ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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今回はアンチョビがアンツィオに来て1〜2年の間ダイジェスト形式で書きました。ドラマCDを見てないので今更ながら公式と違う設定ばかりです()
尚今回はあまり本編と深く関わってくる訳でもなく半分カチューシャの外伝になってしまった気がするので読まなくても大丈夫です(かなりの長文だし·····)



EXTRA-PHASE アンチョビと二匹の狼

 アンツィオ高校に入学したアンチョビ。昨年から活動していた先輩達4人から温かくチームに迎えられ、唯一の経験者という事から一年生ながら隊長に任命された。手始めに廃れていたモビル道を立て直そうと奔走したが現実はそう上手くいかず、新しいメンバーが加入しても座学で覚えなければならない知識が多かったのでその厳しさからすぐに逃げ出してしまった。よってその年の全国大会への出場は叶わずに終わり、その上安斎千代美というブランドがあってもチームがあまりにも貧弱な事からどの学園も練習試合を受けてくれず、アンチョビは戦士として戦うことすら許されなかったのであった

 それでもアンチョビは宣伝するために駆け回り続け、時にはイタリア料理の屋台を開きMSを買う資金を集めながらより多くの人に自分達の熱意を伝えモビル道の再興に努めた。それは先輩達が共に油まみれになりながらもMSを整備をしてくれたから、家族やセモベンテ隊の皆が応援してくれていたから、そして親友のまほという存在がいたからであった。何度も心を折られ諦めそうになったが、まほが活躍しているとの報道を見る度に悔しさを滲ませると共に自分も負けていられないと鼓舞されたからアンチョビは自分のモビル道を貫くため諦めずに目の前の現実と戦い続ける事ができた

 結果、MSパイロットを志望する生徒は現れなかったが整備士や艦の乗組員として加わりたい生徒が何人か現れ逃げ出して行った生徒達も戻る事はなくともアンチョビと共に屋台を開いたりアルバイトをするなどしてモビル道の資金を稼いでくれた。その他にも学園艦に住む市民の方々から多額の寄付金が集まり、それらこそ自分達がひたむきに努力していた姿を評価し応援してくれる人達がいるという何よりの証拠だったのでそれを知った時、とても辛い一年だったが諦めずにモビル道を続けてきてよかったとアンチョビは心の底から嬉しく思った。その後アンチョビ達はアンツィオのモビル道が闘える事を表明するために、集まったその資金で初の宇宙艦【ヨーツンヘイム】を購入したのであった··········

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンツィオへ来て一年が経とうとしていたある日の真夜中。リボンを外しパジャマ姿となったアンチョビは自室から暗い廊下を渡ってトレーズの部屋へ向かっていた。例のトレーズの妹は本土の中学校へ通っていたので結局彼と二人きりでこの広い古城で生活していたため城の中に人の気配は一切なくしんと静まり返っていた

 

 

「ト、トレーズ様。まだ起きてましたか·····?」

 

「アンチョビ?こんな時間にどうしたのだね」 

 

 

 扉を開けると部屋の明かりは点けられておりトレーズは寝巻きのガウンに身を包み自身の軍刀の手入れをしていた。ガウンの胸元から彼の美しく眩しい胸板がちらりと覗かせており、アンチョビは自身の胸がドキッと鳴るのを感じたが何とか冷静を保ち目を逸らしつつ話を切り出した

 

 

「そ、そろそろここに来て一年近く経つので色々と思い出していたら眠れなくて·····それでトレーズ様と少しお話したいなと思って·····」

 

「もうそんな時期か·····何か入れてくるから待っていたまえ」

 

 

 トレーズは軍刀を鞘に収め壁へ飾り直してから部屋を出て行ったのでアンチョビはしめたと思い彼の椅子の上で丸くなる様に座り込んだ。トレーズは教官として最低限の役目は全うしていたがアンチョビ達がモビル道の再興に苦戦していた時、彼は打開策を示すことや手助けすることの一切をしてくれなかった。何故か見ているだけで手を貸してくれないトレーズに先輩達は不満を募らせ、アンチョビも当時は何の助言もくれない事から彼の真意が分からず見放されてしまったのではと疑った事もあった

 

 

「それにしてもトレーズ様って良い香りするなぁ·····ふへへ·····」

 

「昨晩は薔薇のエッセンスを浴槽に使ってみたんだ。今度君も試してみるかね?」

 

「·····へ?うわあああああ!ち、違うんです!トレーズ様の椅子って私のと違うから前から座ってみたかっただけなんです!」

 

「フフフ、そういう事にしておこう。ミルクティーでよかったかな?」

 

「は、ハイ·····いただきます·····」

 

 

 まさかこんなに早くトレーズがティーセットを用意して戻ってくるとは思わなかったアンチョビは顔一面を紅くしてカップを受け取った。以前までは分からなかった彼が何故敢えて自分達に手を貸さなかったのかであるがその理由をアンチョビは大体感づいていた。というのも彼はアンチョビ達一人一人に自分の意思で選んだ為すべき事を為すために行動し続けることができる強い心を持って欲しいと願っているからである。それこそトレーズが現代の人々にとって必要であると考える美学的なものであったが、彼は例えどんな些細な形であろうと他者の行動や意思を支配する事を好まなかったので自分達に何の助言もくれなかったのだとアンチョビは確信していた

 

「知った風な事を言ってごめんなさい·····けどトレーズ様は私達を成長させるために敢えて何も助けてくれなかったんですよね?」

 

「さぁ、どうだろうか。だが現に私が手を貸さずとも君達はこの学園のモビル道を再興させたではないか」

 

「それは学園艦の皆が協力してくれたからです。私達だけの力じゃ多分·····」

 

「それは違う。あの苦しく厳しい現実の中、決して諦めることなく努力し続けた君達の姿が多くの人々を惹き付け味方に付けたのだ」

 

 

 トレーズはカップに口をつけながらもその目は此方を見つめるアンチョビの瞳を真っ直ぐ見据え返していた

 

 

「だからもっと誇らしく思いたまえ。君達の闘う姿は他者の心を動かす程美しく煌めくものであると。君達はもう弱くなどないのだ·····」

 

「·····わかりました!私、もっと頑張ります!必ず私達アンツィオのモビル道が弱くない·····いや、強いという事を全国に見せつけてみせます!」

 

「うむ、その意気だ。これからも期待しているよ、アンチョビ」

 

 

 アンチョビはこの夜改めてトレーズに闘い続ける事を宣言した。自分に着いてきてくれた先輩達のために、自分達に力を貸してくれる学園艦の皆に応えるために、親友のまほが待つ戦場へ行くために·····アンチョビは更に強くなろうと胸に誓ったのであった

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 そしてアンチョビは二年生になりまた新しく新入生が入学してきた。これを機にメンバーを試合ができるまでに増員するチャンスとアンチョビは考えたが行動を起こすよりも先に新入生が一人、このアンツィオの生徒とは到底思えないお姫様の様な気品と風貌を持ち合わせていたヒナ・クシュリナーダがアンチョビのもとに現れた。その名前の通り彼女こそトレーズの言う例の妹であったのだが血縁関係ではないらしく、彼曰く彼女を家に迎えたのは10年近くも前の事で当時雨の中独り彷徨っていた所を保護したのが彼女との出会いだったらしい。それ以上詳しい事をトレーズは教えてくれなかったがアンチョビは初めてヒナを見た時何故か彼女からまほの妹、西住みほと似た雰囲気を感じ不思議に思ったがアンチョビはそんな彼女を喜んでチームに迎え自分の妹のように可愛がってあげることにしたのであった

 

 

「今日からよろしくお願いします。アンチョビさん」

 

「よろしくなヒナ!これから一緒に住むんだしお姉ちゃんと呼んでくれたって構わないぞ!」

 

「あ、ありがとうございます·····あはは·····」

 

 

 

 

 それからセモベンテ隊と浅からぬ因縁がある戦車乗りを父親に持つペパロニもチームに加わった。ペパロニというのはアンチョビが付けてあげたあだ名で、というのも出会った当初は彼女から父親の事で因縁をつけられかなり険悪な関係になりそうだったがお互いを知り合う内に意気投合し気づけばアンチョビにとってヤンチャな妹分の様な存在になったからであった

 

 

「うわー!アンチョビ姐さんの機体なんか壺みたいっすね!」

 

「壺って言うな!ギャンはこのスマートな感じがカッコよくて·····って何勝手に乗ってるんだ!降りてこ〜い!」

 

「愛車にはちゃんと鍵掛けとかなきゃダメっすよ!つっても全然動かし方わかんないな。これか?えいえい」

 

「うわぁ起動した!なんで教えてないのにできるんだよ!·····って歩き始めるなあああ!」

 

「わわわわっ止まんねー!助けて姐さーん!」

 

「ゔわ゙あ゙あああこっち来るな〜!潰される〜!」

 

 

 

 

 その後他にも新入生がメンバーとして参加し試合ができる程の人数は揃ったが、また昨年のように逃げ出してしまうのではないのかとアンチョビは不安になっていた。しかしここでも学園の皆がサポートや新入生のケアをしてくれたおかげで誰一人欠けることなく皆モビル道を続けてくれると言ってくれた。そしてこの時からチームの皆や学園艦の住民からアンチョビは隊長なのだが何故か総帥(ドゥーチェ)と呼ばれ始め、初めは気恥しい部分もあったが皆から呼ばれる内に次第に気に入っていきアンチョビは何処へ行くにも自分の存在を隊長ではなく敢えて総帥(ドゥーチェ)と名乗る様にしたのであった

 その後もアンチョビ達は訓練を重ねていき、ついにモビル道全国大会が開催される時期を迎えた。昨年出場できなかったアンチョビと三年生になった先輩達はついに全国大会へ出れる事に喜び心の焔を燃やし、新入生達も同様にやる気に満ち溢れていた。そこでアンチョビはある日広場に皆を集め全国大会へ向け今一度士気を高めようとした

 

 

「いいかおまえ達!世間では既に黒森峰女学園が大会10連覇を達成するのは確実と言われているがそれは違う!ノリと勢いに乗った今の我々に比べれば西住流など敵ではない!敢えて言おう、カスであると!」

 

「アンチョビ姐さん流石っス!」

 

「総帥·····今の発言は少し不味いんじゃ·····」

 

「え·····?ちょっと言い過ぎか?とにかく目指すは一回戦突破·····じゃなくて優勝だ〜!!!」

 

「「「「「おおおおお〜〜!!!」」」」」

 

 

 アンチョビ達アンツィオ高校の一回戦の相手はプラウダ高校。黒森峰に次ぐ強豪校と呼ばれているだけあって相応の実力者とMSが揃っている訳だが、アンチョビは黒森峰にいた頃プラウダの中等部と何度も対戦した事があり彼女達がどの様な戦法を好み、どの様に攻められば崩せるのかを大体把握していた。それに加え皆の士気がかなり高まっていたので絶対に勝てない相手ではない·····むしろ情報が全く無いこちらの方に分があるとアンチョビは感じていた

 一回戦の前夜、アンチョビは城のバルコニーから海を見渡していた。ようやく自分も全国大会の舞台に立てる、そして勝ち進めば決勝戦で親友のまほと戦える·····その日をずっと夢見続けているアンチョビはまほから貰ったネックレスを握りその意志を固めたのであった·····

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして全国大会一回戦当日。ステージは宇宙、ルールは最大20機対20機のフラッグ戦·····の筈なのだが試合開始前の顔合わせへ向かった際、どういう訳かプラウダの部隊の規模がかなり小さなものになっているのを目の当たりにした。パイロットやクルーの面子も昨年活躍していた選手は一人もおらず初めて見る顔ぶれのみで、MSはケンプファーとゲルググJの他に数機、艦に至っては【グラーフ・ツェッペリン】1隻のみであった。MSと艦の数が同等である事から、向こうは完全に此方側を舐め油断していると感じアンチョビはその驕りを真っ向から叩き潰してやろうと思った。しかし激変したプラウダを率いる小柄な隊長、カチューシャ・ダイアルプスと彼女とは対照的にモデルの様な美しい長身を誇る副官ノンナ・ダイアルプス·····二人が此方へ向けるその眼が、正に明日を生きるために獲物を追う"狼"そのものだったのでアンチョビは直ぐにその慢心を改めた。彼女達も自分と同じく勝つために、辿り着くべき場所へ行くために今ここに来ているのだと伝わってきた。プラウダに何があったのかはわからないが、だからといって自分も多くの支えや応援があってようやく全国大会に出場することができた。そして今日まで先輩や新入生達にも決して楽な訓練はさせてこなかった。だからアンチョビはどうしてもこのチームで負ける訳にはいかなかったのだ·····

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし試合はプラウダの勝利という結果で幕を閉じた。ヒナやペパロニをはじめ皆期待以上の戦いぶりを見せてくれた。ただ同じ小規模部隊でありながらプラウダの実力がもはやアンチョビの知る頃のものとは比べ物にならない程レベルアップしていたのだ。互いに譲れぬ激しい戦闘が展開されたものの、最終的にフラッグを務めていたアンチョビのギャンがカチューシャのケンプファーとの一騎打ちに惜しくも敗れ試合は終了したのであった。自分が得意としていた一騎打ちで敗北し皆を勝たせてあげれなかった事にアンチョビはコックピットの中で悔しさに涙した

 その後気持ちを切り替えるとアンチョビは皆と共に試合のスタッフや応援に来てくれた人々、そしてプラウダの面々を宴会に招待し得意のイタリア料理を振舞ったのであった

 

 

「んー、美味しいー!ノンナ!あなたも今のうちにガンガン食べちゃいなさい!」

 

「しかしカチューシャ。ここは招待してもらった身なのであまり食べ過ぎるべきではないかと」

 

「え·····そっか·····。そうだよね·····」

 

「·····ですが私は今日活躍しなかったのでお腹が空いていません。なので私の分もカチューシャが食べてください」

 

「ちょっと待てえー!!!おかわりもいっぱい作ってるから遠慮せず食べてもらって構わないんだぞ!だからそんな悲しそうな会話するなー!」

 

 

 宴会で慌ただしくなるヨーツンヘイムの食堂の中、アンチョビは何やら哀しげな様子を見せるカチューシャとノンナの二人を見つけその間へ割って入った。他の隊員によるとプラウダは今カチューシャによる変革の真っ最中で、今まで所属していた主力メンバーをほぼ除隊させたため現状これだけの戦力しか動かせなかったらしい

 

 

「本当!?やったー!!!」

 

「ありがとうございます。しかしお金も払ってないのに本当にいいのでしょうか·····?」

 

「なーに気にするな!試合が終わった後は皆で楽しく美味しい物を食べる!これが我らアンツィオの流儀なのだ!」

 

「チョビーシャって良い奴なのね!お礼にカチューシャ達が絶対優勝してやるんだから見てなさいよ!」

 

「チョビーシャ?·····それよりもおまえ達二人みたいなエースが同い年にいたなんて知らなかったよ。二人は中学の頃は何処でモビル道をやってたんだ?」

 

 

 アンチョビは中学生の頃から現在にかけて全国のライバル校やアマチュアチームに在籍する世代の近いエースパイロットの情報は逐一収集する様にしていた。なので今まで彼女達二人の様な実力者が何故表舞台に姿を見せていなかったのか不思議でならなかった

 

 

「私とカチューシャがモビル道を始めたのは昨年からでこうして女子だけの公式戦に参加するのも今年が初めてなんです」

 

「なっ·····まだ始めたばかりなのに大したもんだ!それに全国大会が初めてだなんて私達と同じじゃないか!」 

 

「あらそうなの?まぁ私達には及ばなかったけどチョビーシャ達も中々だったわ!特別にこのカチューシャが貴女の友達になってあげてもいいわよ?」

 

「むむっ、上から目線でムカつくやつだな!こいつめ!」

 

 

 アンチョビはカチューシャの体を脇から持ち上げぐるぐると回り始めた

 

 

「キャー!何すんのよー!助けてノンナー!」

 

「それそれー!軽いなカチューシャは!」

 

「ふふふ·····アンチョビさん、今日貴女と出会えて本当に良かったです。またいつか戦いましょう」

 

「そう言って貰えると嬉しいよ。ただし次やった時に勝つのは我々だ!覚えておくがいい!」

 

 

 アンチョビはカチューシャとノンナに再戦を誓いその後も二人を激励しながら宴会を楽しんだ。一回戦敗退という不名誉な結果に終わり親友の待つ舞台へ行くことも叶わなかったが、こうしてまだ誰も知らぬエースパイロットと戦い友人同士になれたのだからアンチョビにとって十分価値のある一戦となった

 

 

「俺らまで参加させてもらってありがとうございます。この借りはいずれきっちり返します」

 

 

 宴会の風景を隅で見守っていたトレーズのもとにおそらくグラーフ・ツェッペリン内で補佐をしていたと思われる褐色肌で大柄な少年と彼の後にぴったりと続く少し小柄な少年が歩み寄ってきた

 

 

「そんな気遣いは不要だよ。それにこれは全て彼女達が自分の意思で始めたことだ。礼なら私ではなく彼女達に言ってやって欲しい。·····ところで君達がプラウダ高校の教官を務めているのかな?」

 

「教官というかあそこにいる二人の後見人みたいなモンっす。確かに昔は俺らがMS戦を教えてたんですが今じゃアイツらの方が強くなっちまいまして·····」

 

「ふむ·····カチューシャ君とノンナ君と言ったね。彼女達からも迷いなく進み、戦い続ける事のできる気高い精神を感じる。そう、例えどれほど過酷で孤独な戦場にいようと強き心さえ持っていれば人は戦い抜く事ができるのだ。アンチョビが敗れてしまうのも無理はない」

 

「は、はぁ·····」

 

「故に彼女達の様な迷いのない戦士は崇高で美しい。そして美しき者達の姿形は後世に継承されていかなければならないのだ·····」

 

「ねぇオルガ。このおっさんの言ってる事よくわかんないんだけど」

 

「はっきり口に出してんじゃねぇよ·····要するに俺らもしっかりやれってことだろ。多分」

 

「ふーん。じゃあ今のうちにちゃんと食っておかなきゃね」

 

 

 トレーズの美学が込められた言葉をおそらく理解できた小柄な方の少年はオルガ・イツカの袖を引きながら空になった大皿にお代りを求め料理の方へ向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後宴会が終わりアンチョビは小型シャトルで艦へ帰ろうとしていたカチューシャ達を見送りにMSデッキに来ていた。互いに今後の健闘を約束し合いカチューシャとノンナはシャトルへ乗り込もうとしたが何かを思い出したアンチョビに呼び止められた

 

 

「そういえば聞き忘れてたけど二人は姉妹なのか?同じ名前だから少し気になっていたんだが·····」

 

 

 アンチョビは二人の性が同じダイアルプスであることから二人の関係が気になり問いかけたところ直ぐにカチューシャの方が切り返してきた

 

 

「そうね、姉妹かは別として確かに私達二人は"家族"よ。最もチョビーシャのイメージしてる家族とは全然違うと思うけど」

 

「ん?それってどういう意味だ?」

 

「私達二人は見ての通り血は繋がってません。しかし私達は血の繋がり以上に固く、熱い繋がりによって結ばれています。カチューシャが私に命をくれたあの日から·····」

 

「·····そういう事。今までずっと二人一緒に生きてきたんだから舐めないで欲しいわね!私達プラウダがどこよりも一番なんだから!」

 

「そうか·····どおりで強い訳だな。初めての公式戦がおまえ達とやれて本当によかったよ。優勝目指して頑張ってくれ!」

 

「·····私達が優勝したらチョビーシャ達は最高のチームだったと壇上で言ってあげるわ。だから見てなさい、必ず私達が黒森峰を·····西住流を叩き潰してやるんだから·····!」

 

 

 その刹那、カチューシャの目が再び狼のモノに変わりアンチョビは思わず寒気を感じた。この時アンチョビは彼女達二匹の狼にとって全国大会優勝が、西住流に勝利する事がどれ程重大な事なのか知る由もなかったので黒森峰を叩き潰すというのも単なる意気込み程度のものと思っていた·····がその後もカチューシャ達はその目的のために快進撃を続けた。サンダースのケイが指揮する大部隊の連携を攻略し、聖グロリアーナのダージリン率いる大艦隊とバストライナー隊を見事突破してついに黒森峰女学園が待つ決勝戦の舞台まで進んだ

 

 

 

 そして誰もが予想だにしなかった事が現実に起こった。これまで大会9連覇を成し遂げていた黒森峰女学園がついに敗北しプラウダ高校が優勝を勝ち取った··········しかしそれ以上に誰もが最強のパイロットは彼女であると口を揃え、誰一人彼女が敗北する姿など想像しなかったあの西住まほが初めて撃墜されてしまったのだ。それもまだ一度も表舞台に立ったことのない無名のパイロット、カチューシャ・ダイアルプスに。その事実は試合が終わってないにも関わらず観客や中継を見ていた者達を大いに動乱させ、皆カチューシャのケンプファーへ畏怖の眼を向けていた

 ヨーツンヘイムのモニターに中継を受信し観戦していたアンチョビもまたその一部始終に永遠に記憶に残る程の衝撃を与えられた。というのもカチューシャのケンプファーは対峙していたまほのフルバーニアンに一度は追い詰められたものの左腕を奪われたのを引き金に、その身に本物の悪魔が憑依したのではと感じさせる様な挙動で機動し始め再びまほへ襲い掛かり始めたのだ。まほは迫る青い悪魔に最初は対応できていたものの徐々にカチューシャの人間離れしたMS捌きに圧倒されはじめ、ついに彼女のビームサーベルに胴を貫かれ討ち取られてしまったのであった。今まで誰にも敗れることのなかった親友が初めて敗北したという事実がアンチョビには信じ難かったが、同時にまほが撃破され混乱に陥った黒森峰の残存勢力を蹂躙するカチューシャ達の姿を見て、ならば次に黒森峰とプラウダを倒し優勝するのは自分達だとその心に火を灯され仲間達と共により一層精進する事を約束したのであった

 

 

 

 

 決勝戦はフラッグを務めていたみほが降伏した事でプラウダの勝利に終わったのだが、次の日信じられない事件が報道された。カチューシャ達が表彰式の壇上で優勝旗を掲げた後、まほがカチューシャに暴力を振るったという事件が報じられたのであった。誰が撮っていたのか実際にまほがカチューシャを殴りつけている動画も世に流出しまほを批判する声や庇う声など様々な意見が往来で飛び交っていた。当のまほはその責任を取るため半年近くの謹慎処分を受けそのまま修行のために宇宙へ連れて行かれるとのことだったので、その知らせを聞いたアンチョビはまほが事情もなしに手を上げたなど信じられず転校して以来初めて黒森峰女学園へ帰還したのであった。しかし到着した頃既にまほは連れて行かれており、彼女が何処の宙域へ向かったのか詳しい話を聴こうとしたが誰一人としてアンチョビに構おうとせず、それどころかしびれを切らしアンチョビへ罵声を浴びせたり物を投げつける者もいたのであった。それもアンチョビが元々黒森峰では誰からも煙たがられていた存在であったのと形式上は西住流に勘当された身であった彼女が戻ってくるなど許されるはずがなかった。そしてまほという存在がいなくなった事で昔からアンチョビの事が気に入らなかった選手達がここぞばかりに今までの不満を晴らさそうとしてきたので、まほに関して何も聞けずにいたがアンチョビは身の危険を感じ黒森峰から脱出したのであった

 しかし何やらみほが決勝戦以来学園で孤立しているとの噂が熊本本土にある男子校にて広まっていたのだ。聞くとみほがニュータイプの力を使ってチームメイトを洗脳したなどというアンチョビにとってとんでもないくらいに馬鹿げた話であった。アンチョビはその後いなくなったまほの代わりにみほのケアをしようと何度かメールを送った。返信にカチューシャがみほを否定する発言をしたからまほが暴力を振るったという事件の全貌が綴られていたが、そもそもニュータイプというものをアンチョビは全く信じていなかったので彼女にどんな言葉を掛けてやるべきなのか頭に浮かばず今一つな言葉しか送れなかった。次第にみほからの返信も返ってこなくなり少し心配に思ったがアンチョビもあまりメールを送らないようにしてライバル達に遅れを取らないよう練習に励む事にした。今や『バルバトス』、『グシオン』という悪魔の名を異名付られていたカチューシャとノンナをはじめとするライバル達に負けないために、宇宙で修行をしているまほに置いてかれないためにもアンチョビは余計な事に縛られるのを辞めいつも通りの日常へ戻って行った。だがこの時アンチョビは知らなかった·····まほが絶望的に暗き宇宙の中を漂流させられていたことなど··········

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年が明けアンチョビ達も高校三年生になる時期を迎えようとしていたある日、トレーズは自身の部屋でパソコンのモニターに映るケイの養父、ヘンケン・ベッケナーと通話をしていた

 

 

「お久しぶりですねヘンケン殿。ご要件とは一体?」

 

『お久しぶりですトレーズ総帥·····あー、いやトレーズさん。単刀直入に報告させていただきますが、木星よりジュピトリスが·····マリー・タイタニアが地球圏へ帰還しました』

 

「··········ついに帰ってきましたか」

 

『そして彼女の帰還に伴って例の独立平和維持部隊、ティターンズが近い内にその存在を世間へ公にしようとしているそうです。奴らはいよいよ本格的に動き出すつもりだ·····!』

 

「·····それで彼女の帰還と私にどのような関係があるのでしょうか?」

 

 

 感情を昂らせるヘンケンにトレーズは冷静に問いかける

 

 

『この一年西住師範はアロウズとその他のスペースノイド達を抑えるのに手一杯でした。だからもしティターンズが動き始めた時我々が奴らを止めなければなりません。その時は私の様なただの船乗りではなく過去にOZの代表を務めていたトレーズ総帥に指導者として立ち上がって欲しいのです』

 

「私は一向に構いません。·····がしかし私よりも相応しい者が貴方のもとにいると思うのですが·····ブレックス准将のお嬢様が」

 

『なに?·····いやぁ、冗談はよしてくださいよ。ケイは兵士でもなければただの高校生なんですよ?』

 

「それはどうでしょう。以前ケイ君をお見かけした時彼女からも准将と同じこの分かたれた世界を再び一つにするために立ち上がろうとする気概を感じました。彼女も共に立ち上がらせてあげるべきかと」

 

『ふざけるな!ケイがそんな事を望んでる訳が無い!いい加減な事を言わないで貰おうか!』

 

 

 ヘンケンは青筋を浮かべ怒鳴り散らすも、トレーズは以前冷静な態度を保ったまま切り返した

 

 

「あくまで私の憶測に過ぎません。しかし人の意思とは何人にも侵されることがあってはならないのです。貴方は准将の意志を継ぐケイ君が立ち上がろうとした時どうするおつもりなのですか?」

 

『許す訳がないだろう!ケイをそんな事に巻き込める訳があるか!これ以上あの子達を·····辛い目に合わせる訳にはいかないんだよ·····』

 

「·····貴方の気持ちもわかりますが彼女達の未来は彼女達自身がその手で拓かなければ意味が無い」

 

『ご自身の美学を押し付けないでもらおうかトレーズ・クシュリナーダ!彼女に武器を取らせてたまるものか·····今日はもう切らせていただく!』

 

 

 怒るヘンケンから乱暴に通信を切られモニターは真っ暗になった。トレーズはパソコンを閉じ、一人部屋の窓から学園艦の平穏な風景を眺めた

 

 

「ただ戦うことはいけない、平和が一番大切であると言葉のみで教授するだけでは若者の心には残らずいずれ先人達が築いたもの全てが無意味な歴史となる。だから一人一人が強い心を持ち立ち向かえなければならないのだ·····」

 

 

 トレーズは願った。自分が道を示さなくともアンチョビ達一人一人が平和のために戦うことのできる強き心を持つことを··········

 

 

 

「へっくちゅ!」

 

「総帥?風邪ですか?」

 

「いや、誰かに噂されてる様な気がしてな·····そんな事より今日も訓練頑張るぞ!」

 

「アンチョビ姐さーん!今から港の市場に皆で仕入れに行ってくるっす!なんか新鮮なものばかりなのにすっげえ安いらしいんすよ!」

 

 

 気合い十分に訓練を開始しようとしたアンチョビだったがそれに反してペパロニをはじめとする他のメンバーは風の様に立ち去っていった

 

 

「お、おい!·····はぁ、またこれかぁ·····料理もいいけどもうちょっとモビル道にも意識を向けて欲しいなぁ·····」

 

「大丈夫ですよ。総帥の想いはちゃんと皆に届いていると思います。とはいえ心のままにし過ぎている気もしますが·····」

 

「うーん·····よし、カルパッチョ!私達も市場へ仕入れに行くぞ!今日の訓練はお休みだー!」

 

「ハイ!それでこそ私達の総帥(ドゥーチェ)です!」

 

 

 アンチョビはヒナ、元いカルパッチョと共にペパロニ達の後を追いかけた。アンチョビ達が日々を過ごす水面下、世界は変革期を迎えようとしていたが今はまだ彼女達にとっては関係のないことであった·····

 

 

 

 




読んでいただき本当にありがとうございました

本当は本編に関わる重要な話を書こうとしたのですが長くなりそうなので次回に投稿しようと思います

ガンダムWなアンチョビ達の様にカチューシャ達プラウダは鉄血感溢れるチームにしようと思っております。お許しください·····

早く本編へ戻りたいのですが相変わらずテンポが悪すぎる事に実力不足を感じています·····
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