とある転生ハンターの一生   作:あきのみそら

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主人公がまだ息してない……活躍は多分次話以降かなぁ?
あと文章、長いのか短いのかちょっと判らない。


ハンターの原石

 

倉庫の中に入るとハンターシリーズの武器が一通り、まるで美術品であるかのようにズラリと並べられていた。

一瞬、その光景に目を奪われてしまい思わず立ち止まってしまう。自分だけではなく他の者達も似たように立ち止まっていたようだ。

とはいえ何時までも突っ立っているわけにはいかない。頭を振って意識を無理やり戻すと武器を選ぶために動き出した。

 

 

「さて……どんな武器にするか」

 

 

モンスターハンターの世界には大剣やランス、弓、ヘヴィボウガン……およそ十数種類の武器が存在する。

シリーズが進むたびに新しい武器も増え、操虫棍やスラッシュアックスといった物。フロンティアでは更に武器種により多彩な型も存在する。

ブシドースタイル、エリアルスタイルと言った特殊なスタイルに狩技と呼ばれる物も、ゲームでは記憶に新しい。

 

 

だが、この世界ではその辺りの武器事情がかなり違うようだ。倉庫にある武器の種類を見ればそれは直ぐに理解できた。

 

大剣。太刀。片手剣。双剣。ランス。ガンランス。ハンマー。弓。ライトボウガン。ヘヴィボウガン。

 

この辺りはほぼ当然の様にあるが、ドンドルマには無い筈のチャージアックスや操虫棍も並べられている。

少なくとも、据え置きと携帯ゲームに出てきた武器種はこのドンドルマでも一般的に普及している位には馴染みがあるようだ。

フロンティアで存在した特殊な型や各スタイルは存在するのかは分からないが、武器を使っていけばその辺りの疑問は解決する筈だ。

 

 

「決めたぜ!俺はガンランスだ」

 

「私は弓にするか」

 

「ククク……この双剣……気に入った」

 

「…………ふん」

 

 

そんな事を考えているうちに他の者は次々と自分が気に入った武器を手に取り倉庫を後にしていく。

17人もいるとはいえこの数と種類だ、どれかが無くなるという事はあり得ないだろうがそろそろ決めた方が良いだろう。

 

この日の為に身体を鍛えてきたとはいえ、生き物を殺すために武器を持つのは初めてだ。

今日選んだ武器種だけを使い続ける……というつもりはないのだが、初めから癖の強い武器を使うと武器を変える時に苦労するだろう。

 

 

「それならこれにするか」

 

 

考えた末に一組の剣と盾を手に取った。握り込み、周囲に当たらない様に小さく振り回す。気付けば俺が最後だったようで、もう倉庫の中に人影は無かった。

盾の具合も確かめて左腕にしっかりと装着する。腰に剣を付ける為のホルダーも装着し、そこに剣をスルリとしまう。

足早に倉庫から出て剣士用の防具を訓練所の者から受け取った。倉庫にはもう誰もいない事を告げ、ハンター一式らしき防具を身に纏い教官達の待つ広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

(一通り選び終わったようだな)

 

 

 

広場にはハンター一式を着こんだひよっこ共が17人。男が12人と女が5人。近接武器が9と遠距離武器が8。

フンッ!少し遠距離が多いな。ライトが5に弓が2、ベヴィは1か……。

近距離は片手が1、双剣が3、太刀が3、ガンランスが1……ふむ、最後は操虫棍か。打撃武器が居ないのは珍しい。

 

 

「い、いきなり武器を選ばされた……ええっと、ボウガンのリロードは確かこうやって……」

 

「ウッ、オォッ!!フンッ!!っとぉ!!銃身と、盾をそれぞれ、片手で持つのは中々慣れんなぁッ!!」

 

「猟虫……フム……美シイ……ツヤ……」

 

 

ひよっこ共には武器を選び次第、広場で準備ができるまで待たせている。その間に武器の扱いを軽く実感するように言い含めてだ。

ここの訓練所を選んだ連中なだけあって、予め武器の扱い方を座学か何かで予習してきた様な動きをする者が殆どだ。

一部それとは違う者も居る気がするが別段珍しくもない。どちらにせよ、命のやり取りを行う為の武器を初めて持つという事実は誰でも変わらない。

 

 

(今期のひよっこ共は随分多い。最低限の資質を持つ者は年々増えて行っているようだな)

 

(だが、ただ資質を持つだけの奴らは直ぐにこの訓練所を去るだろう。そして、ここで潰れる様なら仮にハンターになれても上級下位が精々……それ以上は望むべくもない)

 

(それでは足りない。あまりにも……8年前に、死に過ぎた)

 

 

そう、今のドンドルマにはハンターが足りない。ただのハンターではなく、強いハンターが。

だから育てなければならない。例えどれ程の苦境や逆境の中にあっても決して心が折れないハンターを。

 

 

(ここはその為の訓練所。今はまだ磨かれていない原石を見つける為の篩となる場所だ)

 

 

広場の上部……モンスターを逃がさない様に高く作られた柵の上で、武器を慣らしていくひよっこ共を見下ろしていく。

 

17人中、武器に振り回され、期待できそうにない奴らは6名。動きには慣れてきているが、身体と上手く噛み合わない者が4名。

 

身体と武器の動きを上手く擦り合わせられた者が5名。……それとは別に、他とはレベルが違う者が2名。

 

 

(今期はアタリか、それともハズレか。さて、見極めるとしようじゃないか)

 

 

「教官~、準備の方が整いましたよぉ?」

 

 

訓練所の職員でもあるヘルパー一式を装備した女がやって来た。頼んでいた用事が済んだらしい。

 

 

「ウム、よろしい。モンスター共の様子はどうだ?」

 

「キチンとお腹を空かせてますよぉ。はぁ、全く手を変え品を変え、毎度の事とはいえ可哀想ですね?スパルタに過ぎますよぉ、これ」

 

 

そう、この訓練所を開いてから必ず行っている恒例行事。歓迎の超実践訓練の準備が整ったのだ。

 

 

「たかだか下位モンスターだ。いざとなれば俺一人で捻り潰せる。事実、今まで一人として死者を出したことなどないからな」

 

「それで見習いさんの殆どがトラウマになって、1週間で全員が逃げ出した期もありましたよぉ?」

 

「16人もいてドスランポス3頭を瀕死にすら出来ん奴らなどハンターに成る資格すら無いわ」

 

 

あの期の連中はとことん根性無しばかり集まっていたと記憶している。

ハンターとして必要な身体を持っていても口だけが達者でヘラヘラとした態度が透けて見えていたぐらいだ。

 

 

「厳しいですよぉ~。せめて同時じゃなくて、時間差で放り込むぐらい加減しないと」

 

「ほう?ではお前ならどれ程の猶予を与えるんだ?」

 

「2分ポッキリですね~。最初の1匹殺しても1分余る計算ですよぉ。優しいでしょぉ?」

 

「ハッ!大して変わらんではないか!!」

 

 

そんなことないですよぉ~。などと不満げに頬を膨らませる奴から目を離し、頃合いと見て柵の上へ身を躍らせる。

そう、この瞬間だ。今この瞬間から、このひよっこ共から光るモノを見つける為の試練を始めるのだ。

ニヤリ、と口角を上げ深く息を吸い込む。……そうして広場へ向けて怒声のごとく叫ぶ!!!

 

 

「突然だがぁ!!!たった今から超実践訓練を開始するぅ!!!腹を空かせたランポス3種類、合計50頭の狩猟だぁ!始めぇ!!!!!」

 

 

お前たちが果たして一端のハンターに成れるかどうか、このG級ハンターが見定めてやる!!!




訓練所にちょっと濃い味感を出してみたらこうなってしまった。
他の訓練所はこんな、こんがり肉をドンッ!!と焼いただけみたいな味付けじゃないのでお許しください。

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