大好きだった兄が死んでしまった。今度こそ上手くいくと信じていた。でも結果は、変える事が出来なくてコーヘイはいなくなってしまった。
リクは、兄への想いを隠しもせずに泣きながら屋敷の倉庫で武器を探していた。先ほど皆でリセットするという方針を決めてきっと必要になると何故か確信したからだ。
「きっと…。絶対に諦めなければ道は…、拓ける…。」
ぐずぐず鼻を鳴らしながら、亡き兄の言葉を口に出す。リクが落ち込んでいたときに、よく言っていたおまじないだった。
戦う勇気の無い少年が兄貴と慕っていた人物の死を一つの転機に、強くてカッコよく敵を倒していく。リクは、そんなアニメの主人公に自分をほんの少しだけ投影させる。立場は、全然似てもいないがそうすることで気持ちを前に向けるために。
出来るだけ小型で威力のありそうなものをリュックと腰に巻いたホルダーにしまっていく。吹っ切った訳ではないが、涙はもう流したなかった。
一通り役立ちそうな武器を集めたリクは、もう一度だけ兄の顔を見ておくために屋敷の暖炉の前に来ていた。
「兄ちゃん…、僕の涙と弱さは此処に置いていくからあっちで棄てておいてね。」
最後の涙を瞳から流してリクは、そこから離れる。
集合場所であるエントランスに、リクが来ればリクよりも早くに此処に来ていた人物がいた。
「お兄ちゃん…、早かったね。」
カナだった。
兄弟の中で一番幼く、一番弱い少女が覚悟の決まったでも、まだ少しだけ恐怖が残っている何とも言いようがない表情でリクに話しかけてきた。
多分さっきまで此処で泣いていたであろう事は、リクにも解った。
「私は、特に準備するもの無いから…。此処でお兄ちゃんの為にお祈りしてたの。そんなこと意味無いのにね…。」
「兄ちゃんそういうの全然信じて無かったしね…。」
「お兄ちゃん…、居なくなっちゃたけど…、大丈夫?」
「正直、今でも大丈夫じゃない…。でも、立ち止まったら兄ちゃんに怒られるから。」
「強いんだねリクは…。私は、まだ全然ダメみたい…。まだ前が見えないよ…。」
カナの瞳から涙が零れる。
「それで…、いいと思う。カナまでこんな風になったらもう皆で笑えなくなっちゃうと思うから。だから、カナはそのままでいて。」
出来るだけ笑顔でリクがそう言うと、ほんの少しだけカナが笑った。
「なにそれ…。よくそんな恥ずかしい台詞言えたね…。」
実際そうなのだが、言われて改めて恥ずかしくなってきたリクは、顔を真っ赤にしてうつむいた。
そんな小さな兄を見ながら、カナは誰にも聴こえないように小さな声で「ありがと、お兄ちゃん…。」と呟いた。
なんか言った?とリクに言われたが「べ~つに」といつもの小悪魔笑顔で答えた。
(ありがと…、お兄ちゃん。)
もう一度心の中で呟きながら。