「まず、俺とトーマがあの中を調べてくる。」
一番始めに此処を見つけた時から、コーヘイの中には嫌な予感が立ち込めていた。
(この場所で何かをした事は一度も無いな…。)
経験こそが何よりの武器である彼等は、何より初めての事が一番怖かった。
経験したことが無い逃走が彼等の体力を徐々に奪い、ついに妹達が疲れを見せ始めた。仕方なく経験の無い場所での休憩を余儀なくされたが、此処が安全である根拠は何処にも無かった。
「お前達は、ヤヨイの指示に従いながら此処で待機だ。」
安全そうな茂みにトーマ以外の弟妹達を隠れさせ、指示を出す。
何かあっても武器を持っているこの二人なら対応出来る。大丈夫だとコーヘイは自分に言い聞かせ自分を鼓舞する。
「それじゃ、行くかトーマ。」
少し怯えている様子を見せるトーマの背を叩き先を歩く。
建物の中は、静かで怪しい様子は無い。
(イヤ…少し静かすぎる…。)
始めから感じていた嫌な予感が更に大きくなる。ある程度二人で一緒に調べた後、コーヘイは上を調べるとトーマに伝えると一人で建物の二階へ進んで行った。
自分の勘を頼りに、二階の部屋を一部屋一部屋調べる。
このまま気苦労だけですめばいい。最後の部屋の前に立ったときは、そんなことさえ思っていた。そこには、若干の油断があった。
部屋の扉を開けた瞬間指先に棘が刺さった感覚を感じ、しっかりと自分の足で立てなくなってしまった。
「なんだ…これは…。」
そして、部屋の中には侵略者達が無言のまま銃口をこちらに向けていた。
侵略者達は、アイコンタクトで確認すると武器を一斉に構える。
(死ぬわけには…いかないんだよ!!)
コーヘイは、ふらつきながらも侵略者の一人を持っていた銃で射殺。その後、そいつの元にダッシュし持っている銃を奪う。こちらはマシンガンタイプの銃だった。
残り弾数の少ない自分の銃でもう一人射殺、同じようにマシンガンタイプの銃を奪う。
両手に銃を持ち、部屋にばらまく様に撃ち放つ。
部屋に居た侵略者の大半は、それで死んでくれたが後二人残っていた。
(殆んど掠れて…見えるな…。そろそろ…ヤバい頃合いかもな…。)
それでも、生きている二人のうち一人にタックルをかましても持っていたナイフを奪う。それを使い喉を切り裂く。
もう一人の生き残りは、弾幕のつもりかめちゃくちゃに銃を撃っていた。
(死ぬ直前てのは意外と、なんでも出来そうだな…。)
コーヘイは、その弾幕の中を潜るように侵略者の元にダッシュしタックルをかました。
弾が見えていたのか、その身にはただの一発も銃撃を浴びなかった。
最後の一人もナイフで殺した。今度は心臓辺りを一突き。それで息絶えた。
「コーヘイ兄ちゃん、今大きな音が…。」
戦闘音に気付いてトーマが、コーヘイの居る部屋にやって来てそして言葉を失った。
「大丈夫なの?コーヘイ兄ちゃん…。」
何とかその一言だけ口にした。
「おう、トーマこっちに来たのか。下の階の様子は大丈夫みたいだな。なら、もう平気だ。皆を呼んできてくれ。」
「その前にコーヘイ兄ちゃん…。」
「俺は、大丈夫だ。けど、この人数を相手したから流石に疲れた。先に下で休んどくぜ。」
心配そうな顔をするトーマを追いやり、自分も下の階の暖炉のある部屋の一番大きな椅子にどっしりと座る。
隠れていた全員が、トーマに連れられて暖炉の部屋に集まる。そして、そこで見たコーヘイの姿に全員が驚いた。
「あんた…大丈夫なの?」
ヤヨイが心配そうに聞いてきたので、コーヘイはいつも通りの声音で「大丈夫だ。」と言った。
(まあ、本当はあんまり大丈夫じゃ無いんだが…。)
コーヘイの横で、小言を言っているヤヨイの声を聞き流しながら「さっさと寝ろや。」と小さく呟く。
トーマが、暖炉に火を入れてそこにコーヘイとヤヨイ以外の皆が集まる。
末期の中二病疾患者のコーヘイの腕が疼き出さない事に変な気持ちになりながら、小言を終えたヤヨイも暖炉近くに行く。
夜も更けて、辺りもやたらと静かになる。
一人、目の覚めたコーヘイは弟妹達の顔を一人一人じっくりと見ていた。意識が遠くなりながらも幸せが溢れてくる。
「最後の瞬間まで…絶対に諦めるな…って、いつも言ってる俺が…一番最初にリタイアとはな…。」
自嘲の笑みを浮かべ小声で呟く。
(兄ちゃんは此処で終わるが…、お前達は絶対に諦めるなよ…。)
瞼が重く、目を開けているのも疲れたのか自然と目を閉じる。
(悪いな、お前ら…。先に逝くぜ…。)
『システム、カクニン。人柱ヒトリノ死亡ヲ確認シマシタ。タダイマノズレハ、アリマセン。』