今回もよろしくお願いします
1話 軍神降臨
とある世界の近未来
春になり学校は新学期が始まったばかりの朝…
「うぅん…ピーマンいらないよ……」
少女は寝言を漏らしながら幸せそうに眠っていた。やがて目覚まし時計のアラームが鳴り始め徐々にボリュームを上げていった
「ふにゃふにゃ……うぅん…?……ふぇ!わわわわわ!」
慌ただしくベッドから飛び出て少女は急いでパジャマを着替えようとしたが何かを思い出し手を止めた…
「そっか…もううちじゃないんだ!」
少女の名前は西住みほ。数日前にここ大洗女子学園へ転校し、学生寮で一人暮しを始めたばかりであった。みほは支度を終えると戸締りしたか確認して学校へ向かった。太陽が暖かく輝き心地よい風が吹いていて何かいい事が起きそうな朝だとみほは感じていた
「んん〜♡焼きたてのパンのにおい…♡」
「アラ、おはようお嬢ちゃん。悪いけどまだウチのお店まだ開いてないのよねぇ…」
「ひゃあっ!お、おはようございます!ご、ごめんなさい変な事言って!」
パン屋の前を通りかかると店の前を掃除していた中年男性に声をかけられ油断していたみほは飛び上がるように驚いた
「いいのよいいのよそんな気にしなくたって。お嬢ちゃん見ない顔だし新入生でしょ?うちのパンはいつでも焼きたてだから食べに来てね!」
《ぐっどパン屋》…今度買い物に来ますと伝え男に見送られてその場を後にした。
…がその途中で工事の看板に思い切りぶつかってかなり心配されたが笑って誤魔化し再び学校へ向かった。
午前の授業が終わり昼休みの時間になり、生徒達はそれぞれ友達同士で昼食を食べるために次々と教室から出ていった
(もうお昼休みかあ……どうしよう……)
みほは小さい頃はとてもやんちゃだったが成長するにつれどんどん内気な性格になっていた。だから自分から誰かに話しかける事もできず一人で過ごす事が多かった。
ぼんやりしていると皆教室から出て行ってしまいみほは取り残されてしまった。今日も一人で過ごす事になる……しかしそれは逃げ出した自分にとって仕方の無い事だと思えた。以前の仲間や家族を裏切ってこの学園へ来たから自分の力でどうにかするしかなかった。
ただそれでも一人ぼっちというものは辛く未来への不安が無限に積もっていくように感じていた
「ヘイ彼女!一緒にお昼どお?」
突然後ろから声が聞こえた。周りを見回したが自分以外には誰も居らず、振り返ると同じクラスの子が二人こちらを見ていた
「ふえぇ!?」
「ほら沙織さん、西住さん驚いていらっしゃるじゃないですか」
「あ、いきなりごめんね」
初めて同じクラスの子から話しかけられた…みほはその衝撃に放心しかけていた
「改めまして宜しかったらお昼、一緒にどうですか?」
「…え!?私と…ですか!?」
昼食のお誘いとわかるとみほはなんとか意識を復活させた。二人は頷きみほを連れて食堂へ向かった
「えへへ、ナンパしちゃった」
「私達一度西住さんとお話してみたかったんです」
「え!そうなんですか…?」
再び衝撃的な言葉が飛んできてみほは目を開いた。まさか自分を気にしている人達がいたとは…
「なんか私西住さんから不思議な感じがしてね、色々話がしたかったんだ」
「不思議な感じ…?」
この時彼女の言う不思議な感じが何かわからなかった
「あ!私の名前はね、」
「武部沙織さん、6月22日生まれ。五十鈴華さん、12月16日生まれ」
「へえー誕生日まで覚えててくれたんだ!」
「あ…うん、私昔から人の名前を覚えるのが得意なんだ」
みほは変な事を言ったと少し後悔したが二人には気にしないどころか嬉しそうであった
「そうだ!名前で呼んでいい?」
「…へ?」
「みほ、って呼んでもかまいませんか?」
「……凄い!友だちみたい!」
みほは踊りたくなる程嬉しかった。新しい環境で友達ができるかただただ不安だったから……まるでモノクロに見えてた世界がカラフルに色付いたかのようだった。3人はそれぞれ注文した物を受け取り席へ向かった。
華のお盆には山盛りのご飯とラーメンに大皿いっぱいにの野菜炒めがあった…正直完食できるかよりもなぜ普通に持ち運べているのかが不思議だった…
「よかったあ友達ができて。私一人で大洗に引っ越してきたから」
「そっかー、人生色々あるよね!泥沼の三角関係とか告白する前に振られるとか好きな男が全然女の子として見てくれないとか!」
「えぇ……」
「じゃあご家族に不幸が?骨肉の争いですとか失踪したお兄さんを探して旅をしているとか…」
「そういうわけでも…」
2人の推測は少しだけ変わっていた。そもそもみほには一握りの天才のような男について行くような事も巨大兵器と共に失踪するような身内もいなかった
「んー、じゃあ親の転勤とか?」
みほは本当の事を言えなかった。言ってしまうとこの場の雰囲気が悪くなる気がした。沙織と華はそれを察してくれてすぐ話を変えてくれた。
「そうだ!今日帰りお茶してかない?」
「え!女子高生みたい!」
「女子高生ですって」
3人はその後も楽しくお喋りしながら昼食を食べ進めた
大洗女子学園生徒会室にて…
「それは一種の情報操作ではないでしょうか…」
「だいじょぶだいじょぶ」
「わかりました。直ちにとりかかります」
「結構やばいなと思ってたけど…いい切り札見つけちゃった」
みほの生徒データを端末で見ながらツインテールの少女は笑みを浮かべた
3人はお昼を食べた後教室に戻り午後の授業が始まるまで色々な話をしながら待っていた。その時突然3人組の生徒が教室へ入ってきた。3人組のうち片眼鏡の子がみほの方を見て干し芋を食べてるツインテールの少女に耳打ちをした
「やぁ!西住ちゃん!」
「ふぇ?えっとあの人て…」
「うちの生徒会長の角谷杏さん…あと副会長の小山柚子さんと広報の河嶋桃さんだよ」
「西住さんに何か御用ですか?」
沙織と華は生徒会が突然教室に来て少し異変を感じた。生徒会が自ら生徒の元へ出向く事など今までなかったからである
「少々話がある…来てもらおうか」
みほは生徒会の3人に廊下へ連れていかれた
「ねぇ西住ちゃん、必修選択科目なんだけどさぁ…モビル道取ってね。よろしく」
生徒会長からとんでもない言葉がとんできた
「え……この学校はモビル道の授業は無かったはずじゃ……」
「今年から復活することになった」
片眼鏡の言う事が信じられなかった。ここまで運の悪い事が今まであっただろうか
「わ、私この学校がモビル道がないと思ってわざわざ転校してきたんですけど…それに必修選択科目って自由に選べるんじゃ……」
「いやぁー運命だねぇ。それに西住ちゃんってさぁ…………ニュータイプなんでしょ?」
「……え?」
最悪だった。一番知られたくない事が既に漏れていた
「とにかくよろしくねー」
会長がそう言い残し生徒会の3人は去っていった。事の一部始終を見ていた沙織と華だが生徒会が何を言っていたかはわからなかった…がみほの様子が明らかにおかしくなっていた事には気づいた
午後の授業が始まった。しかしみほはずっと考え事をしていた
(どうしよう……このままじゃまた前みたいな生活になっちゃう……もう転校するしかないのかな……)
念願の友達ができて普通の女の子としてこの新しい場所で生活していける……そう思ったのに
「次の問題西住さん…西住さんどうしたの!?」
みほの目からは涙が流れていた。先生が心配そうに声をかけるとクラスの子もそれに気づきざわめき始めた
「先生!西住さん具合悪いみたいなんで私保健室に連れていきます!」
「私も付き添わせてください!」
沙織と華は速やかにみほを連れて保健室へ向かった…
「西住さん、こちらにお掛けになってください」
「あ、ありがとう…」
「先生はちょっと出て行ってください!」
「いきなりなんだお前たち!今は授業中のはずだろ!?」
「いいからここは空気読んで部屋から出てください!」
保健室に着いて華はみほをソファに座らせ沙織は保健室の先生を部屋から追い出していた。みほは涙は止まっていたが先程と同じように浮かない顔をしていた。
「みほ大丈夫?何か生徒会長に酷いこと言われたの?」
「よかったら話してください」
みほは大きく息を吐いてから事情を話した
「実は今年度からモビル道が復活するらしくて……それで私にモビル道選択するようにって……」
「モビル道とは男女が嗜む伝統的な武芸の?」
「えー、それとみほになんの関係があるの?」
「……うちは代々MS乗りの家系で…だけどあまりいい思い出がなくて嫌な事ばかりで……私モビル道を避けてこの学校に転校して来たんだよね…」
この話はあまりしたくなかった。思い出したくない事も思い出してしまいそうで怖かった
「うーん…それなら無理にやらなくていいじゃん。第一モビル道なんて今どきの子はやらないし、みほの事泣かせるなんて許せないよ!」
「生徒会にお断りになるなら私達も付き添いますから。だから元気を出してください」
2人の優しさが嬉しかった。ここまで自分の事を想ってくれる友達ができて本当に嬉しかった。また涙が溢れてきたみほは彼女達の優しさに甘え思い切り泣いた。その間2人は黙って傍にいてくれた……
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った
「二人ともありがとう。私はもう大丈夫だよ」
「いいんですよみほさん。元気になってくれてよかったです」
「よかったよかった!後はホームルームだけだし教室戻ろっか」
しかし突然放送が入った
『全校生徒に告ぐ。至急体育館へ集合せよ』
「生徒会の人だ……一体何なんだろう… 」
3人は保健室からそのまま体育館へ向かった。体育館には既に他の生徒は集められており生徒会がステージの上に立っていた
「全員静かに。これより選択必修科目のオリエンテーションを始める」
生徒会が去るとステージ上のスクリーンに映像が流れ始めた
〜『モビル道入門』〜
テロップが消えると映像はどこかのスタジオに切り替わった。
『おいシャア…本当にこれは俺達がやらなきゃいけないのか?正直他の人間に任せていいと思うが…』
『それは違うぞアムロ。未来の若者達にモビル道を知ってもらうためにも我々が動かなければならない。ギュネイ、カメラは任せたぞ』
すると脇からノースリーブ軍服姿にグラサンをかけた男と青のスーツを着た天然パーマの男が現れた
『皆さんこんにちは。私は世界モビル道連盟のシャア・アズナブル大佐だ。今日は皆にモビル道が何なのかを説明するためにここに来た』
『僕の名前はエターナル・アラン・レイ大尉です。今日はクワトロさんのサポートのために来ました』
『エターナルとは中々洒落た偽名を使うではないかアムロ。おまえも立場の隠し方というのがわかってきたようだな』
『このVTRでは皆さんにモビル道の歴史について軽く知ってもらいたいと思ってます』
『マスクを付けるとより自分を隠せている感じがしてオススメだぞ。試しに私が昔付けてたやつを使うか?』
『五月蝿いぞさっきから!あんまりふざけられるなら帰るぞ!』
かなりグダグダな進行に体育館は微妙な空気になってしまった
「ねぇみほ…モビル道やってる男子って皆こんな感じなの…?」
「いや…そんな事はないと思うけど…」
「会長…制作が連盟の物だからとはいえ確認するべきでしたかね……」
「うーん……なんか面白いからいんじゃない?」
『大佐、一応本番なのでそろそろまじめにお願いします』
『了解した。では映像を切り替えてくれ』
映像がスタジオから宇宙へ切り替わった。
『モビル道…それは宇宙へ進出した人類の伝統的な文化であり世界中で男女の嗜みとして受け継がれてきた…』
シャアという男のナレーションと共に様々なMSや戦艦で試合をしている映像が流れた。
『勇気や未知なる可能性を持ち…どんな困難にも立ち向かえる少年少女を育成する武芸でもある…さらにモビル道を学ぶ事は女子の道を極めるという事でもある!MSのように熱く激しく……戦艦のように大きな優しさを持ち……MAのように我々男子を導く存在になれるのだ!』
映像に出ていたアプサラスから大出力のメガ粒子砲が発射され生徒から歓声が上がった
『おい!なんか台本と随分違う気がするぞ!』
『本番中だぞアムロ!…モビル道を学べば必ずや良き妻良き職業婦人……良き母親になれることだろう!』
ナレーションのテンションがさらに上がる
『健康的で優しく逞しい君は多くの男達に好意を持たれ…求められ…やがて君を賭けた争いが始まるだろう…!』
言ってる事がめちゃくちゃな気もしたがその言葉に沙織はときめいてしまった
『少し暴走し過ぎじゃないか…?これじゃクレームが来てもおかしくないぞ』
『何、伝えるべき事は伝えたさ。さぁアムロ次はお前の番だ』
『…わかったよ。それでは僕からはモビル道のルールについて話したいと思います』
カメラはエターナル…アムロという男の方へ向いた
『先ずモビル道とはアニメ機動戦士ガンダムにおいて宇宙世紀0079〜0083までの兵器を使用する武道です。地上や宇宙でMSやMA…それらを収容する戦艦を動かす事が基本となります。もちろん使用される火器は十分環境やご自身の安全に配慮されています』
『しかしアムロ先生!MSはビーム兵器を持っています!それにもし宇宙に投げ出されたら帰って来れなくなるかもしれませんよ!』
シャアが突然質問をぶつけてきた。VTRを見てた生徒達にはこれが気になっていた子が多かった様でスクリーンに注目した
『(こいつ………)安心してくれて大丈夫です。使われるビームは全て熱線や光学兵器ではなく質量のない有視光線であり、モビル道に使われる装甲のみ内蔵されたセンサーがこの光線に反応することによって分離されます。尚コクピットは超頑丈なフレームで作られておりモビル道の火器はおろか実物のミサイルさえ受け付けず、MSが宙域で撃破されるとコクピットのみ離脱して回収班に位置を知らせる機能を搭載してます。尚、宙域での活動中は内側から開けない限り絶対にハッチは開かないので突然開くこともありません』
『うむ。要するにビーム兵器は全てモビル道に使われる装甲のみ破壊でき、コクピットがパイロットの安全を完全に確保しているという事だな?』
『そう言う事です。他にもわからない事があったらいつでも我々に連絡してください。皆さんのモビル道を応援してます』
『君達もモビル道を学び…心身ともに健やかで美しい母親になろう…!来たれ乙女達!ジークジオン!』
『(ジークジオンじゃないよこのマザコン!あーもうこいつのせいで俺まで処分を受けなきゃいけないのか……)』
〜Fin〜
映像が終わるとステージが爆発し生徒会の3人がステージ上に登った。スクリーンには必修選択科目の届け出が映されておりモビル道の欄だけ一際大きく印刷されていた。沙織と華は表には出していなかったがモビル道に大きく興味を抱いてしまった事をみほは察した
「実は数年後にモビル道の世界大会が日本で開催される事になった。そのため文科省から全国の高校にモビル道に力を入れるよう要請があったのだ」
「で、うちの学園もモビル道を復活させる事にしたんだ。選択してくれると色々特典を付けようかと思うんだ」
「成績優秀者には食堂の食券100枚…イケメン教官との一日デート券…さらに通常の授業の3倍の単位を与えます!」
副会長から発せられた特典の内容に皆衝撃を受けた。沙織はイケメン教官とデートと聞いた瞬間目の色を変え華は食堂の食券100枚が何週間分か計算していた。
「という訳でよろしくっ!」
生徒会がステージから降りていきこうしてオリエンテーションは終わりを迎えた…
放課後になり3人は帰りにケーキ屋さんに寄りケーキを食べていった。沙織と華はモビル道の事を話に出さなかったが何となく2人共モビル道をやりたいと思っていると感じた。
寝る前にみほはまたモビル道をやるか考えた。しかしモビル道の事を考える度に、あの日の事件と悪魔の様な少女の声を思い出してしまった
(せっかく黒森峰から逃げて来たのに…またモビル道始めて辛い思いをするの…?)
もう1人の自分が囁いてきた
(もう二度とモビル道やらないんじゃなかったの…?それに逸見さんとお姉ちゃんがっかりするだろうな…)
耐えられなかった。決勝戦での事件以来……そして不思議な力を手に入れたあの日からどんどん自分の世界がおかしくなっていった事に。家元としてモビル道を強制され、周りから特別扱いされ、自分のせいで仲間が傷つき、守ってくれると約束した姉は強くなるとだけ言い家から出ていった…
「ごめんね……私…どうしてもモビル道だけはしたくなくてここまで来たの…!」
翌日の朝、みほは沙織と華と必修選択科目の届け出を見せて向かい合っていた。届け出にはモビル道とは別の科目に丸を付けていた
「…わかった。ありがとう、みほ」
「ごめんなさいね。悩ませてしまって」
すると2人もみほと同じ科目に丸をつけた
「私達もみほのと一緒のやつにするよ」
「そんな!二人とも本当はモビル道やりたいんでしょ!?私の事はいいから!」
「いいんですよ。それに私達がモビル道をやるとどうしても西住さんに思い出したくない事を思い出させるかもしれません。お友達に辛い思いはさせたくないです」
「私好きになった彼氏の趣味に合わせる方だから大丈夫!だからもう心配しなくていいんだよ」
2人の優しさが心に染みた。みほは本当に素晴らしい人達が友達になってくれた事に改めて感動した。
昼休みになり、また3人で食堂に行き食事をしていると突如不穏なアラーム音と共に放送が入った
『普通Ⅰ科西住みほ。普通Ⅰ科西住みほ。至急生徒会室まで来ること』
声の主は広報の河嶋桃だった。おそらく必修選択科目の件についてだろう…
「私達も一緒に行くよ!」
「落ち着いてくださいね」
3人は一緒に生徒会室へ向かった
「なーんで選択してくんないのかねー」
「我が校、西住みほ以外にモビル道経験者は1名しかいません」
「終了です…我が校は終了です!」
「勝手な事言わないでよ!みほはモビル道なんてやんないんだから!」
「やりたくない人を無理にやらせるなんて生徒会でもそんな非道は許されるはずがありません!西住さんは諦めてください!」
生徒会室に入るとすぐに、沙織と華は生徒会と戦ってくれた。
「……そんな事言ってるとあんた達この学校にいられなくしちゃうよ?」
「何よそれ…」
「脅すなんて卑怯です…」
「脅しじゃない、会長はいつだって本気だ」
「今のうちに謝った方がいいよ…」
本当は2人ともモビル道をやりたいけど自分に合わせてくれた…なのに今2人が最悪な状況になりみほはまた考え始めた…私が始めると言えば2人は救われる…けれど…
(始めてもいいよ。この学校でモビル道)
もう1人の…特別な力を持つ自分の声が聞こえてきた
(そのかわり私はもうでてこないから…私はもう誰も傷つけたくないから…)
あの事件のせいで分離したもう1人の自分がそう言った…
(それに感じるんだ…今始めないとこれから先一生後悔するって…だからもう行っていいんだよ)
最後にそう言い残し彼女は心の奥へ消えていった。みほは大きく息を吸い込んだ
「あの!私!」
みほの大きな声に皆注目した。
「モビル道……………………やります!」
「「ええぇ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」
みほの出した答えに沙織と華は驚愕した。柚子は涙を浮かべながら安堵し、桃と杏はとりあえず一安心といった顔をしていた
その日の放課後、3人はアイスクリームを食べに来ていた
「本当によかったんですか?」
「無理しなくてもいいんだからね?」
「大丈夫だよ。私嬉しかった…2人が私のために一生懸命になってくれて……そんなの始めてだった。今まで誰も私の気持ちなんて考えてくれなかったから…」
沙織と華はみほの全てを知った訳ではないがますます可哀想に思った。2人はそんな彼女を慰めてあげたかった
「はい!私のさつまいもアイスチョコチップ入り!あーんして!」
「私のはミント入りです」
2人のスプーンが同時にみほの口へ運ばれた
「…ふわぁ…美味しい!どっちも!」
「みほのもちょうだいよね」
「プレーンもいいですよね」
「2人共そんなに取るとなくなっちゃ……華さん結構持ってたね!?」
3人はその後も色々な事を喋り合いながら同じ時を過ごした。みほは本当に普通の女の子になれた気がして嬉しかった
翌日……ついにモビル道の授業が始まる時が来た。生徒達は大きな格納庫が置いてあるグラウンドに集められた
「思ったより集まりませんでしたね」
「全部で18人…私達を入れて21人」
「ま、何とかなるでしょ。経験者の子が2人もいるしね」
「いよいよ始まりますね」
「これ以上モテモテになったらどうしよー♡」
「ははは…」
みほは集まった他の生徒の方を見た。直感でマフラーをしている子が経験者であるとわかった
「それでは、これよりモビル道の授業を開始する」
「あの……MSって何ですか?ゲルググですか…?それのも…」
後ろにいた女の子が質問をした
「えっと……なんだったっけな…確か結構凄いやつだったと思うけど……」
格納庫のシャッターが上がっていくと……そこには所々汚れていた黒いガンダムがハンガーにセットされていた
「何コレ…」
「汚い……」
「ありえない……」
「わびさびでよろしいのでは…」
「わびさびというか錆びというかただ汚いだけだよね…」
「西住ちゃん!実はコクピットの部分だけこの前いじって動かせるようにしてあるから動かしてみて!」
「わ、わかりました…」
みほは会長に頼まれるとハンガーに備え付けられた梯子を登った。
「みほー!頑張ってー!」
梯子を登り終え、みほは機体のコクピットハッチを開け中へ入った。コクピットの中は意外と清潔で破損も見られなかった。シートに座りその他の機能に異常がないが確認した
「会長!危ないので皆さんを外へ出してもらっていいですか?」
「おっ!了解だよー西住ちゃん!皆1回外でよっか」
会長がみんなを格納庫の外へ出しみほはコクピットハッチを閉めた
(お姉ちゃん……お母さん……ごめん……私行くよ……)
みほはガンダムを起動させた。起動音とともにガンダムの目に光が灯った
「システムオールグリーン…バランサー正常…動ける……」
みほはガンダムを一歩一歩、ゆっくり前進させ格納庫から校庭へ出た。
「凄ーい!超大きいんですけどー!」
「こんなに高いと何でもブロックできそう…」
「流石に大阪城程では無いな…」
(黒いガンダム……もしかしてRX-78-1なんじゃ…)
「みほ凄いじゃん!あんなの動かしてるなんて!」
「とても大きいですね…みほさん逞しいです…」
「ついに始まりますね会長」
「あぁ…とても楽しみだよ」
春の太陽に照らされ…ついにここ大洗女子学園艦の地に大洗のガンダム……プロトタイプガンダムが立ち上がった…!
ついにモビル道が再開した大洗女子。しかし現実は思っていたよりも過酷であり、過去はみほを逃す事を許さなかった…
次回 ガールズ&ガンダム『探し物』
この新たな道で、少女達は何を見つける
読んでいただきありがとうございました
詰め込みすぎて長くなってしまい改めて申し訳ありませんでした
次回は短くなるよう頑張りたいです