ごく普通の家庭に育った絹代にとってフブキの様な物語に登場する女傑の様な異彩を放つ少女は憧れの存在だった。自分も彼女のようになりたいと教えを乞おうとするも当のフブキからは完全に拒絶されたのだった
月のニュータイプ研究所にて強化人間として造られたフブキにとって絹代が何度冷たく跳ね除けようが諦めず此方へ踏み込もうとしてくることが理解できなかった。相手は最も嫌悪する存在の弱者、そして自分には果たさなければならない目的がある・・・それを果たすまでは何人にも己の心の中に踏み入らせるつもりはなかったのだ
だがフブキが平穏に過ごせた時間は編入した初日の夜みだった
「おはようございますフブキさん!一緒に朝の体操にいきましょう!」
編入した次の日の早朝、支度から朝食の時間まで人目につかぬように行おうと誰よりも早く目覚めたフブキであったが洗面所から部屋へ戻ると何故か絹代が布団の上で正座して自分を待ち受けていたのだ。彼女の耳をつんざくばかりの大きな声量とそれが響いているにも関わらず寝息を立てて眠ったままの他の部屋員の姿にフブキは目覚めて早々嫌悪感に表情を歪ませた
「・・・何故この時間に起きている?」
「早起きは日課ですので!しかし今まで早起きは誰にも負けたことがなかったのにとうとう・・・流石です師匠!」
「だれが師匠だ。小賢しい猿め・・・もう永遠に眠っているがいい」
フブキは一瞬で絹代の背後へ回り込み彼女を黙らせようと首筋に手刀を叩き込もうとした
「はっ!見切った!」
だが絹代は何故かフブキの動きを洞察し瞬発的に跳ね上がり回避したのであった
「なっ・・・避けただと?」
「フッフッフッ、甘いですねフブキさん。その程度のスピードでは私を捕まえることはできませんよ!」
「・・・いいだろう、昨夜の予告通り狩り殺してやる」
もはやこの時フブキの頭の中には絹代へ粛清を与えることしか頭になく獣の如く彼女へ飛びかかった。逃げる絹代と追うフブキ、ドタバタと部屋の中を駆け回る二人に他の生徒達も目覚め始め寮内は早朝から大騒ぎとなったのであった
それからもフブキの絹代に振り回される日々は続いた。教えを乞おうと寄ってくる絹代に対し時には取っ組み合いになり、心無い罵倒を浴びせることもあり他の隊員達が少し怯えた様な表情を向けることもあった。それでも尚絹代は常に自分の隣に居座ろうとしてきたためか、フブキもいつまでも反撃していれば逆に悪目立ちしてしまうことに気づき彼女に嫌悪感を示し無視することはあっても絶対的に拒絶することはしなくなった
普段は同部屋というのもあり二人は当番の炊事や洗濯、寮の掃除を共にこなすこともあった
「フブキさん!洗濯機を使う時は下着とタオルを一緒にして他の衣類とは別々で洗うんですよ。それにこんな山盛りに洗濯物を入れてしまうと洗濯機が故障してしまいます・・・」
「何、そうなのか?・・・いや別に全部まとめて洗ってもそう変わらんだろう」
「そういう訳にもいかなくて・・・ってわ゙ぁ!フブキさんお洗剤入れ過ぎですよ!どうして一箱丸ごと入れちゃうんですか!」
「ええいうるさいぞ小娘!もしかしたらこうした方が綺麗になるかもしれないだろう!私のやり方に一々口を挟むな!」
立派な婦女を目指すことも心掛けていた絹代は几帳面に当番の仕事を全うしていたが彼女に対しフブキはやる気は十分にあるが事ある毎にだらしない部分が露呈しその度に二人はぶつかりあっていたのだった
そして迎えた全国大会、だがフブキは何故か出場しないと言って聞かなかったのだ。日々の訓練では手を抜いたり他校との練習試合も適当にあしらっていたフブキだったがそれでも今の今まで一度も被弾をしたことが無ければ目の前に現れた敵機は必ず撃破していたのだ。彼女程の実力者がいれば今年の全国大会で勝利することも夢ではない・・・誰もが彼女を頼りにしたかったが隊長はフブキの意思を尊重し、自分達だけの力で勝利しようと隊長達を説得し皆不服ながらも受け入れるしかなかったのだ
昨今は初めて会った時よりも心の距離を縮められたかに思っていたがそうではなかった、絹代には何故フブキが全国大会に出たがらないのかがわからず、まだ彼女が自分達には絶対的に明かそうとしない事情を胸の内に秘めているように感じたのであった。そしてその年の全国大会は幕を閉じ、季節は真夏へと移り変わっていった
「私とおまえに加えルミが調査した学園艦も空回りだったがそうか・・・お嬢様はBC自由学園の学園艦に軟禁されていたのか・・・」
『ええ、昨夜アズミから学園艦内の研究施設に潜入した時閉じ込められていた愛里寿と会えたって連絡が来たの。愛里寿、やっぱり生きてたんだね・・・本当によかった・・・』
「アズミの大手柄だな。しかしBC自由学園か・・・ブルーコスモスが直轄している学園とあらばお嬢様を救出するのは一筋縄にいかんだろう」
夏の太陽がカンカンと大地を照らすある日の昼、人目につかぬ様MS格納庫の裏でフブキは携帯端末を片手に自分と同じく地球の学生として潜伏していたメグミと通話していた。財界の有力者や大手企業会長が中心に座す地球自然保護団体ブルーコスモスの構成員は皆根元からの地球至上主義者達であり、そのシンパは地球圏代表議会の閣僚や連合軍の高官、メディア界の有力者から一般市民にまで幅広く及んでいた
『でも私達にしかできないし他に頼る宛もない訳なんだからやるしかないよ。それとあと、・・・これはアズミから送られてきた写真なんだけど・・・』
「・・・何?このガンダムは・・・美香のアレックスじゃないか。何故この機体がまだ残っている?」
フブキは端末に送られてきた画像を見て目を疑った。そこには親友と共に宇宙で散った彼女の愛機NT-1アレックスが外装をほぼ一新された状態でハンガーに佇む姿が映っていたのだ
『その機体の名前は
「ネティクスか・・・地球に支出されているサイコミュ技術はEXAMのみのはずだがこの機体には無線発射可能なインコムが搭載されている。お嬢様と同じく連合に生かされていたという情報が事実ならば、この機体を開発したのは千代様ということか・・・アレックスに試験導入していたあのシステムも残ったままなのか?」
『うん、おそらくね・・・それで愛里寿を助けるのと一緒にこの機体も回収したいの。愛里寿にとってこのガンダムは唯一残った美香との繋がりだからどうしても取り返したいの。・・・救出と同時にやる以上警備隊に見つかることは避けられないと思うから私達が皆の囮を・・・』
「わかった。お嬢様を隠密に救出することが叶わんのならば派手に暴れてやるしかあるまい。私一人でブルーコスモスの警備を蹂躙し惹き付ける。その間におまえ達はお嬢様を救出し美香のガンダム、ネティクスとやらを強奪してくれ」
『そんな!BCはブルーコスモスが開発した最新鋭のMSを警備用に配備しているのよ!?その囮を貴女一人に任せるなんて無茶に決まってるじゃない!私もやるわ!』
「おまえ達にはお嬢様の救出とネティクスの強奪を最優先に動いて欲しい。それに連中から目立つ人間は少ない方がいいだろうからな、私一人でも逃げ果せてみせるさ」
『フブキ・・・・・・けど貴女一人にそんな危険なことを任せるなんて・・・』
「何、連合の雑魚共に捕らえられる程カテゴリーSは伊達ではない。それに本来はタイタニアの娘さえいれば此方から攻め込むつもりだったのだ、美香の仇も含めてブルーコスモスの連中にはせいぜい八つ当たりさせてもらうとするさ。だからいい加減いつまでもうじうじするのはやめろメグミ。おまえが私達の司令塔だというのにらしくないぞ」
不安に思う感情を抑えられない通話相手のメグミにフブキは余裕そうな笑みをたたえながら語った。愛里寿やメグミ達と違って自分は実戦にて敵を殲滅する兵器として造られた強化人間、はじめから戦闘行為は自ら引き受けるつもりだった
『・・・・・・わかったわ。その代わり絶対無茶しないでよね!愛里寿を助け出してネティクスも強奪して皆一緒に宇宙へ帰ってやろうじゃない!』
「ああ、そうだな・・・」
「あ、こんな所にいたのですねフブキさん!やっと見つけました!」
突如、端末越しではない声が生の声が聴こえ振り返ると倉庫の表側から此方を覗き込む絹代の姿があった。また彼女が現れたことにフブキは怪訝に満ちた表情へと変わった
「・・・何の用だ小娘」
「今日はとても暑いですしこれから皆さんと一緒に海にでも行きませんか?宇宙生まれのフブキさんに本物の海を見せたいと思って・・・あ、お電話中だったんですね・・・ごめんなさい・・・」
『え、誰の声?ひょっとして貴女友達できたの?』
「日取りが決まったら連絡しろ。切るぞ」
乱雑に通話を切るとフブキはスタスタと絹代の存在を無視する様に通り過ぎ歩き去ろうとした
「ま、待ってください!一緒に海行きましょうよフブキさん!皆さん貴女が来ることを楽しみにしてるのですよ!」
「行く訳がないと他の者にも伝えておけ。・・・全国大会に出てやらなかったのだ。もはや皆私を同胞とは見なしていないはずだ」
「そんなことありません!確かに私や皆さんもフブキさんにどんな事情があるのか知りたいところですがそれでもフブキさんは知波単の一員なんですから大会に参加してくれなかった位で嫌いになるはずがありません!」
「・・・この際はっきり言わせてもらうが私は貴様らの様な弱者が何よりも好かん。己の意思で道を拓こうとせず先人が敷いた道を盲目に進む貴様ら弱者がな。・・・これ以上私につきまとうな」
フブキはまたも冷ややかな声で絹代を突き放す様に言葉を放ち、彼女を置いてその場から去って行った。フブキの言葉が深く胸に突き刺さり絹代は何か言い返すことも彼女を呼び止めることもできず呆然と立ち尽くすことしかできなかった
その後絹代はフブキが皆のことを嫌いと言っていたのは口外せず胸に留め挨拶や最低限の言葉だけしか掛けるだけで以前ほど言い寄るのを控えるようになった。フブキにとっては力無き弱者は否定し拒絶しなければならない存在、いつまでも彼女と心の距離を縮められないことに絹代はこの上ない寂しさを感じていた。それからまた時は経ち、季節は残暑の残る初秋へ移り始めた
ある日の夜、敷き終わった布団の上で絹代は同部屋の上級生達と寝転びながら談笑していた。フブキは当初から決して自分達の輪の中に入ろうとせず皆彼女と色々な話を交わしたくとも本人が依然として乗り気になってくれなかったので複雑な心境だった。だがこの数日絹代はフブキの様子が少しだけ変化したように感じていた。以前まで彼女は周囲が凍りつかせる様な緊張感を放っていたのだが現在時折少し思い詰めた表情を浮かべていたため、先日少し耳に入った電話での会話の内容もあり絹代は彼女に何かがあったのか心配になっていた
『先日所属不明の一機のMSが日本有数の学園艦、BC自由学園に不法上陸しました。犯行に使用された機体はモビル道用のジム・ナイトシーカー。MSは上陸後市民からの通報により出動した警備隊のMS部隊と接触し交戦、幸い死傷者は出ませんでしたが学園艦の警備隊MS全機、及び市街地やその他施設に甚大な被害が与えられました。犯人は警備隊を殲滅後機体と共に逃走し犯行時刻学園艦近海に位置していた孤島にて犯行に使用したMSを自爆処理後現在も行方をくらましております。戦闘行為のみを行った犯人の動悸、目的は未だ判明しておりませんが現在『犯行を行ったのはスペースノイドである』という情報だけが明らかになっており警察は現在地球に滞在、在住中の宇宙出身者を中心に捜査を行っています』
付けたままだった部屋に一つだけ置かれたテレビにふと目をやるとワイドショーが映されており何やら珍妙な事件が報道されていた。そもそもモビル道用のMSで警備隊に開発される実兵器用のMSに敵うはずがない、そんな離れ業をやってのけるパイロットなど居るはずがないのだ
「そろそろ消灯時間だ。皆布団に入れ〜」
室長がテレビを消し吊り下げ灯のヒモに手をかけたため絹代達は皆布団の中へと入り明かりが消され部屋は闇に包まれた
その日は夏の終わりを感じさせないほどの熱帯夜、窓を開けていても暑苦しく絹代は眠れないままでいた。ふと隣の布団の、いつも部屋の角端に布団を敷いて眠るフブキの方を見るといつも通り此方に身体を向けることなくふて寝していた
「あ、あの〜フブキさん・・・?」
どこか彼女から違和感を感じていた絹代は何とか元気づけてあげたいと思い声を掛けてみた。当然返事が帰ってくることはなくもう寝入ったものだと思い絹代は悪戯っ子の様にニヤリと笑みを浮かべ布団から起き上がるとフブキの布団の中へ移ろうとした
「お、お邪魔します突撃〜・・・」
「・・・・・・起きてるぞ」
布団を捲ろうする絹代にフブキは横になったまま制するように呟いた。絹代は仰天し思わず自身の布団の上に正座した
「お、起きていたのですか!?」
「声が大きい・・・一体何の用だ?」
「ええと・・・何だかここ最近フブキさんが何か悩んでいる様に見えまして・・・今までそういう風に見えたことは1度もなかったのでどうしても気になってしまい・・・」
「私が悩んでいる様に見えるだと・・・?いずれにせよ貴様には関係なければ話した所で無駄な事だ」
「そういう訳にはいきません。もしフブキさんに何かあったのなら一人で抱え込むことなく私でよければ相談して欲しいです」
絹代はフブキの方を見据えはっきりと自分の意思を伝えた。フブキも身体を起こし見つめてくる絹代へ眼を合わせた
「・・・わからん。何なのだ貴様は?何故私に親しくする・・・そこまでして私に取り入りたいのか?」
「そんなんじゃありません!とてもお強くて気高い心を持っているフブキさんは確かに私の憧れです・・・けどそれ以上に他の皆さんと同じように貴女と仲良くなりたいんです!」
「仲良くなりたいだと?弱者の分際で勝手な娘だな。私には貴様らとつるむ気が一切ないというのがまだわからないのか?」
「はい・・・そんなに私達のことが嫌いなんですか・・・?」
「ならば教えてやろう。貴様ら弱者と徒党を組んでしまえば私までもが同じ弱者へ成り下がる。弱者など所詮強者の都合のいい様に利用されるだけの宿命・・・私には御免だな」
「・・・・・・そんなのあまりにも悲しいじゃないですか。そんな風に自分より弱い人を見下して寄せつけようとしないなんて・・・そんなの悲しすぎると思います・・・」
「何が悲しいのだ。強者が上に立ち弱者が淘汰されていくのは世の真理、最も自然摂理に適っていることだろう?にも関わらず何故私が弱者の気持ちを尊重してやらねばならんのだ。現に貴様ら地球人も今まで我々に
流石にここまで言ってやれば諦めるだろうとフブキは思ったが絹代は依然として真剣な面持ちと熱く燃えるような瞳で此方を見つめていたのだ。わからなかった。フブキにはここまで何度も辛く当たり否定し続けても己の意思を頑なに変えず貫こうとする絹代に対し少し恐怖に近いものを感じ圧倒された
「・・・私はフブキさんか言っていることは間違っていると思います。確かに私の様な何の力も無い弱い者はフブキさんにとって嫌な存在かもしれません。けれどそれだけで他の誰かと言葉を交わそうともしないで否定しようとするのは絶対に間違ってます!」
「・・・間違っているだと?」
「だって私達は同じ人間じゃないですか。同じならどんなに考え方や好き嫌いが違っても絶対に一緒になれると思うんです。なのにそんな風に強さの大小だけで人を判断していたらいずれフブキさんの周りから誰もいなくなってしまうかもしれないじゃないですか。そんなの寂しすぎますよ・・・」
「・・・・・・わからん・・・何故そこまで私のことを考えられる・・・?わからん・・・何なのだ貴様は・・・?私はこんなにも貴様を拒絶しているというのにまだ・・・まだ私と仲良くしようなどと思っているのか・・・!?」
わからなかった、今目の前にいる西絹代という少女が何故躊躇することなく自分へ歩み続けることができるのか、何故自分に対し親身になろうとしてくれるのかが理解できずフブキは絹代に怯える様に後ずさりした。それは自分が敵を倒すことしか能のない強化人間だから、幼き頃から出来のいい強者しか認めない醜悪な大人達に囲まれ育ってきたから・・・・・・だからフブキには図々しいと言われ跳ね返されても諦めずに他者へ親身になろうとする絹代の様に灼熱の如く熱い心を宿す人物を理解できるはずがなかったのだ
「私はどんな人でも真剣に真正面から向き合えば絶対に仲良くなれると思っています。一人で居るのが好きという人もいますが人は一人よりも絶対に誰かと一緒に居なきゃいけない、仲間外れになることもすることは絶対にあってはならないんです。だからこそいつも正面から真っ直ぐにぶつかっているんです!これ以外の方法を知らないので!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だからフブキさんとも仲良くなれると信じています。絶対に諦めたくないです。せっかく出会えて一緒に毎日を過ごしているのですから・・・」
わからない、わからなかった、絹代が何なのか全く理解できなかった。だが不思議と彼女から自分に初めて優しくしてくれた親友と同じ包み込まれる様な温かさを感じ彼女へ怯えていた感情は振り払われていた
「・・・・・・・・・・・・・・・小娘。名前は西絹代と言ったな?」
「は、はい!」
フブキは再び布団の中へ潜り改まって絹代へその名を尋ねた
「・・・絹代、おまえには少し興味が湧いた。・・・これからは少しだけなら貴様らに付き合ってやらんこともない」
「ほ、本当ですか!?フブキさん!」
「勘違いするな!別におまえ達を認めた訳では無い、見定めてやろうというだけだ!」
「やったー!フブキさんがやっと心を開いてくれました!」
喜ぶあまりぴょんぴょん跳ねる絹代を無視しフブキは不貞腐れたように布団を被りまた先程の様に絹代へ背を見せふて寝に入ろうとした。すると絹代もまたフブキの布団の中へと潜り甘えるように彼女へ背中から抱きついた
「なっ、勝手に入るな!暑苦しいではないか!」
「そんなことありません!フブキさんってなんだかひんやりしてて気持ちいいです・・・」
「私が暑いから出ろというのだ!お、おい!ここで眠るな!・・・全く・・・・・・」
既に寝息を立て始めていた絹代にフブキは呆れたように溜め息をつき諦めて目を閉じた。この時フブキはかつて親友が自分に遺した言葉の意味をようやく理解することができた。強者とは圧倒的強大な力をもって他者を屈服させ従わせることが出来る者ではない、絹代の様にどんな相手とでも絆を紡げることを信じ何事にもぶれることなく誰かと親身に、正直に向き合いぶつかれる者こそが本当の強者であるということを
人が皆絹代の様に熱く、強く生きれたのなら私の様な暴力しか能のない強化人間は世界に必要ない・・・人が皆彼女の様に優しくなれたのなら、美香が望んだ光る世界も実現されるのかもしれない・・・・・・
この熱帯夜において寝苦しい以外の何物でもなかったはずがフブキは絹代から伝わる生命の熱を感じていたかった・・・・・・
以来フブキは以前までの周囲に何者をも寄せ付けないほど冷たく振る舞わなくなり絹代や他の生徒達とそれなりに交流するようになった。何に悩んでいたのかは何者教えてくれなかったがそれでもようやく彼女が心を開いてくれた、これから仲間として絆を深められることが絹代にとって何よりも嬉しかった
「芋掘り大会・・・何故MS乗りの我々がこんな事に参加しなければならない?」
「秋の芋掘り大会は知波単恒例の伝統行事だからな!宇宙生まれの君には焼き芋大会まで是非楽しんで行って欲しい!」
「宇宙でも芋くらい育てている。パイロットが土で汚れねばならんなどどうかしているぞ」
「あれれ?ひょっとしてフブキさん・・・さては土の中で寝ているミミズさんが怖いのですね?」
「・・・・・・何?」
既に引退した前任の隊長に不満を漏らし立ち去ろうとしたフブキであったが絹代の挑発的な言葉を受けピタリと立ち止まり彼女へ目尻をつり上げた
「あれ程私達のことを弱い弱いと言っておきながらミミズさんが怖いだなんて・・・やれやれですねフブキさんは」
「おい絹代、勝手に私を虫嫌いにするな。そこまで言うならいいだろう。 来年作物が実らん位芋もミミズも根こそぎ掘り起こしてやる」
フブキは目付きを狩猟者の眼へと変えると畑の方へ進んでいき絹代も嬉しそうに彼女の後を追った
「あ、あのなーフブキさん?ミミズは掘らなくていいんだぞー?」
「フブキさん何だか随分と柔らかくなりましたね。ようやく地球での暮らしに慣れたのでしょうか?」
「それもあるかもしれないが・・・・・・西があの人の凍りついた心を溶かしたのかもしれないな・・・」
そしてフブキはモビル道においてもより積極的になり訓練や度々組まれた練習試合にも自ら参加するようになった。以前は全力を出さず流すように適当にやっているのが見え透いていたがそれも無くなり練習試合ではあるが知波単学園へ勝利をもたらす程活躍した。加えて時には弱者と蔑んでいた他の隊員達にも自分の強さの秘訣を教えようとすることもあったのだ
「いいか、おまえ達は皆それなりに腕は立つが何も考えず無我夢中に突撃してしまうから負けるのだ。突撃に拘るのは勝手だが人にはそれぞれの実力に見合った戦法というものがあるのだぞ」
この日知波単学園モビル道部隊は訓練のため宇宙へ上がり、旗艦のリリーマルレーンに各艦のMSパイロットが集められフブキ主導のもとブリーフィングが行われており着いて来ていた絹代をはじめ中等部の生徒達も同席しその様子を見学していた
「見合った戦法・・・・・・しかし我々にはやはり突撃以外の戦い方はありえません!実際フブキさんは試合でも突撃のみで相手をねじ伏せているのだから私達にもその極意を教えて欲しいです!」
「・・・極意なんてものはない。ただ目の前にいる敵に勝つ、それ以外に考えていることなどない」
『艦内緊急連絡!10km前方にプラウダ高校のMS小隊補足しました!』
「見つけたか・・・出撃する。おまえ達があくまで突撃しかないと言うのならば私の突撃を改めて見せてやるとしよう。手本に丁度いい獲物がお見えになったのでな」
アナウンスを聞きフブキはニヤリと笑いブリーフィングルームを出て行こうとしたが新任の隊長が少し腑に落ちなさそうな顔で咎めた
「あーフブキさん?本当にプラウダ高校にその〜"どっぐふぁいと"だったかを仕掛けるのか?」
「無論だ。おまえ達には野良試合と言った方が伝わるか」
「おお、野良試合!・・・けどそれってあまりよろしくないことなんじゃ・・・?」
ドッグファイトとはフブキが宇宙にいた頃仲間達とよく興じていたものらしく、宙域にて相手を求め彷徨うMS部隊同士が互いに示し合わせた上で戦闘演習を行うというものだった。ただフブキはそれをプラウダのMS部隊へ単騎で仕掛けようとしていたのだ
「フッ、連中が私の挑発に乗らなかったならば諦めるさ。最も先日我々が送った練習試合の申し出を奴らは返答もせず蹴ったのだ。此方を侮り格下と見なしているに違いない、だから直接面と向かって挑発し奴らに買ってもらおうという訳だ」
「なるほど・・・しかしお相手に突然挑んでおいて返り討ちになった時はどうするのですか?」
「その時は連中からたっぷり修正を受けることになるだろうな。絹代、おまえも私と来い」
「わ、私もですか!?でも私はまだMSを操縦したのとは・・・」
「私の機体に乗れと言っているのだ。さっさとスーツへ着替えるぞ。もたもたすれば獲物に逃げられてしまう」
思っても見なかった展開に絹代は仰天したがフブキは意に介さず部屋を出てロッカールームへ向かったので絹代も急いで彼女の後を追った
ノーマルスーツを着用した絹代はMSデッキに到着すると蒼色のパイロットスーツへ着替えたフブキと共に彼女の宇宙用のMS、ゲルググMのコックピットハッチへ上がった。先にコックピットへ入ったフブキからシートの後部に掴まってるい様指示され絹代はこれから初めて乗るMSを前に緊張で少し戸惑いながらもコックピットへと入った
「フブキさん、どうして私も連れていってくれるのですか?」
「死なば諸共というやつだ。おまえには入学以来随分世話になったから万一捕まった時におまえも道連れにしてやろうと思ってな」
「そ、そうなんですか・・・?」
「・・・冗談だ。おまえには一番近くで見ていて欲しい」
起動したゲルググMのモノアイに灯が入り誘導員の指示に従いゆっくりと歩行し始めゲルググMの両足をカタパルトへセットし艦側部に備えられたレール型のハンドグリップを掴んだ
「絹代、覚悟はいいな?」
「は、はい!・・・できれば安全運転でお願いします」
「フッ、善処はしてやる。・・・鉢特摩フブキ、マリーネ出るぞ」
『了解です!フブキさん、大漁を!』
「ああ、任せておけ」
カタパルトから射出された推力も乗せ二人を乗せたゲルググMは勢いよく宇宙へ出撃して行った。絹代を乗せているため普段よりも速力を落としての出撃らしいがそれでも進行方向から向かってくるGに絹代は叩きつけられるような衝撃を初めて受けた
「うぐぐ・・・・・・はぁ、はぁ、フブキさん!これがMSなんですか!?」
「ああそうか、おまえは宇宙でMSに乗るのもこれが初めてなのか。どうだ?初めてのMSは?」
「最高です!自分も星になったみたいというか宇宙の一つになれたというか・・・そんな感じがしてとっても楽しいです!」
「ほう・・・・・・その感覚は覚えておくことだ」
フブキは更に機体を加速させ前方に展開するプラウダ高校の部隊へ急速接近した。プラウダの隊員達も超速で接近してくるゲルググの存在に気づきオープンチャンネルで何の用か尋ねてきたがフブキが一言二言彼女達へ猛毒を吐いてやると直後に通信が切断され火線を集中させてきた
「わわわっ!フブキさん撃ってきましたよ!」
「連中から手を出してくれたか。ならばどうとでも言い訳がつくというもの!」
「べ、別の方からプラウダさん達の応援が来ましたよフブキさん!本当に私達1機だけでもつのですか!?」
「安心しろ、帰るための推進剤は残しておくさ。・・・だからしっかり見ていろ絹代。私の戦いを」
フブキは絹代へはっきりと告げビームサーベルを展開し文字通りの突撃を敢行した。プラウダの主力MSザク改達のマシンガンから放たれる火線を突進しながらも最小の動作のみで回避し格闘戦の間合いへ踏み込んで行った
その後フブキの駆るゲルググMは数多の敵MSを斬り伏せ応援に駆けつけたMS達も含め全て行動不能にし文字通り蹂躙してしまったのだ。一人無双とも言える所業、だが彼女による突撃は正に知波単の皆が理想とする突撃そのものだった。そして一番間近にいた絹代は最も彼女の強く勇ましく美しく、何者にも止めることができない突撃王と呼ぶに相応しい戦いぶりを見届けていた。この宇宙を己の心のまま自由に駆け抜け燦然とした輝きを放つ彼女の姿こそ自分が目標とする本物の戦士だった。ずっと彼女の背を追いかけて行きたいと心の底から思えたのだ
だが彼女との別れはあまりにも唐突に訪れた
宇宙から地球へ戻ってきて数日後、季節は冬を迎えていたのもあり外では雪が降り始め身震いするほどの寒さに見舞われていた。その晩絹代は寒さを防ぐため布団にくるまるように床に就いていたがふと目が覚めてしまった
「・・・・・・あれ?フブキさん?」
ぼんやりとした視界を擦ると何故か寝巻き姿からいつもの服装へ着替えたフブキの姿がはっきりと見えた。何故か布団を押し入れへ片付け傍らに荷物が纏められていたため絹代の意識は覚醒させられた
「・・・起きたのか。やれやれ、おまえにだけは見つからずに行きたかったのだがな」
「ど、どこかへ行かれるのですか!?こんな真夜中に・・・」
「静かにしろ。・・・わかった、少し付き合え」
フブキは荷物から厚手のコートを取り出し絹代へ放った。すると荷物を背負い早足で部屋の外へ出ていってしまい絹代は寝巻き姿のままコートを羽織り彼女を追った
外へ出た二人、幸い天候は落ち着いておりフブキから受け取ったコートに全身がすっぽり収まったのもあり特に寒さは気にならなかった。それ以上に前を行くフブキが深刻そうな面持ちで沈黙を貫いていることが絹代は何よりも気になった。嫌な予感は確信へ変わろうとしていた、彼女は今この学園を去ろうとしているのだと。二人は言葉を交わさぬまま静寂な夜の雪道を歩き続けた。そしてコンテナが多く集積する学園艦の埠頭へ入って行くとフブキは突然静寂を破り絹代へ切り出した
「・・・世話になったな、絹代」
「フブキさん・・・?何を言っているのですか・・・?」
「おまえには本当に世話になった。おまえのおかげで私は変われた、本当の意味で強くなることができたのだ」
「へ、変なこと言わないでください!まだ始まったばかりじゃないですか・・・せっかく仲良くなれたのに・・・」
堪えきれず絹代は胸の内を発した。フブキの表情から彼女が決意を固めたと、もはや引き止めることは叶わないと察していたがそれでもフブキには行って欲しくなかったのだ
「それに・・・それにまだフブキさんの突撃を教えてもらってません!私もフブキさんみたいに強くてカッコよくて勇気のある人になりたいんです!」
「おまえが私と同じである必要はない。私があの日おまえ達に突撃をして見せたのはおまえ達があくまで自分の意思で突撃に拘り続けるというのならばその指標になるかもしれんと思ったからだ。だがおまえ達はまだまだこれからだ。己の意思で選んだ道を進み己の生き方というものを定めて欲しい。それがおまえ達にとって正しい生き様となるだろう」
「フブキさん・・・・・・でも・・・それでも嫌です!行かないでください!」
「絹代・・・・・・」
冷たかったあの頃のフブキには到底出せるはずがなかった灼熱の様に熱い言葉を全て受け取った絹代、それでもフブキへ行って欲しくない想いは変わらなかった。涙を零さずにはいられなかった
「行かないでくださいよ・・・フブキさん・・・」
するとフブキは涙ぐむ絹代をそっと撫でてあげた。今まで決して見せることのなかった優しく暖かな微笑みと共に
「泣くな絹代。私には役目がある、遂げねばならない役目がな。そうだな・・・それが終われば直ぐにおまえ達のもとへ帰ってきてやろう」
「ほ、本当ですか・・・?」
「ああ本当だ。約束しよう。私も正しい家事のやり方とやらをまだ教わっていないからな」
「フブキさん・・・・・・!」
「だからもう悲しむな。またいつか会える・・・・・・いや、必ず会うぞ!絹代!」
フブキは絹代が泣き止んだことを確かとするとその場から駆け出し積み上がったコンテナの上へ飛び上がり山の中へ入った。するとコンテナの山が崩れると共に中からフブキのMS、山の中に隠されていたアッガイが姿を現した
『一つ言い忘れていた。私の名はフブキ・ドゥルガー・マカハドマ。次は本当の名前で会いに来るとしよう』
「フブキさん!・・・待ってます!私はずっと待ってますから!」
『ああ!さらばだ絹代!』
フブキのアッガイは飛翔するとそのまま海の中へと潜って行った。これは今生の別れではない、またいつか必ず会えることを信じて絹代はフブキを見送った。また暖かい日常を共に過ごせることを願って
フブキもまた絹代と、知波単学園の皆と会うことを願った。自分と暖かく接してくれた皆と、自分を兵器としての強化人間から真っ当な人間へ産まれ変わらせてくれた絹代とまた会えることを祈り、役目を果たすためフブキは進み始めた・・・
その後絹代以外の面々もフブキが居なくなったことを大いに悲しみ、彼女が残した言葉を胸に自分が思う正しき生き様を見つけることを誓った。知波単学園伝統の突撃に拘るのは未だ変わらなかったがまだまだ始まったばかり、これから自分達にとってまた別の進むべき道に気づき見つかるのかもしれない。その日までは己の憧れた姿を追うことも決して悪いことではなかったのだ
だがその数週間後、知波単学園の教務課は退学したフブキが在籍していたというデータを抹消したのだ。それのみに留まらずモビル道に関わるデータ、彼女が存在していたことに関わるデータを全て抹消したのだ。絹代含めフブキを知る隊員達は無論の事ながら猛抗議した。だが教師達も皆絹代達へ申し訳なさそうに頭を下げるだけで撤回は叶わなかった。明確な理由はわからなかったがある日隊員の一人が機械的なオレンジのゴーグルを掛けた連合軍の高官と校長先生が密会しているのを目撃しそのまま影から盗み聞いた所、その密談の中である少女がダカール軍事基地に対し唯ならぬ被害を被らせた、その少女こそ知波単学園の生徒ではないのかという疑いが校長に叩きつけられていたのが発覚したのだ。教師達は何らかの伝で彼女が犯人であると知り連合軍から生徒達を守るためにフブキのデータを予め抹消した、皆がそう理解できたため彼女のことを諦めることにした。そして皆がその胸に彼女の存在を固く胸に留めておくことにしたのであった
これがフブキのいう役目だったのか絹代にはわからなかった。だが例えフブキが何者であろうといっぱいの元気と共に彼女を出迎えてあげよう、だってまた必ず会えると約束したのだから・・・
その後フブキが消えた知波単学園はまた彼女が来る前の試合に勝てない弱小の頃に戻ってしまう。だがフブキが居た一時期に知波単学園と練習試合をした選手達によって何者にも止めることも落とすこともできないパイロット"幻の突撃王"が確かにいたという噂が選手界の中で立ち込めたのであった・・・・・・
「・・・その後フブキさんと一番仲が良くあの人の意志を一番継いでいる者であるということから二年生ながら私が先輩方や他の皆から指示されて隊長に選ばれたという訳です。大分脱線してしまい申し訳ございません」
「ううん。それでそのフブキさんはあれから西さんに会いに来てくれたの・・・?」
知波単学園にかつて絹代の言う幻の突撃王がいたことはみほにとって耳にすることのなかった事実であった。そして数年経った今、結局彼女がまた絹代の前に現れたのかが何よりも気になった
「いいえ・・・・・・あれから随分経ちましたがまだ一度も会えないでいます。でもはっきり分かるんです、フブキさんはまだ確かに何処かにいることを。だから絶対に必ず会える日が来ると今でも信じてます!」
「いいなぁ〜何だかロマンチックで素敵かも〜」
「そういう話じゃないだろう・・・こういうのは物騒だがその人が無事ならばいいのだがな」
「連合軍の方が学校にまで来るなんて普通じゃありませんよね・・・けど西さんはフブキさんが悪いことをする様な人ではないとわかっているのですよね?」
「勿論です!当番をサボったりすることはありましたが決して公序良俗に反する様なことをする人ではありません!だから早く戻ってきて・・・また一緒に洗濯物を洗いたいです・・・」
何年経とうが絹代の想いは変わることなく、そして確実に彼女が何処かで生きていることを感じていた。何故絹代がそんな事を感じられるのかに理由など必要ない・・・・・・絹代はただフブキと会えることを信じ、彼女が望んだ様に熱く強く生き続けようとするだけだった。あの頃から成長した自分を大切な人に見てもらうためにも・・・・・・
家族皆と過ごした平穏な日常がまたいつか戻ってくることを切に願う愛里寿。だが彼女の願いも虚しく刻の歯車は止まらず、また銀河に新たな悲劇が産み落とされようとする。目の前に現れたニュータイプの少年、デシルの言葉はもはや人類が引き返せなくなっている事を意味していた
次回 ガールズ&ガンダム『愛里寿の家族』
もう、誰にも止めることはできない
読んでいただきありがとうございました
メグミが愛里寿を呼び捨てにしていたのは愛里寿がνA-LAWSの大隊長に就任前の頃だからであります。次回は結構前から登場していたνA-LAWSというチーム、その組織について解説していこうと思います
これまでの話のちょっとしたおさらいも兼ねて機動戦士ガンダムにおける強化人間という存在について僕なりに解説しようと思います。本筋には大分関係ありますが全国大会にはあまり関係ないので興味のない方は読まなくても大丈夫です
強化人間とはニュータイプへ対抗しうるための兵器、もしくはサイコガンダムなどを動かすために造られた生体CPU。そして強化人間は造り手達の悪意により戦闘に必要のない過去の記憶を消される、または戦闘に都合がいいように洗脳され刷り込みが入れられるといった非道極まりないを仕打ちを受けて完成するのです。ジオン軍と連邦では強化人間の在り方は大分違いますが上記は両軍に共通することと思えます。人の悪意のみで造られた強化人間は道具の様に扱われるだけ、そのため人から与えられる優しさというものを知りません。だからこそ彼女達を救えるのはカミーユやジュドーといった勇気があり他者の想いを自分の事のように受け止められる者だけなのです。作中でもフォウやロザミィ、プルやプルツーも皆他人へ親身になることができるカミーユやジュドーに救われ兵器ではなく人間へ戻ることができたのです(ロザミィが最終決戦でカミーユのもとに駆けつけてくれたのは彼に感謝しているから、また彼女自身も他人を道具としてしか扱わないシロッコを許せない、倒さなければならないと確信したから)。視聴者の子供達には強化人間の様な少しおかしな他人にも親身になることができるカミーユ達の様であって欲しい、そのメッセージ性は御大のガンダム作品からビシバシ伝わってきます。やはりガンダムは子供向けアニメ、子供にこそ見せるべきアニメなのです
カミーユの様に赤の他人にも自分の事のように接し受け止め悪は悪と断ずることができる強い意思を持つことはきっととても大切なことなのでしょう。ガンダムが作中を通して伝えようとしたそのメッセージを伝えるために本作品では今までアンチョビとトレーズを通じて人が自分の意思を貫けることの大切さを、ゆかりんとマシュマー、西さんとフブキのやり取りを通して他人へ親身になることの大切さを書こうと思いました。個人的にこのことはガルパンにも通じている部分がある気がしましてガルパンのキャラクター達、特に主人公のみほは皆に優しく意思が強く女の子らしく理性的でありながらも勇敢な心を持っています。もし宇宙世紀に住む人が彼女達の様であったならグリプス戦役は勿論、一年戦争も起こらなかったのかもしれないのです
しかし人の性格とは多様であるため皆が皆誰かへ優しくするというのも無理な話なのでしょう。次回ガンダムシリーズの悪役の中でもシロッコ、バスク、ラカンやサーシェスに並ぶただ単純に最悪が過ぎる男キャラクターを登場させます。女の子のように理性的になれず強すぎるエゴを常に抱くのが男、ΖやZZにおいても男達のそういった描写が色濃く描かれています。ガルパンの世界において戦車道は女子の嗜みとされる一方男子がやるのは一般的ではないという認識もそういった側面があるからなのではと考えることができます