なんでそんな事するのかは後々説明しようと思いますので今回もよろしくお願いします
副隊長の乗るジムカスタムを閃光の如く強奪した千代美。窮地に立たされていたまほの援護に駆けつけ演習は終局を迎えようとしていた
「あらまぁ、あんな風に戦う子がいるなんて。まるで獰猛な野獣のようね」
黒森峰女学園学園艦の上空を監視するかの様に翔ぶ軍用の航空機。その内部のVIPルームに豪華なシートへ腰掛け大好物のケーキをお供にモニターから現在黒森峰で行われている演習を眺めるフランス人形かの様な少女の姿があった。すると管制機の操縦室よりVIPルームに老年の機長から電話が掛かってきた
『マリー大佐、間もなく出発時間ですがよろしいですかな?』
「あら、もうそんな時間?ちょっと面白くなってきたのに残念ね」
「申し訳ありません。これを機に大佐もモビル道をやられては如何ですか?まだお若いのですしこれから5年にも及ぶ木星圏の任務に出られるのです。ご退屈凌ぎにはなると思うのですが·····」
「モビル道って所詮はスポーツでしょう?この私におままごとは必要ないの。それにジュピトリスにはケーキをいっぱい貯蔵させていくのだから心配ないわ」
地球連合軍大佐及び現木星探査船団の総指揮者、マリー・タイタニア。応答しながらフォークでケーキを掬い口へ運ぶ彼女の姿はごく普通の11歳の少女そのものであったが、軍内部では一見軍人とはかけ離れた彼女を高いカリスマ性を兼ね備え木星船団を任せられる程の優秀な人物と認識されていた。しかし子供とは思えない異彩を放つ彼女を先の未来を大いに揺るがす存在と危険視する者達もおりマリーの乗る航空機の機長もその一人であった。機長はマリーから通話が切られたのを確認し軽くため息をつくと隣に座る若手のパイロットが声をかけてきた
「正直大佐の様な幼い子が軍に、ましてや大佐という高い階級にいるなんて信じられないです。やはりジャミトフ閣下の御落胤かもしれないという噂は本当なのでは·····」
「彼女が出世したのは閣下の七光りだからとでも言いたいのか?·····私としてはその方がよっぽど安心できるな」
「ど、どういう事ですか·····?」
「閣下が以前仰っていたがマリー大佐には我ら常人には理解できぬ凄まじい感覚とこの時代を見通す力を持つ先駆者としての資質を備えているらしい。そして年相応の女子を演じながらもその胸の内に底知れぬ野心を秘めているというのだ。初めはにわかに信じがたかったが今日直接対面した時に納得させられたよ。彼女は本当だとな」
嘘の様な話だが機長の苦悶な表情からそれが冗談で言ってはいない事を表していた
「そして今日ここへ寄ったのもあの謎めいた青年を降ろすためだけではなく、後に自身を脅かす事となる者の気配をあの学園艦から感じたらしくてな。それでモビル道の演習を見学していたという訳だ·····この話だけでも少し不気味だな」
「·····出過ぎた事を聞き申し訳ありませんでした。しかしジャミトフ閣下は大佐が危険なお方だとわかっていながら黙認しておられるのですか?」
「そうとわかっていても手元に置いておきたい程に大佐は魅力的なのだろう。私は正直な所彼女という人物は時代のうねりが産んだ災厄に近い存在だと思っているが、あのお方の様な若者が後の世界を動かしていくのに相応しいのだろう·····」
機長は眉間を手で抑えながらぽつりとそう言った。マリーを乗せた航空機は黒森峰の学園艦上から去り、彼女を衛星軌道上に待機する超大形航宙輸送艦【ジュピトリス】へ届けるために軌道エレベーターへ向かった
(杞憂だったかしら?結局見つからなかったけどまぁいいわ。5年後に会いましょう、虫ケラさん·····)
航空機の窓から遠のいて行く黒森峰女学園の学園艦を見下ろしながら、マリー・タイタニアは笑みをたたえていた
「·····5年後?」
演習場内に建つ灯台から演習を一望していた銀髪を下ろした少女はふと誰かの声が聞こえた気がして空を見上げた
「エリちゃんどうかしたの?かっこいい鳥さんでも飛んでたかな?」
「馬鹿にしないで。·····別に何でもないわ」
隣で観戦していた黒森峰女学園の高等部に属する姉が気にかけてきたが銀髪の少女、逸見エリカはツンと言い払った
「そう?それにしても中等部のお姉さん達かっこいいね!来年あの子達がエリちゃんの先輩になるんだよ?先輩達ともいっぱい仲良くなって一緒に甘い物食べたり買い物行ったりするのとか絶対楽しいと思うな〜」
「まだ入学が確定した訳じゃないのに気が早いわ。それにそんな腑抜けた理由で黒森峰に入りたい訳じゃないんだから」
「むー、最近のエリちゃんちょっと冷たくない!?ひょっとして反抗期!?お姉ちゃん寂しい!」
「姉さんが雑なだけでしょう·····」
その日偶然中等部の見学に姉と共に来ていたエリカ。直接対面する事は無かったが宿命は着実に二人を、エリカとマリーを引き合わせようとしていた·····
「せ、先輩!向こうのチーム同士討ちしてますよ!」
「副隊長どうして·····これも隊長の指示なの·····?」
副隊長のチームと協同してまほを撃破しようとしていたジェンダー隊の二人は、どこかへ行っていた副隊長が合流するや否や味方機を斬り捨てたのを目の当たりにし何が起きたのか理解できず唖然としてしまっていた。その隙をまほが逃すはずがなく倉庫裏から飛び出すと呆然と立ち尽くしていた2機へ一気に距離を詰めようと駆け出し、千代美の乗るジムカスタムに気を取られていた二人は接近するまほのF2型に気づいた時には既に手遅れ、為す術なく胴体をマシンガンで撃ち抜かれ行動不能となり力無く地面へ倒れた
「あの動き·····あれが西住まほか·····」
千代美は他の2機を素早く撃破した事からあのF2型に乗っているのがまほであると何となく感じていた。しかし副隊長の機体に千代美が乗っているなど知る筈がないまほは撃破した敵機のヒートホークを拾い千代美を狙って投擲した。突然の事に驚きながらも千代美はシールドでそれを防いだが、息付く間もなくまほのF2型がヒートホークを片手に斬りかかろうと身を低くし高速で距離を詰めに来ていたので対応できないと思い無線機に向かって叫んだ
「待て待て西住まほ!私は味方だ!安斎千代美だ!」
「·····何!?なぜ君がその機体に·····一体どういう事だ!」
まほはジムカスタムから千代美の声が聞こえてきたので何とか踏みとどまり構えていたヒートホークを下ろした。報告にあったジムカスタムに実際に乗っていたのが味方であり尚且つ貧弱なホバートラックに乗っていたはずの千代美だったので、まほは今まで相対する事の無かったこの事態にかなり動揺させられていた。千代美から見てもまほが動揺しているというのは明らかだったので、このままでは良くないと思い千代美は事の経緯を説明するためまほを連れて他の場所へと移動するのであった·····
「なるほどな。つまり君は副隊長の機体を自力で奪いトラックから乗り換えたということか········信じられない戦い方だが私を助けに来てくれた事に変わりはないな、ありがとう」
「なーに同じチームなんだから当たり前だろう?他の三人は持たなかったようだがおまえだけでも助ける事ができてよかったよかった!」
「だがもしお母様が君の存在を知れば黙っていてはくれない·····あの人は君のような奇抜な戦い方をする者はその周辺を感化しいずれ西住流という流派を歪めかねない存在になると考えている。この事がバレれば最悪破門を言い渡してくるかもしれないな·····」
「へ?·····ハモン?」
モニター越しに得意げに笑いながら話していた千代美であったがまほから破門、という言葉が聞こえて両目が点になってしまった。まさか自分の戦い方一つで追い出される事になるなんて思ってもみなかったので千代美は衝撃のあまり自身の血の気が引いていくのを感じた
「おいおい冗談じゃない·····入学早々破門とか絶対パパとママに怒られるじゃないか!お願いだからだずげでぐれ゙ぇ〜!」
「と、とはいえ今日の所はMS戦にも関わらずあんな軽車両をあてがわれたのだからあまり気にする必要はないだろう。今日来ている教官の二人も寛容な方々だから事情を話せば母には黙っててくれるはずだ」
「·····は!いつも通り動いてたから忘れてたけどそうじゃないか!な〜んだ隊長達が悪いんだから全然ビビる事ないじゃん!アハハハハハ!」
コロコロと態度が一変する千代美にまほは若干圧倒されてしまっていた。だが彼女が言ういつも通り立ち回っていたという言葉がまほの中に引っ掛かっり聞かずにはいられなかった
「以前から同じ様に戦ってきたようだが、どうして君はそのように危険を顧みず戦う事ができるんだ?やはり君も勝利する事を何よりも重視しているからなのか?」
「な、なんだいきなり·····そりゃ真剣勝負なんだから誰だって勝ちたいに決まってるだろう?」
「だが勝つためとはいえ敵MSを強奪するなんて普通はできるはずがない。勝ちたいと言ってもよほど強い意志がなければ·····」
「!あ、危ない!」
僅かにスラスターの機動音が聞こえ千代美は声を上げたのとほぼ同時に、まほの後方から白いジムカスタムがジムスナイパーII用の75mmスナイパーライフルを片手に現れまほのF2型を狙って引き金を引いた。何とか反応したまほは回避行動を取ったがズガンという轟音と共に放たれた弾丸はまほのF2型の右肩を捉え右腕をもぎ取っていった
「おい西住まほ!大丈夫か!?」
「くっ·····腕が片方使えなくなっただけだ。まだいける」
「雑談は困るな一年生。まだ試合中だぞ?」
白いジムカスタムのコックピットからパイロットの、ジェンダーの声が千代美達に聞こえてきた
「あんた隊長か!よくも私達のチームにだけあんなトラックを用意してくれたな!おかげで大変だったんだぞ!」
「ハハハ、全部見ていたよ。セモベンテ隊の安斎千代美さん?」
「え、なんでその事を·····」
「昔ドイツで暮らしていた頃モビル道の野試合を見る事があってね。その時日本人の女の子でありながらチームに参列していた君の姿は今でも覚えているよ。新入生の名簿の中に君のデータを見つけた時は驚いたよ」
まさかセモベンテ隊の頃の自分を知っている人がいるとは思いもしなかったので千代美は驚く反面ちょっとだけ嬉しくなっていた
「そして今日君が乗ってくれると思ってホバートラックを用意したのも理由があってね。黒森峰のモビル道は確かに最強を誇っているが奇策や予期せぬ事態に弱くてな。歓迎会と場を使って君の様なイレギュラーな戦い方を選手皆に実際見てもらい何かを掴んでもらおうと思ってな。私の予想通り君がこの戦場を支配してくれたのだから皆驚いているだろう」
「むむむ·····喰えない人だな。けど隊長は随分期待してくれてるみたいだけど私の様に戦う奴は破門されるって聞いたぞ?」
「その心配はいらないさ。私も実の所
「そうなんだ·····私みたいなやつでも大丈夫なんだ·····」
「·····試合中に雑談はするな、という話だったのでは?」
千代美が安堵する中、口を閉ざしていたまほが生き残った左腕にヒートホークを持ちジェンダーのジムカスタムへ斬りかかった。ジェンダーはスナイパーライフルを投げ捨てビームサーベルを展開しまほからの斬撃を受け止めた
「おっと悪かったなまほさん。肝心な貴方の事を忘れていたよ」
「·····お母様の西住流に賛同しない人がいるのは存じていますが二代目が築いた歪んだモノとは違い世界に誇れる強き流派であると私は信じています。だから私はお母様の意志を継ぐためにも力を手に入れ、いずれ隊長の様な方々にもわかってもらうつもりです」
(スペースノイドを受け入れ共に歩む事で調和された強い世界を体現する流派、か···············相変わらず反吐が出るな)
三代目家元のしほへの本音を飲み込んだジェンダーは鍔迫り合いをしていたまほのF2型を一気に押し返した。そのままとどめを刺そうとサーベルの切っ先を倒れたまほの機体へ向けたが、横から千代美のジムカスタムが割って入るかのように斬りかかろう迫って来ていたのでその場からジャンプし二人から距離を取った
「やはり練度も高いな、中々厄介なのが二人も生き残ったか·····」
「ありがとう安斎、また助けられたな·····」
「西住まほ、まだおまえに私がどうしてあんな風に戦うのかを教えてなかったな」
サーベルをジェンダーの機体に毅然と構えながら千代美はまほに語り始めた
「確かに勝利する事も大切な事だがそういう結果はおまけみたいなもんで、本当に大事にするべきはそこに行き着くまでにどれ程自分が心のままに戦えたかどうかだと私は思う!だから例えどんなに最悪で不利な状況でも自分のできる事を、やりたい事を最後まで諦めず精一杯やり通すのが私の戦いだ!」
「心のままに······」
「だからこの試合も最後まで全力でやるつもりだ。行くぞまほ!勝つのは私達だ!」
「·····ああ、そうだな。私も最初からそのつもりだ」
千代美の熱意に押されまほもまた自身の闘志を昂らせ機体を立ち上がらせた。二人から湧き上がる闘志を感じジェンダーは若干冷や汗をかいたが気圧され退くことを彼女のプライドが許すはずもなく逆にニヤリと笑みを浮かべさせた
「私も実力一本でここの隊長に成り上がったのでね·····負ける訳にはいかないな」
「そりゃあいい、数で劣ってるとはいえ同じジムカスタムなんだから負け惜しみは言わせないぞ!」
「ちょっと待て··········ジムカスタムだと?私の機体はシルバーヘイズだ。間違えないで欲しい」
「へ?いやいや何処からどう見てもただのジムカスタムじゃ·····」
千代美の言う通り機体色が白く、シールドが特徴的な形状という点以外は紛れないただのジムカスタムであったがジェンダーは怒りを顕にし頑なにそれを否定した
「シルバーヘイズだ!次間違えたら貴様を素行不良生徒と見なし除隊処分にしてやる!わかったな!」
「な、何だって!おいおいひょっとして隊長が断トツで横暴な人なんじゃ·····」
「ふざけてる場合じゃないだろう······行くぞ!」
まほは千代美に喝を入れ、二人は共にジェンダーのシルバーヘイズへ挑もうと斬りかかった
その後千代美、まほの二人とジェンダーとの対決は熾烈さを極め格闘戦とは思えぬ程長時間に渡った。ジェンダーも中等部の隊長を任されているだけあってパイロットとしての実力も相当なものであり千代美一人では到底敵う相手ではなかった。しかし千代美と共に戦っていた西住まほという少女は、モビル道を初めて以来未だに誰からも撃墜された事がなくその驚異的な実力と西住流の跡取りという事から英雄の様に崇められる存在となる程優秀なパイロットであった。二人の連携に初めは対応していたジェンダーであったが次第に苦しくなり、最終的に千代美のジムカスタムを撃破したものの、その隙を付いたまほのF2型に斬り伏せられ演習は千代美達のチームの勝利という形で幕を閉じたのであった
演習が終わった後の午後、新入生達はモビル道に関わる設備や規則、特例に関するオリエンテーションを受け初日の訓練は終了となった。他の生徒達が解散し帰路に着く中、まほはジェンダーに呼び出され中等部棟の隊長専用の執務室へと向かった
「失礼します。西住まほです」
「おっ、来てくれたかまほさん。今日は凄い活躍だったな。私も三代目の西住流には賛同してないと言ったが考えを改め直す必要があるみたいだ」
部屋に入ると自身の机で作業をしていたジェンダーが爽やかな笑顔で迎えてくれた。その笑顔は激闘に敗れた者にしては潔く清々しさを感じる程であった
「ところで大切な話とは一体·····?」
「単刀直入に言わせてもらう。私達三年生は夏の全国大会が終わると後輩への引き継ぎ作業と高等部へ向けての修学に励む事となる。そこで私が引退した後中等部の隊長に貴女を任命したいんだ」
「私がですか?しかし二年生の皆さんもいるというのに·····」
「現時点で貴女が隊長になる事に反発する者は誰一人としていないよ。皆伝説的な実力を持っている貴女に着いて行きたいと思っているんだ。引き受けてくれないかな?」
「·····わかりました。ジェンダー隊長の後任、僭越ながらこの私が務めさせていただきます」
まほは礼儀正しく一礼しジェンダーも満足そうな表情を浮かべていた。すると唐突に部屋のドアが開かれ間の抜けた声が部屋に響いた
「こんにちは〜!ジェンダー・オムさんはいらっしゃいますか〜?」
まほが背後に振り向くとそこには季節に似合わぬ黒いロングコートを身に纏った青年の姿があった·····しかし彼の瞳を覗いた瞬間、ゾクリとした寒気がまほの背中を走った。まほは知っていた、自分や母には兄弟や従兄弟はいないため西住の血を持つ者は自分達しかいない事を。しかしどういう訳かその青年の瞳から母と同じ気配を感じ、まほは心当たりが全く無かったため彼の存在から少し恐怖を感じた
「あら?ひょっとしてお邪魔でした?」
「私の方から呼ぶと言っただろうに·····まほさん、態々来てくれてありがとう。今日はもう寮でゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます·····それでは失礼します·····」
まほはジェンダーに挨拶しその場から立ち去ろうとした·····がどうしても彼の正体が気になりすれ違いざまに思い切って声を掛けた
「失礼ですが母と·····西住しほと何か関係をお持ちですか?」
「西住しほさん····?いやいや僕なんかがあんなスターなお方の関係者な訳ないじゃないですか〜やだな〜」
青年は目を細めいっぱいの笑顔をまほへ向けてきた。まほは自分の思い違いだったのかと感じ彼に礼を言って隊長の部屋を後にした。偶然居合わせただけの知らない人間から母と似たような気配を感じるなど普通は有り得ない事であったが、まほは不思議な事があるものだと処理し試合の内容を頭の中で反省しながら廊下を歩いて行った
その日の夜、千代美は寮の自室で一人考え事をしながら窓から星空を見上げていた。初めは西住流に関して無知な自分に対する周りからの圧や、まほの言っていた家元の思想の話を聞き自分の様な者が黒森峰に居れるのだろうかと不安だったが、隊長もまた自分と同じ様に西住流に興味のない方だったので仲間がいた気がし千代美は勇気づけられていた。すると突然部屋のドアをコンコンとノックする音が聞こえてきた
「はーい、どうぞー」
「失礼します·····む、君は·····」
「あれ?まほじゃないか。どうしたんだそんな荷物持って·····」
ドアを開けて入ってきたのは両手に大きめのカバンを持ったまほだったので千代美は立ち上がり彼女の方へ駆け寄った
「今日から私も寮で生活する事になってだな。それで寮長さんからこの部屋を案内されたという訳だ」
「へー、そうかそうか!いやー嬉しいなー!今まで一人だったから話し相手もいなくて寂しかったんだよー!」
千代美は喜びのあまりまほへ抱きつき、まほは驚きのあまり思わず両手から荷物を落としてしまった
「そ、そうか。私も知り合いがルームメイトで嬉しいよ」
「本当か〜?あ、こっちは私のベットだからおまえはそっちのを使ってくれよな!」
「と、ところでその·····少し聞きたい事があるんだ·····」
改まって、そして少しぎこちない様子で話そうとするまほに千代美は何事かと思い注目した
「なんだ?ひょっとしてトイレか?トイレなら部屋を出て右に行くとだな·····」
「違う!·····君はとても勇敢で実力のある優秀なパイロットだ。そして精神面においてもこの黒森峰という場所でも流されずに自分を貫ける強い心も持っている」
「な、なんだなんだ?そんなに褒められちゃうと照れるな〜!というかおまえの方が全然凄い奴じゃないか」
「いや、私なんてまだまだだよ·····だから西住流を継ぐ者として、それ以上に大切な人を守り続けるために私はもっと強くならなければいけないんだ」
「大切な人か·····誰なんだそれって?彼氏か!?」
千代美はまほが余程大事に想っているその人物が気になり目を輝かせながら迫った
「期待してる所悪いが·····妹の事なんだ。守りたい大切な人というのは」
「ありゃ、妹さんだったか。その子は何処か体の具合いとかが悪いのか?」
「いや、そういう訳じゃない。ただ普通とは少し変わった所のある子でな。だからどんな事からも彼女を守れる強い姉でいたいんだ」
そう語るまほの真剣な表情から確固たる決意めいたものを千代美は感じた
「だからもし良ければ君の様に強くなるために·····私に協力して欲しい。図々しい事を言っているのはわかっている·····けど私は·····」
「よーしわかった!要するに私と友達になりたいという訳だな?大歓迎さ!」
「·····え?友達·····?」
千代美の口からまほにとって思いがけない言葉が発せられた
「だって私みたいになりたいならもっと私を知らなくちゃいけない訳だし友達になる他ないだろう?」
「いやしかし·····私は今まで友達がいた事なんて一度もないんだ·····だからそんな私と一緒にいても退屈するに違いない·····」
今まで友達がいた事がない、という言葉に千代美は驚かされた。しかし今思い返せば他の生徒達の誰もがまほと遥か格上の人へ対する時の様に接していたので、友達ができなかったというのも仕方のないことであったのだろう
「心配するな!おまえにとって初めての友達になれるなんて私は凄く嬉しいな·····それともおまえは嫌か?」
「そんな訳ない!·····だけど本当にいいのか?無愛想でMSに乗ることしかできない私と友達になるなんて·····」
「いいに決まってるだろう?その代わり私と友達になったからには毎日騒がしくなるから覚悟してくれよ!」
そう言って千代美は一点の曇りもない笑顔を広げながらまほへと手を差し出した。まほは少し戸惑う様子を見せたが思い切ったのか千代美の差し出した手を強く握った
「改めて私は安斎千代美だ!よろしくな、まほ!」
「ああ、こちらこそよろしく頼む··········安斎」
「んー?そこは千代美と呼んでくれるんじゃないのか?」
「い、いいじゃないか別に!··········ありがとう、安斎。私は今本当に満たされているよ」
「そうか?それじゃまほが部屋に来たお祝いにおやつパーティーと行こうか!」
こうして千代美とまほの二人は固い絆で結ばれた。その日は二人の物語が始まった日、後に互いにとってかけがえのない親友同士になるのはもう少し先の話であった·····
読んでいただきありがとうございました。一年生編は今回で終了です
千代美とまほはガンダムで言うとキラとアスランみたいな関係にしていこうと思っております。次回からは三年生編からスタートし千代美がアンチョビになるまでの話を書いていきます
マリー様の捏造設定についてはまた本編に戻った際に解説したいと思います。そんな設定を加えようとする理由ですが僕がパプテマス・シロッコというガンダムのキャラクターとマリー様が大好きだから、それだけです()
あとがきに申し訳ないですがおまけみたいな小話を載せさせてもらいます。外伝とはあまり関係ないオリキャラ同士の会話なので無視しても大丈夫な内容となっておりますのでこちらの方に載せることにさせていただきました。ご了承いただけると幸いです
おまけ ~僕の名前は西住シズワMarkJ〜
まほが立ち去った後の隊長専用の執務室にて、ジェンダーはまほに見せていた爽やかな表情とは打って変わって怪訝な顔付きを浮かべ鋭い視線で先程入室してきた者、演習で千代美のホバートラックを運転していた青年を睨みつけていた
「貴様が二代目の隠し子と言わてれる奴だな。今日安斎さんのフォローは私の弟分に任せたはずだったが何故貴様がトラックに乗っていた?」
「王様にはお留守番を頼まれましたし、現代の西住流がどんな感じなのか見てみたくて縁ある男子校の方に入学したんです。でも来たのはいいけど変なのに絡まれちゃって大変だったんですよ〜(泣)」
「王·····マリー・タイタニアか。後輩の皆に害を出さないためにも分校とはいえ貴様の様な危険な者を預からせたくないな。アズラエルのBCにでも行ってもらいたいものだ」
「えぇーあそこに行くとレナさんルカさんに苛められるので嫌ですよぉ。ていうかジェンダーさんさ、年下の女の子に負けちゃうとかちょっと·····ぷっ」
「なんだと·····貴様ぁ!」
青年の小馬鹿にしてくるような態度にジェンダーは怒りを激発させ椅子から勢いよく立ち上がった
「ヒイィッ、怒らないで!··········良かったですねモビル道で。実戦だったら貴女·····死んでましたよ?」
「黙れ!貴様といいあの小娘といい自身より能力の高い人間がいないと思っている所が癇に障る·····馬鹿にするな!」
「あージェンダーさんは中等部卒業したら軍に志願するんでしたね〜最近バスク大佐もいい所ないみたいですし親子揃って大変ですねぇ」
「黙れと言った!」
ジェンダーは怒りのままに机上のスタンドライトを青年に投げつけた。彼はニンマリと気味の悪い笑みをたたえながら軽く体の軸をずらして避け、スタンドライトは背後のドアに叩きつけられ四散した
「いい気になるなよ!いずれ大々的に地球に巣食うスペースノイド共への粛清が始まる!そこで私は必ず功績を上げ貴様ら全員を顎で使ってやる!覚悟しておけ!」
「(こわっ·····)まぁまぁ冗談ですよ冗談。後輩の皆さんには手出ししないと王様とも約束してるので安心してください。それじゃ定時なので帰りま〜す」
青年はくるりと踵を返すと奇怪なステップを踏みながら部屋から出て行った。一人部屋に残されたジェンダーは終始あの男とマリーから侮辱され続けた気がしそれが許せず、固めたその拳を力任せに机へと叩きつけた