第二章では当ssの世界観の補足やそこそこ重要な話を書いて行こうと思います
本当に久しぶりの本編だったのでかなり新鮮な気分でした()
14話 二校合同演習
黒森峰女学園から大洗女子学園へ一人転校したみほ。モビル道を再び始めるよう杏から強要されてしまい周囲からまたニュータイプという異能たる存在として接せられることを恐れた彼女はその力と精神を決して表に現れぬよう心の奥底に沈めた。ごく普通の女の子として新しく始めることをみほは強く望んでいたのだが、宇宙へ上がったみほを待ち受けていたのは自分と同じニュータイプである島田愛里寿であった。思念体のみとなった姉を取り戻す悲願のため暗躍し続けてきた愛里寿達はみほの身体を彼女の器へするため連れ去ろうとしていたが、偶然通りがかった知波単学園の絹代・フリートと何の前触れも無く突如として乱入してきたマクギリス、そしてみほの母親西住しほがみほ達の救援に駆けつけたため撤退を余儀なくされたのであった。その後しほから今まで何一つ聞くことも知る由もなかった月のニュータイプ研究所という平穏な時代に凄む暗部を聞かされ、みほは捨て去ろうとしていたニュータイプとしての自分と再び向き合わされようとしていた
同時に地球では、妹と親友に袂を分かたれ失意の底に叩き落とされていたまほは全ての発端である弱き自分を否定し切り捨てるため、世に絶対的な力を示し失ったもの全てを取り戻すために今は亡き祖母西住シズワが所有していた武者を思わせる黒き和面を付け修羅の道を進む覚悟を決めていた。そして木星より地球圏に帰還した地球連合軍のニュータイプ、マリー・タイタニアは自身の持って生まれた使命を果たすため、その手駒にまほを利用しようと彼女へ近づき始めたのであった·····
宇宙へ上がり地球と月の間に位置するしほの星シュバルツ・ファングに滞在していた大洗女子学園一行はこの日基地周辺の宙域に出航しモビル道全国大会に向け宇宙空間での訓練に励んでいた。昨日はアロウズが展開している月周辺の宙域で訓練をしたため妨害を受けてしまったが、この宙域はしほが守護しているため不明勢力の侵入は許されずみほ達の安全は約束されていた。そしてこの日は昨日共に入港していた知波単学園の艦隊も共に活動していたので現在二校による大艦隊が展開されていたのであった
「知波単学園か·····強豪校じゃないって話だけど実際並んでみるとうちと比べて随分立派だよねぇ」
ホワイトベースのブリッジから、杏は艦長席に座り持参していた干し芋を食べながら側面に並んでいる知波単学園のザンジバル4隻と旗艦リリーマルレーンを眺めていた。艦隊周辺に展開しているMS達もよく整備されたザクIやF2型、ドラッツェにゲルググMなど戦力としては十二分なものばかりであった。杏と共にブリッジ内にいた沙織とロックオン、舵を取っていた柚子も感心しながら知波単学園の艦隊に目を奪われていたが、そんな彼女達に関する資料を手にしながら桃は余裕そうな笑みを浮かべていた
「一度だけ全国大会ベスト4まで進出するなど昔は勢いがあったようですがここ数年は毎年一回戦で敗退しているらしく猪の様に突撃するしか脳の無いモビル道とのことです。仮に当たったとしても警戒する必要はないかと」
「うーん、最近始めたばっかのうちらからしたらあんないい艦とMS持ってるだけでも嫌な相手な気がするけどね。でもそんな知波単の方から一緒に訓練しないかって誘われるなんてツイてるよ。何があったかよくわかんないけど秋山ちゃんには感謝しないとね〜」
この合同訓練が実現したのは昨日シュバルツ・ファングに到着するまでの間。知波単のザンジバルに乗艦していた優花里は何故かマシュマー・セロに気に入られてしまい彼からやたらと熱いアプローチを受けその中で合同演習の提案を持ちかけられ、後程みほと杏と話し合ってその話を承諾するに至ったのであった
そして修理中の高機動型ザクに代わって知波単から借りたF2型で出撃した優花里は例の約束の通りマシュマーに付きまとわれる形で宇宙空間を高速で機動していた
「お上手です秋山さん!まるで湖畔に舞い降りた1羽の白鳥の様·····貴女のようなパイロットのいる大洗女子学園が羨ましいです·····!」
「あはは·····ありがとうございます。そ、そろそろ他の皆さんと合流しませんか?流石にいつまでも1対1というのも·····」
「なんと·····このマシュマーを態々気遣い労わってくれるとはなんと暖かい心を持ったお方なのだ·····!しかしご心配なさらずに!このマシュマー、誇り高きエンドラの騎士として必ずや今日貴女を立派なパイロットにしてみせましょう!」
(だ、駄目だ·····話が通じそうにないです·····)
「マシュマー様〜!駄目じゃないですか他校の生徒にばかり構ってたら!今年絹代様達がいい結果を残せなかったら私達が怒られるんですよ〜!?」
「む、ゴットンか!あの猿共の世話は貴様に任せると言っただろう!今いい所なんだからさっさと失せんか!シッシッ!」
優花里に対し騎士の様に振る舞うことで自分に酔おうとしていたマシュマーは邪魔をしようとするゴットンのF2型を追い払うためマシンガンから演習弾を乱射した。そんな優花里とマシュマーの様子を見ながら沙織は頬を膨らませていた
「いいなぁゆかりんばかりイケメンな人と仲良くなれて·····ていうか知波単学園って共学だったんですか?」
「そういえば確かに知波単の学園艦って女子しかいなかったね?ニールちゃん同じ男子なんだし何か知ってる?」
「色々調べてみたがあそこの学園も色々ややこしくてな。確かコンペイトウっていう元々資源採掘用の小惑星だった星にエンドラ学園っていう学校があってな。そこが数年前に政府の決定で地球のデカい学校に併合されることになってな。それに選ばれたのが知波単学園だったって訳でエンドラ学園は無くなって知波単学園に名前を変えたって訳だ。なんでそんなことする必要があったのかは聞いた事ねぇけどな·····」
「ドーシテ、ドーシテ、ドーシテ·····」
ロックオンは少し難しそうな表情で語り赤ハロも独自に検索を掛けたもののそれらしい原因が見つからなかったのかクルクルと混乱したかのように回転していた。月とL5地点にて試験的に人民移住が実施されていた十数基によるスペースコロニー群の間にコンペイトウは浮遊し多くの人々がその中で生活していた。だが資源採掘衛星なため地球圏代表議会の所有物であるコンペイトウに自治権はなく、何らかの目的を孕んでいた知波単学園への吸収も逆えぬまま強行されたのだ
杏達は島田流と月の研究所をはじめ、宇宙で生きている人々に関して自分達は何も知っていなかったことを痛感すると共に頭を悩まされていた
「今まで一生行く事無いと思ってたから考えたことなかったけど宇宙にも沢山の人が暮らしてて地球の政治と繋がってるんだからね·····自分の人生とは関係ないかもしれないけどもっと世界について自分から知ろうとしなくちゃね〜」
「そうだな。こういうのは本来学校で教えたり政治番組とかで報道するべきだと思うんだが、いつからか宇宙に関する話はめっきり知らせない様になったらしいからな·····俺らみたいにモビル道始めてから宇宙でどんな問題が起きてるのか初めて知ったなんて奴も少なくないさ」
「どうしてそういう大事ことを知らせなくなったんですか?確かに宇宙に行かない以上関係のない話かもしれないけどもっと皆に知らせるべきなんじゃ·····」
「さぁな。地球で暮らしてる連中にとってどうでもいい話をしたって儲けにならないとでも思ってるんだろう。ただ例のアロウズとかいう連中·····連盟の方からモビル道やってる団体にアイツらに注意する様警告しなきゃ駄目だと思うんだが一体政府の役人さん達は何を考えてんだ?」
『ロックオン・ストラトス教官聞こえているか?すまないがMSデッキまで応援に来てくれないか·····?』
突然MSデッキの方から訓練に同行してくれていたしほの懐刀、アナベル・ガトーが切迫した様子でブリッジに連絡を入れてきた。現在MSデッキではリュウセイやナカジマ達と共にシュバルツ・ファングから着いてきてくれたメカニック達により襲撃を受け大破してしまったみほ達のMSの修理が急ピッチで行われており、一部のメンバーは艦内に残ってガトーの指導のもと宇宙空間戦闘に関する指導を受けていたはずなのだが·····
『ねぇねぇ教官さん〜本当は蝶野教官のことどう思ってるんですかぁ〜?誤魔化さないでくださいよ〜』
『ガトー教官もバレー始めましょうよ!教官ならいいスパイク打てそうですしユニフォームも絶対似合うと思います!』
『その振る舞いに言い回し、教官殿も戦国時代に精通していると見た!そして貴方が意識している戦国武将はずばり本田忠勝だ!』
『ええいやかましい、やかましい!せっかく家元が君達のために私を遣わしたというのに無駄話をしている場合じゃないだろう·····って言ってるそばからチョロチョロするんじゃない!大人しくしとらんか!』
『ヒッ·····ごめんなさい教官さん··········』
『なっ·····す、すまない、別に怒っている訳ではなくてだな·····とにかく早く来て欲しい!私一人ではとても手に負えん!』
ガトーは個性的で自由奔放な大洗女子のメンバー達にすっかり振り回されていた様で現場を居合わせずとも彼が当惑している姿が目に見えた。しかしロックオンはこれから始まろうとしていたみほ達と知波単の隊長である絹代の部隊による軽い戦闘演習の監督をしなければならなかったのでブリッジを離れる訳にはいかなかった
「うーん困ったな·····そうだ、ファリドの野郎に頼もうぜ!アイツなら今退屈してるだろうしあのおっさんよりも皆の世話に向いてるはずだ!」
「確かにマクギリスさんは私達年下の扱いは慣れてそうだしあのまま部屋でじっとさせてるのも可哀想だからいいかも!早速お部屋の方に連絡入れますね!」
「ちょい待ち武部ちゃん。ニールちゃん忘れたの?ママ住さんからあの人達を艦内でうろつかせちゃ駄目って出航する前に言われたじゃん」
訓練のためシュバルツ・ファングから出航する前、基地所属の整備士達と臨時の教官兼みほを念の為護衛するため同行する事になったガトーがホワイトベースへ乗艦しに来た際、杏とロックオンは自分達の見送りに来てくれたしほからある忠告を受けていた。それはアロウズの者達が再びみほを狙いこのシュバルツ・ファングの宙域内へ侵入してくるかもしれない事、そして昨日からホワイトベースに身を置いていたマクギリスと彼の部下である石動をできる限り個室に軟禁し艦内を好きに移動させるなとの事であった
ロックオンは彼らはただの大学生であるとしほに説明したが彼女は納得しようとせず頑なにマクギリスへの警戒を解こうとせず、みほを助けてくれた恩人とも言える彼らに何故そんな扱いをしなければならないのかロックオンは納得できず反論しようとした。だがしかし当のマクギリスが「疑われるのであれば仕方なし」と容認し現在も自習室で待機していたのであった
「確かにアイツらもアロウズみたいに俺達にとっちゃ完全な部外者だったけど西住師範は少し考えすぎなんだよ。ロリコンとはいえそこん所以外はしっかりしてそうな奴だし信用できると思うけどな」
「えっ·····マクギリスさんってロリコンなんですか·····」
「ロリコンハンザイ! ハンザイ!」
「ニールちゃんが言ってることもわからなくないけどママ住さんがあそこまで言ってるからなんか怪しく感じちゃうんだよなー·····ま、もし何かあればガトー教官が何とかしてくれるだろうし大丈夫そうかな」
杏もロックオンと同じく自分達の教官を無償で買って出てくれたマクギリスを信用したいと思っていた。だがしほが何故彼をそこまで警戒し自分達に注意するよう促してきたのかも気掛かりであったため、今ひとつ彼を自由にしていいのか判断しかねていた·····
一方みほは華、麻子、カエサルの3人と共に知波単学園の西絹代達と模擬戦闘演習を行うためホワイトベースから宇宙空間へ出撃していた。みほ達も優花里と同様に修理中のMSに代わって知波単から借りたMS、【MS-14F ゲルググ
「それにしてもいつものコックピットと少し違いますね·····どうしてでしょう?」
「確かに私のガンキャノンとも随分違う気がする。基本的な動かし方は変わらない様だが·····」
「ああ、五十鈴さんと冷泉さんはジオン系の機体は初めてだったか。確かに二人がいつも乗ってた連邦系のMSとゲルググのコックピットは造り元が違うからな。西住さんもいつもガンダムに乗っていた訳だが大丈夫か?」
「私は黒森峰にいた頃いつもイフリートに乗ってたから大丈夫だよ。まさかこんなゲルググなんていい機体貸してもらえるとは思ってなかったけど·····」
『西住さーん!此方の準備は整いました!そちらの合図でいつでも始められます!』
するとみほの機体のもとに少し離れた場所に待機していた絹代の方から通信が入った。戦闘演習の内容は4対4で敵機をロックするか演習用に込められたペイント弾を命中させるか、サーベルの間合いまで詰め投降させるかなどの機体をなるべく損傷させない比較的緩い撃破ルールを採用していたため全部で数試合行う予定であった
「それじゃフォーメーションは私とカエサルさんが前に出るので華さんと麻子さんは後方から援護を·····」
「そのことなんだが西住さん。ここは思い切って西住さんが後方支援で前衛は私達三人に任せてくれないか?」
「ふぇ!?私がですか!?」
突然カエサルの方から提案を投げかけられ何故かみほは意表を突かれた様な声を上げた
「確かに機体の都合上西住さんには前へ出てもらうしかできなさそうだからたまにはいいかもしれない。それに私もこのビームサーベルというので西住さんみたいに戦ってみたい·····」
「この先全国大会でみほさんばかりに負担を掛けさせる訳にはいきません。それにこの機会にみほさんの射撃技術をお手本にしたいです!」
「あわわ·····え、えっと実は私··········」
「決まりだな。それじゃあバックアップは任せたぞ西住さん!」
「えええええーっ!?」
みほは何かを明かそうとしたが三人ともすっかり同調していたようで加えて演習が今にも始まろうとしていたため、みほは仕方なく支援射撃に望むことにした
『それではこれより大洗女子学園と知波単学園による模擬戦を始めます!··········試合開始!』
「よーし行くぞ!全機突撃ーッ!!!」
ホワイトベースの沙織から演習開始のアナウンスが響いたのと同時に、絹代のマリーネ・ライターを筆頭に僚機のゲルググM達はみほ達の方へ一斉に吶喊し始めなんの躊躇いもなく一直線に迫ってきた
「一斉突撃か!五十鈴さん冷泉さん三人で囲んで各個撃破だ!西住さんは援護を頼む!」
「了解です!」
「了解した。·····ん?」
麻子は展開しようとしていた所自機の脚部にペイント弾が命中したことに気づいた。絹代達はまだ発砲していない··········現在この宙域でマシンガンを撃ったのは丁度援護射撃をし始めたみほのゲルググMのみであった。特に射線上にいた訳でもなかったのだが麻子の機体に命中させたのは確かにみほのゲルググであった
「あわわわわ·····麻子さんごめんなさい!」
「当てたのは西住さんか?誤射なら仕方ないな」
「あれ!?冷泉さんもうやられたのか!?」
「突撃ーーーーーッ!」
麻子が早々に被弾してしまったことに気を取られ動揺する華とカエサル、申し訳なさそうに謝罪するみほに一直線に突撃していた絹代達は一陣の嵐の如くペイント弾を掃射し命中させながら駆け抜けて行った。少し気まずく何とも言えない空気の中あっという間にペイントまみれになってしまったみほ達はその場で呆然としていた
「·····と、とりあえず一旦帰投して絵具を落として次の試合に備えよう!」
「麻子さん·····皆本当にごめんなさい··········やっぱり私に後方支援はちょっと·····」
「気にするな西住さん。私はあまり気にしてないからな」
「私もすぐにやられてしまいましたので申し訳ないです·····次こそはもっと上手く動いてみせます!」
気を取り直しみほ達は改めて演習を行うため艦へ一旦帰投して行った。被弾を受けた麻子は若干みほに違和感を感じたがかつて黒森峰のエースパイロットを誇っていた彼女に非の打ち所があるはずもなかったので直ぐにその疑念を払ったのであった
「やりましたよ西隊長!ついに私達も先輩方の様な突撃を成し遂げることができましたね!」
「うーん、何やら向こうは異常があったみたいだからまぐれだったんじゃないのか?とりあえず我々も一度帰投するぞ!」
みほ達の間で何かが起きていたことは絹代も何となく察しており他のメンバーに帰投を命じ旗艦のリリーマルレーンへと一度帰って行った
その後もみほ達と絹代達は模擬戦を何度か繰り返した。しかしどの試合でも後衛を担当するみほは初戦のように味方を撃つことは無くなったが、それでも猪の様に突撃してくるだけの絹代達に一発もマシンガンの弾を命中させることができず、寧ろ回避すれば当たってしまうという方角にしか撃てていなかったのだ。この時点で何試合かやってる途中で麻子だけでなく華とカエサルも、ホワイトベースのブリッジから観戦してた杏や沙織達もある事を確信した。今まで披露されることが全く無ければそんな弱点があると誰一人と思いもしなかったのだが、みほは射撃のセンスが低かったのだ·····それも初心者の麻子達と比べてもかなり絶望的に·····
「·····ねぇかーしま、小山。西住ちゃんのこと調べた時ちゃんと全国の中でもトップレベルのパイロットだって言う話だったよね?」
「その情報は確かかと。西住め、相手が弱小校だからと手を抜いているというのか·····?」
「あ、そういえば!西住さんが出てた試合の画像とか映像!全部ビームサーベルで大暴れしてる物ばかりだったと思います!」
「みぽりん性格に見合わず結構積極的な戦い方が好きなんだね·····!」
「オイオイまじかよ·····今まで射撃訓練をパスしてたのはガンダムだけのせいじゃなかったって事か·····はぁ·····」
ロックオンはみほの予想外の弱点を目の当たりにしでかでかとため息をついた。かつてエーススナイパーとして名を馳せていた彼にとってみほが射撃を苦手としていることは実に受け入れ難い事実であった
「こんなに射撃が下手なのをママ住さんは知ってるのかな?·····そもそも知ってたら放っておくわけないか」
「仕方ねぇな、隊長がサーベルを振ることしか脳にないなんて他所に面目が立たないからこれからはビシバシ鍛えてやるとするぜ。射撃が下手な奴なんてうちには河嶋だけで十分だしな」
「ちょっとそれどういう意味ですか教官!というか大体西住はニュータイプとかいう凄い奴だったんじゃないのか·····がっかりさせてくれる·····」
「まーまーそんな事言わずにさ。ニュータイプって言っても私達と同じ人間なんだし苦手なことの一つや二つあってもおかしくないって。·····けどママ住さんがくれるって言うガンダムのこともあるし、これはちょっと全国大会までに何とかしないとマズイかもね」
杏は先の全国大会と黒森峰女学園から譲渡される事となっていた試作4号機ガーベラの存在を見据え少し不安に感じていた。宇宙へ上がり様々な事を知りやるべき事も見つけたが今の杏にとって、全国大会で優勝すること以上に重大なことはなかった。例えそれが不可能な話だったとしても杏は戦わなければならなかったのだ·····
「··········皆本当にごめん。せっかく知波単の人達との演習だったのに私が足を引っ張ってばかりだったせいで·····」
模擬戦が一通り終わった後、艦へ帰投する前にみほは先ず一番に麻子達へ謝罪した
「大丈夫ですよみほさん。でもみほさんが射撃戦が苦手だなんてちょっと意外ですね····」
「話をよく聞いていなかった私も悪かったよ·····すまない西住さん·····」
「謝るのはもういいだろう。だがいくら格闘戦しかできないガンダムに乗ってるとはいえこれからは射撃訓練にもちゃんと参加するべきだと思うぞ」
「うぅ·····わかりました·····」
「おーーーい!西住さーーーん!」
昔から避けてきた射撃訓練への参加を苦々と受けたみほのもとに絹代のマリーネライターが接近してきた
「あっ、西さん。今日は一緒に訓練をしてくれてありがとうございました」
「いえいえお礼を言うのは此方の方です!本当に楽しかったです!こうして他校の皆さんと一緒に訓練するのは初めてだったので!」
「え·····そうなんですか?」
「私達知波単学園はこの通りかなりの弱小で数年前ちょっとした事件を起こしてしまいましてね、今じゃこういった合同演習を受けてくれる学園は何処にも無いと思ってました。·····この後リリーマルレーンの方で食事会をやろうと思っているので是非皆さんでいらして下さい!ではでは!」
絹代のマリーネライターは此方へ手を降ってから踵を返しリリーマルレーンの方へ帰って行った。あまりにも突然な食事の誘いであったがみほ達はその言葉に甘えようと思い、皆にその旨を伝えるためホワイトベースへ帰投して行った。先程絹代の言っていた言葉をはじめ、みほはあまり知波単学園のことを知らなかったので是非彼女達の話を聞きたいと思っていた
だがこの時みほは思いもしなかった。月のニュータイプ研究所が造り出したある戦士が知波単学園と、絹代と大きな関係を持っていたなど·····
先程、ガトーからの通信により話を切られてしまったがロックオンの考えていた通りモビル道連盟の方からアロウズの存在を公にできない事には理由があったのだ。というのは杏達の様な若者達へ宇宙に住む人々の姿や彼らの置かれている環境を伝えることができないことと同様に、代表議会が古くから教育機関やメディアへ対し宇宙に関する情報において開示できる内容を徹底的に規制し容認していない情報を公開しようものなら粛清を与えるという政治体制を影で強いていたからであった
故にスペースノイド達の情報が地球市民に伝えられることはなくなり、現在地球と宇宙の双界は同じ人類が住む地でありながら完全なる別世界の様に分かたれていたのだ。当然地球に宇宙の時事が公開されてないとなれば島田衛率いるニュータイプ研究所の様な組織が暗躍し始めることとなる··········だが彼らの行動が敢えて許されているのもまた地球連合軍内の
「フー··········ここが大洗女子の学園艦か。黒森峰よりも小さいがのどかでいい感じじゃないか」
みほ達が留守にしていた大洗女子学園の学園艦上に1機のヘリコプターが着陸、中からは黒地の上の襟元や袖口などワンポイントを赤くあしらった軍服の上へ漆黒の外套を纏った銀髪の女性と同じ配色の軍服を着た黄緑髪の頭にオレンジのゴーグルを掛けた少年が降りてきた。地球連合軍の従来のデザインとは異なる軍服を着ていた二人の内、愛用の黒タバコを美味そうに吸っていた女性の方は襟元に付けられた階級章から『大佐』である事が伺え少年の方は『中尉』であることを示していた
「いい加減禁煙しましょうよジェンダーさん。あんまり吸いすぎると病気になりますって·····」
「宇宙じゃあまり吸えなかったんだから久しぶりにたっぷり吸わせてくれよ。それにだぞラヴァ、好きになった人が私みたいな重度の愛煙家だったらおまえはどうするつもりだ?」
「う、·····そりゃ許しちゃうかもしれないけど身体の方が心配っつーか·····」
「なーに心配するな。そうだな·····スペースノイド共を残らず殲滅し父の無念を晴らした時にでも考えやるか。お、そこのかわい子ちゃん達!ここの生徒会長ちゃんに会いに来たんだが何処へ行けばいいか教えてくれないか?」
近くを通りかかった学園の生徒を軍服姿の女性、ジェンダー・オムは取り出した携帯灰皿へタバコを処理し手を振りながら笑顔で呼び止めた。男性顔負けの端正な顔立ちを持つジェンダーから突然声をかけられ大洗の生徒二人ドキッとしたのか少し緊張した様に応えた
「せ、生徒会の人達は今皆留守にしていたと思います。確かモビル道のために宇宙へ数日間合宿に行くとか言ってたかな·····」
「モビル道の合宿?·····留守にしてるのなら仕方ないな。二人ともありがとう。ここは本当に住みやすそうでいい学園艦だね」
ジェンダーは呼び止めた女子生徒二人に礼を言い、二人は恥ずかしそうにその場から走り去って行った
「モビル道を復活させたとはな·····ククク、まさかあの話を本気にしていたとはお笑い物だ」
「生徒会長がいないとか骨折り損すね····てかあの話って何のことですか?」
「そんな大した内容じゃないさ。そうだな、他に会いたかった奴もいるし会長を待つついでにダカールでの式典の日までここに滞在するとしよう。いずれこの学園艦は我らティターンズが中継基地として徴収する訳だ、色々と見て回ろうじゃないか·····」
かつて宇宙の民から『鬼畜』と恐れられていた地球連合軍バスク・オム大佐の娘、ジェンダー・オムは心の闇が垣間見える邪悪な笑みを浮かべ新しく咥えた黒タバコに火を点けると街の方へ歩き始めた。宇宙で暗躍するアロウズと相対するかの如く、地球にもまた彼女の様に己の黒き野望を掲げ起ち上がろうとする者達が徐々にその動きを活発化させようとしていたのであった··········
マシュマーによって開かれた食事会に参加したみほ達。しかしそこで明かされたのは宇宙という厳しい環境が生んだ事件と冷酷な現実に立ち向かっていた母の戦いの歴史であった
次回 ガールズ&ガンダム 『サイド1コロニーでの悲劇』
明かすべき真相や歴史は、全て宇宙という無限の闇の中へ·····
読んでいただきありがとうございました
杏や沙織の様に地球に住んだ事しかない子供達が宇宙に関して疎いというのはΖガンダムの世界における一般人の目線を想像して書いてみました
今回からアンチョビ外伝に登場していたジェンダー・オムも本編に合流します。初めは普通にバスク・オムを登場させようと思ったのですがあくまでガルパンとのクロスなので女の子がメインであるべきと考え、オリキャラとして娘を登場させようと思ったのがきっかけです
原作のバスク・オムさながらの本当にド外道で最低最悪なキャラクターとして以後登場してくると思います。そのためちょっとしたネタバレですが当ssの大洗女子学園が廃校になる理由がかなり胸糞悪いものになってくると思いますのでご了承の程よろしくお願い致します