ボーリング場
俺「んじゃ、名前を打ち込むか」
友人1「俺から入力するな」
友人2「了解」
友人1「…………よし、打ち込んだぞ」
友人1→アスラン・ザラ
俺→キラ・ヤマト
友人2→シン・アスカ
会話
俺「あはははは! アスランときたか! それじゃ俺はキラ・ヤマトだ!」
友人2「あ、俺もキラにしたい!」
俺「うっせ! お前はシン・アスカにでもしてろ!」
午前の授業が終わり、颯はISスーツの上から制服を着て、食堂へと向かった。
授業が終わった時に一夏から「皆で一緒に屋上で食べないか?」と誘われたが、先約があると言って断った。
食堂に着いたら簪はまだ来ていないようで、五分ほど待ったら簪が来た。
「お待……たせ……」
簪は走ってきて息も少し上がっていて、額に僅かに汗をかいている。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。授業が少し延びたの?」
「…う、うん。そんなところ……」
颯は簪がなんか隠しているようにも見えるたが、無理に聞き出す必要は無いと判断して何も言わなかった。
「そっか……それじゃ入ろっか」
「うん」
颯と簪が食堂に入ると十人近くの女子がテーブルで話をしていた。
「ねえ、聞いた? あの噂?」
「聞いた聞いた!」
「え、何の話?」
「だから、あの織斑君の話よ」
「いい話? 悪い話?」
「最上級にいい話」
「聞く!」
(……まさか、このパターンは……)
颯はそのグループの話し声が聞こえてきて、嫌な予感がして、そのグループに静かに近付いた。そして簪もその後をしっかりと付いてきた。
「まあまあ落ち着きなさい。いい? 絶対これは女子にしか教えちゃダメよ? 女の子だけの話なんだから。実はね――」
「それはすごい」
「……まだ、何も言ってないわよ?」
「えっ? 何も言ってないけど?」
「……えっ?」
その場にいた十人近くの女子が声のした方、つまり颯を見る。
「一夏の話をしてたみたいだけど、何を話してたの?」
「……知らないの?」
「知らない」
「私も知りたいから早く教えてよ!」
このIS学園で『一夏の幼なじみ』として、箒、鈴、颯を知らない生徒はいない。
しかし、噂を知らない生徒は颯よりも噂が気になっていた。
「――解ったわよ。実はね、今月の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際できるんだって」
「えええっ!? そ、それ、マジで!?」
「マジで!」
「うそー! きゃー、どうしよう!」
(……やれやれ……情報漏洩を避けるために部屋に入ってから言えって言ったのにやらなかったな。しかも、これから察するに付き合えしか言ってねーな)
颯は呆れ果てていた。せっかく色々とアドバイスをしたのにも関わらず、箒は一つも守ることが出来なかったのだから。
(これは……今度、箒とじっくり『お話』をする必要があるみたいだねぇ……)
颯の口の端が無意識に吊り上がり、目が全く笑っていない。くろ〜〜〜い笑みを浮かべた。
この笑みは颯の母親、桃子の『冥王モード』を何回も実際に受けてしまったことで習得したのだ。
実際にあの素敵な笑顔を受けた時は、それはそれは恐いなんてものじゃない。極限の絶望を感じるのだ。さすが、あの『管理局の白い悪魔』の母親と同じ名前だけのことはある。
「「「「…………」」」」
その時、その場にいた女子全員――もちろん簪もだが、颯の黒い笑顔を見て、恐怖のどん底にいたのを颯本人は知らない。
◇
時間はあっという間に流れ、放課後となった。
放課後になって簪に会いに四組に行ったら、四組の女子が俺を見たら若干怯えてたように見えたけど、何故だ?
それから簪がすぐに俺の方に来て、
「ついて来て……」
それだけ言って簪と二人で四組をあとにして簪の後ろをついて歩いた。
「……どこに行くの?」
「……………」
どこに行くのか質問をしても答えてくれない簪。
まぁ、着けば解るんだろう。
「……ここ……」
「ここって……」
四組から歩いて大体十分くらい、着いた場所は――『生徒会室』。
簪は一度深呼吸をしてからノックをした。
コンコン。
『どうぞ』
簪がノックをしたら、中から虚さんの声が聞こえた。
「……失礼します」
「失礼します」
「いらっしゃい……簪お嬢様、城戸さん」
生徒会室に入ると、虚さんが迎えてくれたが、楯無さんがいない。
「楯無さんは?」
「会長は自由気儘な人ですから」
「……まるで猫ですね」
「いつものことなので、もう馴れましたよ」
楯無さんもそうだけど、本音もいるから虚さんは苦労人なんだな。
「城戸さん、本音は?」
「今日は日直です」
「……今日はちゃんとした理由があるのね」
普段から来るのが遅いのか……本音。
「本当に苦労人なんですね」
「もう馴れましたよ……二人ともどうぞ、お茶の用意は出来てますから」
来客用のソファーに簪と並んで座り、虚さんが俺と簪の前に紅茶の入ったカップを置いて、虚さんが向かい側に座る。
「それにしても、お昼に簪お嬢様が教室に来られて『放課後に生徒会室に行く』と聞いた時には驚きましたよ」
「ひょっとして簪がお昼遅かったのは、そのことを虚さんに言いに行ってたから?」
俺は簪にそう訊いたら、簪は頷いた。
成る程、簪が何か隠しているように見えたのはそれだったのか。
「私としては姉妹仲良くしてくれるのが嬉しいですよ」
「私も虚さんの意見に賛成です」
さて、楯無さんは簪が生徒会室に居たらどんなリアクションをするのか少し楽しみになってきた。
「城戸さんには兄弟とかいるのかしら?」
「いますよ。今年小学校に入った双子の弟と妹が」
「……双子がいるんだ……」
「そう。弟の方がお兄ちゃんで、弟が秋、妹が彩って言うの」
「それは是非、逢ってみたいですね」
「機会があったらで――」
「あら、颯ちゃん。来てた……の……」
三人で話していたら、楯無さんが入ってきた。そして簪に気付いて固まった。
「か、簪……ちゃん……?」
どうやら楯無さんでも簪がここにいることは想像をしていなかったようだ。
(まぁ、当然と言えば当然か……。自分を避けている相手が来るとは思わないよな)
「……お姉ちゃん」
「ど、どうしたの? 虚ちゃんに用事があったの?」
「……違う。お姉ちゃんに用事がある」
「わ、私……?」
楯無さんと簪、互いにぎこちなく話をする。虚さんと俺は何も言わず黙って見守っている。
簪はソファーから立って楯無さんの前に立つ。
「お姉ちゃん……ごめんなさい」
「…………へ?」
簪の言葉に唖然とする楯無さん。
「颯から聞いたの。お姉ちゃんはずっと私のことを気にかけてくれてたって」
それは今朝の朝食の時に簪から楯無さんとどんな話をしたのか訊かれて答えた。
「私はずっとお姉ちゃんが恐かった。なんでも出来て、私とは全然違う。だから私は恐かった」
「……簪ちゃん」
簪は顔を俯いて、両手でスカートを握る。その手は若干震えている。
楯無さんもそれに気付いた様で心配そうに見る。しかし、それだけ簪が勇気を出しているのが解る。
「初めて整備室で颯を見た時はお姉ちゃんと重なって見えた。だけど、一緒にいて、話をしたりして、お姉ちゃんとの重なりが消えて、颯と友達になりたいって思った」
簪は自分が思っていたことを包み隠さずに言う。
「それで私は、お姉ちゃんとちゃんと向き合いたいって思ったの」
簪は俯いていた頭を上げて、じっと楯無さんのを見る。
「思い込みだけじゃなくて……昔みたいにお姉ちゃんと一緒にいたい」
簪はじっと楯無さんの顔を見る。俺からは死角になって見えないが、多分決意して迷いはないと思う。
「………」
楯無さんは簪を抱きしめた。
「ごめんね。簪ちゃんを気にかけても何もしなくて。簪ちゃんが私に引け目を感じてたのは解ってた。だけど、どうしたらいいのか解らなくて何も出来なくて、お姉ちゃん失格だよね」
「そんなこと、ないよ。お姉ちゃんがそんな風に私を気にかけてくれてたことなんて知らなかった」
互いに自分の中にあるものを打ち明ける簪と楯無さん。今はぎこちないけど、時間が経てばもっと自然に話せるようになると思う。
「――!」
不意に虚さんと目が合う。
「もう大丈夫ですね」
「……そうですね」
虚さんは簪と楯無さんを見ながら微笑んだ。
本当に虚さんが言うようにもう大丈夫だと俺も思った。
STORY 08 END
こんにちわ、ニュースのお時間です。
ニュースキャスターの『ニャホニャホタマクロー』です。
まず、最初のニュースです。昨日、昼頃に指名手配されていた桃太郎氏が逮捕されました。
二日前、桃太郎氏は鬼ヶ島で鬼達に対して刀で斬りつけるなどの暴行を行い、30名以上の鬼達が負傷をおい。
また鬼たちが持っていた金品を全て奪ったとして暴行窃盗罪として指名手配されました。
そして昨日の昼に『日本一と旗を掲げている桃太郎を見た』という市民からの通報があって逮捕されました。
警察の取り調べに対して桃太郎氏は「おじいさん、おばあさんいま帰るからね」と錯乱しており、真相を聞き出すのには時間がかかるもようです。
また桃太郎氏の共犯である。犬、猿、雉は警官隊を振り切って逃走中とのことです。
市民の皆様、見つけ次第、警察にお電話してください。