ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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今回より中学三年生編となります

また個人的にアンチョビと似ている気がするガンダムキャラが今回より登場します(ヤザン・ケーブルみたいな台詞を言ったり扱いを受けてきましたがヤザンではありません)

加えて前回のマリー様同様に捏造設定ゴリゴリのガルパンのキャラクターが登場しますのでもはやそういうもんなんやなとご理解いただけると助かります

今回もよろしくお願いします


PHASE-04 エピオンのために

 千代美とまほは互いを友人として認めあった。まほは千代美のどんな時も自分を貫き行動できる強い心と誰に対しても分け隔てなく接する事のできる太陽の様な素直さに惹かれ、千代美もまたまほの家族のために強くなろうとする熱い意志に惹かれて、同い年とは思えない毅然とした姿勢の裏に孤独な一面を少し覗かせていたのでそんな彼女のために力になってあげたいと思ったからであった。

 それからまほは黒森峰女学園中等部MS艦隊の隊長として、千代美はチームを支えるMSパイロットの一人としてレギュラーメンバーに抜擢され、互いを高め競い合い数多くの輝かしい栄誉を黒森峰に残しながら二人は友情を深め成長していった。特にまほの方は目まぐるしい速さで力をつけていき学徒兵はおろか、地球連合軍に所属する正規のMSパイロットへ匹敵する程にまで成長していた。それ故に周りからの評価はより一層高くなり、以前よりも更に神格化され住む世界が違う者の様に認識され扱われる様になっていた。

 しかしそんな中でも千代美はどんな時も変わりなく友人としてまほの傍に居続けた。千代美の方も立派なエースパイロットとしての実力をつけ、現西住流の戦術と教義を吸収しつつ独自に戦法を編み出し活躍してみせていた。その結果、本来の西住流とは全く異なる新しい次世代の西住流を歩み目眩く閃光の様な速さで戦う安斎千代美という少女は、いつの間にかモビル道界隈において『閃光の新世代(ライトニング・エピオン)』という異名(コードネーム)で呼ばれるようになっていた。無論OG会等の関係者や他の生徒達は言わば邪道を披露する千代美を許せるはずがなかったが、直接的に否定すればいつも一緒にいるまほの気を悪くする危険性があったため誰も千代美を否定する事ができなかった。よって千代美はまほとは対照的に大多数から陰口を叩かれ不良の様に煙たがられる存在となってしまった。しかしそれでも数は少ないがまほを始め自分を応援してくれる者達がいるのも確かだったので千代美はその人達に応えるためにも挫けず努力し続けていき、それに呼応する様にまほも最強の座を不動の物にしながら努力する事を惜しまず千代美と共に在り続けようとした

 

 

 そして時は過ぎ中学三年生になった二人は最後の全国大会も共に戦い抜き無事に優勝旗を学園へ持ち帰り、高等部へ向けての勉強と後輩達への引き継ぎを始めたのであった。一見正反対にも見える千代美とまほであったが二人の絆は熱く強固に繋がり何人にも決して引き裂くことができない程にまで強く結び付けられていた。だからこそこの時はまだ二人共、離れ離れになってしまう事など想像できるはずもなかったのだ·····

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「··········うーんなんだこの機体·····殺人的な加速だ·····」

 

 

「安斎、安斎起きてくれ!このままでは遅刻してしまう····」

 

 

 全国大会が終わった後の夏の朝、学生寮にておかしな寝言を言いながら爆睡する千代美とそんな彼女を起こそうと必死に声を掛けながら彼女の体を揺さぶるまほの姿があった

 

 

「··········ん?あー、おはようまほ。今日もいい朝だな!」

 

 

「ああ、おはよう安斎·····ってそんな事よりも寝坊だぞ!早く仕度をするんだ!」

 

 

「おいおいまだ目覚ましも鳴ってないだろ·····あれ?」

 

 

千代美は目の前にいるまほが制服姿だった事と目覚まし時計の針が昨晩の時刻を示したまま微動だにしていない事から時計が壊れている事を察し叫びを上げた

 

 

「寝坊じだあ゙ああああ!なんでだあ゙ああああ!」

 

 

「お、落ち着け安斎!全力で走ればギリギリ間に合うはずだ!」

 

 

「わ、わかった!それじゃおまえは先に行っててくれ!」

 

 

「いいのか?いつも一緒に登校していたのに·····」

 

 

「待っててくれたのに悪いなまほ!でも隊長だったおまえがこんな事で遅刻しただなんて皆に示しがつかないだろう?それに私も直ぐに追いつくから任せろ!」

 

 

「そうか·····わかった。だが急ぎすぎて事故に遭ったりしないでくれよ。また後でな」

 

 

せっせと着替え身支度を整える千代美に従いまほは少し寂しそうにしながら部屋から出て行った。千代美はまほに悪い事をしたなと思いながら早急に着替えと仕度を済ませ、纏めた荷物を持って一階の食堂へドタバタと降りた。寮長さんに珍しく寝坊した事を笑われてしまい千代美はジャムトーストを受け取るとそれを咥えて寮から飛び出して行った。

寮から本校舎までそこそこの距離があったので千代美は咥えたトーストを食べながら一心不乱にいつもの通学路を駆けていた。まるで自分が風になったのではと錯覚する程千代美は心地よく全力で走っていたので内心余裕で開始時刻に間に合うのではと内心考え油断してしまい、そんな事に気を取られていたせいで先の曲がり角から出て来た者の存在に気づかず正面から勢いよく激突してしまった

 

 

「へぶっ!」

 

 

千代美はぶつかった衝撃で咥えてたトーストを放し吹っ飛んで尻もちをついてしまった。顔とお尻に鈍い痛みを感じ思わず泣きそうになってしまったがぶつかられた相手の男性がすぐ様膝をつき千代美に手を差し伸ばしてきた

 

 

「君、大丈夫かね?避けてあげれずすまなかった」

 

 

「い、いやいや!こちらこそぶつかってすいませんでし·····」

 

 

千代美は少しだけ涙が溜まった目を擦り謝罪しようと顔を上げたが目に飛び込んできた男性の姿に思わず言葉を途切れさせた。おそらく日本人ではないその男性は何の変哲もない地味なスーツ姿に身を包んでいたが、彼の面立ちと躊躇いもなく膝をつきこちらに手を差し出してくれたその姿から地味な服装では隠しきれない()()()()()()が滲み出ているのを感じ千代美は頬を紅く染め呆然と見とれてしまっていた

 

 

「·····立てないのか?それともどこか痛むのかね?」

 

 

「·····はっ、大丈夫です立てます!あ、ありがとうございます!」

 

 

千代美は我に返り恥ずかしさのあまり俯きながら差し出された手を取って立ち上がった。何故か胸の鼓動が高鳴り男の顔をまともに見れずにいたがそのおかげで彼のスーツの袖に自分が咥えていたジャムトーストが張り付いているのを見つけてしまった

 

 

「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!私のジャムパンがあぁぁぁ!ごめんなさいごめんなさい!」

 

 

「ん?·····ハハハ、まさかこんな所にパンが付いてしまう日が来るとはね。汚れてしまったと思うが食べれるかな?」

 

 

「汚いなんて事ありません食べます!·····じゃなくてスーツを汚してしまい本当にごめんなさい!綺麗にして後で必ず返します!」

 

 

「何、君が気にする事ではないさ。どうやらその様子ではどこにも悪い所が無いようでよかったよ」

 

 

男は優しく微笑みながら千代美にジャムトーストを手渡した。千代美はモジモジと恥ずかしそうにそれを受け取ってそのまま口へ運びかじって見せた

 

 

「ところで見た所学校へ急いでいたのだろう?ならば私になどもう構わずに早く行きたまえ」

 

 

「で、でも·····そうだ!お名前聞いてもよろしいですか!?私、中等部の安斎千代美っていいます!」

 

 

「ふむ、·····私はトレーズ・クシュリナーダ。千代美君、学校までくれぐれも気を付けて行くように」

 

 

「はい、トレーズさん!それじゃまたいつかお会いしましょう!」

 

 

千代美はトレーズに思い切ってそう言い残して再び学校へ向けて走り出した。パンを咥えて急いでいた最中に異性とぶつかるだなんてとてもベタな展開であったが、それでも夢にまで見たその出来事と彼が初対面にも関わらず優しく接してくれた為に千代美はトレーズ・クシュリナーダという人を意識せざるを得なくなってしまった

 

そしてギリギリ校門に到着した際、また会おうと言っておきながらトレーズの連絡先を聞いてない事に気づき千代美は悶絶するかの様な大声を上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後千代美はいつも通り学校の授業やモビル道の訓練をこなし気づけば放課後の時間になっていた。千代美達三年生は全国大会を終え中等部のモビル道チームにおいては引退した身となっていたので無理に放課後の訓練に出る必要はなかったが、中等部の新たな隊長として選ばれたまほの妹である西住みほと副隊長の逸見エリカからこの日も稽古をつけて欲しいと頼まれたのであった。千代美はこれを承諾し彼女達を鍛えてあげようと張り切り今日も居残る事を決意した。そして約束の時間となり、演習場内にて千代美達3機のMSによる戦闘訓練が繰り広げられ始めたのであった

 

 

 

「遅い!遅いぞみほ、エリカ!おまえ達が乗っているのは機動兵器MSだぞ!だったらもっと絶え間なく機動し続けないか!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「チッ、あんたが速すぎるんでしょうが!」

 

 

 千代美は愛機のMS、【YMS-15 ギャン】と共にみほの専用機である【MS-08TX/N イフリートナハト】とエリカが乗る黒森峰の主力量産機でもある【RGM-79C ジム改】の2機を凄まじいスピードで翻弄しながら白兵戦の間合いまで迫り一撃離脱攻撃を繰り返し仕掛け続けていた。千代美のギャンに対してみほとエリカは息を合わせて対抗するも実際にまほと肩を並べる程の格闘センスを持つ千代美に追いつくのは困難な話であった。しかしそれでも二人は千代美のその能力を吸収したいと思っていたので本気で立ち向かい、千代美もそんな彼女達の期待にちゃんと応えてあげたかったので正面から厳しく向かい合う事を心がけていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか二人共、連携というものは一人が猟犬でもう一人がハンターになりきってやるものなんだ。そしてその役を戦闘中に何度も交代しながら動き続ければ例え数で勝る相手にだって絶対に負けないのだ!」

 

 

「猟犬とハンター·····?」

 

 

「すみません何を言ってるのかよくわからないのでもっと具体的に教えて貰えませんか?」

 

 

「なにぃ〜!?具体的に、か···············とにかく犬と飼い主になりきるんだよ!私とまほがやってたのを思い出せ!あんな感じだ!」

 

 

 練習を終えた三人はコクピットから外へ降り集まるといつもの様にミーティングを始めた。千代美はできるだけわかりやすく教えたかったが空回りする事が多く、特にエリカの方から反感をあらわにされ三人の議論はいつも騒がしく交わされていた

 

 

「でも何だかわかるかもしれません。要するに一人が標的を誘導してもう一人が確実に撃破できる状況に持っていくという事ですか?」

 

 

「おぉー、流石はみほだな!·····多分そんな感じだ!」

 

 

「感じ感じって·····そんな感覚的な事じゃなくてもっと自分達がどのように実践してるのか教えてくださいよ!」

 

 

みほとエリカは自分と同じく格闘戦を得意としており、数少ない自分を頼りにしてくれる可愛い後輩達だった。みほの方は姉のまほに隠れがちだったが彼女もまた相当の実力を持っており、加えて試合中や日常生活にて他の者では感じる事のできない気を彼女は感じ取り自分の想いを他者へ送る事ができるらしく、そこで彼女は昨今話題となっているニュータイプという進化した人類かもしれないと多くの人々に認知されていた。ただ千代美はみほが送るテレパシーとやらを全く感じる事ができなかったので、西住流という名家の生まれである事とまほの妹という事が彼女の存在感を増大させている原因な気がしそのニュータイプという言葉も半分程度にしか信じていなかった。むしろ千代美はみほよりもどちらかと言うとエリカの方に注目していた。同学年のみほの存在に隠れあまり目立っていなかったがエリカもまたエースと呼ぶに相応しい実力を有しており、更には何らかのきっかけさえあれば引き出せるかもしれない潜在的な爆発力を千代美はまほと共に薄々感づいていた。それもきっと今年の春に卒業しプロチームに入隊した彼女の姉が大きく影響しているのだろう

 

 

「とにかくこれからはおまえ達二人が中心になるんだからもっと仲良くするんだぞ?そうすれば二人共今よりも遥かに強くなれるはずだ!」

 

 

「仲良く?冗談言わないでください。私は友達を作りたくてここにいるのではありません。·····ましてや西住さんとだなんて·····」

 

 

「うぅ··········」

 

 

「こらエリカ!仲間に対してそんな態度をとるんじゃない!このバカ犬!」

 

 

「なっ!?私が犬ですか!」

 

 

見れば直ぐにわかるくらいエリカはみほに対してライバル心を燃やしていたので自分とまほのようにはいかないのが少し残念であった。だが彼女達二人もかつての自分達の様にお互い競い高めあっていたので千代美にはそれが嬉しかった。すると三人のもとへまだ顔を見せていなかったまほが息を切らしながら走って来た

 

 

「はぁ、はぁ·····安斎、大変だ!直ぐに本校舎に来てくれ!」

 

 

「た、隊長!?お疲れ様です!」

 

 

「まほ?どうしたんだそんなに急いで·····」

 

 

駆けつけたまほがいつになく深刻な顔を浮かべていたので千代美はそれが只事ではない事であると察知した

 

 

「·····お母様が来ているんだ··········それで安斎を連れて来てくれと·····」

 

 

「な゙、何だと·····?」

 

 

「お母さんが帰ってきてるの?でもどうして安斎さんを·····?」

 

 

三代目西住流家元、西住しほが自分の事を呼んでいると知り千代美は嫌な汗が流れるのを感じた。しほは宇宙に在るシュバルツ・ファングという小惑星基地型訓練所の所長を務めていたため直々に地球へ降りてくることなど滅多に無かった。だから黒森峰女学園におけるモビル道は学園関係者や門下生達に任せていたので、しほ自らがただの選手の一人に過ぎない自分を呼ぶなど思ってもみなかった

 

 

「みほ、エリカ、おまえ達は引き続き演習を続けててくれ。·····急ぐぞ、安斎」

 

 

「あ、ああ·····」

 

 

千代美は嫌な予感を募らせながらもまほと共にしほの待つ本校舎へ急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人は中等部の本校舎に入り来客用の応接室へ向かった。応接室の前に着き千代美はゆっくりと深呼吸して扉を開いた

 

 

「し、失礼しマース·····」

 

 

「来ましたか」

 

 

まほと共に部屋へ入ると思ってた通り西住しほ本人が待ち構えていた。顔立ちはまほと似ている箇所が多かったが、彼女から生半可な者は思わずへたれ込んでしまうような重く強大な圧が放たれているのを感じ千代美は息を呑んだ

 

 

「まほ、あなたとは夜ゆっくり話をさせてもらうわ。安斎さんと二人きりで話がしたいので先に帰ってなさい」

 

 

「お、お母様!安斎に一体どの様な要件があって·····」

 

 

「あなたには関係の無い事よ。早く出ていきなさい」

 

 

しほの鋭い眼光にまほは思わず身体をびくりとさせたがここは引かぬと言わんばかりに千代美の手を強く握った

 

 

「まほ·····私の事は大丈夫だ!だから行ってくれ」

 

 

「安斎···············わかった。·····失礼しました」

 

 

まほは心配そうな顔をしていたが千代美の言葉を受けその手を離し部屋から出て行った。応接室は千代美としほの二人きりになってしまった

 

 

「えー、それでお話とは一体·····」

 

 

「ライトニング・エピオン、随分大層な名前で呼ばれているようですね?私を差し置いて次世代の西住流でも築くつもりなのかしら?」

 

 

「いやそれは皆が私に付けたあだ名みたいなもので····」

 

 

千代美自身はエピオンという名を嫌だとは思っていなかったが、しほを始めとする西住流の関係者に次世代を意味する名で自分が呼ばれているのが気に入られないなど至極当然の事であった

 

 

「まぁ、いいでしょう。······私の母、西住シズワはとても恐ろしい人でした。先代が築き上げた西住流を誰もが絶望する程の力で強引に歪め、自身の野望を果たすためにその歪んだ西住流と思想を世界へと拡大し人々に浸透させていきました」

 

 

「·····へ?なんですかいきなり·····」

 

 

「貴女もまた西住流を歪める存在であると言いたいのです。中等部だけなら見逃す事もできましたが、高校モビル道ではよりメディアへの露出も多くなり全国大会も世界中に放送される事となっています。そこに貴女の様な者を黒森峰の選手として出せる訳がありません。どんなに実力があろうと努力しようと永遠に補欠のままだと思いなさい」

 

 

「ちょっと待て!あんた何めちゃくちゃ言ってんだ!私が西住流を歪めるだとか訳わかんない事言って·····そんな横暴許される訳ないだろ!」

 

 

強硬な姿勢を取るしほに千代美は怒りを激発させた。だがしほは表情一つ動かす事なく淡々と言葉を返した

 

 

「それが嫌なら西住流に忠誠を誓うと約束するか卒業後に黒森峰(ここ)から出ていきなさい。希望の学園があれば其方へ転校できるように私が負担させてもらいます」

 

 

「な·····そこまで私をどうにかしたいのかあんたは!まほが聞いてたら幻滅するぞ!」

 

 

「····まほは貴女達とは元より住む世界が違います。あの子もいずれ私の後を継ぎ、正統な西住流を示す強き存在として立たならなければなりません。友人などという甘えるための存在はあの子に必要ないのよ」

 

 

「あんたそれでも母親か!?まほはあんたが思ってる程強い子じゃない!私達と同じ普通の女の子なんだぞ!」

 

 

「普通ですって·····だとしたら貴女の様な存在が何時までも傍にいるからあの子は強くなれないのよ!·····先程言ったことは全て本気です。しばらく期間をあげるのでよく考えておきなさい」

 

 

しほは最後に吐き捨てるようにそう言い千代美の横を通り過ぎていった。千代美は悩んだ。このまま高等部に上がればおそらく自分の選手生命は終わりを迎え、転校すればまほと離れ離れになってしまう。そんな事どちらも千代美には選ぶ事などできない事態であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後辺りがすっかり暗くなった頃、しほは用事を済ませ本校舎から駐車場に出て自身の車へ乗りこんだ。エンジンをかける前にふと学生時代に月へ行った時の事を思い出していた

 

 

(ねぇ、しほ。いつか地球と宇宙に住んでる他の人達も皆私達二人みたいな親友同士になれると思うんだ。そのためにも私達ニュータイプとしほみたいな人達の力が必要なの)

 

 

(またその話?いつもいつもニュータイプって········本当に懲りないわね貴女は·····)

 

 

(うー、ニュータイプは本当の事なんだから信じてよ!·····負けないでね、しほ。貴女のお母さんはとても強い人だけど、貴女ならきっと西住流を変えられる)

 

 

(·····大丈夫、必ず私が勝ってみせる。だから貴女も頑張りなさいよ、千代)

 

 

(うん!私達二人で皆仲良くなれる新しい時代を作ろうね!)

 

 

 

 

 

「友など所詮一過性の存在。同じ未来を見ていても、時が経てばいずれ道は分かたれる·····」

 

 

しほはポツリと独り言を呟き、まほが待つ本土の実家へ向け車を発進させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後千代美はただ一人学園艦の町を歩いていた。学園艦の寄港日だったためまほは寮には帰らず自宅に泊まってくると言っていたので、どうせ帰っても一人だったので千代美は寄り道をしてから帰ろうと思った。自分がどうするべきかの結論など出るはずもなく、イライラしながら歩き広場に出るとハンバーガー屋のキッチンカーを見つけた。立て看板には『macdaniel(マクダニエル)』と書かれておりメニューを見る限りサイズも大きく中々美味しそうな見た目だったのでこういう時は美味しい物を食べてイライラを発散させようと思った

 

 

「いらっしゃいませ〜!あれ?チヨミじゃん!」

 

 

「ん?げっ、おまえはケイ・フォーラじゃないか!なんだってサンダースの奴が黒森峰に来てるんだ!」

 

 

屋台の店番をしていたのはサンダース大学付属中学の千代美達と同世代の生徒であるケイ・フォーラであった。彼女はこの中学三年間ライバルとして何度も千代美達の前に立ち塞がり、同世代の選手の中で唯一まほと同等に渡り合える実力を持っているパイロットであり超優秀な指揮官であった

 

 

「なんでって出張よ出張!ウチの店が今日だけ黒森峰に屋台を出しに行く事になったから私も手伝いに着いてきちゃったの。ところでご注文は?」

 

 

「あ、ああそうだな。じゃあプレーンバーガー1つとスプライトとポテトのSサイズを頼む」

 

 

「OK!プレーンのギガとスプライトとポテトのLとチョコチップアイスのトリプルね!お会計1200円になりまーす!」

 

 

「OK!じゃないだろ!そんなに頼んでないし食べ切れる訳ないだろう!」

 

 

「アハハハ、ジョークよジョーク!できたら持っていくからそこに座って待ってて!」

 

 

千代美は元々頼んだ分だけ支払いケイに促され設けられていたテーブル席に座った。少し待つと屋台の中から金髪で口元と顎に金色の髭を蓄えた店長と思しき色黒の巨漢が出来上がった料理を持ってこちらへやってきた

 

 

「お待ちどお様お嬢ちゃん。うちの店は大きいからお腹いっぱいになるぞ!」

 

 

「お、おじさんがケイのお父さんですか!?に、似てない·····」

 

 

「ん、ワッハッハッ違う違う私はあの子の叔父だよ!もっとも血が繋がってないから似てなくて当然だがね!」

 

 

店長は豪快に笑いながら千代美のテーブルに料理を置いていった。ケイの友達だからという事で店長からのサービスで彼女がジョークで言っていた方のメニューがトレーの上に並んでいた。正直年頃の女の子が食べていい量ではないと思ったが、残す訳にもいかないので千代美は気合いを入れて食べ始めた。ケッチャップをかけながらしばらく食べ進めているとケイがキッチンカーを出て此方へ駆けてきた

 

 

「チヨミ〜なんか凄いイケメンな人があなたと相席したいって言ってんだけどいいかな?もういいって言ったけど」

 

 

「な、なに〜!?駄目だ駄目だこんないっぱい食べてる所男の人に見られたくないぞ!」

 

 

「やぁ、また会ったね千代美君」

 

 

屋台の方に今朝学校へ行く前に出会ったトレーズ・クシュリナーダがそこにいた。彼は脱いだスーツのジャケットを片腕に掛け、ハンバーガーの入った包みを片手に此方へ向かって来たので千代美は急遽食べるのを止め口の周りについたケチャップを拭き取った。その様子をケイは面白そうに笑いながら屋台の方へ帰ってしまったのでトレーズと二人きりになった千代美は慌てふためいていた

 

 

「な、なんでトレーズさんがここに!?っていうかこれは私が頼んだ訳じゃなくてお店のサービスで·····あー、食べ切れるが不安だなー!」

 

 

「何、気にせず先程と同じ様に食べればいい。あんなに美味しそうに食事ができる女性なんて魅力的じゃないか」

 

 

(み、見られてたのかー!うわー!)

 

 

千代美は恥ずかさで今にも爆発しそうな位顔が真っ赤になりトレーズと目を合わせるなどできるはずもなく、俯きちょっとずつハンバーガーを口にし始めた。しかし同じテーブル席に座ったトレーズの方はハンバーガーを食べずに千代美の事をしばらく注視していた

 

 

「失礼な事を聞くが·····何か嫌な事でもあったのかね?」

 

 

「へ!?い、いやそんな事ないですよ!」

 

 

「顔を見ればわかる。今朝にはなかった悩みの種、それもかなり困難な物のようだね」

 

 

「·····はい。すみません暗い顔しちゃってたみたいで。でもモビル道の事なので·····」

 

 

「モビル道か·····こう見えて私は春先からある学園の教官を任されていてね。良ければ聞かせてくれないかな?」

 

 

まさかトレーズがモビル道の関係者、それも教官だとは思いもしなかったので千代美は驚愕してしまった。今日会ったばかりの人に相談できる事ではないとわかっていたが、何故かトレーズがその答えを持っている様に感じ彼になら相談できる様な気がし千代美は思い切って彼に全て打ち明けたのであった·····

 

 

 

「ふむ·····学園に残りたくば従え、それが嫌なら出て行けと」

 

 

「はい·····でもきっと仕方の無い事なんです。今日まで周りから邪道だとか西住流を貶める奴だと言われてもそれを無視して好きな様にやってきました。こんな選択肢を貰えるだけでもまだ恵まれてるのかもしれません·····」

 

 

「ならば家元の言う通り西住流に忠誠を誓い学園に残ればいい。西住流は現在最強にして最高の流派だ。窮屈になると思うが黒森峰に残れば君は間違いなく最高のパイロットにして"勝利者"になれるはずだ」

 

 

「·····それは違います!」

 

 

トレーズの掛けた言葉を千代美は椅子から立ち上がり強く、熱い意志と共に否定した

 

 

「確かに西住流は最強の流派で完璧に従っていれば実力のあるパイロットにはなれると思います。でも何よりも一番大事なのは自分の心にしたがって戦えたかどうかだと思うんです!自分の意志ではなく、他の誰かに示されたままに得た勝利なんて何の価値もありません·····そんな風に勝つくらいなら自分の心のままに戦って負けた方がマシです!」

 

 

千代美ははっきりとトレーズに自分の意見を全てぶつけた。その直後自分が席を立って大声で話していた事に気づき顔を紅くしすぐ様着席した。当のトレーズの方は彼女の話を受け僅かに驚いた表情を浮かべていたが少し間を開けた後に満足したかの様な微笑みへと変わった

 

 

「·····すまなかったね、先程の非礼を詫びさせて欲しい。君が今言った事、本気と受け取っていいのだね?」

 

 

「は、はい!すみません生意気な態度を取ってしまい·····」

 

 

「いや、私はとても嬉しいよ。君の言う通り個人の意志や心は何よりも尊ばれるべき素晴らしいものだ。しかし西住流が勝利するための流派と知られている今、多くの少年少女が皆西住流に服従する事を躊躇しない。だがその行為の先に本当に人らしさという物はあるのだろうか?」

 

 

トレーズは卓上に置かれたバーガー用のソース達の中からヨーグルトソースを手に取り自分のハンバーガーへとかけ食し始めた

 

 

「トレーズさん!?それハンバーガーにかけるんですか!?」

 

 

「私はこの方が好みでね。君達にとっては先入観があるため気色の悪い食べ方かもしれないが、美味しい食べ方というのも個人個人によって違いがあるものだよ。そして君がそうである様に、モビル道における選手達も多様でなければならないのだ」

 

 

「こらこら、私もヨーグルトソースをギャグで置いてる訳じゃないんだから気色悪いと言わないでくれ。確かに日本人にはあまり人気が無い様だが·····」

 

 

屋台の店長が再び現れトレーズの肩に手を置き、それに応じてバーガーを完食したトレーズは立ち上がり、ナプキンで手を綺麗に拭き取ると懐から名刺を取り出し千代美の方へ差し出した

 

 

「己の意志ではなくただ漫然と勝者の道を行くくらいならば、私は敗者であり続ける事を選ぼう。君さえよければ私のもとへ来て欲しい。いつでも連絡してくれたまえ」

 

 

千代美はトレーズから名刺を受け取ると彼は店長と共に屋台の裏手へと回って行った。名刺にはトレーズの連絡先と[アンツィオ高校]と書かれていた。アンツィオは千代美の地元を母港としている学園艦なので存在自体は知っていたが、あの学園のモビル道は完全に廃れていた物と思っていたのでトレーズがそこで教官を務めている事と共にとても意外に思えた

 

 

「·····!結構美味いかも!」

 

 

千代美もトレーズの様に試しにヨーグルトソースをかけてみたところ中々クセになる味付けに仕上がった。これが千代美の運命を大きく変え彼女の人生に最も深く刻まれる事になるトレーズ・クシュリナーダと初めて会った日だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トレーズはつかの間の休憩時間を得た店長と共に屋台の裏へ回った。今日は屋台の方は店じまいの様でケイも後片付けを初めていた

 

 

「お久しぶりですねヘンケン中佐。昔と変わらず美味しいバーガーをご馳走様でした」

 

 

「中佐だなんて止めてくださいよトレーズ総帥。連合をクビになったのも随分昔の話なんですから·····」

 

 

「ならば私も総帥と呼ばないで頂きたい。今やOZはブルーコスモスに全てを吸収され私もお役御免となったのですから」

 

 

トレーズの言葉にマクダニエルの店長、ヘンケン・ベッケナーはむず痒そうな顔をして頭を掻いていた

 

 

「·····それでトレーズさん。西住師範と会ってきたのでしょう?彼女は一体なんと?」

 

 

「今はまだ起ち上がる時ではない、決して焦るなと仰っておりました」

 

 

「·····クソッ!あの人は月のアロウズにてこずっているとはいえ少し認識が甘いんだ!今や宇宙より連合軍の方が厄介な事になっているというのに·····」

 

 

ヘンケンは焦りからか裏手に置かれていた空のゴミ箱を蹴飛ばした

 

 

「例の宇宙要塞の開発に何か動きでも?指揮者が現場の労働員に殺害されたために開発計画は頓挫するものと思いましたが·····」

 

 

「それが大変な事になっている様なのです·····スパイからの情報によると開発計画を指揮してたバスクの娘であるジェンダー・オムが暗殺された奴の後を継ぎ再びゼダンの門開発計画が再開したそうです」

 

 

「娘ですか·····兵の間では評判の良い若手指揮官と聞いた事がありますが·····」

 

 

「彼女は私が解雇された頃に入ってきたのでどういう人物かはわかりませんが、おそらく父親同様スペースノイドを嫌う地球至上主義の者に違いありません。そんな連中にブレックス准将は··········クソッ!」

 

 

「落ち着いてくださいヘンケン殿。ここで騒げば娘さんと千代美君に聞こえてしまう」

 

 

トレーズに諭されヘンケンは沸き上がる怒りを何とか抑えた。トレーズは千代美と楽しそうに談笑しているケイの方に目をやった

 

 

「彼女が暗殺されたブレックス准将のご令嬢ですか?」

 

 

「ええ、准将に似て本当に逞しい子です。モビル道においても彼の信念を胸に仲間達を引っ張る優秀な指揮官を務めているらしいです」

 

 

「なるほど、彼女もまた··········それでは私は失礼させていただきます。また何かあった時にお会いしましょう」

 

 

「その前にひとつ聞いてよろしいですかな?ケイの友達のあの子にやたらと肩入れしている様でしたが何故です?あなたがあそこまでご自身の意中を晒すとは珍しい·····」

 

 

ヘンケンは去ろうとしたトレーズを引き止め何故千代美にアドバイスを出したのか聞き出そうとした

 

 

「彼女も私と同じく獣や植物にはない我々人間だけが持つ心という物を愛しています。そして我々が理想の新たなる時代を迎えるためには、次なる世代(エピオン)の存在が不可欠です」

 

 

「それがあの子だという事か·····まだ中学生だというのに早まりすぎではありませんか?」

 

 

「彼女や准将のご令嬢が大人になる頃我々の方はすっかり老人ですよ。·····あなたの言う通り今日は少し喋り過ぎてしまったようだ。それでは·····」

 

 

トレーズは最後にそう言い残しヘンケンのもとを去った。千代美の様な次の世代(エピオン)達に未来を託すために、トレーズを初め大人達は現代の世界と戦おうとしていた·····

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました

 個人的にですがアンチョビがガンダムキャラに例えるならガンダムWに登場するガンダムのパイロット達に似てると思いトレーズを登場させる事になりました
アンチョビとトレーズとの間が恋愛物みたいな雰囲気になってましたが、個人的にトレーズというキャラクターは個人を相手とする恋愛なんて絶対にしないと思ってるのであまりそういった展開にはならないと思います

 今回当ssにおいて初めておケイさんが登場しました。以前よりケイと一番近いガンダムキャラを考えた時、何となくブレックス准将が思い浮かんでしまったのでこのような形で登場させました。それに伴ってZからヘンケン艦長も登場させることにしました。いずれエマ中尉も登場させます。二人には本当に幸せになって欲しかったです·····おのれヤザン

 それとまほや千代美の同世代のライバルにダージリンやカチューシャの名前が出てきていないのにもちゃんとした理由(捏造設定)がありますのでよろしくお願いします








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