今回当ssの世界設定やしほの設定など多く詰め込んだため大変情報量の多くなってしまったと思われます。予めご了承の程よろしくお願いします
月の周回軌道からそう遠くない宙域より戦闘機の様な姿の青い機体が3機、進路上を阻む小隕石やデブリを最小限の動きだけで回避しながら月へ向けて三位一体のフォーメーションを崩すことなく高速で飛行していた
「大隊長達上手くいったかな·····なんでこんな時に限って私達だけ衛さんから新型のテストを頼まれちゃうのかな·····」
「軍も人手不足なんだから仕方ないじゃない。けど、こんな事頼まれなければ私達も着いていけたのにね·····成功していればいいのだけれど」
「大丈夫よルミ、アズミ。レビンが調子に乗ってなければいいけどよっぽどの事が無ければ成功してるはず。今は大隊長達が上手く西住みほを手に入れてると信じるしかないよ」
月のニュータイプ研究所が試験部隊として組織しているモビル道のプロチーム
「そういえばこのジャムル・フィンっていずれ私達の物になるんでしょ?軍用ってだけあって凄い機動性だし変形するとなんかワンちゃんみたいだから結構気に入ったかも」
「確かに私達三人に譲ってくれると言っていたけどテストした通りかなり癖が強かったし、試作したこの3機以降量産するつもりは無いって話だから処分に困ってた試作機を押し付けられただけって感じがするわ·····」
「ま、オールドタイプの私達が実戦で使わせてもらえる機体なんて限られてるし性能だって悪い訳じゃないんだからこの新型で新しい連携でも考えようじゃない。美香を奪ったジュピトリスのアイツから大隊長や皆を守るためにももっと力を付けなくちゃいけないんだから·····」
メグミの言葉を受けルミとアズミは少し浮かれた様子からその表情を険しいものへ切り替えた。通称"アロウズの3M"と呼ばれてい3人は軍より賜った試作可変機【AMA-01X ジャムル・フィン】のバーニア出力を最大まで上昇させ愛里寿達が待つ月のフォン・ブラウンへの帰還を急いだ。3人にとって愛里寿の姉にあたる少女は幼少の頃からの付き合いで、年下ながらも自分達にモビル道を教え導いてくれた彼女は目標でありかけがえのない親友でもあったのだ····
故に5年前のあの日、地球より侵攻し凄惨な事件を引き起こした地球の軍人達と、その事件の裏でこの上ない程傲慢な理由で親友の肉体を宇宙へ散らせ、更には姉が葬られる瞬間を目の当たりにしていた愛里寿を地球へ攫い彼女の心身に深々と癒えぬ傷を刻み付けた
だから3人は愛里寿達よりも年上の者として、現在その魂のみがネティクスの中に残された彼女に代わり卑劣な者達に立ち向かい愛里寿達を守り抜くのだとその胸に強く決意していた。もう二度と愛里寿達を傷つかせないために·····友が創ろうとしている本当に正しき世界への扉を開くために··········
その日みほ達は宇宙空間での戦闘演習の他にも色々な種類の訓練に励み、一日の終わりにシュバルツ・ファングの訓練宙域内にいくつか点在している要塞型衛星の一つに接舷していた。この要塞衛星は宙域内に15区設置されており戦艦や巡洋艦を収容できる程の規模ではないものの多くの職員やしほが働く事を認めた門下生達により大切な役割を担うため運用されていたのだ。その役割とは訓練のために宙域を利用していた艦隊が接舷した際応急的な補給や修理の提供、休息のための停泊を許可する他訓練宙域内の監視や侵入者に備えて外部宙域の哨戒を行うというものであった。そして点在する15区の要塞衛星全てが互いに連携し合うことで網のような警戒索敵システムを形成しており、何か異常があれば直ぐに全ての衛星とシュバルツ・ファング本島の司令室へ連絡が渡りエースパイロット達による警備隊が事態の収拾に出撃できるようになっていた。それらが相まってしほの星シュバルツ・ファングはモビル道の訓練所でありながらも既存の宇宙要塞とほぼ遜色ない防衛網と戦力を有していたため、みほ達や絹代達の様に利用者達の安全は確固たるものとなっていたのだ
そんな要塞衛星に停泊していた大洗女子学園と知波単学園の艦隊の間では交流会を兼ねた食事会が開かれ大洗女子学園の生徒達はリリーマルレーンの船内に招かれていた。船内が両校の生徒達で賑わう中みほ、沙織、華、優花里、麻子の5人だけは皆とは別にその場から少し離れた西洋風の内装に染められた貴賓室に招かれ、同席していた絹代と当の招待してきたマシュマーと共に食事をしていたのであった。中央に薔薇の花束を生けた花瓶が置かれた長いダイニングテーブルに非常に高価そうな椅子も然ることながら、晩餐として出されていたのは本格的なフランス料理のフルコースであったため、まさか宇宙でこんな物を食べれるとは思ってもみなかった5人は慣れぬ場というのもあり少し堅くなり緊張している様子であった
「なんということだ·····西住さんがあの西住しほ殿のご令嬢だったとは。この宙域を使わせて貰っている身にも関わらず挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでしたな·····」
「いえいえ、そんな私なんかに挨拶だなんて·····」
「マシュマーさんの方こそ私達も食事に誘っていただきありがとうございました。まさか宇宙でこんな贅沢な物を食べれるなんて思ってもみませんでした」
「なんの、これぞ我らエンドラ学園の風習ですよ。それに秋山さんの御友人である皆様も招待するのは当然のことです。ところで秋山さん、料理の方はお口に合いましたかな?」
「は、はい!·····あまりこういう食事には慣れてないですがとても美味しいと思います!」
「お、おお·····それはよかった。私もこうして皆さんから大洗という美しい町の話を聞けてとても楽しいです。地球には嫌なイメージばかり持っていましたがその考えも
テーブルの中央奥側に座るマシュマーは上機嫌そうにワインが注がれたグラスに口をつけた。どうやらみほ達にとって一般的な法律と違いマシュマーの住むコンペイトウでは未成年でもある程度の年齢ならば飲酒が許されている様で、小惑星移民者達にとっては数少ない娯楽の一つであったようだ
「さ、沙織。こういう料理を他所で食べるのはおまえの両親に連れて行って貰った時以来なんだが·····その、食べ方とか変じゃないか·····?」
「ナイフとフォークだってちゃんと使えてるしどこも変じゃないから大丈夫だよ。そっか·····確かにおばあってコース料理が出るお店とか行きたがらなさそうだもんね」
「ハッハッハッ、そう緊張せずとも楽にしていただき結構です。このマシュマー、皆様の下町心というものは重々承知している故いつも通りの食卓の様に楽しんでいただきたい!」
「そうですよ皆さん!確かにマシュマーさんの料理は小洒落てるだけでお腹いっぱいにはなりませんが見た目は宝石の様に綺麗ですし私もそこそこ気に入ってます!」
みほと向かいあった席に座って食事していた絹代は口元にご飯粒を付けながら朗らかに語った。そう、なんと絹代は煌びやかに皿へ盛り付けられたフランス料理をご飯茶碗を片手に箸で食していたのだ。食事する姿こそ慎ましくお手本とも言える程綺麗な食し方であったがフランス料理がおかずになっているその光景はみほ達から見ても異様に思える光景であった。そんな彼女を見てマシュマーは込み上げる怒りを堪える様に手にしたグラスをふるふると震わせ静かに口を開いた
「·····西絹代。そんな私の好物を何故貴様は白米と共に食べているのだ?テーブルマナーも弁えんとは無作法な·····」
「へ?そりゃあ訓練の後はお腹が空きますしお米が食べたくなるのは普通じゃないですか。あ、ゴットンさんおかわりをお願いします!」
「ハッ、かしこまりました絹代様!」
何故か割烹着姿になっていたゴットンは茶碗を受け取るとさも当たり前かのようにテーブル上に置かれていた羽釜からご飯をよそい再び絹代へ手渡していた
「ゴットン!さては米を炊いたのは貴様か!こうも易々と西絹代に乗せられてしまうとは何事だ!」
「いやぁ絹代様達の要望にはできるだけ応えるよう学園長から言われてますし·····それにエンドラエンドラって我々の母校はもう知波単学園に変わった訳ですし、昔の伝統引きずったこんな会食に大洗の皆様まで巻き込むのはよろしくないかと·····」
「にゃにぃ!?騎士としての生き様を忘れただけでなくこの私に対しそんな物言いをするとは·····もう良い貴様は格下げだ!これからは艦のトイレ掃除と洗濯物でも干していろ!」
「ええ〜!か、格下げですかぁ〜!?」
「大丈夫ですよゴットンさん。学園長には私の方から口添えしておきますので格下げの心配はご無用です!ということでおかわりお願いします」
「絹代様·····ありがとうございます!このゴットン、これからは絹代様のもとで働かせていただきます!」
「ぬわあぁにいぃぃ〜!?ゴットン貴様私を裏切るつもりか!ムキーーー!!!」
絹代へ尻尾を振りすっかり服従の意志を見せてしまっていた部下にマシュマーは癇癪を起こしながら髪の毛を掻きむしった。先程まで彼が見せていた位の高い貴族の様な落ち着いた振る舞いとは打って変わり、子供のように頭から湯気を立ててカンカンに怒る姿を見てみほと華は何となく彼から親近感を感じ、沙織は若干幻滅してしまったのか引きつった笑顔を浮かべていた
「だ、大丈夫ですよマシュマー殿。私達は別に気にしてないですしこの食事会だって皆さんの親睦を深めるには素晴らしいものだと思います!」
「そ、そうですよ!·····それに私もちょっとお米は食べたかったので··········」
「は、華さん!?このタイミングで!?」
「むむぅ、皆様がそう言うのであれば··········くそっ。だがこれもエンドラの再興に繋がるのであれば耐えるしかあるまい·····」
優花里達になだめられマシュマーは少しだけ落ち着きを取り戻したが、ぶつぶつと呟きながら荒々しくワインボトルを掴むと空のグラスいっぱいに注いでぐびぐびと一気に飲み干そうとした
「そ、そうだ!もし良ければ私達にもっと宇宙の話を聞かせてくれませんか?」
「ぷはぁー··········何、宇宙の話ですと?しかし我らエンドラと知波単の件はもうしましたし他にめぼしい話など何も·····」
「だったら次はスペースコロニーについて教えてくれないか?今までは私達には関係ない話だと思っていたがこの機会に宇宙で生活している人達が実際にどの様な暮らしをしてきたのか知りたいんだ」
現在よりもはるか昔、地上と宇宙を繋げる軌道エレベーターが完成した後本格的な宇宙の開拓が始まった。手始めに月面上に巨大都市がいくつか創られ、宇宙の政治を執り行うため宇宙移民者を中心とした月議会が発足。その後は月議会主導のもと現在のコンペイトウの様にアステロイドベルトから運ばれて来た資源小惑星達を人々が住める環境への再開発などが成され宇宙の開拓は着々と進んでいったのであった。そして宇宙開拓の到達点に立った移民者達は自らの手で新たなる母なる故郷『スペースコロニー』を完成させたのだ。当初は発展途上な箇所が多く見られたたものの結果コロニーでの居住は可能であると判断され、その後も想定されるであろう人口爆発に備え『人が住むためのコロニー』の生産は進められていき現在いくつかの宙域にコロニー郡が製造されるまでに至っていた
それら宇宙の歴史について教わることなければ調べる機会もなかったため、全てを全て知っている訳では無かった麻子と他の4人にとっては是非聞かせて欲しい内容であり皆期待の意を込めた目をマシュマーへ向けた·····だが何故か彼は怪訝そうに眉をひそめたのであった
「教えてくれと言われましてもな、スペースコロニーの政治など地球へ帰ってから御両親か学校の教師にでも聞けばいい話ではないですか?」
「·····あいにく両親は小さい頃に亡くなったものでだな。だがもっと昔から生きているおばあも宇宙の政治についてはあまり知らないと言っていた。だから宇宙の政治なんてものは外国の政治よりも皆が知らないもの様な気がするんだ」
「確かに私なんてコロニーを見たのなんて昨日が初めてだもんなぁ·····」
「····················何だと?まさか·····本当に何も知らないというのか·····?」
麻子と沙織の言葉を受けマシュマーは絶句し、苦々しい表情で再びグラスへワインを継ぎ足した
「··········その様子では西絹代。貴様もコロニーについて何も知らんという口か?」
「う、宇宙には何度も来たことがあるので流石に見たことも行ったこともありますがどの様なことが起きているのかについては皆さんと同様で·····」
「そうか··········皆宇宙に住む人々がどれほど過酷な環境に身を置かれているのか知らんというわけか·····」
先程と様子が明らかに変わったマシュマーに絹代を含めみほ達に緊張が走った
「落ち着いてくださいよマシュマー様。あまりお酒に強くないのに少し飲み過ぎなんですよ」
「私は酔っ払ってなどおらんぞゴットン。そうだな·····ここは一つ皆さんにはスペースコロニーで起きたあの事件についてお話しましょう」
「じ、事件でありますか·····?」
「ま、マシュマー様!?ダメですよ!あんな話ここでする物じゃなければ地球にお住まいの皆様とは関係ないことなんですから!」
「関係ない訳あるか!貴様は黙っていろ!·····どうやら貴女方はコロニーという地を空想上か夢の国としか思っていない様なのでここで現実というものを知ってもらいたい。·····あの事件は5年前の今頃に、当時私がエンドラ学園の中等部へ進級しようとしていた頃に起こりました·····」
マシュマーはグラスに口をつけながら険しい表情で語り始め、みほ達も張り詰めた緊張感に言葉が出なくなりながらも彼の言葉に耳を傾けた
はじめにマシュマーはみほ達へ現在宇宙に存在しているコロニー郡について説明し始めた。月の公転軌道上の
しかし5年前、サイド1の13バンチコロニーにて突如として激発性の伝染病が発生、死病は瞬く間にコロニー中に蔓延し実に1000万人以上のコロニー市民達が為す術なく感染し死滅したと報道されたのであった。サイド1のコロニーは初期に造られたのでかなりの人口を誇れるにまで繁栄していたため、この報道は全宙域を巡り宇宙に住む人々の不安を大いに増大させ歴史に残る悲劇として刻まれた。だが何故この様な伝染病が発生したのか原因は明らかにされておらず、宇宙のワイドショーでも様々な憶測が飛び交うばかりでその真相は現在も公表されずにいたのであった·····
息を上げながらも話し終えたマシュマーは悲痛そうな面持ちのままグラスに残っていたワインを飲み干した。宇宙ではその様な悲劇が起きていたことを聞かされたみほ達は胸の内が悲愴な感情で溢れ返り今まで何も知らずに、関係ないと思い過ごしてきたことを悔やんだ
「·····そんな沢山の人達があっという間に·····そんな簡単に亡くなってしまったのか·····?」
「·····ええ。むしろここまで凄惨な事件が地球では報道されていなかったことが不思議なぐらいですな」
重々しく切り出した麻子、だがそんな彼女達にマシュマーは若干呆れた様な反応を示していた
「そ、それでコロニーでお亡くなりになった方々はどうなったんですか!?まさか現在もそのままなんてことは·····」
「それについてだが私は今でも覚えている。西住さん、死病にまみれ誰にも手に負えず放置されるかに思われた13バンチコロニーのために立ち上がったのは他でもない貴方のお母様なのです」
「·····え?」
マシュマーの言葉にみほは驚きのあまり目を見開いた。母はこの訓練用宙域の所長にして西住流の家元·····なぜそんな母がこの話に関わってくるのかみほにはわからなかった
「どうしてみぽりんのお母さんが·····?みぽりんのお母さんは宇宙じゃここの施設の所長さんってだけなんじゃ·····」
「貴女方地球人の間ではその認識が普通でしょうが我々スペースノイドにとってあのお方は英雄なのです。·····事実こういった事件の処理に地球の政府は動かなければ、我々スペースノイドの話を耳に聞き入れることもありませんでした·····。しかし西住しほ様はそんな地球政府とは違い我々の言葉に耳を傾け、我々の不等な現実を地球政府に共に訴えてくれているのです」
「み、みほさんのお母様はそんなに凄いお方なのですか?武道の名家とはいえそこまでの力はないのでは·····」
華の言う通りみほも自分の母親がそんな権力のある人間とは思えなかった········だがその後もマシュマーの口から自分の知らない母の姿が次々と明かされた
事実地球圏代表議会は宇宙の政治、大事故や災害、人々の困窮に対しては一切の手を貸さずその全てを月議会に放任し更には連合軍を差し向けてコンペイトウの様な小惑星やコロニーに対し多くの不等な公約や軍への徴集を強いていたのだ。無論月議会だけで全てのコロニーを統治できるはずがなく、多くのコロニー市民達は自分達よりも下等な生活を強いる地球政府への不満が高まり無理に地球へ帰ろうとする者、反連合の動きを見せる者達が現れる程であった
そこでしほは多くのコロニーを巡り市民達に地球に住む人々と同様に西住流のモビル道を教える一方で、彼ら彼女らから現在の生活での不満や地球に対しての嘆願などを聞き入れ、それらを宇宙に関心を向けず地球に居座り続けようとする議会の老人達にスペースノイド達の代弁者として立ち、できる限り皆の期待に応えられるよう活動していたのであった。そして何故しほが地球圏代表議会に対しそこまでの影響力や発言力を持っておりシュバルツ・ファングの様な軍事要塞の様な訓練所を有しているのかというのも、彼女の示す道や理想に賛同する者達、例を挙げると軌道エレベーター開発公社の『
「西住しほ様は13バンチコロニーで亡くなった人々の遺体を一人一人回収し供養してくれました。そして現在も宇宙の民のために働き続けてくれているのです」
「西住殿のお母様が、西住流の家元がそんな偉大なことまでしていたなんて··········凄いです!」
「なのでそんなあのお方の拠点であるこのシュバルツ・ファングにこうして来れたことには感激しましたよ。とはいえ実際に会うまでは聖母のような姿であると想像していたのですがまるで鬼ババその物のオーラを放っていたので予想外でしたよ!ウハハハハハハ!」
顔を真っ赤にし酔っ払ってしまっていたマシュマーはよどんでいた空気を払い飛ばすかのようにゲラゲラと笑い始めた。みほは今まで自分が知らない所で母がその様な活動をしていたなど何も知らなければ聞かされてもいなかった。母親がモビル道の家元としてだけでなく、世界のためにまで働きかけていたなんて娘として誇らしく思わない訳がなく胸が熱くなるのを感じた
「あ、あの!お母さんは他にも色々なことをしてきたんですか?良ければ教えてください!」
「·····何?まさか、知らなかったというのか·····?御自身の母親が宇宙で何をしてきたのかを·····?」
「は、はい·····。今までお母さんの方から教えてくれることは無かったし小学生になってからいつも留守にしていてあまり会えなかったので·····」
「なんということだ··········呆れたものだな!母親は世のために必死に戦い続けてきたにも関わらず当の娘は何も知らず地球でのうのうと過ごしていたとは!」
突如マシュマーはテーブル拳を握り締めながら椅子から立ち上がりみほへ向けて怒りを顕にし声を荒げた。あまりにも突然過ぎたマシュマーの豹変ぶりと怒声に一同はビクリと体を震わせ、危険を感じたゴットンはすぐ様彼を背後から羽交い締めにしたのであった
「マシュマー様!ダメですってこんな所で暴力なんてしたら格下げじゃ済みませんよ!」
「ええい離せゴットン!なんと嘆かわしい事だ·····あのお方は誰よりも宇宙と地球の調和を望んでおられるというのに実の娘である貴様が共に立とうと意識しておらんとは何事だ!?」
「ちょっと待ってよ!みぽりんだってお母さんから聞かされてなかったんだから仕方ないじゃん!勝手にみぽりんばっか悪者にしないでよ!」
「そうですよ!お母様がみほさんに何も伝えてこなかったのは何か隠さなければいけない事情があったからかもしれないじゃないですか!」
みほへ怒りを爆発させゴットンに抑えられながら駄々っ子の様に暴れるマシュマーに沙織と華は庇うように立ち上がり彼へ反論した
「ふん!そもそも貴様らとて同じ人類でありながら我らスペースノイドについて何も知らなかったではないか!こうして我々は不等な扱いに耐えながらも歩み寄ろうとしているのに、貴様ら地球種は宇宙のことを自ら知ろうと動くことすらなければ意識することさえもしなかったという訳だ!」
「·····っ!確かに今まで何もかも知らなかったことは反省している。だからこそこれからもっと宇宙や貴方達のことを知りたいと考えているんだが·····」
「都合のいいことをいう!所詮重力に魂を縛られた貴様ら地球種が我々に対しいつまでも不感で無慈悲であることなど明々白々なのだ!そんな貴様らとわかり合うことなどできるはずがないということだ!」
「マシュマー殿··········」
暴れながらも心の内の悲痛な叫びを吐き出し続けるマシュマー、そんな彼が優花里は気の毒に思えた。今ここに居る自分達が彼らについて何も知らなかったという事実の様に彼らの言葉は地球に住む人々に届いていないということであった
「一旦落ち着きましょうマシュマーさん!叩くなら西住さんではなく私を叩いてください!」
「誰が貴様の様な石頭を殴れるものか!いいから離せ!西住みほ!貴様のその腑抜けた根性叩き直してやる!」
「あーもう埒が明かない!絹代様、私が抑えてる間にマシュマー様に
「え·····しかし相手が男性とはいえ流石に·····」
「だ、大丈夫です!マシュマー様は心も体も変に頑丈なのできっと耐えるかと!·····多分!」
「なるほど、分かりました!·········はあぁぁぁぁ〜···············」
突如絹代がテーブルを飛び越えゴットンに抑えられるマシュマーの前に立ったかと思うと呼吸を整え拳法家の様に構え始めたのであった
「離せぃ離さんか!·····西絹代?貴様一体何をするつもり·····」
「マシュマー様、お許しください。·····せいやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ち、ちょっと待·····へぼぁッ!」
絹代は大きな掛け声と共に右脚を振り上げ剃刀の様な回し蹴りを放った。蹴りはマシュマーの側頭部を捉え彼はその威力に意識を飛ばされながら背後のゴットンと共に後方へ思い切りふっ飛ばされた
「···············キュウ·····」
「イテテ·····おおやりましたな!気絶してくれましたぞ!」
「ええええ!?な、何やってるんですか!?」
「安心してください西住さん!手加減はしました!」
あまりにも突然絹代がマシュマーに回し蹴りを放ち彼が完全に伸びてしまっていたのでみほは目の前でなにが起こっているのか処理しきれず他の4人も同様に困惑していた
「申し訳ありませんでした大洗の皆様!マシュマー様は医務室にとっちめておくので皆様は引き続き食事会を楽しんでいってください!」
「あ、あの!その人の言う通り私は宇宙に住んでる人達のことを知ろうともしなければお母さんが宇宙で頑張ってたことも知らなかったです··········だから悪いのは私なんです!」
「ははは、気にしないでください。マシュマー様は宇宙に住む人々が無下に扱われているみたいな事を言っていましたが実際私達コンペイトウの市民は安定して日々を暮らせています。他のスペースノイド達がどうなのかは知りませんがこの人は宇宙と地球が対等じゃ無いと思い込んで文句を言っているだけのちょっと変な人なのであまり本気にしなくて結構ですよ」
(変な人··········?)
「それでは絹代様、あとはよろしくお願いします!」
「は、はい·····」
ゴットンの言葉はマシュマーと違い何処か自分とは関係ない世界事情など意識にない、それこそ今までの自分達と同じであるように感じられた。ゴットンは気絶したマシュマーを背負うと部屋から退室して行き、残されたみほ達はそれぞれがこれから自分がどうあるべきか考えさせられ苦悶な顔にならざるを得なかった
「··········とりあえず皆さん!まだ料理も残っていますしここは食事しながら話し合いませんか?私の方からも大洗の皆さんとは話したいことが沢山あったので·····」
「·····そうだね。せっかくの食事会なんだしもっと他のことも話したいよね」
あまり気乗りはしなかったが嫌な雰囲気を何とか変えようとする絹代の意思を汲み沙織も同調した。すると先程から何やらそわそわしていた様子を見せていた優花里が手を挙げてから言葉を切り出した
「あ、あの!よ、宜しければ今からお手洗いに行ってもいいでしょうか!?」
「秋山さん·····そんなことはっきりと言わなくていいんだぞ·····」
「ふふっ、優花里さんらしいですね」
「す、すみません·····」
優花里は顔を紅くし恥ずかしそうに頭髪を掻き、そんな彼女の様子に少しだけ重苦しかった雰囲気が和やかなものになった
「御手洗ですか?場所が分からなければ案内しますが」
「さっきもお借りしたので大丈夫です!それでは行って参ります!」
いつも通りの活気に溢れた敬礼を皆に見せ優花里は駆け足で部屋から出て行った。そういえば彼女は食事前にトイレに行ったばかりで飲み物もさほど飲んでいなかった·····なのでトイレに行くには少し早すぎるのではとみほは感じたが何も口に出すことなく意中に留めた
そしてみほの予想した通り、艦の廊下に出た優花里は始めからトイレに向かうつもりで部屋を出た訳ではなかったのだ
(このままじゃマシュマー殿は二度と私達や地球の人と会ってくれないかもしれない··········そんなの絶対に駄目です!)
優花里はマシュマーの部屋へ走り出した。彼は先程のやり取りで、自分達のせいで地球へ歩み寄ろうとしていた歩を止めてしまうかもしれない。そんな事のために誰かを思いやれるそのの心を絶望させる訳にはいかないと思ったから優花里はマシュマーに改めて向き合うため彼のもとへ急いだのであった
名も知らぬ誰かを想い、誰かのために尽くそうとする心。その心があれば人はどんなに遠い存在であろうと互いに手を取り分かり合えることができるのだ。そしてその暖かい感情は、ただ敵を滅ぼすためだけに造られ存在していた彼女にも宿りしものなのか
次回 ガールズ&ガンダム 『暖かな心』
誰よりも冷たく全てを凍てつかせる女傑。彼女の名はフブキ・ドゥルガー・マカハドマ
読んでいただきありがとうございました
マシュマーは個人的にかなり好きなキャラクターで絶対に登場させたかったのでみほ達に宇宙での現実を伝える代表者として登場させました
とはいえ彼もまたみほ達と同じ様にテレビなど誰かが発信したものを真実と捉えています。故にメグミ達視点からではマシュマーも何も知らない者ということになります。ちなみに言うまでもありませんがモデルにしたのはΖガンダムの30バンチ事件です。当ssの本編における5年前、それはまほ達三年生が中等部への入学を控えておりマリー様が木星へ向かう少し前の時期であることを留意しておいて欲しいです(念の為補足させていただきますが当ssに初期の頃から度々登場している美香と継続高校のミカは全くの別キャラです。全く別とは言い難いですがそうなった原因は二章のラストに投稿しようと思います)
全く関係ない話ですがこの世には絶対に許せないものがあります。それは騎士ガンダムとリフレクターインコムです(ガチギレ)