「これってなんだ?」
「一夏、お前はこれすら解らないのか」
「仕方ないよ、箒。今までISとは無縁な生活をしてたんだから」
放課後、今日授業で言っていた専門用語を箒と俺の二人で、一夏に教えていた。IS専門用語の辞書はないから辞書代わりになっている。
ちなみに放課後とはいえまったく状況は変わってない。また女子が他学年・他クラスから押しかけ、小声で話し合っている。
「女の園に一人の男子とかWそれなんてエロゲWWW」
「夏の新刊はこれに決まりだね!」
なんとなく耳をすませてみたらとんでもないことが聞こえてきた。この学校新人類がいる。
「ああ、織斑くん。まだ教室にいたんですね。良かったです」
「はい?」
俺と箒と一夏は声が聞こえた方を見ると、担任の千冬さんと副担任の山田先生が書類を片手に立っていた。
「どうしたんですか?」
「えっとですね、織斑くんの寮の部屋が決まりました」
そう言って一夏に部屋番号の書かれた紙とキーを渡す山田先生。
ここIS学園は全寮制。生徒はすべて寮で生活を送ることが義務づけられている。これは将来有望なIS操縦者を保護するという目的もある。
「俺の部屋、決まってないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」
「一夏は『世界で唯一男のIS操縦者』だから登下校中に何かあったら困るんだよ」
「はい。城戸さんが言ったような訳と政府特命もあって、とにかく寮に入れるのを最優先しました。一ヶ月もすれば個室の方が用意出来ますから、しばらくは相部屋で我慢してください」
「部屋は解りましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備出来ないですし、今日はもう帰っていいですか?」
「あ、いえ、荷物なら――」
「私が手配をしておいてやった。ありがたく思え」
「ど、どうもありがとうございます……」
「まあ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」
すげえ大雑把。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、織斑くんは今のところ使えません」
「えっ? なんでで――」
パコォンッ!!
俺はノートを丸めて棒の様にして一夏の頭をそれなりの力を入れて叩いた。
俺は身体能力を伝説の
俺が一夏を叩いたことで、千冬さんはノーリアクション。山田先生と箒は少し驚いている。
「いってえー! 颯、いきなり何を――」
ビシッと丸めて棒の様に持ったノートを一夏に向けて黙らせる。
「一夏、解ってんの!?」
「な、何がだよ?」
「IS学園に男子は一夏だけなんだから男湯なんてあるわけないでしょうが!!」
「……あー……」
なんで一夏はこういうところが鈍いのかな。
「一夏、貴様まさか破廉恥なことを!」
「待てって、気づかなかっただけだ!」
一夏は今にも殴り掛かりそうにしている箒をなだめる。
「……えっと、それじゃあ私たちは会議があるので、これで。ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」
校舎から寮まで五十メートルくらいしかないのに、どうやって道草をくえというんだ。出来たら逆に凄い。
「城戸、お前には少し話がある」
「……解りました。それじゃ、一夏と箒は先に帰ってて」
「お、おう」
「あぁ、解った」
千冬さん、山田先生、俺は教室を出て歩き、千冬さんは人気の無いところで歩みを止めた。
「ここならいいだろう」
「織斑先生、会議があるので手短にお願いします」
「解っている」
「話はクラス代表を決める戦いのことですか?」
「それもあるが、私の問いに答えてもらう」
「……解りました」
「まず、何故入試の実技で専用機を使わなかった?」
「せ、専用機!?」
そう言えば山田先生知らなかったけ、忘れてた。
実技試験では俺は打鉄を使った。
結果は打鉄の俺とラファール・リヴァイヴの教官との戦いで、俺が懐に入って近接ブレードで斬るのと同時に教官から零距離でショットガンを撃たれて引き分けた。
「代表候補生じゃないのに専用機で実技を受けると色々面倒なことが起きそうだったので」
「織斑先生は知っていたのですか!?」
「ああ、知っていた。次にクラス代表戦のことだが……」
山田先生混乱気味だけどほっといていいのかな?
「お前は織斑のサポートに専念して戦え。そうしなければ織斑のためにならない」
「そのつもりでした。メインはセシリアと一夏の試合なので」
「解っていればそれでいい。それじゃあ城戸も早く寮に帰って織斑に色々教えてやれ。いきますよ、山田先生」
「は、はい!」
千冬さんの呼び掛けで混乱から戻った山田先生。千冬さんと山田先生は会議に行って、俺は寮に向かう。
俺は極力手を出さない。白式が
「……あっ、一夏の部屋番号を訊くの忘れてた」
まっ、原作通りなら1025号室だろう。
そういえば、まだ自分の部屋どこか確認してなかった気がする。
(誰と相部屋だ?)
俺は部屋番号の書かれた紙をポケットから出して見る。
『1025室』
俺は書いてある部屋番号を見る。
(……あれ? 見間違いか?)
俺は目を擦ってからもう一度見る。
『1025号室』
紙にはたしかにそう書かれていた。
(……一夏と相部屋?)
いや、ひょっとしたら一夏は別の部屋かもしれない。とりあえず行ってみよう。荷物は部屋に届いているはずだ。
俺は寮に向かった。
「……なに? これ?」
現在、1025号室のドアの前にいる。ドアの数箇所に穴が空いている。
木刀の突きで空いたような穴。一年生で木製のドアに穴を空ける程の腕を持つ人物は一人しかいない。
(……箒イベント? でも俺もここなんだよな)
部屋の番号を確認する。ドアには『1025』と書いてあるプレートがある。
(とりあえず入るか)
俺はドアを開けた。
「やめろって箒!!」
「うるさい!! おとなしく成敗されろ!!」
一夏が片膝を着いて箒の木刀を白刃取りしていた。
「……二人ともなにしてるの?」
「なっ、ななっ……!?」
俺の存在に気づいて一夏から飛び退く箒。解放された一夏は、安堵のため息をついて尻餅をつくように座る。
「……で、なにがあったって、ドアに複数の穴が空いてて木刀を白刃取りしてたの?」
「箒と六年ぶりだから色々話しがしたくて俺の部屋に一緒に入ったんだ」
それだけじゃ騒動にはならないはずだけど。
「そしたら、なんか俺以外の荷物が置いて有ったんだ」
一夏は奥に置いてあるボストンバッグを指さした。俺のだった。
「んで、俺は『相部屋になったやつの荷物か?』って言ったんだ」
なんとなくその先が解ってきた。
「『でも男は俺だけだから相部屋はやっぱ女子なんだよな』って箒に訊いたら……」
「箒が木刀を振りかざしたの?」
俺が言ったことに一夏は黙って頷いた。
「『不謹慎』とか『ふしだら』とか言って木刀で……」
それでも木刀で木製のドアを突きで貫くのは、刀で斬鉄するのと同じくらいなことだ。
「でもそれって一夏は悪く無いよね? 一夏が望んだ訳じゃないんだから」
「そう言ったんだが、聞く耳持ってくれなくてな」
うん、実に箒らしい気がする。
「……っていうか、木刀って一夏の……じゃあないよね?」
荷物は着替えと充電器って千冬さんが言ってたし。
「箒が背中から抜いて出したんだ」
「木刀を仕込み刀みたいに持ってたの!?」
なんで常備してるんだよ箒。
「颯、どうしてここに来た」
箒は話題を逸らすためなのか、問いかけてきた。
「どうしてって……私の部屋ここだよ」
「一夏と一緒になるのはお前なのか!?」
「まあそうなるね」
箒が驚いて言うが、俺は慌てることは一切なく、平然と答える。
「女子と一緒ってのは問題あるとは思うが、見ず知らずの相手よりは助かる」
「そうそう、おかげで一夏にたっぷりとISのことを教えられるしね」
「それに関しては本当に助かる。解らないとこだらけだからな」
そうだ。箒いるから今の内に言った方がいいな。
「そうだ、箒にちょっとお願いがあるんだけど」
「………なんだ?」
箒がちょっと不機嫌そうな顔で返事をした。多分、俺が一夏と相部屋だからだろう。
「一夏に剣道の稽古をつけて。中学の時、帰宅部で腕がなまってると思うから」
「なぜ私が……」
「同門だからいいでしょ?」
俺は箒に近付いてそっと耳打ちする。
「それに、稽古をすれば毎日放課後一夏と二人っきりになれるよ?」
「……!!」
お〜、箒が赤くなった。本当に箒は解りやすいな。
「それでどうする?」
俺は箒から離れて訊く。
「い、いいだろう。同門のよしみで稽古をつけてやる。一夏、明日の放課後に剣道場に来い」
「………俺の意志は……?」
哀れだね一夏。まあ、あおったのは俺なんだけど。
それから、箒は部屋に戻って、一夏がドアの修理申請に行った後に、ISのことを教えてIS学園の初日が終わった。
STORY 01 END
〜おまけ〜
「それじゃあね」
「あ、はい」
三年生の先輩が出ていった。
「これで、一年生が六人、二年生が十三人、三年生が十八人が自己紹介に来たね。さて、後何人くるのかな〜?」
「颯、なんでそんなに楽しそうに言うんだ?」
「気のせいじゃない? それにしても入学初日からこれとは凄いよね。さすが一夏」
「なにがさすがなんだよ」
「まぁ色々と頑張りなよ。このハーレムキング」
「なにをだよ!!」
「女の私に言わせるの? いやん、一夏は大胆だね〜」
「なにがだ!」
コンコン。
「おっ! きたきた。ほら一夏。出た出た」
「……なんなんだよ」