ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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今回も前編後編に分けることとなりました。新しいオリキャラ(?)が登場します

先の展開に伴って杏のキャラ設定が大分変わってしまったのでご了承いただけると嬉しいです

今回もよろしくお願いします


13話 決意の朝(前)

もはや自力での航行ができなくなっていた大洗女子学園のホワイトベースとビーハイヴ。2隻を牽引した知波単学園所属艦隊絹代・フリートはみほの母西住しほの指示で彼女が所長を務め管理運営を行うモビル道訓練用小惑星【シュバルツ・ファング】へ進路を取った。その間しほからみほ達を襲った島田流のモビル道チームνA-LAWSと彼女達が属している月の研究所の実態が明かされ、みほ達は自分達が生きる平和な時代に潜む闇の一部分を知らされる。

新たに歩み始めたモビル道。新しい友と上がった宇宙で自分を待ち受けていた者達との出会い、母との再会·····そして11年前自分をニュータイプに覚醒させたという少女の声。これまでの出来事は全て偶然の産物か、あるいは誰にも抗う事のできぬ運命が紡ぎしものなのか·········

 

 

 

 

 

 

シュバルツ・ファングの小惑星体から港へ繋がるゲートが開かれそれに促される様に大洗女子と知波単学園による艦隊はゲートの中へ入って行った。誘導灯が照らす長い搬入路をしばらく進んで行くとシュバルツ・ファングが誇る広大な港の内の一つに出て、そこには訓練の為に訪れている様々なプロチームや学生チームの艦が何隻も停泊していた

 

 

「すっごい·······これ全部みぽりんのお母さんが持ってる船なんですか?」

 

 

「そんな訳ないじゃない。けれどこれ程多くの艦を収容できる港をいくつか備えている訓練場はここくらいでしょう」

 

 

数々の艦を見て驚きを露わにする沙織にしほは少し自信げに答えた。他の艦と同じ様に停泊させてからホワイトベースとビーハイヴから絹代・フリートの艦から伸びていた牽引ワイヤーが切り離されると、艦の修復資材や専用の工具を装備した整備士の操るプチモビが何体か現れ早々と2隻の修理作業を始めた

 

 

「へぇ〜着いた瞬間修理し始めてくれるなんて超気が利くじゃん!」

 

「すみません家元·····助けてもらうだけじゃなくこうして修理まで頼まれてくれて·····」

 

 

「事が事なのでこのくらい礼には及びません。それより先程も少し話しましたが貴方は結局どうしたいのですか?確かに後任の教官なら私の方で手配できますが·····」

 

 

しほは外を眺めているみほ達には聞こえない様に言いロックオンはそれを聞き苦悶な表情を浮かべた

 

 

「··········それでよろしくお願いします。いやぁ教官なんて今の俺にはとうてい荷が勝ちすぎる大役だったんですよ·····ははは·····」

 

 

「貴方はよく動いた方だと思いますがそこまで悔やむのならば止めはしません。··········ただみほの事を救おうと立ち向かってくれた事には大変感謝しています。本当にありがとうございました」

 

 

そう言ってしほが頭を下げてきたのでロックオンは戸惑いそれを制する様に振舞った。そんな二人の会話に杏はこっそり聞き耳を立てていた

 

 

「それでは私は降りさせてもらいます。わかっているとは思いますが基本的に寝食は基本的に艦内で済ませてもらいます。もしトラブルがあれば直ぐに担当の方へ連絡してください。それと冷泉さんはお婆さんと連絡が取れたら呼びますので艦内に残ってて貰えるかしら」

 

 

「わかりました。よろしくお願いします」

 

 

麻子の返事を聞きしほはブリッジから出て行こうとしたが帰ろうとした事に気づいたみほに呼び止められた

 

 

「お母さん!·····その··········今日は助けに来てくれてありがとう·····」

 

「別に助けに来た訳ではなくたまたま通りかかっただけよ。とはいえ本当に運が良かったわ·····」

 

 

「えっと·····勝手にモビル道を始めてごめんなさい·····でもこんな事になるなんて知らなくて··········」

 

 

「アロウズの事はこれ以上貴方に対して好きにさせるつもりはないから安心しなさい。それより私が先程申したことは全て本気です。まだ大洗女子でモビル道を続けたいのならその覚悟と力を私に認めさせる事ね」

 

 

去り際に先程約束した事を言い残し、しほはブリッジから出て行った。まだ認めてもらえた訳でも分かり合えた訳でもない。それがみほにとって少し寂しかったが西住流の家元である母を納得させるためには致し方ない事、自分の力で乗り越えなければならないと心に留めることにした

 

 

「········はぁ〜めちゃめちゃ緊張した·····けど思ってたより西住のお母さんって優しい人なんだな。どうなるもんかとヒヤヒヤしたぜ·····」

 

 

「ニールちゃん·····」

 

 

「俺はこれから夕飯作るけどおまえらはもう疲れてるだろうし部屋でゆっくりしててくれ。できたら連絡するからよ!」

 

 

ロックオンは空元気気味にみほ達にそう言うとブリッジを出て食堂へと向かって行った。今思えば皆と宇宙に来てまだ二日目だというのに内容の濃い出来事ばかりだった為疲労感がどっと体にのしかかってきた

 

 

「はぁ··········なんか色んな事ありすぎて整理しきれないよ··········」

 

 

「三人とも大分疲れてるみたいだしニールちゃんの言う通り夕飯まで休んできていいよ。はいこれ寝室の鍵」

 

 

杏はポケットからカードキーを2枚取り出しみほに手渡した

 

 

「本当は仲良い子同士固めたかったけど二人一部屋だから西住ちゃんは私と同じ部屋で組んじゃった。なんかごめんね」

 

 

「そんな事ないですよ。でもこの船ずっと放置されてたから部屋の中も整理しなきゃいけないんじゃ·····」

 

 

「それならニールちゃんがこっそり綺麗にしてくれてたみたいでね。シャワーからちゃんとお湯が出るくらいまで全部やっててくれたんだよね··········じゃ私はちょっとやる事できたからまた後でねー!」

 

 

そう言って杏もブリッジの外へ出て行ったのでみほ、沙織、麻子の三人も後に続いてブリッジを出て自室へと歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人はブリッジから生徒それぞれの寝室がある区画に到着しとりあえず三人は沙織の部屋で休む事にした。同部屋の華はまだリュウセイと共にビーハイヴから戻っていなかったのもあって部屋にはロックがかかっていたので沙織は杏から貰ったカードキーで部屋を開け明かりを点けた。すると簡素ながらも長年放置されてたとは思えない程整頓され床や壁にもシミ一つない部屋が目に飛び込んできた

 

 

「へぇ〜これが私達の部屋なんだ〜」

 

 

「····················寝る」

 

 

手早くパイロットスーツを脱ぎ捨てTシャツと下着姿だけになった麻子はシーツと布団が新品に取り替えられたベッドの上に倒れ込むように飛び込んだ

 

 

「あ゙ー!ちょっと麻子!そこ私のベッドなんだけど!」

 

 

「西住さんのお母さんが呼んだら起こしてくれ。それまで少し借りるぞ」

 

 

「てか本当に寝ちゃうの·····?さっきも思ったけどみぽりんを攫おうとした人達に絶対何か言われたんでしょ?今の麻子いつもと全然違うしよかったら相談してよ·····」

 

 

「··········沙織、おまえは私のおとうとおかあの事·····何か覚えてないか?」

 

 

「え·····ごめん、二人の事は私のお父さんとお母さんもよく知らなくて·····」

 

 

「そうか·····私の事は心配しなくていい。いずれ自分で解決してみせるさ··········」

 

 

麻子はそのままうとうとと眠りへと沈んで行った。仕方がないので沙織はもう一つのベッドに座り、みほはパイロットスーツを脱いで青と白を基調としたインナーと白のレギンスという新しいユニフォーム姿に着替えてから沙織の隣に腰掛けた

 

 

「麻子さん·····本当に大丈夫なのかな·····」

 

 

「·····麻子はね、今から10年くらい前に私んちの近所に住んでるおばあの家に家族で引っ越して来たんだけどね。引っ越してからすぐにお父さんとお母さんが事故で亡くなっちゃって·····」

 

 

「えっ、ごめん·····私全然知らなくて·····」

 

 

「いやいやそういうのじゃないの。あの頃は麻子の事凄く可哀想って思ったけど、あの子立ち直るのが凄く早くてね。葬式の翌日もいつも通り学校に来たし、今まで私におとうとおかあが居なくて寂しいなんて一言も言った事がなかったからさ。麻子って本当に強い子なんだよね。··········でもどうしてここにきて·····やっぱりあの人達に何か言われたのかな·····」

 

 

みほと沙織は襲撃してきた4機のガンダムの内2機が麻子と接触していたのを思い出した。最終的に麻子を連れて行こうとはしなかったものの、あの間に麻子は何か良からぬ情報をもたらされそれが原因で先程も今までにないくらいに取り乱してしまったのではないかと二人は考えた

 

 

「まだ宇宙に来たばかりなのに本当に色々な事があったね。それに凄く怖かったよ·····みぽりんがニュータイプっていう力を持ってるから研究のために連れて行こうとするなんて·····本当に捕まってたらもう会えなくなってたんだよね··········」

 

 

「·····沙織さんはあの人達がお母さんの言ってた研究のために私を連れて行こうとしてたと思う·····?」

 

 

「え?だってそうなんじゃないの·····?みぽりんのお母さんだって私達を襲ったのは月の研究所の人達だって·····」

 

 

「あの時あのガンダムに乗ってた子ともう一人·····あの子が何なのか全くわからなかったけど私の身体を乗っ取るって言ってたの·······この世界を変えるために必要だからって··········」

 

 

みほの言葉を聞き沙織は途中で声を詰まらせた。みほが持つニュータイプという力、それを欲望のままに研究している月の研究所、そしてみほと自分の頭の中にだけ届いた謎の少女の声。説明のつかない事ばかりだがニュータイプという力を持ち得ているのであれば、みほの言う誰かの身体を乗っ取る事や洗脳する事もできるはず·····そう思うと一層恐ろしく思い沙織はみほの手を大事そうに握った

 

 

「みぽりん·········本当に戻ってこれてよかったね·····ごめんね何もしてあげれなくて··········」

 

 

「そんな事ないよ。沙織さんのおかげで私は··········けど確かに怖かったな··········」

 

 

うつらうつらとしていたみほはゆっくりとベッドに横たわったかと思うとそのまま眠りに落ち小さな寝息を立て始めた

 

 

(そっか········本当に色んな事があったし疲れちゃったよね········)

 

 

モビル道に疎い沙織にも目に見えて尋常ではない存在であると判るネティクスと戦闘していたのだからここまで消耗するのも無理はない。沙織はみほの体をちゃんとベッドに寝かせてあげて自分は椅子に座ってみほの手を握った

 

 

「お疲れ様みぽりん·····」

 

 

(·························ありがとう·····)

 

 

「·····え?」

 

 

突如沙織の頭の中にみほの声が聞こえた。思わず辺りを見渡すも不振なものがあるはずもなく当のみほは眠っているためただの気のせいという事に処理した。ただその時の感覚は謎の少女の声が頭の中に聞こえたそれと全くの同じものであった··········

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ㅤ食堂のキッチンにてロックオンは思い詰めた顔を浮かべながら下ごしらえのためにじゃがいもの皮を剥いていた。彼は今異例の事態であったものの教官という立場でありながらみほをはじめ生徒達を危険な目にあわせてしまった事から自責の念に駆られていた。先程しほと二人きりで話した時はあまり気に病むことは無いと言われたが、元を辿れば連盟からの補助も無しに全国大会へ間に合わせるために独断で皆を宇宙に連れ出し、無償だったからとνA-LAWS所有の訓練宙域を借りたのも自分だったのでどうしても責任を感じずにはいられなかった

 

 

「はぁ、本当やっちまったな····何がロックオン・ストラトス教官だよ·····情けねぇ·····」

 

 

「おっ、早速お料理してるみたいっすね〜お兄さん〜」

 

 

声がしたかと思うと食堂の入口からひょっこりと杏が顔を覗かせており肩にはリュックサックを担いでいた

 

 

「角谷·····!どうかしたのか?」

 

 

「私はあんまり疲れてないからお手伝いしようと思ってね。ニールちゃん一人じゃ人数分作るのも大変でしょ?」

 

 

「気にすんなって、こうして合宿の飯作るのもやった事あるしおまえも皆と一緒にいていいんだぜ?」

 

 

「まーまーそう言わずに。それに作った事あるって言っても男子だけの合宿でしょ?女の子の好みとか詳しくなさそうだからここは頼りにしてよ」

 

 

正直今は一人になりたい気分であったが杏の言うことも一理あると思いロックオンは彼女が手伝う事を承諾した。杏はキッチンに入るとリックから自前の調理器具を取り出し調理台の空いてるスペースに並べた

 

 

「なんか色んな食材が置かれてるけど何作んの?もしかしてカレー?」

 

 

「いや俺の故郷の家庭料理を作ろうと思ってな。·········悪かったな、俺のせいであんな事になっちまって·····」

 

 

「ニールちゃんのせいじゃないよ。ママ住さんもどこの訓練所を選んでも西住ちゃんを狙いにあの人達は来ただろうみたいな事も言ってたし」

 

 

「けどよ··········いや、ありがとな」

 

 

ロックオンはそう呟いてからまた作業に戻り杏もロックオンの隣でお米を研ぎ始めた。二人は黙々と作業を進めていたがどうしても聞きたい事が杏が痺れを切らして話を切り出した

 

 

「ニールちゃんさ、さっきママ住さんが後任がどうとか言ってたけどもしかして辞めちゃうの·····?」

 

 

「聞いてたのか··········まぁそういう事なんだわ。けど明日にでも新しい教官は手配できるらしいから心配しないでくれ」

 

 

「そういう事じゃないでしょ·····!なんで勝手にそんな事決めんのさ!誰もニールちゃんに辞めろだなんて一言も言ってないのに!」

 

 

「悪ぃな··········ただつくづく思い知らされちまったんだ······俺は教官としておまえらにモビル道を教えるどころかおまえらを守る事もできないってな······」

 

 

ロックオンは手を止め悔しそうに呟いた

 

 

「結局俺は自分の果たせなかった夢をおまえらに押し付けようとしただけだったんだ······。そのせいであの連中に付け込まれて西住を·····皆を危険な目に遭わせちまってよ········最悪だよな·····」

 

 

「そうやって全部自分のせいにしないでよ!私も西住ちゃんも皆もニールちゃんが悪いだなんて全然思ってないんだから!」

 

 

杏もまた作業を放り投げ感情的な声でロックオンに怒鳴った。彼女の言葉と迫力を受けロックオンは我に返ったかのように驚いた

 

 

「それに私達を本気で優勝させてくれようと頑張ってくれる教官なんてニールちゃんしかいないって·······だから辞めるなんて言わないでよ······」

 

 

「··········なぁ、どうして角谷はそんなに全国大会の優勝に拘るんだ?確かに目標はでかい方がいいって言ったけどそれ以外に何か理由があるんじゃないのか?」

 

 

杏は少し難しい顔をして口を噤んだものの少し間を空けてから切り出した

 

 

「·······私も昨日のニールちゃんみたいにちょっとした昔話してもいいかな?」

 

 

「ああ。なんか関係してるんだったら構わないぜ」

 

 

「ありがとね。··········私んち昔っから家に両親が居なくてさ、おじいちゃんと二人で暮らしてたんだよね」

 

 

「げっ······すまねぇそういう話だとは思わなくて·····やっぱ辛いことなら言わなくてもいいぞ!」

 

 

「嫌だなぁそういうのじゃないって〜。二人とも海外で働いてるだけで多分今も生きてると思うから大丈夫だよ〜」

 

 

杏はけらけらと笑いながらロックオンの誤解を否定した

 

 

「んで私が小学校入ってからお父さんもお母さんもそれぞれ海外に仕事に行ったまま全く帰ってこなくなってさ。生活費とかは振り込んでくれたけどそれ以外の事はなんにもしてくれなかったんだよね」

 

 

「小学生でそんな生活強いられてたのかよ··········てかおまえのご両親って親として問題ありすぎなんじゃないのか?」

 

 

「んー、二人とも全く愛し合ってたなかったし何事よりも仕事を優先する人達だったからねぇ。おじいちゃんが死んじゃった時も仕事で忙しいからって言って葬式にも来なかったんだよ。おかしいでしょ〜?」

 

 

「おかしいっていうか全然笑い事じゃねぇと思うんだが········」

 

 

「んでおじいちゃんが亡くなって実質独りぼっちになっちゃったけど街のみんなやかーしまと小山がすっごい心配してくれて色々助けてくれたんだよね。嬉しかったなぁ·····皆が支えてくれなかったら私絶対耐えれなかったと思うんだ·········」

 

 

いつものぶっきらぼうな調子ではなく熱が込められた話し方だったのでロックオンも真剣に話を聞いていた

 

 

「それから大洗女子学園に入学してさ、家族は居なかったけど学園の皆や街の皆が傍に居てくれたから全然寂しい思いなんてしなかったんだ。だからかーしまと小山と一緒に生徒会造って学園を盛り上げるために色々やってきたんだけど··········やっぱ日本の学園艦の中でも一番ってくらい古い学園艦だからさ。生徒数もどんどん減ってて正直このままだとやばいかもしれないんだよね·····」

 

 

「·····なるほどな。だから全国大会で優勝して学園を有名にしたいって事なのか」

 

 

「私も今年度で卒業だからさ、今までお世話になった分恩返しがしたいんだよね。私も皆も大洗女子学園が大好きだからさ··········」

 

 

「すげー奴だな角谷って。··········けどだからこそ俺みたいな新参じゃなくてもっとベテランな教官の方がいいんじゃないのか?俺なんかじゃおまえらを優勝させることなんて··········」

 

 

「それは違うよ。最初はちょっと疑ってたけど今ならはっきり判る。こんなモビル道を復活させたばかりで何にもわかんない私達を本気で優勝させようと頑張ってくれる教官なんてニールちゃんしかいないってね。てかそんなウジウジと弱気になんないでよ〜いつも通りカッコつけなきゃ駄目だって!」

 

 

杏はそう言ってロックオンの背中をバシバシ叩きにっこりと笑って見せた。ロックオンもまた彼女から本当に頼りにされている事を受け腐っていた心が晴れていく心地がした

 

 

「··········よし!わかったぜ角谷!この俺ニール・ディランディが·····いや、ロックオン・ストラトス教官がおまえらを必ず全国大会で優勝させてやる!」

 

 

「その意気だよニールちゃん!んじゃ改めてよろしくね!」

 

 

そう言って杏は手を差し出して来たのでロックオンもそれに応えて手を伸ばし熱い握手を交わした

 

 

「·····ん?ちょっとニールちゃんの手じゃがいものせいで泥だらけじゃん!お米研いでたのに!」

 

 

「あっ悪ぃ!全然意識してなかったぜ!アハハハハ!」

 

 

「てか凄い量のじゃがいもだけど何作ろうとしてるの?並んでる食材的にも何ができるのか読めないし·······」

 

 

杏の言う通り調理台の上にはにんじんや玉ねぎの様にオーソドックスな野菜の他に紫キャベツや羊肉が置かれていた

 

 

「フッフッフッ······俺が今日皆に作ろうとしてる料理·····その名もアイリッシュシチューだ!」

 

 

「あいりっしゅシチュー?何それ聞いた事ないかも·····」

 

 

「アイリッシュシチュー·······つまり今夜の献立はアイルランド料理か。心が踊るな」

 

 

突然食堂のテーブル席の方から聞いたこともない美声が聞こえ振り向くとそこには白いライダースジャケットを着こなした金髪の美青年が自前の魔法瓶から注いだ紅茶を啜りながら座っていたので二人は目を丸くした

 

 

「えっと··········あの、どちら様·····でしょうか?」

 

 

「あんた·····もしかして西住を助けに来たペイルライダーのパイロットか?」

 

 

「私はヴァルキュリア大学モビル道遊撃部隊隊長マクギリス・ファリド。この艦の責任者に挨拶をと思い出向いたのですが取り込み中だった様なのでこうして待たせて貰いました。お会いできて光栄です、ロックオン・ストラトス殿」

 

 

みほを助けるためネティクスと激闘を繰り広げたペイルライダーのパイロット、マクギリス・ファリドは立ち上がってロックオンに会釈した。ロックオンは自分の名前と顔が多少なりとも有名である事を自覚していたもののいきなりフルネームで呼ばれたため驚きを隠せなかった

 

 

「あなたも私達を助けに駆け付けてくれたんですね。本当にありがとうございます」

 

 

「フッ、そう礼に及ぶ程の働きはしていません。それより先程の話、少し聞かせてもらいましたが大洗女子学園は今年のモビル道全国大会で優勝を狙っているそうですね·····生徒会長殿?」

 

 

マクギリスは不敵な笑みを浮かべながら杏に質問した。それと共に彼から怪しげな雰囲気が放たれていたので二人は警戒せずにはいられなかった

 

 

「まぁそうですけど·········」

 

 

「それに伴ってこの私、マクギリス・ファリドを貴女方にモビル道を教える者として、西住みほさんを不穏な連中から護る剣として是非迎え入れて欲しいです」

 

 

マクギリスはそう言ってひざまついてこうべを垂れた。突然の物言いに杏とロックオンは困惑しポカンとなってしまった

 

 

「··········えーっと、そのー助けて貰っといてこういうのも失礼なんですがよく素性もわからなければうちの学園に関係者がいる訳でもない人を迎え入れるのはちょっと··········」

 

 

「素性はこれから明かせば良いもの、それにこの間の練習試合で私は整備士としてグロリアーナ陣営に参加していました。こうして再び巡り逢う事ができたのですからもはや関係者と言って過言ではないかと」

 

 

「いやいやめちゃくちゃ強引なだな······てかあんた大学生なんだろ?学校の授業とかあるだろうし教官として雇うにも予算がな·····」

 

 

「私は元々モビル道の特待生として入学したので結果さえ残していれば授業の心配は要りません。それに教官としてではなく、一モビル道の先見者として皆さんと関わりたい所存なので無償で結果です」

 

 

何を言おうともグイグイと押してくるマクギリスに二人は余計不信感を募らせた。彼の真意がわからない以上迎える訳にもいかないので杏は思い切ってストレートに質問した

 

 

「はっきり言わせてください。あなたは一体何を企んでいるんですか?いきなりそんな事を言われても怪しいとしか··········」

 

 

「フッ··········随分と手厳しいな·········では正直に言わせてもらおう。私が望むのはみほさんを狙い現れたあのガンダムとの再戦。そのために私を貴女方大洗女子に、みほさんの傍に迎え入れて欲しいという最大の理由だ」

 

 

礼儀正しい口調が砕けマクギリスは目を光らせながらそう語った

 

 

「つまりあの羽付き·····ネティクスとかいう奴にリベンジしたいから大洗女子に来たいと··········なんつーか見た目に反して意外と野蛮なヤツなんだな」

 

 

「よく言われます。このまま中途半端に負けたままというのはどうしても我慢ならなくてね·········それでどうだね生徒会長?これが私の真意なのだが··········」

 

 

「えぇー··········まぁタダで皆にモビル道の指導してくれるのは嬉しいんですけど··········あと一つ心配なのがマクギリスさんみたいにイケメンな大学生が来るともしかしたら学園の風紀が乱れちゃうかなー·····って気がしまして·····」

 

 

「それならロックオン・ストラトス教官も十分風紀を乱しかねない容貌でしょう。それと心配しないで欲しい。私には既に将来を約束した花嫁がる故学園の生徒達に必ず手を出すことはないだろう」

 

 

マクギリスは真っ直ぐこちらを見て言い切った。理由はどうであれ彼がそれ程悪い人間ではない事がわかったしモビル道を教えてくれる者が増えるのはとても嬉しい事だったので二人は目を合わせ彼を迎える事を決意した

 

 

「わかったよ。あんたの事を歓迎するぜ、ファリドさんよ」

 

 

「ありがとうございます。私にできることであれば何でも申してください」

 

 

「んーじゃあさ!早速だけどその婚約者って人の写真よかったら見せてくんない?ちょっと気になってさ〜」

 

 

杏の無茶振りを聞きマクギリスはフッと鼻で笑うと、携帯電話を取り出し待ち受け画像を杏とロックオンに見せた。そこには杏達高校生よりも一回り··········それこそ中学生なのかも怪しい程幼げな紫髪の少女がはつらつな笑顔を見せている姿が映っていた

 

 

「これは··········妹さんですか?とっても可愛らしいですね!」

 

 

「いや、彼女が私の婚約者だ」

 

 

「えぇ·····あ、あれだろ!親の都合で将来結婚しなきゃいけないみたいな!許嫁ってやつだろ!?」

 

 

「いや、私の方からプロポーズしました。とても運命的な何かを感じたので」

 

 

真顔で、それもさも当たり前かのように語るマクギリスに杏とロックオンは血の気が引いていくのを感じた。二人はマクギリスから姿を隠す様に流し台の陰へ屈んだ

 

 

(ちょっとニールちゃん!あの人別の意味でやばい人だったじゃん!)

 

 

(落ち着け角谷··········いや、きっとああ見えて年はおまえらと同じ位なんだよ·····多分··········)

 

 

(そんな訳ないじゃん!はぁ··········なんか私本当に疲れてきちゃったよ··········)

 

 

(だな··········これ以上アイツの相手をするのは流石に面倒だよな··········)

 

 

こうして若干不安要素を持たれながらもマクギリスは大洗女子学園の助っ人として迎えられた··········ただし地球に帰った際にその婚約者を学園に連れて来るという条件も加えられていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しほ達の介入により撤退を余儀なくされた愛里寿達を乗せた強襲揚陸艦【スパルタン】は月面都市フォン・ブラウンに帰還した。MSデッキ内にて港に到着しても尚愛里寿がネティクスのコックピットに引きこもり出てこようとしなかったので、ナオをはじめ島田ファミリーの面々は心配そうにネティクスを見上げていた。するとMSデッキに蒼白い髪を膝まで下ろしたメイド服姿の女性が現れナオ達の方へ真っ直ぐ近づいていった

 

 

「ナオ、所長がお呼びだ。今すぐ来て欲しいとの事だ」

 

 

「えぇー··········また議長さん来てるんですか·····嫌だなぁ、あはは··········」

 

 

「··········お姉ちゃん!」

 

 

さらが声を張り上げてナオの腕を両手で掴んだ。その力強さから彼女が自分に行って欲しくないという意思が強く伝わってきた

 

 

「行かなくてもいいッスよ!ナオっちばかりあんなエロ親父の相手されられて··········やっぱこんなのおかしいっスよ!」

 

 

「··········。」

 

 

レビンもまた強い口調でナオを引き止め、レビンはそっぽを向きながらも自身の拳を限界まで握り固めていた

 

 

「大丈夫だよさら、トレノん。私が行かなきゃ他の誰かが行くことになっちゃうし私はもう慣れたから大丈夫だよ。だから心配しないで」

 

 

ナオはニッコリと笑顔を見せてもう片方の手でさらの頬を優しく撫でてあげた。さらはそれを受けて目に涙を浮かべながらもナオの腕を掴んでいた手を解いてあげた

 

 

「それじゃいってきます!フブキさん、バイク借りますね!」

 

 

「好きにしてくれ。その代わり壊すなよ?」

 

 

ナオはメイドにサムズアップしてから元気よく走り去って行った。島田家に仕えるメイドの女性·····フブキ・ドゥルガー・マカハドマはヒールをコツコツと鳴らしてさら達を通り過ぎネティクスの傍に来るとその脚部に手を触れた

 

 

「·························そうか。美香、それがおまえの選択か」

 

 

「··········美香はなんて言ってんだよ··········()()()()()S()さんよ··········」

 

 

レビンはフブキに向かって静かに口を開いた。その声から彼の抑えきれぬ怒気が大いに滲み出ていた

 

 

「西住みほに入る事は辞めたそうだ。やれやれ、美香が戻ってこれるように色々と手を回して来たというのに無駄骨だったな」

 

 

フブキがそう冷たい声を上げるとレビンはMSデッキの壁を思い切り蹴りつけた。デッキ内に轟音が響き渡り彼は自分が乗っていたボロボロになったフルアーマーガンダムを睨みつけた

 

 

「俺のせいなんだろ?俺みたいな失敗作(カテゴリーF)が足引っ張ったから美香は西住みほを諦めたんだろう!?」

 

 

「レビンくん!そんなんじゃないよ!美香お姉ちゃんはそんな事思ってないよ··········」

 

 

「さらの言う通りだ··········とはいえこのままでは終われんな」

 

 

フブキは身に纏っていたメイド服のスカート部分に手をかけると翻す様に脱ぎ捨てた。すると彼女の姿は胸元が大きく開いた白い軍服姿へと変貌し頭に軍帽を被ると辺りに冷気が立ち込めていると誤認する程の冷たいプレッシャーが彼女から放たれた

 

 

「西住みほは今西住しほの星にいるらしいな?クックックッ··········面白い··········」

 

 

「駄目ですよフブキさん··········美香お姉ちゃんはもうみほさんを連れて来ても中に入ろうとはしないよ··········」

 

 

「だがこのままでは愛里寿お嬢様があまりに可哀想だ。そうだろう、レビン?」

 

 

「··········俺も連れて行け····このまま引き下がれるかよ·······!」

 

 

「俺も··········って言いたい所っスけどフブキさんのやり方だと俺は本当の意味で足でまといになりそうっスね··········」

 

 

悔しそうに俯くトレノの肩にフブキは手を置き、さらとトレノ、レビンに対して口を開いた

 

 

「仕掛けるのは明後日。さらとトレノは留守番していてくれ。確かに美香は反対してはいるが実際西住みほを連れて来れれば気が変わるやもしれん」

 

 

「フブキさん·····けど··········」

 

 

「安心しろ。返り討ちにあって西住しほに捕まるなんてヘマは犯さんよ。では私は下準備に向かうとしよう」

 

 

研究所が代々進めてきたニュータイプ創造プロジェクトによる最高傑作(カテゴリーS)、フブキ・ドゥルガー・マカハドマ。彼女は西住みほを連れ去ることとは別の目的を果たすため動き始めた··········

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました

マッキーの婚約者は転生してきた訳ではありませんがほぼアルミリアだと思っていただけると嬉しいです

今回オリキャラとして登場したフブキ・ドゥルガー・マカハドマはぶっちゃけてしまうと西さんと関わりを持ってるキャラにしていこうと思っています
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