の中へ入った。
すると2段ベッドの下の段でうずくまっているみほを発見した
「みほ……だよね?こんな所で何してるの?」
「ッ!!!………どうして貴方がここに!?」
声を掛けるとみほは物凄く驚いた表情をこちらに向け、まるで怯えるかの様にベッドの隅へ動いた。よく見ると着ていたのは大洗の制服ではなく水色と青を基調とした制服を着用していた
「どうしてって……よくわかんないけど起きたら廊下にいてさ。誰もいなくて結構怖かったけどみほがいて良かったよ〜。」
「…………出て行ってください。」
「え?」
「早く出てって………今すぐ私の目の前から消えてください!」
みほから思いもよらない言葉が飛んできて沙織は自分の耳を疑った。
「消えてって……みほどうしちゃったの?なんかおかしいよ……。」
「うるさい!……私だって好きでおかしくなったわけじゃないのに……もう出てってよ!」
みほは睨みつけながら手元の枕を沙織の方へ投げつけた。夢の中だと思っていたが目の前のみほがやけにリアルに感じ沙織は真剣に向き合おうとした
「ちょっと落ち着いて!本当にどうしちゃったの?なんか悩みとかあるなら相談してよ!」
「うるさいうるさい!私がいるとあの子はもう貴方達とは一緒にいれなくなるんです!だからもう………ここには来ないでください!」
「それどういう事………ってきゃああああ!!!」
突然ベッドの上のみほからオーラの様な物が放たれ沙織の体は大きく吹き飛ばされ部屋の外へ追い出された
「なんなのこれ〜!みほーーー!!!」
沙織は吹き飛ばされながらもみほの名前を呼んだがみほはベッドの上から動く事なく部屋の扉は閉ざされてしまい再び暗い空間へ投げ出されていった
「…………んん……。」
「あ、沙織さん!気がついた!?」
沙織が再び目を開けるとみほが心配そうな顔を浮かべながらこちらを覗き込んでいた。
「みほ………?あいたた……また夢……?」
「大丈夫!?まだ腫れてるからあまり無理しないで!」
沙織は今自分がみほに膝枕をされみほが手を繋いでくれている事に気づいた
「やっと起きたか。全く人騒がせなやつだな。」
「武部殿無事でよかったですぅ!私もう死んじゃったかと思いましたぁ!!!」
麻子と優花里も沙織が目を覚ました事に気づき優花里の方は泣きながら沙織のもとへ駆け寄ってきた
「あ、武部ちゃん起きたみたいだね。」
「おお!やっと起きたか!やれやれ心配したぜ。」
「ヤレヤレ。ヤレヤレ。」
「全く……我が校に恥をかかせる様な真似をしよって……。」
「怒っちゃ駄目だよ桃ちゃん。でも桃ちゃんが初めてリニアトレイン乗った時と同じで何だか懐かしいなぁ。」
「確かに懐かしい………じゃなくてその事はもう忘れろと言っただろ!あと桃ちゃんって言うな!」
「お疲れ西住ちゃん。ずっと武部ちゃんの事看てもらって悪かったね〜。」
「いえ……優花里さんと麻子さんも居ましたしとっても心配だったので。」
「みほ………。」
沙織はみほが看病してくれていた事が嬉しかったが、先程謎の部屋で出会ったみほの事を思い出し少し違和感を感じた。夢だと思っていたが何故か実際現実で見た事のように鮮明に記憶が残っていたため、一体あの部屋にいたみほが何だったのか気になって仕方なかった。
『本日はデラーズ交通公社、D603便に御乗車頂き誠にありがとうございました。当トレインはまもなく低軌道ステーション・ムンゾに到着致します。お降りの際は一度席に戻り忘れ物がないか確認し、他のお客様とぶつからないようお降りするようよろしくお願いします。』
「お、もう着くみたいだな。おまえら忘れ物しないようにゴミとかあったらちゃんと持ち帰るんだぞー。」
大洗女子学園一向を乗せたリニアトレインはようやく低軌道ステーションに到着しようとしていた
低軌道ステーション・ムンゾ、リニアトレイン発着ロビーにて……
「いやぁ〜早く来ないですかねぇ〜というか本当に来るんですかねぇ〜。」
「お姉ちゃん……まだそんなに待ってないのに……それにみほさんを乗せたリニアトレインもそろそろ到着するから……。」
何処かの制服を着た二人の少女が発着ロビーのソファに腰掛けていた
「う〜〜〜ん。亜里寿が今日みほさんが来ると教えてくれたとはいえどうやってみほさんに接触すればいいんだろう?」
「えっ!お姉ちゃん何にも考えてなかったの?」
「うん!!!こういうのはゴリ押しでパパーッとやっちゃいたいけどそういう訳にもいかないからなぁ〜〜〜って事でさらが考えてよ。」
「ええ……そんなの私にはできないよ……私お姉ちゃんみたいに悪い事考えるの上手くないし……。」
「あれ?姉としては良くない風に思われてる…?そんな事よりどうしよう…もうそろそろ到着しそうな気がする!」
「さっきまで早く来ないかなって言ってたじゃん……とりあえず今日の所は私達なりにみほさんがニュータイプかどうか判断してその後どうするか決めようよ。」
「さっすがさら!可愛いね〜頭いいね〜可愛いね〜!うりうり〜!」
「ちょっとやめてよお姉ちゃん……恥ずかしい……。」
黒髪にピンクのリボンを巻いた少女、桜空(さら) 。そして彼女の双子の姉である緑色のロングヘアの少女、奈桜(ナオ)。何らかの目的を旨に二人は宇宙へ上がってくるみほを待ち構えるのであった
読んでいただきありがとうございました
何人かオリキャラ(?)が登場しましたが次の話で説明できればと思っております
三日月とアトラがいい感じなのは声優ネタというよりは生まれ変わった世界で幸せになった鉄華団やマッキーを書きたかったからという理由です。ロックオンが出てくるのも同じ理由です。幸せになって欲しかった……
次回はもうちょっと早く投稿できる様頑張ります