ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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 テスト大爆発してたのでお久しぶりの投稿です。しかし不甲斐ないことに西さんの過去回だけで二万字超えそうにな気がしたので前編後編に分けることになりました。申し訳ございませぬ・・・

 それと今更ながらご報告ですが全国大会篇と関係あるのは前回投稿したマリー様がまほさんをgetする回までですので全国大会だけが楽しみと言う方々は今後(第三章含めあと20話前後)の話は一切読まなくてもおそらく大丈夫です。全国大会篇が始まる時は何らかのわかりやすい形で明示しますのでご協力よろしくお願い致します




17話 幻の突撃王(前)

 みほをはじめ地球の若者達は先人が築いた時世の流れ、決して宇宙の民に関して教わることも報道されることがなければ彼等とは遥か縁遠い日常の中生まれ育ってきたため宇宙というもう1つの世界を知り得ずにいた。このままではいずれ地球と宇宙の人々は同じ人類でありながら完全に乖離され互いに相反し合うこととなる・・・しかし優花里がマシュマーと和解できた様に、自分の中で他者の思いを決めつけるのを止め互いを信じ共感し合うことのできる優しく暖かな心さえあれば人はどんな離れた世界に生まれた者同士だとしても手を繋ぎ合い分かり合うことができるのだ。それは世界を変えるためには極めて小さくあまりにも微力であるのかもしれない、だがだとしても二人は分かたれつつあった地球と宇宙を繋ぐための確かな一歩を踏み出すことができたのだ

 

 一方地球、黒森峰女学園にて西住まほはジュピトリスより地球へ舞い降りたマリーと出会う。唯一の親友アンチョビに絶交を宣言され、守ると誓った大切な妹のみほにも転校先の大洗で新たにモビル道を始められてしまい深く傷つき失意の底に落とされていたまほにとって昔の母の様に暖かく抱き締め全てを取り戻せる力を与えてくれると語るマリーは心から求めていた存在だった。学生史上最強のエースパイロットと称えられ、しほの後を継ぐ者であると世間から名高く認められてはいたがまほ自身それ程強い人物ではない、まだ母や誰かからの温もりと愛情に飢える極々普通の女の子。故にマリーが例え関わるなと言われ続けてきた地球連合軍の軍人であろうと今の自分に寄り添おうとしてくれる彼女に心を許し全てを委ねようと決意してしまうのも無理はなかった・・・

 だがまほを抱くマリーには彼女へ共感しようとする意思など毛頭無く、ましてや優花里達の様な暖かな心もその胸には宿していなかった。聖母の様な愛に満ち溢れた抱擁でまほを包み込み、彼女が求めるもの全てを与えようと言えるのは西住まほという世俗に強大な影響力を持つ少女を手に入れるため、そして彼女を地球圏に住む人類を支配する女王へと仕立て上げるため・・・・・・まほの前に現れたのは十代半ばのうら若き少女ではなく他者の弱さにつけ込みその者の生き血を啜ろうと企む邪悪な怪物だったのだ

 

 宇宙と地球、分かたれつつある双界の人々が共に歩み完璧な勝利を手にすることを何よりも尊ぶ流派、西住流。その志しを広めるため現在も奮闘し続けている西住しほの跡取りとして育てられてきた西住まほは木星帰りのニュータイプ、マリー・タイタニアに全てを掌握されようとしていたのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば絹代さんって私達と同じ二年生なのにここのチームの隊長なんだよね?まだ三年生も引退してない時期なのに任されてるなんて凄いじゃん!」

 

 優花里が医務室のマシュマーのもとへ到着した時と丁度同じ頃、部屋に残されたみほ達と絹代は互いの学園での日常やモビル道の何気ない話題を交わしていた。その中でふと沙織の口から出た様に絹代は進級した春から知波単学園のモビル道部隊隊長を二年生ながら正式に任されていたのだ

 

「そんなことありません。お恥ずかしい話まだまだ部隊の指揮官として至らぬ所ばかりで皆から隊長と呼ばれてはいますがその実三年生や卒業生の先輩方から助言をいただきながら何とか皆をまとめているというのが現状なんです」

 

「確かに私達と比べてパイロットや他の人員の数も圧倒的に多いようだからな。全員の代表を務めるというのは簡単なことではないだろうな」

 

「そうですよね・・・この艦だけでも沢山の人が乗っているのにその他の艦にも同じ位乗っている訳ですから・・・」

 

 麻子と華が口を揃えて言う様にモビル道の部隊における隊長という存在はパイロットを初めMSや艦船の整備を行うために参加してくれているメカマン達や艦内クルーの面々も指導し部隊全体をまとめあげなければならず、多大な責任が伴うため誰にでもそう簡単にできる役職ではなかったのだ。それがどれ程なのかをかつて黒森峰女学園に在籍していた頃に傍で隊長の責務を全うしていた姉を見ていたみほも重々理解しており、今自分が初心者ばかりで且つ人数の少ない部隊の隊長であることに内心安堵していた

 

「とはいえこのままいつまでも皆に頼りきりという訳にもいきません!今の私は全国大会で勝利を連ねる部隊の指揮官としてまだまだ未熟・・・だからこそより一層精進し西住さんや他校の隊長の皆さんに追いつこうという所存です!」

 

「わ、私もですか!?私なんてまだ隊長になったばかりだから・・・」

 

「そんなご謙遜なさらないでください!西住さんは西住流のお家元にして学生史上最高のパイロットと謳われるあの西住まほさんの妹、そして例の人間が新しく進化した存在である"ニュータイプ"と噂されているお方ではありませんか!私の様な凡才にとって西住さんは天上人の様なお方なのですよ!」

 

 目を輝かせながら熱意を込めて語る絹代、しかし他者からニュータイプと呼ばれ特別な目を向けられる度にみほは自分自身が沙織や華の様な普通の女の子とは異質な存在であるのだと自覚させられていたのだ。絹代に悪気がないことはわかっていたがその感覚からみほは一言も言葉を返すことができず表情を暗くし俯くことしかできなかった

 

「そういえば!確か去年の全国大会で何やら西住さんがチームメイトの一人を洗脳して危うく大事に至る所だったと良からぬ噂が流れていましたが私はあんなの単なるでっち上げに過ぎないと思います!いくらニュータイプのが何なのか全て明らかにされてないとはいえ誰かの頭の中に入り込む様な妖怪みたいなことができるはずありませんし、それこそマシュマーさんの言っていた宇宙と自分達を隔てさせようとする人達のでっち上げに違いありません!」

 

「あ、あのさ絹代さん!話変わっちゃうけどなんで絹代さんが隊長を任されるようになったのかよかったら聞かせてくれない?初心者ばかりの私達と違ってやっぱ二年生なのに隊長になれるなんて普通じゃないと思うなぁ〜・・・」

 

 沙織はみほの様子に気づき彼女の意思を汲むと、みほを特別視することを一切憚らずに夢中で話す絹代へ半ば強引に話題を変えようとした

 

「え・・・私が隊長を任されている理由ですか?う〜ん・・・」

 

 するとどういうことか絹代は虚をつかれたかのように口を噤み先程までの熱意に溢れた様子から腕を組み難しそうな表情で唸り始めた。みほを助けるために適当な疑問を投げかけたつもりだった沙織も絹代の予想外な反応に戸惑った

 

「もしかして何か嫌なこと聞いちゃったかな・・・?答えたくなかったら言わなくても・・・」

 

「いや、そういう訳ではないのですが・・・う〜〜〜ん・・・・・・」

 

 目を深く瞑り悩む彼女の様子に他の三人も驚きを隠せず少し困惑していた。絹代はそんなみほ達を後目に沈黙のまま考え込み、そして先程よりも真剣な面持ちで切り出した

 

「・・・正直この話を、あの人の話を皆さんにしたところで信じて貰えないかもしれません。しかし私達もこれから宇宙で住んでいる人達のことをもっと知り考えなければならない今、少なからずは関係のある話な気がするんです。なのでもしよろしければ少し聞いてもらえないでしょうか?」

 

「そういうことなら全然いいけど、あの人って・・・?」

 

「ありがとうございます。・・・あの人は宇宙から知波単学園に編入生として来てくれて、一緒にいた時間はとても短かったのですがそれでも私や皆にとっては憧れの人で・・・本当に大好きな人でした」

 

 絹代は静かに話し始めみほ達も彼女の話に耳を傾けた。それは現在より四年前に絹代が知波単学園の中等部に入学しまだ間もない頃、氷のように冷たいある少女との出会いから始まった・・・

 

 

 


 

 

 春、知波単学園学園艦──────放課後となった中等部の校舎にて、まだ入学したての新入生であった絹代は困っていたクラスメイトの一人を手伝い共に教務室を後にしていた

 

「ありがとうございます西さん!一人じゃ皆のノート運ぶの大変だったから助けてくれて本当に助かりました!せっかく高等部のモビル道に行こうとしてたのにごめんね・・・」

 

「なんの!困っているご学友を助けるのは当然のことですのでお気になさらずに!ではでは!」

 

 絹代は満開の笑顔でそう言い残し脱兎のごとく走り出した。校舎の廊下を駆け昇降口へ出て校門を抜けようとした所で内履きのままだった事に気づきすぐ様下駄箱へとんぼ返りし外履きへ履き替え再び駆け始めた。それほどまでに急ごうとするのも今日もまた高等部のモビル道の訓練に混じえてもらう日だったからだ

 

「早く行かないと撤収作業の時間になってしまう・・・急がなくちゃ!」

 

 知波単学園の中等部はモビル道の授業はおろか部活としても取り入れていなかった。知波単学園は古くからの日本の文化を色濃く繁栄させており、日本という国は地球上で最も平和で豊かな国の代表格とされてきたため、モビル道が誕生した当初文化的な側面から実兵器としての運用も成されているMSを扱うモビル道を学活の一つとして迎えることはなかったのだ。だが刻の流れがそうさせたとか、次第にモビル道への評価や見識は少しずつ甘く、緩くなり誰が許したのか知波単学園にもモビル道が誕生したのだ。初めは同好会程度の規模での活動だったがみるみるうちに参加する生徒は増え続けていき、気づけば必修選択科目の一つとして当たり前のものとなり全国大会への参加にも熱心に取り組む現在の知波単学園に至ったのであった

 とはいえ先人達の意思も少しは尊重するため絹代の様に学園の中等部の生徒達にはMSや兵器に搭乗することは一切禁止されていた。その代わりに先輩達の認可のもと訓練の見学やMSの整備や修繕、宇宙での演習や渡航への随伴などある程度のことは許されており、絹代にとってはMSに乗ることができずとも知波単のモビル道に携わることができるだけでも十分だった。小学生の頃絹代はテレビで見た知波単のモビル道の、彼女達が脈々と伝統として受け継いでいるMSによる突撃戦法に強く感銘を受け自分も彼女達の様に勇ましくなりたいと思ったから知波単学園のモビル道に深く惹かれていたのであった

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・なんとか間に合った!・・・ってあれ?これは一体・・・?」

 

 学園艦上に設けられたMSが戦闘演習を行える程広大な荒野を有する強化フェンスに囲まれた演習場に息を切らし到着した絹代であったが到着して早々演習場に広がる景色に目を疑った。演習場には知波単学園が地上で主に使用するMS【MSM-07 ズゴック】をはじめ数十機の水陸両用MS達が屍の様に地に伏し沈黙しており、その中央に一機の【MSM-04 アッガイ】と開かれた胸のコックピットハッチの上に立ち、辺りを見下ろす一人の女性の姿があり絹代は彼女に目を奪われ食い入る様にフェンスに手をかけていた

 

(地球の学徒達が動かすMSなど所詮この程度か・・・あまり気を入れると返って目立ってしまうな・・・ん?)

 

 同じ高等部の隊員達が乗る数多のMSを蹂躙した少女もまた遠く離れたフェンスから此方を力の入った眼で見つめる絹代の存在に気づき視線を向けた。膝下に達するほどの凍りついたかのように蒼白く透き通ったロングヘアには雪の様に白い軍帽を被り、着用する同じ配色の軍服のような衣装は胸元を大きく開くように着崩すされ、スラリと伸びる長脚もまた純白のロングブーツに包まれその姿と放たれる圧は特殊警察、または大監獄の獄長を思わせた。そして絹代は行動不能となった数多のMS達を一人佇み見下ろす彼女からまるで戦乱の世を生き抜いてきた将軍の様な圧倒的存在感、カリスマ性を強く感じ目を輝かせて思わず唸った

 

「す、凄い・・・・・・かっこいい・・・!」

 

「なんだ?あのちんちくりんは・・・?」

 

 熱い眼差しで見つめたまま眼を逸らさない絹代を少女は不思議に感じ怪訝そうに顔をしかめコックピットへと戻って行った。ハッチが閉じられアッガイはモノアイに光を灯すとその場からスタート地点へと跳躍して行き絹代もその後を追うように走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 絹代が演習場内のMSの格納庫や大型倉庫が置かれた区画へ着くと他の隊長達や中等部の生徒達も絹代と同じ様に全員先程の光景に衝撃を受けたらしく慌ただしくなっていた。そして行動不能となったMS達を載せた回収用のトレーラーが帰ってきたのと同時にアッガイも帰還しており絹代は自分と同じ様に彼女を見上げていた現在の隊長に何が起きていたのか問おうと声をかけた

 

「隊長!あのお方は一体何方様なのでしょうか?」

 

「西、来てたのか。あの人は我が校と交流のあるコンペイトウという星から交換留学生として高等部に編入してきた一年の鉢特摩(ハドマ)吹雪(フブキ)さんだ。宇宙の出身らしくて最近地球に来たばかりらしいんだ」

 

「そ、それで一体何があったのですか?」

 

「それがだな・・・あの人は今日一日一言も喋らず静かに見学していたるだが、さっきいきなりうちの一軍全員と組手をやらせろと言ってきてな・・・馬鹿にしてるのかと思ってやらせてみたんだが見てわかる通り結果見事一機残らず撃破してくれたという訳だ。情けないけれどあそこまで強い人が味方になってくれるなら心強いな!」

 

 宇宙からの編入生として知波単学園へ入学した鉢特摩吹雪。明らかに日本人離れした容姿や地獄の名称が名字になっていることに少し怪しい様にも感じたが送られてきた彼女の書類は正式なものであったため学園は彼女を受け入れたとのことも隊長は絹代へ伝えた。フブキは昇降用のワイヤーを使わずコックピットから跳び地面へ軽やかに着地し、口だけではなかった圧倒的なその実力を讃えようと隊長はフブキのもとへ心地よく笑いながら近づいて行った

 

「本当に大したもんだよフブキさん!まさか私達一軍をこうもあっさりと蹴散らせるなんて・・・いやぁ〜あっぱれあっぱれ!」

 

「・・・おまえ達は毎年地球の全国大会だったかに出場しているのだろう?一体どの程度の戦績を修めているんだ?」

 

「お、オマエ?・・・全国大会と言えばこの数年間は毎年一回戦で敗北していて練習試合も惜しい所で敗退しているというのが現状だ。けれども先輩方から受け継いだ知波単の、私達の魂とも言える突撃だけは毎年全員で敢行し試合相手や見に来てくれた観客の皆さんへ披露している!例え試合に敗れたとしても皆さんの眼に我らの勇姿を焼き付けることができたなら華々しく散れたというもの!」

 

「そうか・・・今日はもう上がらせてもらう。まだ済ませなければならん手続きが大量に残っているものでな」

 

「?そういうことならご苦労様!明日からは本格的に訓練に参加して貰うからよろしく頼むよ!」

 

 敬礼しする隊長の言葉を半分無視しフブキは踵を返しさっさと立ち去ろうとした。今日一日彼女達の訓練を眺め、その後実際に手合わせをしフブキはこの者達がどれだけ練習を重ねようと永遠に勝利することの無い弱者であると確信していた。というのも先人達が築いたという伝統的な突撃戦法とやらを戦闘で成す事のみに一人一人がこだわり自ら独自の思考を持たずその伝統、もはや単なる形骸となり果てたその規範を受け継いでいると言い張り続け後に続く者達にもそれを浸透させ同じことを繰り返させる。そんな有様では勝てるはずがない・・・だが知波単が今後どんなに廃れていこうとフブキにとっては関係の無い話、そもそも地球へ降りここへ入学したのも全く別の目的のためだったので彼女達のことなど心底どうでも今は適当に合わせていこうと考えていた

 

「待ってください!」

 

 歩き去ろうとした所突如服の裾を何者かに掴まれフブキは足を止めた。振り返るとそこには先程フェンスの向こうから此方を見つめていた少女の姿があった

 

「・・・誰だ貴様は?」

 

「私は西絹代と申します!先程演習自体は見ることができませんでしたがその、貴女様の姿がすごく勇ましくてかっこいいと思いました!」

 

「そうか、ならば精々手本にでもするのだな」

 

「それで・・・もしよろしければ私に貴女の強さの秘訣をご教授していただけませんか!?私も貴女みたいな・・・フブキさんみたいな逞しく強い女性になりたいんです!」

 

 依然裾を掴む手を離さず加えて自分の中へ踏み込もうとしてくる絹代にフブキはイラつきを感じ射殺す様に睨みつけた。だが絹代はフブキの蒼い瞳から放たれる凍てついた視線に萎縮することなく真っ直ぐに彼女の眼を見つめ返した・・・だがその熱い眼差しはフブキの心を更に逆撫でた

 

「・・・誰がおまえのようなちっぽけな娘の教師になどなるものか。さっさと散れ」

 

「うわっ!」

 

 フブキは絹代に掴まれた手を払い除け身体を突き飛ばしてやると彼女は尻もちを着いて倒れた。二人のやり取りに隊長を含め周辺の面々が何事かと注目し始め変に目立つ訳にはいかんと感じフブキは一刻も早くにとその場から立ち去ろうとした・・・だが冷たく突き放してやったかに思えた絹代が突如脚に抱きついてきたため去ることは叶わなかった

 

「なっ!貴様何をする!?」

 

「待ってください!!!」

 

 絹代は先程のフブキの姿に余程見惚れ憧れを抱いたのか拒絶されようと退かずに彼女から教えを乞おうとした。フブキはしがみつく絹代を振りほどこうと脚を振り回したが中々引き剥がせなかった

 

「ええい離さんか!何なのだ貴様は!」

 

「お願いします!どうか私を弟子にしてください!」

 

「あれれ?フブキさんいつの間に西と仲良くなってたの?」

 

「なにぃ!?これのどこが仲のいいように見えるのだ!さっさと離れろこの小猿が!」

 

 呑気な様子で誤解する隊長に更にイラつかせられフブキはとうとう怒りの頂点に達し、拳を固めると絹代の頭へそのげんこつを落雷の様に振り降ろし鈍い音が響いた

 

「あいでっ!」

 

「はぁ、はぁ・・・おい隊長。この小猿は貴様の後輩だろう・・・一体どんな教育をしてきたのだ?」

 

「いやぁ〜そう言われましても西はフブキさんと同じこの春に入学してきた新入生ですし、今の所素行も悪くなければいつも熱心に私達の手伝いをしてくれるので良い奴だと私は思います!」

 

「チッ・・・もういい。今度こそ私は帰らせてもらうぞ」

 

 一呼吸整え欠かれた冷静さを取り戻したフブキは頭にできたタンコブを抑える絹代を後目に今度こそ立ち去ろうとした・・・だが絹代は予想以上にしつこい、一度決めたことを中々退かない性格だった

 

「待ってください!!!!!」

 

「のわっ!クッ・・・まずい・・・!」

 

 歩き出そうとしたフブキの足に絹代は地を這いながらもしがみついてきたのだ。フブキはバランスを崩し危うく前方に倒れそうになり何とか腕をバタつかせて立て直せたが静めたはずの怒りを再びふつふつと湧き上がらせた

 

「貴様・・・よくもここまで私を辱めたな・・・・・・!」

 

「私を弟子にしてくだ・・・へ?ひょっとしてフブキさん怒ってます・・・?一体どうして・・・」

 

「ああそうかならば戦争だ・・・ひれ伏そうが許さんぞこのエテ公!」

 

「さ、さすがにヤバそうだ!皆止めろー!突撃〜!」

 

 フブキが鬼の形相で絹代に飛びかかったため隊長は他の隊員達に号令を掛け総員で仲介に入り、あまりの人数でさながら乱闘の様にごった返したため土煙が立ち込め始めた。宇宙から降りたフブキはこの日初めて知波単学園の生徒達の、絹代の持つ爆発的なエネルギーをその身で感じたのであった

 

「アイタタタタ!ほっぺたつねることないじゃないですかフブキさん!さすがの私も怒りましたよ!ガブリっ!」

 

「な゙っ!・・・尻に噛み付くとは調子に乗りおって!覚悟しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜フブキは教務課や役場での手続きを終え若干の小傷を負いながらも荷物と共に今日より寝食の場となる日本古来の木造建築による学生寮へ到着した。知波単学園の学生寮は一部屋六人で内三人が高等部の生徒、残り三人が中等部の生徒で固められておりあまり大人数の部屋で生活することに気乗りしなかったがそれでもこの学園に居続けなければならない理由がある以上耐える他なかった。今日一日変に目立ってしまったことを省みつつフブキは自分が割り当てられた部屋の襖を開いた

 

「あ、おかえりなさいフブキさん!一緒にお風呂入りましょう!」

 

「・・・なんで貴様と同じ部屋なのだ。変えてもらわねば」

 

 フブキは襖を開けた瞬間絹代の姿が一番に見えたためすぐ様襖を閉め部屋割りを返させようと寮長のもとへ行こうとした。だがフブキを逃がさまいと絹代は襖を開けて飛び出しまたも服の裾を掴み引っ張った

 

「駄目ですよフブキさん!先生方や寮長さんが私達の性格や相性を考慮して決めた部屋割りなんですから変えようだなんていけませんよ!」

 

「だったら何故私とおまえが同じ部屋なのだ?相性など傍から見ても最悪だろうに何をもってして決めたというのだ」

 

「それはたまたまというか偶然と言いますか・・・そんなに私と同じ部屋は嫌ですか?」

 

「当然嫌だな。むしろ私が抜けるのは癪だからおまえが出て行け」

 

 絹代の甘えようとした言葉にも一切揺らぐことなくフブキは冷ややかに見下ろしながら跳ね返した

 

「むむむ・・・そもそも部屋を変えようとすれば他の生徒にも迷惑がかかるのでよくないと思います!ということでもう諦めて一緒にお風呂入りましょう!フブキさんのことご聞かせください!」

 

「チッ、私のことだと?誰がおまえになど教えるものか。もう今後一切私に話し掛けるな、その名を気安く呼ぶのを止めろ。さもなければ次は狩る」

 

 フブキは親睦を深めようとしてくる絹代を冷酷に突き返ししぶしぶと本来の部屋へ入った。昼の演習場で見せた堂々とした立ち姿と絶対的な強者の存在感、だがフブキ自身の心はどこまでも冷たく永久凍土の様に溶かされぬものに思え絹代は少し寂しい念に駆られていた

 

 

 

 


 

 

 

 

「世界の真理は弱肉強食。強者が弱者を蹂躙し淘汰するのは当然のこと、か・・・」

 

「私の父と母は弱いから死んだ。弱者などいなくともこの世は強者だけが生き残れば成立するのさ」

 

「けれど例え弱い人とでも寄り添い合うことができる人、そんな人こそが本物の強者だとは思わないかい?」

 

「その弱者を守るか壊すかどうかの決定権も結局は強者にある。美香、おまえも強者なのだからわかるはずだ」

 

「それは違うよフブキ。私達は皆弱者だ。自分が排斥されることが不安だから誰かを壊すまで攻撃して自分を守ろうとする。そのためにより強大な力を手に入れようとするんだ」

 

「それこそが自然の摂理だろう・・・一体それの何がおかしいというのだ」

 

「でも私達は動物じゃなくて人間だ。言葉を交わし心を通わせることができる。傷つけるために力を手に入れることよりも誰かを想いやることのできる人の方が絶対に強いと私は思うな」

 

「・・・わからんな。弱者共のために尽くさなければならないなど考えられん・・・」

 

「いつかわかるさ、君も皆も。だから私はいつまでも信じてる。いつか宇宙と地球が一緒に光り輝ける世界に変わることを・・・」

 

 その晩フブキはニュータイプ研究所の中庭にて今は亡き親友と初めて出会った日のことを夢に見た・・・・・・

 

 

 

 

 

 




 読んでいただきありがとうございました

 急いで後日後編を投稿します。今年中に絶対全国大会終わらせたいので頑張っていこうと思います!・・・・・・終わるかなぁ・・・
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