(愛里寿、いつまでここにいるつもりだい?出撃してからまだ何も食べてないじゃないか。それに皆もおまえを心配しているよ)
みほと杏が目覚めた時と同じ頃、愛里寿は月に帰還して数時間経っていたにも関わらず、未だガンダム
「····また昔みたいにお姉ちゃんと一緒に、皆一緒にご飯を食べれると思ってた·····そのために今日まで皆頑張ってきたのに········なんで諦めるなんて言うの·····?」
(あのまま戦っていたら私達全員西住しほに捕まっていた、そんな事になればもう二度と家に帰らせて貰えなかったかもしれない。それにこの先もしみほさんが私達の事をもっと知ってくれる事があれば私達の味方になってくれるかもしれない。彼女の様な素敵な人が共に同じ道を歩んでくれるなんて嬉しいじゃないか)
「そんなの有り得ない·······あの人は私達を憎んでいるに決まってる······それに私達もまだお姉ちゃんを諦めたくない·····!」
(愛里寿·······そうだね、私のせいでおまえ達にはみほさんに憎まれて仕方ない位の事をさせてしまった·····ごめんよ、私がこんな姿になったばかりに········)
「お姉ちゃんのせいじゃない!·····なんで私達ばかり·······なんで私達ばかり辛い目に合ったり上手くいかない事ばかりなの········」
愛里寿はすすり泣きながら再び塞ぎ込んだ。悔しかった、認めたくなかった、そして何よりも寂しかった。たとえその姿が
(·····みほさんも私のせいでおまえと同じ位寂しい思いをしたはずさ。·····そう、私達は同じなんだ。みほさんもおまえも同じ、他の誰かによって傷付けられた存在、この世界の傷跡なんだよ)
「傷跡·····?」
(私達はこの世界によって、みほさんは私によって大きく理不尽に運命を狂わされた。そうして傷付けられた私達は生きている間は傷跡としてこの世界に在り続ける事となる·······だが世界にとって私達という傷など気にする程もない極めて小さい物。だから世界から私達の様な存在は無くならない、むしろ癒えることなく新しい物が増え続けるだろう·······)
「·······だったら帰ってきてよ·····お姉ちゃんが帰ってきてくれれば私達の傷なんて治るんだから·······」
(それじゃ駄目なんだ愛里寿、私達の使命を思い出すんだ。たとえどんなに小さくても新しい傷が増え続けるなんて事はあってはならない。だからこの世界を私達の様な傷跡が二度と生まれない優しい世界に変える必要がある·····そんな世界へ変えることができるのは私達ニュータイプしかいないんだ)
「じゃあみほさんも連れて行こうよ!·····認めたくないけどあの人は私よりも凄いニュータイプなんでしょ?それで世界が変わってお姉ちゃんが帰ってくるなら·····」
(この世界に対してどうするか選ぶ権利をみほさんは持っている。私達と共に同じ道を進むか·····あるいは私達と同じ存在でありながら私達と違う未来を見せてくれるか··········いずれにせよみほさんも私達と同じ世界を望んでいるはずさ)
「··········みほさんが私達と一緒に来ないなら敵になるって事·····?」
(いや、ライバルと言ったところかな。私も世界を変えるために選んだこの道を今更退くつもりはない。けどみほさんが私達と同じ未来を、世界を望みながら私達の道に異を唱えたなら衝突は避けられないだろう·····
だから愛里寿、みほさんの事は諦めよう。私達はニュータイプとしての彼女がどんな道を選ぶか見届けて、その結果彼女が立ち塞がる事を選んだなら私達は戦って乗り越えなければならない·····それが悪戯に彼女の運命を変えてしまった私から彼女へのせめてもの償いだ)
「··········でもやっぱり嫌だよ·····お姉ちゃんがいないと寂しいよ··········」
(愛里寿、私はいつでも
瞬間、愛里寿は誰かに抱きしめられている様な感覚に包まれた。とても優しく、懐かしくて大好きなその感触に愛里寿は暖かな涙を零し、刺々しく逆立っていた心も徐々に落ち着きを取り戻していった
「···············うん、わかったよお姉ちゃん。その代わりいつか絶対に帰ってくるって約束して」
(·····ああ、約束しよう。その時が来るまで皆と一緒に笑顔で待っていて欲しい。約束だよ·····)
するとコックピットハッチがひとりでに開き、外の光が中に差し込み愛里寿を照らした。愛里寿はコックピットを出て行こうと立ち上がった
「お姉ちゃん··········また来てもいいかな·····?」
(もちろん。甘えたくなったらいつでもおいで)
「うん······!じゃあねお姉ちゃん·····」
愛里寿はそう言ってコックピットを出てMSデッキへ降りて行った。愛里寿がスパルタンのMSデッキから姿が見えなくなるまで、ネティクスはその目で見守るかの様に彼女の姿を追い続けた
本当に正しき世界への扉、それを開くのが私達ニュータイプ。大切な家族を傷つけたこの世界を私は決して許しはしない。たとえ誰かに憎まれようと大勢が望まぬ事であろうとも、誰一人傷つくことのない世界を創れるなら私には全てを賭す覚悟がある。だから愛里寿·····来たるべき時が来るまでおまえは皆と強く、優しく生きていてくれ··········
時は同じく地球。森や川などの豊かな自然溢れる学園艦《継続高校》にて、早朝ながら赤帽子のMSを整備する二人の少女と、近くの樹木の上でカンテレを弾く少女の姿が在った。するとカンテレを弾いていた少女は何かを感じたのか、薄く空に浮かんでいた月を見上げた
「·····よっし終わった!おーいミカー!レッドライダーの整備終わったよー!」
「徹夜して何とか終わったね。これで練習試合には間に合いそう·····ミカ?どうかしたの?」
「··········アキ、ミッコ。最近やけに不思議な気配を感じてね。一体なんだろう·······」
そう言って樹の上から飛び降りてきた少女、ミカの言葉に赤帽子の異名を持つMS【レッドライダー】の整備をしていたアキとミッコは顔を見合わせた
「さてはまた落ちてるモノ拾い食いしただろ?あんなに体調崩すから辞めとけって言ったのに仕方ないやつだなぁ」
「それは流石にもうやらないでしょ··········ねぇミカ、もしかして昔の事何か思い出せたの?」
「いや、最近空や風から不思議な·····嫌な感じがしてね。これから何か大きな事が起こる事を警告しているのかな·····?」
そう言ってミカは少思いつめた顔で空を、正しくは宇宙を見上げていた。いつもと様子が違う彼女にアキは少し困惑していたが突然何かを思い出したかのようにミッコが声を上げた
「あー!そういえばミカがいつも弾いてる曲!この前本土の超古いCDショップ行った時たまたま聞いたんだよ!」
「それ本当!?なんの曲だったの!?」
「確か《水の星へ愛をこめて》っていう何かのガンダムのアニメに流れてた歌って店の爺ちゃんが言ってた!ガンダムの歌なんて大分昔に規制されたらしいけどどっかで聞いた事とかあったの?」
地球圏代表議会による政策で戦争を幇助、扇動する可能性のある映像作品やそれに関わる音楽や書物に大きな規制が掛けられ、それらが公に放送される事や販売される事は禁止されていた。よって現在は古くから永く営業しているため未だに売れ残っている、また非公認で商品を販売している店舗かマニア達が造った裏の流通ルートでしか手に入らない物となっていた
尚機動戦士ガンダムも玩具以外は規制の対象であったが、モビル道との関係上情報公開が必要な部分もあったため、検閲が行われた上で機体性能やバッググラウンドの解説が綴られた資料や映像資料の販売は認められていた
「········残念だが心当たりがないね」
「えぇー·····映像の方はともかく音楽まで知ってる人なんてあんまりいないと思うんだけどな·····」
「歌かぁ·····もしかしてミカにとって凄く大切な歌だったんじゃない?」
「ああ········そうなのかもね·········」
ミカはこの時確かに感じていた。見上げた宇宙から、自分の周りに運ばれてきた風から······野望を掲げ暗躍する者達の邪悪な気配を·····
読んでいただきありがとうございます
今回投稿したのは前回書ききれなかった分です(愛ってなんやねん·····)
そろそろ世界観の方でガバが現れてくる気がしてびくびくしてます。ぶるぶる·····
外伝の方は次回投稿します
全く関係ないですがフェネクスの由来が悪魔の名前であると最近聞いてびっくらこきました。フェニックスを文字った訳じゃないんですね·····