ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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 前回のあとがきで次回は箸休め回になりますと予告しておきながら尺や時間の都合上全然そんなどころの内容じゃなくなってしまいました。本当に申し訳ございません・・・。この第二章にのみ限り前回登場したデシルによってかなり胸くそ悪い描写が多くなりますのでご注意ください

 今回はタイトルの通り親子がテーマです。親子といえばしほさんの話になりますがガルパンの劇中における彼女のみほへ対する姿勢は個人的にガンダムの悪役的ポジション、みほが自分の意思で決定し行動したことを許容しようとせず否定し最上とする自分流でなければ認めようとしなかったその思考はかなり大袈裟でありますがシロッコやハマーンに通ずる部分があると思います。ただ本作品におけるしほさんは何度か本編中で述べてきた通り古くから活動し続けてきたライトサイドのポジションになります。いい母親であるかどうかは別として・・・



19話 親子の絆

 愛里寿の前に現れたまだ年端もいかない幼き少年デシル・ガレットは彼女が信じ続けてきたニュータイプの意義そのものを全て否定する存在だった。今まで何人もの生命を遊戯の様に殺め続け未だその残虐極まりない狂気を抑えることなく無邪気に発散させようとするデシル、彼やラグナロク達強化人間を地球へ解き放とうする叔父の衛。お姉ちゃんの願う誰一人として傷つかない愛に満ちた生命溢れる世界が遠のいていくことに愛里寿は涙し、心の中で強く嘆いた・・・

 

 

(じかん)を止めてよ・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 食事会が終了しみほは絹代と明日の合同演習のスケジュールを合わせた後、皆と共に物資運搬用の小型シャトルへ乗り彼女達知波単学園の隊員達とマシュマー達エンドラ学園の隊員達に見送られながらホワイトベースへ帰還した。帰還する際にマシュマーが別れを惜しんでか優花里へやたらと熱心に話題を交わそうとし、シャトルが発着した際も流石に少し困惑を隠せない優花里へ姿が見えなくなるまで延々と手を振り続けていたのだ。そんな彼の様子から沙織は不服そうに頬を膨らませながらみほへ耳打ちした

 

(むぅ〜、ねぇねぇみぽりん!ゆかりんばっかちょっとズルくない!?)

 

(え?ズルいってどういうこと?)

 

(だってマシュマーさんってば絶対ゆかりんにぞっこんじゃん!やっぱりパイロットの方が男子にモテるのかなぁ・・・)

 

(そ、そんなことないと思うけど・・・)

 

 マシュマーはみほ達にとって初めて出会った宇宙で実際に産まれ生活し続けてきたスペースノイドだった。彼から宇宙という今まで知り得ることのなかった世界の現実を聞いたことにより、一度彼の失望を買ってしまったことで自身の浅はかさを知ったことによりみほ達は自分達の間だけでなく宇宙の人々を想い繋がり合おうとする大切さを地球に住むより多くの人々へ伝えていきたい、二つの世界のために何か小さなことからでも立ち上がりたいと勇志を抱くことができたのであった

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『アハハハハハ!アハハハハハハハハ!』

 

 映像はとある宙域にて、宇宙巡洋艦のブリッジに内蔵された光学カメラから録画されたものだった。映像を映すモニターには黒く染められた戦闘機の様な形をした謎の機体が2つ、巡洋艦付近に展開した2機の【RX-81FC ジーライン・フルカスタム】からの射撃を不規則な軌道を描きながら超速で機動し一発も掠めされることなく回避していた。そして謎の機体達からはパイロットの聴けば耳に残る程甘ったるく、まだ幼さが残る少年の嗤い声がけたたましく響き渡らされていた

 

『動きが見え見えなんだよねお姉ちゃん達!一回でも僕に当てることができたらお姉ちゃん達の勝ちなんだからもっとちゃんと狙ってよ!』

 

『いや・・・!お願いだから当たってよ・・・!どうして当たらないのよ!』

 

『ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・お願いだから許してください・・・』

 

『どうして謝るの?お姉ちゃん達がモビル道用のMSになんて乗ってるから僕がせっかくお姉ちゃん達に合わせたゲームを考えてあげたのにもしかして楽しくないの?・・・・・・だったら死んじゃえよ』

 

 パイロットの少年は口を尖らせ不機嫌そうに呟くと機体を横方向にローリングさせながら本体下部にマウントされたビームライフルを片方のジーラインフルカスタムへ照準。狙いをすますと少年は悪魔の様な笑みを浮かべながらトリガーを引くとライフルの銃口は発光し標的へ熱線を発射した

 

『あぁ・・・!パパ・・・ママ・・・・・・!』

 

 放たれたビームは機体の胴を捉えパイロットの女性隊員を、大気圏突入にも耐えうる程の特殊フレームで造られたコックピット共々撃ち貫き機体本体を爆散させた。そう、戦闘機に装備されたビームライフルはモビル道用のビーム兵器ではなく、軍用のMSが使用する実物のメガ粒子砲だったのだ。そして周辺には今撃破された機体の他にも既に撃ち抜かれた何機ものMSが無惨な残骸へと成り果てて宙を漂っていた・・・

 

『プっ!大学生のくせにパパとママだってさ!ダッサ〜い!』

 

『な、何なのよ・・・・・・何なのよこの子・・・!』

 

 襲撃されていたのは地球の女子モビル道大学選抜の一部隊だった。演習中突如として乱入してきた謎の戦闘機を駆るパイロットの少年から強制される形で彼の提案した遊戯(ゲーム)に巻き込まれ、巡洋艦内のクルー達も出撃したMS隊を艦砲射撃で援護しあの機体に一発でも射撃が命中することを祈った・・・・・・だがもう()()()()()()()MSはあと1機。この宙域の管理局に通報し応答に出たスペースノイドはいずれ救援が駆け付けると言っていた救援部隊などいつまで経っても来る気配がなく、皆ただ目の前で行われている惨劇に恐怖し怯え絶望し泣き出し身を震わせることしかできなかった

 

『あれれ?もうあと1機しか残ってないじゃん。こっちは全然本気出してないんだから頑張ってよねお姉ちゃん達〜』

 

『お願いします!このことは絶対に通報しませんし誰にも言いません・・・!だからもう見逃してください・・・・・・お願いだから・・・・・・!』

 

『ふーん、当てれば逃がしてあげるって言ったのにそんなに嫌なんだ・・・ならもういいや。そんなに止めて欲しいならもう終わりにしてあげるよ。残ったお姉ちゃん達には最後にいいモノ見せてあげるね』

 

 少年は並列飛行する2機の戦闘機を一度大きく散開させ、その後2機共旋回し対面しあう形で合流しようとしていた。その最中、2機の戦闘機は突如として姿形を変え初め少年の声が発せられてた方の戦闘機本体からは頭部とビームライフルとシールドを携えた両腕が顕現し上半身へと、もう片方の機体は下半身へと変形し2機はドッキング。そのシルエットはまさしく人型、1機のMSへと変形したのであった

 

『凄いでしょ?かっこいいでしょ?このバウは僕専用のモビルスーツ・・・新しく造ってもらった僕専用の玩具なんだ・・・』

 

『嘘・・・・・・そんな・・・・・・』

 

 緑のモノアイを鈍く発光させる漆黒のMS、そのMSは今まで一度たりとも目にしたことがない姿形をしていた。モビル道用でなければ地球連合軍に配備されている従来のMSでもなく表舞台に出てきたことのない完全なる新型、あるいはこれまでこの宇宙でなりを潜め続けてきた異星人を思わせた。するとMSは左腕のシールドの内側から先端部にかけて両刃の熱刃、ビームアックスを展開し此方へ見せつけるように掲げた

 

『遊んでくれてありがとうお姉ちゃん達。ちょっと物足りないけど楽しかったよ・・・・・・それじゃあバラバラにしてあげるよ!』

 

『いや・・・いやぁーーーー!!!』

 

 漆黒のMSはバーニアのスラスターを噴かし残った最後のジーラインフルカスタムへ急速接近しビームアックスで一閃、機体をコックピットごと真っ二つにし続けざまに映像の視点となっていた巡洋艦へ向けてゆっくりと接近した

 

『きゃあああああああ!!!』

 

『ふ、艦に穴が空いてる・・・!・・・・・・いやぁ!来ないでぇ!』

 

『いや・・・いやだいやだいやだ!死にたくないよぉ!』

 

『うはっ!死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえー!アーッハハハハハハハハハハ!』

 

 巡洋艦内の隊員達から発せられる叫び声と泣き声に少年は温情を見せる素振りなど一切見せず機嫌良く高嗤いを響かせながらいたぶる様に艦本体へ攻撃を開始、残虐非道極まりない。そして漆黒のMSがブリッジにビームアックスを振り下ろした瞬間、録画映像は途切れてしまった

 

 シュバルツ・ファング本部の司令室にて、大型モニターでこの映像を見ていたしほは昂る怒りに表情を鬼のように険しくさせ、司令室内の他の局員達はしほと同じく怒りを顕にする者もあれば、ある者はあまりにも凄惨な光景に映像から目を逸らし、無惨に殺された少女達に同情し涙する者もいた。だがモニター通信を介してしほ達と共に映像を見ていたニュータイプ研究所現所長にして現在モビル道を通して人類の進化を促すことを根底とする流派、島田流家元の座に着く島田衛は無表情のまま目立った反応を示すこともなく、今日自分に通信による対談を持ち掛けてきたしほの様子を見ていた

 

「・・・この映像は昨日其方の月防衛軍が演習地として私有する宙域にて残っていた艦の残骸から回収し解析された映像です。既存のモビルスーツ群に機種が登録されていないこんなMSを製造できるのは貴方々しかいない・・・これは月防衛軍の所属と見て間違いありませんね?」

 

 しほは今にも激発せんとする怒りを抑え冷静さを保ちつつ衛へ問い詰めた。宇宙へ上がっていた女子大学選抜の本隊から独断で何処かへ行ってしまった艦一隻がしばらく経っても本隊へ帰還せず行方不明になったかもしれないと通報を受け、しほは昨日調査のために出撃。月近くの宙域にて残骸と成り果てた例の艦を発見した際は何があったのかと息を呑み、残骸のブリッジ部から映像データを入手、シュバルツ・ファングへ帰投した後にデータを解析した所この映像が出てきたという訳だった。帰投中に同じ宙域にて娘のみほが襲撃されている所にも遭遇したため、この件と共にしほは今日こそ月議会の、陰から全てを操る島田衛の悪行を問い詰めはっきりさせるつもりでいた

 

『・・・勘違いをしてもらっては困りますね西住しほ様。我々の開発部が製造する製品にこの様な機体は存在しません』

 

「認めて下さらなくて結構。・・・この件は貴方々のこれまでの悪徳を含め地球圏代表議会に報告し地球圏全域に公表させます。そうなれば軍需技術を発展させてはならないという禁忌を破った貴方と月議会の現議員達は検挙され総辞職、研究所と代表議会の解体は免れません」

 

『僕とこうして話す度に貴女はいつもそう仰る。現に連合軍の人間が直々に僕達のもとへ出向いたことは一度もない。皆僕達が潔白であると承知しているようだ』

 

「・・・・・・今まではそうだったかもしれません・・・だがこの宇宙で何の罪もない生命が人の悪意によってこうして無惨にも奪われたのです!もうこれ以上代表議会にも・・・貴方々にも言い逃れをさせる訳にはいかない!」

 

 母が歪めた世界を正すため今まで戦い続けてきた。地球と宇宙、分かたれつつある世界に住む人々が本当の意味で手を繋ぎあうことのできる真の平和を実現するために。先代月議会議長ラステイル・ファフニールや連合軍准将にして地球圏代表議会議員の一人ブレックス・フォーラ、彼らをはじめ自分と志しを共にしてくれた何人もの同士達が悪意ある者達により謀殺されてきた。だからこそしほは宇宙へ移住した人々へ一切の関心や協調を示そうとしない地球圏代表議会の議員と地球連合軍の高官達、地球政府の実情をいいことに跳梁し続ける月代表議会や衛のニュータイプ研究所の存在だけは絶対にのさばらせたままではいられなかった。世界を変えなければならなかった・・・

 だがしほの言葉に衛は依然として無表情を崩すことなく憤怒に燃える彼女の出方を伺おうと見据え続けていた

 

『・・・西住しほ様。貴女はシュバルツ・ファングの指揮者でありながら何もお分かりになっていない、世の都合というものを洞察できていないようだ』

 

「・・・なんですって?」

 

『地球圏の人類が永劫に繁栄し続けるには世は再生という名の変革を成さなければならない・・・そのためには人類の未来を導く新たなる創造主が必要なのさ・・・・・・。その映像を提出するために貴女が議会へ赴くのは懸命ではありません。それでも思いとどまるつもりはないのですかな』

 

「無論です。この期に及んで何を言うかと思えばまたわからないことを・・・覚悟しなさい。いつまでも自分達が世界の中心に居座り続けられるとは思わないことね。新しい時代を創るのは私達老人であってはならないのよ」

 

『フフッ・・・これは警告だよ。貴女もそう簡単に世が自分の思い通りに動くと思わないことだ』

 

 しほを逆撫でるように衛は微笑し、彼女との通信を切断した。こうして衛と対談したのは初めてではない、彼は対談の度に此方の心情や出方を全て見透かしていたかのようにほくそ笑み、事実彼の思惑通り此方が提出し続けてきたニュータイプ研究所と現月代表議会の解体が可決されることはなかった。だが自分がこの映像を提出すれば地球圏代表議会も重い腰を上げるはず・・・しほは湧き上がる怒りを堪えオペレーター達をねぎらい司令室から渡り廊下へと出た。廊下には扉の前でオレンジのパイロットスーツを着込んだ二人の男が待機しており側近のようにしほの両脇を固め彼女の後へ続いた

 

「・・・あの映像に出てきた子供とモビルスーツ、やはりニタ研の連中が関わっていると見て間違いないようですな。本当に胸糞の悪い連中だ・・・」

 

「ええ。もうこれ以上彼らの好きにはさせない・・・来月の代表総会で決着をつけ必ず彼らを解体させるわ。ただ先程も言いましたがアロウズの中にみほを狙っている者達がいる・・・アロウズはモビル道のチームとはいえ連合軍の正規パイロットを遥かに凌ぐ実力を持つ者達。このシュバルツ・ファングにも仕掛けてくるかもしれないわ」

 

「懲りずにアロウズの連中がみほお嬢様を攫いに来るってんなら俺とリカルドで追っ払ってやりますよ。それに向こうにはガトーだっているんだ、俺達に任せてください」

 

「悪いわねアンディ、リカルド。・・・ただみほのもとへは私も行かせてもらいます」

 

 しほの言葉に後へ続いてたアンディ・ベイとリカルド・ヴェガは仰天した

 

「しほさんまで来ることはありません!貴女は司令としてこの本部で構えているべきだ!」

 

「貴方達のことは勿論信用してるわ。ただ・・・・・・ひどく胸騒ぎがするの。それにこれ以上ニュータイプだのという夢想でしかない存在のためにみほを振り回させたくないの」

 

「・・・そういう事ならば了解しました。我々は今からでも出発できますが機体はどうしますか?ブロッサムは現在調整中なので出せませんが・・・」

 

「私の分のドダイとディジェを準備するよう伝えておいて。スーツへ着替えたらすぐデッキへ向かうわ」

 

「ディジェで出られるのですか?教導用じゃなくて実戦用のモビルスーツで出るなんてほどでは・・・」

 

 しほが所有しているMSは普段モビル道の指導に使用するガンダム試作0号機ブロッサム、そしてシュバルツ・ファングの警護とあくまで武装勢力を検挙する目的で用意させた【MSK-008R リック・ディジェ】の2機だった

 

「相手はそれ程の手練よ。昨日はモビル道用の機体だけだったが次は映像の少年の様に実兵器を装備してくるかもしれない・・・貴方達はリック・ディアスのコックピットで待機しておくように」

 

「了解です。しかし相変わらずしほさんはみほお嬢様には甘いですな。まほお嬢様が嫉妬なさいますぞ?」

 

「茶化さないでリカルド。まほには私の後任として後を継ぐ使命がある。それはあの子自身も自覚している。・・・・・・もし私が倒れた時あの子が私の復讐を果たすことに燃えたなら世界を破滅に導いてしまうかもしれない。だからまほにとって私は良い母親でいる訳にはいかないの」

 

「倒れるだなんて不吉なこと言わないでください。貴女にはまだやるべきことがあるはずだ。娘さんもしほさんも俺達が体張ってでも守ってみせますよ」

 

「ありがとう二人共。ただ何度でも言わせてもらうけれど私のために命を落とすようなことだけはしないと絶対に約束しなさい」

 

 MSデッキへ向かう二人と別れしほはパイロットスーツへ着替えるためロッカールームへ向かった

 引っ込み思案で大勢を先導することを苦手とするみほと比べまほは臆することなく人々の先頭に立つことができる芯の強い心を持っており自分の後を継ぐ"四代目"になることへの才覚と自覚も持っていた。故にまほが自分の跡を継ぐ者になることに悪影響を及ぼさせないため彼女が持とうとする趣味へは徹底的に管理制限しモビル道に関してもはじめから西住流を志させることから何もかもしほ自らが決定し、幼少の頃から誰よりも厳しく接し指導し後継者になるために必要なことを叩き込み続けてきたのだ。それでもまほは一切の弱音を吐かず応えようと着いてきてくれたから愛おしかった。しかし唯一誤算だったのは中学時代にまほが友人を作ってしまったことだった。まさか単なる一般人の娘が、それこそ黒森峰女学園の生徒がまほへ寄り付こうとするなど思ってもみなかったが高等部へ上がる前に排除することに成功したのであった。一時は不安だったがその後彼女は誰にも進むべき道を惑わされることも妨げられることもなく成長し自分の後任、自分を凌駕する指導者になりうる程の実力を着実に備えてくれた。そんなまほの成長にしほは心から安心し彼女へより厳しく自分の思想を継承し自分の果たすべき役目に没頭することができた

 そして現在、昨年の全国大会で敗れてしまったことも誤算の一つであったが改めて跡を継ぐ者として相応しくさせるため部下に任せた修行も完璧にこなしてくれた。その頃自分は地球連合軍とνA-LAWS及び月防衛軍との小競り合いを止めるためまほを気にかけている暇はなかったが届けられた報告には安心させられた。みほはニュータイプなどと称され周囲から好奇の目を向けられることがあったため何かと気を配り陰から手を回し守ってあげる必要があったが、まほは外部から志しを揺るがされる様な心配など一切する必要がないほど誰よりも強く気高く、大衆から圧倒的羨望を受けるまでに成長してくれたためしほ自身も絶対的な信頼を彼女へ寄せるに至っていたのだ

 だからこそしほは自分が同士達の様に倒れた時まほの心を揺らがせたくはなかった。まほのことを愛しているからこそ彼女を褒めることや直接愛を示してあげることは一切せず、ただ信頼しいずれ彼女に全てを託そうとしていた。まほとみほを愛しているからこそ彼女達の未来のために自分達老人が創り上げてしまった隔たれた二つの世界を正しい世に変えるために己の身を捧げ戦い続けることを決意していたのだ

 

 

 だがしほは知る由もなかった。そんなことになり得るはずがないと考えることすらなかった。この時地球にいたまほは既にマリー・タイタニアの手中へ堕ちていたなどと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、そう・・・・・・ルナリアン達の方も面白い役者を揃えているようね・・・」

 

 地球、黒森峰女学園学園艦の学生寮にて・・・その晩まほの自室に泊めさせてもらっていたマリーは部屋の窓から夜空の向こうに広がる宇宙を見つめ何かの気配を感じたのか微笑みをたたえていた。窓から差し込む薄明るい月の光は寝巻きとして貸してあげた白のYシャツのみを着用していたマリーの全身を照らし妖艶な雰囲気が立ち込められていた。外した仮面を枕元へ起き床に就いていたまほは眠ろうとする気配を感じさせないどころか生気を発する彼女が不思議でならなかった

 

「・・・まだ眠らないのか?」

 

「あら、起きていたのね。もう少ししたら私も休むから気にしなくていいわ。・・・それとも貴女も眠れないのかしら?」

 

 眠れない、それは事実だった。絶望的に暗く闇に包まれた宇宙空間を一人孤独に何ヶ月も漂流していたあの時の事が時折悪夢として現れたから、親友も妹も居なくなった故自分の傍に居ようとしてくれる人物が居ないことに絶対的な孤独を感じながらも決してそれを表に出すことは許されず皆が世間が期待する西住流の西住まほを演じなければならず自分一人になった時にしか弱さをさらけ出すことができなかったから。アズラエルに保護され回復し地球へ帰ってきた後も毎晩うなされ孤独故の涙でベッドのシーツに沢山のシミを作っていた。だが今日という日の晩は涙を流すことはなかった、それは今日出会ったマリーがこれからは自分のために傍に居てくれると言ってくれたから。眠れずにいたのはこの先自分がどうするべきか分からず悶々としていたからであった

 

「一つ聞きたいことがある・・・」

 

「何かまだ悩みごとがあるようね。私に相談してくれないかしら?」

 

「・・・君は私に力を与えてくれると言った。みほと安斎を取り戻すために必要な力を・・・だが具体的には私はどうすれば今よりももっと強くなれるんだ?」

 

「ん〜そうねぇ〜・・・・・・まほ、貴女はとても大きな才能を持ち合わせておきながら今までお母様の示した通りに生きてきた。お母様の期待に応えるために彼女の言うことに従い続けてきた。こんな窮屈な学園に通っているのも母と世俗大衆が求める西住流の跡取り西住まほという役者を演じなければならなかったから。違うかしら?」

 

「私が役者だと・・・?」

 

「ええ、けど役者というよりは今の貴女は西住しほにとっての所謂操り人形かしら?母親の言うことに反することも疑いを持つこともない単なる操り人形に世の俗人達を思いのままに動かすことはできない。力を持つことはできないのよ」

 

「・・・確かに私はお母様から示された道をただ言われるがまま進んできたのかもしれない。だがそれは私がみほを守るため・・・大切なものを失わない力を手に入れるためだ。誰よりもパイロットとして強くなることができるからお母様の西住流に沿って従い続けてきたんだ・・・結局その西住流と共にあって敗れたのだからもはやどうすればいいか分からなくなったよ・・・」

 

 マリーの言っていることは正しかったのかもしれない。事実仮面を付ける前の自分は強くなるために世間一般が最強と認める西住流にただ沿って成長してきた、母の後継者になれる程強くなれればみほとアンチョビから見限られ見捨てられることは決してないと思っていた。力しか取り柄のない自分にはその方法しか思いつかなかったから・・・・・・するとマリーは窓の方から此方の方へ歩み寄ると頬へと手を伸ばし優しく撫で柔らかく微笑んできた

 

「誰よりも強くなる、そんなのとても簡単な話よ。貴女には才能があるのだから自らの意思が望むまま行動すればいい。そしてこの私と一緒に来てくれることさえ望めば必ず強くなれるわ。そのためには先ずお母様の教えとこの学園を捨てなければならないけど・・・」

 

「・・・黒森峰を出ることはできない。この学園に居ない限り私は全国大会に出場できない・・・全国大会の舞台に上がれなければできない相談だ・・・」

 

「それは違うわまほ。この黒森峰女学園に所属しているのは貴女のお母様や世俗が求めるシュバルツ・ファングの後継者とした象られた西住まほ。その仮面を付け今生まれ変わろうとしている貴女とは全くの別人よ」

 

「別人・・・・・・だからといって何が変わると言うんだ・・・?」

 

 黒森峰女学園に生徒として、母や皆が知る西住まほは今現在の私ではない・・・マリーがそう言っているのは伝わってきたがそんなものは私感でしかないはずだった。自分が転校先でモビル道を始めることを正当化できる手段などあるはずがないと思っていた・・・

 

「別人なら他の学園に転校して新しくモビル道を始めてもなんの問題もないはずでしょう?それにそもそも私のお爺様のジャミトフ閣下にお願いしてしまえば貴女が転校先でもモビル道を続けられるよう連盟に認めさせるなんて容易いことなの。最も貴女が私と同じ様にあの方に忠誠を誓う必要があるけれど」

 

「なっ・・・・・・連盟を脅迫するつもりなのか・・・!そんなことをしてまで私は・・・」

 

「強くなるということはそういうことよ。時には他者を蹴散らしてでも自身の望みを押し通さなければならない時がある・・・・・・ただ今私が言ったことを貴女は拒むことだってできるわ。全てはまほ、貴女次第なのよ?私と一緒にムルタの学園へ転校して新しいまほとして新たな力を手に入れるか・・・それとも私とは行かずこの学園で世の俗人達が求める西住まほを演じ続けるか・・・・・・」

 

 非常に決定し難い選択肢に思えた。自分が弱き故に去っていたみほや安斎を取り戻すための力を手に入れるためとはいえ自分の帰還を待っていたエリカ達皆を完全に裏切るなど・・・まして関係ない多くの人にも多大な迷惑をかけてまで自分が望む未来を掴もうとするなんて間違っているに決まっている・・・・・・・・・

 

 

 

 ・・・・・・否、彼女達だって()()()()()()ではないか。己の道を進み未来を掴むために自分を裏切って遠く離れて行ったではないか。そして何よりも彼女達と違いマリーはいつまでも私に寄り添い抱きしめてくれると言ってくれた。そんな彼女の言葉を信じ着いて行くことになんの誤りがあるというのか。ならば私も・・・・・・

 

「ふふっ、答えは決まったようね?」

 

「・・・・・・わかった。私も君と共に行かせてくれ。この学園も西住の籍も全てを捨て去ってでも君と共に行くことを選びたいんだ。これは全て私が独断で決めたこと・・・みほと安斎と同じく私も己の意思で私が望む未来を拓くために進ませてもらう・・・」

 

「ふふふ・・・・・・貴女はもう西住まほじゃない。今ここで西()()()()西住まほは死んだ。これからは新しいまほとして私と一緒に進みましょう?」

 

 マリーは満足気に微笑み手を頬から離し握手を求める様に差し出した。差し出された彼女の白く透き通った肌の手をまほは何の躊躇もなく彼女の手を固く握り返した

 

「こんな私で良ければよろしく頼む、マリー・・・」

 

 今自分を愛してくれるマリーへ尽くすため、みほとアンチョビを自分のもとへ取り戻せる力を手に入れるため・・・母の後継者として誰よりも西住流を培ってきた自分を捨てマリーと共に行くことをこうも簡単に選択してしまったのであった

 

「ありがとうまほ。共に世界をより良く導くために戦いましょう?・・・先ずは早速だけれど私と一緒にジュピトリスへ来て欲しいわ。出発は明日になるけど大丈夫かしら?」

 

「ああ、転校の手続きは後からでもできるから問題ない。私がBCへ転校するなんてアズラエル理事長には大層驚かれるだろうな・・・」

 

「それもそうね。ならムルタだけじゃなく皆も驚かせてあげましょ。生まれ変わった貴女を誰も無視できるはずがないのだから披露してあげなくちゃ・・・・・・なんだか私も眠くなってきちゃったわ。隣で寝てもいいかしら?」

 

「あ、ああ。窮屈かもしれないが許してくれ・・・」

 

「うふふ、ありがとう。やっぱり貴女は誰よりも可愛いわ、まほ・・・」

 

 マリーはまほのベッドへ上がると当たり前のようにまほを抱きしめてきた。まほは突然の抱擁に身体を強ばらせたが次第にマリーの温もりによって自然と安らぎ眠りへと落ちていった

 母の期待、隠された愛を感じることが出来なくなる程まほは今の自分と親身に接し寄り添おうとしてくれるマリーの完全な虜になってしまっていた。西住流も母の後継者になることなどもはやどうでもよい、彼女と共に行くことに自分の未来をも全て賭けようとしていた。だがしかしそれは忠義を尽くす相手が母からマリーへ変わっただけ・・・・・・それこそまほはマリーにとって正真正銘の操り人形へ成り果てようとしていたのだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 母の星で全国大会の試合に向けて絹代達知波単学園と共に着実に実力を備えていったみほ達。だがフォン・ブラウンからみほを狙い母の星へ向け特攻してきたフブキ達と激突することとなる。みほを守るため急行するしほ、そして同じニュータイプであるみほに興味を示したデシルはシュバルツ・ファングへ向けてサダラーンを出航させる・・・

 

次回 ガールズ&ガンダム『引かれ合う魂』

 

 みほを巡り三つ巴の戦いが幕を開ける

 

 




 読んでいただきありがとうございました

 しほさんの部下として今回登場したアンディとリカルドはガンダムCDAの設定になりますがアポリーとロベルトのエゥーゴ在籍前の名前になります(多分本名。CDAにアンディの性が出てこなかったからアンディ・ベイにしたのは許して・・・)。本作品の世界におけるブレックス准将は宇宙世紀と同様の実権者でありますが既に亡くなってしまったという設定です。ただブレックスにはアンチョビ外伝に登場している通り亡くなった彼の意志を継ごうとしている娘が居るということを覚えておいて欲しいです
 前回をはじめ何度か解説してきましたが本作品の世界におけるモビルスーツの存在、モビル道用MSと実戦用MSの差異の設定は次回以降より明るみにしていこうと思います。これより下記は僕個人の持論になります。本編にも関わってくる内容でありますので興味のある方はよろしくお願いいたします






 主な内容は言ってしまえば本作品のラスボス、西住まほさんに関してです。先ず僕の独自解釈の話になりますがガルパンの全国大会決勝戦にてみほがまほに勝利したのは必然だったのだと考えています。まほは国際強化選手に選ばれ高校戦車道最強の黒森峰女学園の隊長を務めている様にとにかく最高の選手であることが伺えます。そんなまほは自身の戦車道は母しほの戦車道そのものであると劇中で発していますがしかしそれは自分の意思で決定し見出した戦車道ではありません。まほ自身母の戦車道を受け継ぐことこそが、長女としてみほの代わりに自分が跡取りを務めようというのが彼女の意思によるものであったとしてもそれはあくまで自分以外の人間を主体に置いている、自分の意思で自分独自の道を切り開いていないのです
 そんなまほに対してみほは自分の意思で決定した自らの道を貫き続けました。故に母の敷いた道を進んでいたまほはみほに勝てるはずがない、敗けてしまって当然だったのです。シャアの名言にもある通り新しい時代を創るのは老人達ではない、若者達は誰かに操られること圧せられること流されることなく自分の意思で自分の未来を創らなければならない、それを理解している大人にならなければならないのです。みほが最終的にまほに勝利したことと同様にこれらのことはアムロやカミーユ、アナザー作品から挙げるならばヒイロやキラなどの主人公達が最終的に敗れることなく勝利できた所以であると感じています(対して歴代ガンダム作品の主人公達と違い自分の意思で未来を開こうとせずオルガの言う事を聞くだけだった三日月は最終的に殺されてしまいます。鉄血のオルフェンズ自体何を伝えようとして描かれていたのか分かりませんが)。上記のことあって僕はしほさんに定められた道に従うだけだったまほさんを敢えて弱々しく描くことに至りました。パイロットとしての実力は最上級でも自分自ら望んだ未来を切り開こうとすることができる程心が強いとは限らない、その心理はごく普通の女の子なのだから。そしてアンチョビ外伝にて自分の心のまま望む未来を掴むための使命に燃え貫き進み続けていたアンチョビをトレーズに操られていると言い放ったまほは皮肉にもマリー様につけ込まれ踊らされることとなります。これを言ってしまうとΖガンダムのファンとして非常にナンセンスですが人が皆ニュータイプと称されている彼らの様に己にとって正しいと思った行動を貫き世界の平和な未来を掴もうと立ち向かえるほど強く生きることは通常難しいことなのかもしれません。
 これらは僕個人のガルパンにおけるみほとまほ、そして宇宙世紀でニュータイプと呼ばれている者達への解釈なので本当に正しいかは別です。これだけは断言出来るのが両作品のキャラクター達から伝わってくるように自らが見出した道を曲げられることなく貫き続けることができる者が最強であるというのは必然なのでしょう。ただ注意しておいて欲しいのはそれらは現時点の本作品におけるアンチョビや西さんをはじめとする善良な心の持ち者だけでなく彼女達とアンチテーゼ的存在ともいえる己がエゴのためにしか動かない完全なる悪人達にも当てはまってくるということです
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