今回は初めて当ssの世界観や歴史について触れますがちょっと話が重い感じなので読まなくても大丈夫です。あくまでおまけなので本当に大丈夫だと思います
今回もよろしくお願いします
「月の研究所·········それって一体どういう所なんですか?」
しほの口から明らかにされた今回自分達を襲ったモビル道チーム
「·····月面に巨大都市がいくつか在るのは知っているわね?」
「確かより多くの人類が生活できる居住コロニーを開発するための拠点として造られた都市だったかと·····」
「麻子そんな事知ってたの!?」
「いや··········何故か今になって何処かで見たのを思い出してな」
「麻子さん凄い·······」
「貴方達もそのくらいの事は勉強しておきなさい··········そして月面都市が完成してから暫く経って表向きにはゲノム研究という目的であの研究所は造られたわ·····」
するとしほは座り込んでいたロックオンに視線を向けた。しほの鋭い視線に気づいたロックオンはすぐさま立ち上がった
「教官さん、貴方は何故モビル道が誕生したか知っている?」
「は、はい!確か人が宇宙で生活できる様になったのでその新時代を象徴する新しいスポーツとして誕生したのが所以であります!」
「教科書通りの答えね。では何故モビル道なのかしら?こう言うのは失礼ですがただのアニメであるはずの機動戦士ガンダムから登場した兵器を実際に使って武道を行うだなんて変だとは思わない?」
「え·····?そう言われましても··········えーと········」
しほの問いにロックオンは答えが全く浮かんでこず焦りからか滝のように汗を流し始めた
「あのーママ住さん·····なんでそんな関係ない事聞くんすか·····?」
「ただの例え話です。確かに新時代を象徴する武道というのも間違ってはいませんが私はただ単純に
「できるから·····?ってどういう事ですか?」
しほから出された解答に杏やみほ達は首を傾げた
「できるから、というのはそのままの意味です。宇宙へ進出し地球と同じ様に生活できるまでに至った私達人は何でもできると思ったのでしょう。かねてより憧れであった巨大人型兵器を動かし戦わせる事を実現しようと開発を進め完成させ、それらを使ってアニメさながらに戦うために武道という形でモビル道が誕生したのよ」
一般的にモビル道は人々が宇宙へ進出した新時代を飾るために全く新しい武道として誕生させたという考えが世界に浸透していたが、しほの言う通り科学技術が大幅に進歩した故にできるから、今まで夢にまで見た世界を実現できるから誕生させという側面も存在していた
「へぇ〜意外とリアルというかロマンのある理由なんだねぇ」
「というかなんか意外ですね··········家元がモビル道をその様に考えていたなんて····」
「あくまで例え話として出しただけです。話を戻しますがあの研究所には今言ったようにできるからやる·····作れるから作り出す·····そういった思想を持った者達が大勢集まってあそこで働いているの」
「?つまり誰もが今までできなかった事をできる様にするための研究をしてる·····って事ですか?」
杏はしほが言った事に若干の疑念を持ちつつも自分なりに考え彼女に聞き返した。世界中の人々の下で活躍するであろう物のための研究であるならむしろ歓迎すべきなのではないかと思っていた
「確かに聞こえはいいかもしれません·····がその思想故に誰もが留まる事も退く事もせず、己の名を世に残すためか、ただの興味本意や探究心からなのか、本当に人類の発展を願っての事なのか·····あの研究所にいる者達は目的のために平気で誰かを材料に研究を行っているの·········」
「材料·····?」
「えっ····そういう研究ってもしかして·······」
沙織をはじめその場にいた全員がしほの言葉から背筋が凍る程恐ろしい物を想像した。それを察ししほは主に杏と沙織に向けて言葉を掛けた
「·····みほと冷泉さん。貴方達はこれから話す事に少なからず関わっているので残ってもらいますが、他の皆さんにとっては聞かない方がよい話ですので席を外す事を勧めます。残るのであれば咎めませんが聞いたからには他言無用を約束して欲しいです」
「····私は残ります。生徒の身を預かる者として二人にとって危険な存在の事は知っておかなければならないので」
「わ、私もみぽりんと麻子が残るんだし·····二人と関係のある事なら無視できないので聞かせてください!」
沙織はしほに向かって頭を下げながらそう言った
「そう言うのであれば構いません。教官さん、貴方はどうするの?」
「·····俺も残ります。今回の件へのケジメを付けるためにもせめてあの連中の正体だけでも知りたいので·····」
「ニールちゃん··········」
「わかりました。これから話す事は自然保護団体ブルーコスモスが送ったスパイが得た情報から明らかになってきた研究所の正体です。この世界の歴史とも大いに絡んでいるので少し長くなりますが付き合って貰います」
しほは軽く息を吸うと月面都市に存在する研究所について話し始めた
遡ること現在より1世紀近く前··········モビル道が誕生してまだ間もない頃、木星由来の資源採掘と未知なる物の発見という任務で地球を発っていた木星探査チームと彼等を乗せた木星探査船が数年間に渡る時を経て地球へ帰還した。各国の代表や宇宙関連の企業団体はこれで何度目かになる地球と木星間の往還航行の成功に歓喜し探査船メンバーの帰還大いに喜び讃えて迎え入れた
その後探査船の成果報告会が開かれ代表達はこれを聞くために世界中から期待しながら集まり、チームリーダーを務めていた若き日本人女性が発表のために報告会へ姿を現した。しかし報告を終えた後、彼女は探査船の成果とは別に彼女自身に起きた事についてある告白をした
「私は今回人生で初めて木星圏へ行きあの地で長期間地球と同等の生活をしていました。ですが地球より遥か遠く離れた星へ到達したからでしょうか··········私自身理解し難い程未知なる力を手に入れてしまった様で·····ヒトとして新たなる段階へ到達してしまったのかもしれません」
その場にいた誰もが彼女の言っている事が理解できなかった。代表達は彼女が長旅で疲れたのだろうと思ったがその直後、彼女はテレパシーの様な物を報告会に出席していた代表達の頭の中に送り込んだ。代表達は今まで体験する事のなかったその衝撃にある者は頭を抑え、身をのけ反り、思わず椅子ごと転倒する者もいた。その時何が起こったのか誰もわからず代表の中の一人が半狂乱になりながら護衛を呼び彼女を拘束させた
その後彼女はメディアに報じられる事は無かったが国家反逆罪として幽閉される事となった。しかしどんなに調べようと彼女が当時着ていた服や身体から兵器や武器の様な物は見つからず、報告会を開いていた部屋と建物からも怪しい物は何も発見される事はなく彼女自身が本物のエスパーの類いなのではないかという説が濃厚になり、地球圏代表議会では彼女を木星帰りの英雄として一刻も早く社会へ戻すべきという意見や明らかに危険な存在であるため最悪殺処分も考えなければならないという提案なども現れ毎日の様に論争を繰り広げてあいた
しかしそんな日も長くは続かずいつもの様に議事堂が慌ただしくなっていると突如議会が開かれていた部屋の扉が開かれ、驚く事に彼女が厳重に幽閉されていたにも関わらず何故か部屋を出て議会に姿を現したのであった。大勢の議員や警備に当たっていた者達が現れた彼女の姿に仰天し、そのあまり拳銃を彼女に向かって放とうとする者もいたが何故か引き金に指が掛からず彼女を拘束しようと駆け寄る者は途中で金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。当の彼女はというと他の者達を後目に一直線に壇上へ上がり、代表議会の議長から申し訳なさそうにマイクを受け取ると室内にいた者達に向かって宣言した
「自分は以前行った事の他に皆さんの本心を読む事も可能です。この
議員達は彼女に何も言い返す事もなくただ圧倒され、彼女もマイクを置くと直ぐに壇上から降り部屋の外へ出て行った。その後彼女は元いた部屋の中に戻ってきたらしく、部屋の看守を務めていた者が言うには無意識の内に部屋のパスワードを解いてしまったらしく他の職員達も彼女の脱走を覚えている者は誰もいなかった。後に彼女の口から「私が皆を洗脳したから脱走できた」と報告が上がりら議会の中では彼女が言う新たなる能力を手に入れたという事を信じる者が増え始めそして·····彼女の様な存在に人類が成れるのではないのかと憧れを持ち始める者も現れ始めた·····
その後地球圏代表議会は一部のメンバーで極秘裏に彼女の正式な処分を決定した。報告会と議会で彼女が起こした事に目を瞑る代わりに自身が得た未知なる能力の解明とその能力を通常の人類も使える様にまでして欲しいという任務が課せられた。彼女は元々その気だったため喜んでその決定を飲み、親しい探査船のメンバーや自身の能力に憧れや知的好奇心を抱く研究員達を集めた。研究は地球上では目立つからと禁止されたので月面都市フォン・ブラウンに研究所を設立し、月の政治を取り仕切る月議会と連携しながら研究を行うこととなった
それ以来彼女········島田流初代家元
その後恵里寿は結婚し子を産んだ。しかし家庭を持ちたかった訳でも愛した人との子供が欲しかった訳でもなく··············ただ自身の腹から産まれた子が自分と同じ能力を持っているのかが知りたかった·····そして恵里寿の期待通り産まれてきた子はニュータイプの能力を備えている事が判明した時彼女は全人類がいずれニュータイプになれるのを確信し自身が持つ悲願を次の世代に託す事を決意した
それから現在に至るまで彼女達島田流は代々亡き恵里寿と先代達の研究と思想を受け継ぎ同じ様に研究を続けていた·····全人類を次なる段階へ··········ニュータイプへと覚醒させるために··········
「ちょっと待ってくれ·······なんだその馬鹿げた話は·····そんなの倫理的に··········常識的に考えて絶対許されるはずがないじゃないか!」
皆がしほから明かされた月の研究所の話に凍りつく中、麻子は握った拳を震わせるながら感情の昂った声を上げた。これまでの生活から到底想像する事が無かった麻子の姿を見てみほと沙織はかなり心配に思った
「麻子·····?どうしちゃったの·····?」
「ふざけるな·····何が人造人間だ何が改造だ········そんなふざけた事をしている場所で··········私は··········!」
「家元はここまで深い内情を知ってて·····警察等には通報しないのですか··········?」
「········まだ確証足る物が得られてない為議会に報告してもろくに動いて貰えないのです。更には現在家元を務めている4代目の千代が··········いや、
しほもまた眉間にしわを寄せ怒りの形相を浮かべながら呟いた。今まで何不自由無い平和な世界で生きてきたと思っていたが··········まさかそんな恐ろしい事が繰り広げられている場所をみほ達は信じる事ができなかった
「··········けどもしそんな研究所が西住ちゃんを無理矢理連れて行ったとしても····バレたらいくら月の後ろ盾があっても言い逃れできないんじゃ··········」
「·····そこなのよ。そんな大胆な事をすれば直ぐにボロが出て議会も黙ったままではいれなくなる。というのに今回仕掛けて来たのは私にも動機がわからないの··········ところで冷泉麻子さん。もしかして貴方は何か知っているのかしら?それとも先程襲撃してきたνA-LAWSから何か聞かされた?」
「私は···············いや、特に何も知りませんし何も言われていません··········」
麻子は先程戦闘中にナオから明かされた事を話す事ができなかった。正確には自分自身が研究所で産まれたかもしれないという話を信じる事ができなかった。だからこそそんな話をしほや他の皆に聞かせたくなかった
「麻子さん·····本当に大丈夫なの·····?」
「心配しないでくれ·····そういえば連中はただ私の成績がいいから誘いに来たと言ってたな·····」
「先程の反応といい何か気になるわね········何か困っている事があればできる限り力になりますが?」
「いや特には··········あ、その·····大洗に私のおばあがいて·····もし良ければおばあと電話をさせて欲しいです·····」
「わかったわ。後で大洗の役場に通信してみます。貴方のおばあさん次第ですが早ければ今日中に通話ができるかもしれないわ」
「あ、ありがとうございます··········」
麻子は少し震えた声でしほに礼を言った。みほと沙織は本当は麻子に何があったか問いたかったが彼女がそれを拒んでいる様に感じたので聞く事ができなかった
『知波単学園及び大洗女子学園の艦と断定。我々シュバルツ・ファングは非常事態の様である貴艦らの入港を許可します』
ブリッジ内にシュバルツ・ファングの管制局から通信が響くと小惑星の岩盤がハッチのように捲り上がり港への入口が現れた。そして大洗女子学園の艦2隻とそれを牽引していた絹代・フリートはシュバルツ・ファングへ入港して行った
月面都市フォン・ブラウン··········ニュータイプ研究所最下層にて··········
「素晴らしい·····これ程までに柱の開発を進めていたとは·····流石は衛だな!」
フォン・ブラウンの街に建てたれた電波塔よりも更に巨大で鈍い紫色の光を内部から怪しげに放っている巨塔が何本も建てられた空間を二人の男が展望室から眺めていた
「お褒めに預かり光栄です、コーナー議長」
「おいおい衛。せっかくの休暇なのに仕事の呼び方で呼ばないでくれよ」
「これは失礼しました。アレハンドロ様」
「とはいえこれ程柱の建設が進んでいたとは·····あと何本だね?
「約2800です。今年中には目的の2万に到達するかと」
「そうか·····!ついにこの私が·····全人類の頂点に君臨する時が来るというのだな·····!」
「まだお互い幼かった頃·····研究所から君を買い取り島田家に養子入りさせたのは正解だった··········やはり君はまさしく私のエンジェルだよ·····」
「恐縮ですアレハンドロ様。僕がここまで働けたのも全て貴方のおかげです」
「フハハハハ!それでは今日もナオくんと朝まで楽しませてもらうとするよ!我々を引き合わせた運命と新たなる時代の幕開けを祝してな!」
上機嫌になったアレハンドロは高笑いしながら部屋の外へ出て行った
(前の世界と同じくらい愚かで助かるよ·····アレハンドロ・コーナー··········)
衛はアレハンドロの後を直ぐには追わず、意識を研ぎ澄ましテレパシーを愛里寿の住む島田家本邸で働くメイドに送った
(聞こえるかいマカハドマ·····愛里寿達が帰ったらナオに僕の元へ直ぐに来る様伝えといてくれ。わかったね?)
(···············かしこまりました)
メイドからの返事を聞いた衛はテレパシーを終わらせ最後におびただしい数の"柱"達に目をやり邪悪な笑みを浮かべながらその場を後にした··········
読んでいただきありがとうございました
話の雰囲気が段々SEEDっぽくなってきてる様な気がしながら書いてました()
やはり説明足らずな部分が多いと思うのでこの先も頑張って補足しながら進んでいけたらと思います