始まりの朝
目の前が眩しい…。こんな場所じゃ何も解らない…。
(此処はどこ?皆は、どうなってしまったの?)
トーマの本能が、自分が依存出来る対象を求め出す。孤児であるトーマは、他人に依存することで自我を感じる。トーマの中では自分は、他人に依存しなければふとした瞬間に消えてしまう程弱く儚い存在だった。
周りが眩し過ぎるせいで視覚は当てにならないが、他の感覚を最大限に使い依存出来る対象を探す。
(誰でも…良いから誰か…。)
両腕をおもいっきり伸ばして何かを掴もうとする。
その瞬間トーマは、全身に重みを感じて目を開いた。
目を開けるとトーマの体が、ベッドと何かに挟まれていた。ほんの少し視線を下げれば、誰かの髪が見えた。
トーマの寝起きにこんなことするのは、誰か決まっている。
(ミウか…。僕はまたリセットを押したんだな…。)
少女の髪を見ながら前回のループの結末を思い出す。
「ミウ、重い…。早くどけ…。」
いつもの悪い癖が出てくる。本当は嬉しいのに、強がって相手と距離を取ろうとする。
しかし、トーマがいくら離そうとしてもミウは、離すどころか更にきつく抱き締めてくる。
「無駄に虚勢なんか張らなくても、今は二人きりだよ。だからそんなに強がらないで…。」
ミウは、顔を上げトーマの耳元で囁く。
「大丈夫…私は、トーマの事何でも知っているから。人と距離を取るのに本当は、人一倍寂しがり屋で、自分の存在を認めてくれる人に依存して…。」
今度は、トーマの顔をじっと見つめる。
「だから、早く私だけに依存して…。私は、トーマを否定しない。トーマが望むならなんだって出来るから。」
顔は、最高レベルの美少女なのに言っている事が怖い。彼女の言葉を目の前で聴いたら多分全員がそう思うだろう。
でも、トーマ自身彼女の行動そのものがありがたく感じているのも事実としてある。
結局は、お互いの気持ちのベクトルが違っていても互いを求めている。トーマは、家族として。ミウは、好きな異性として。互いが互いを必要としている。
「早く起きないとヤヨイ姉ちゃんが、部屋にくる。」
トーマの口からヤヨイの名が出た瞬間、さっきまで離そうともしなかったミウが、トーマから離れる。
「そうだった♪お姉ちゃんが、来たらイチャイチャ出来ないよね。トーマ早く起きないと、お兄ちゃん達にご飯食べられるよ♪」
トーマは、リセットを押した罪悪感とまた皆と会える嬉しさが混ざりあった複雑な気持ちのままベッドを降りる。
「改めまして、おはようトーマ♪」
「おはようミウ…。」
トーマは、ミウにあいさつをして彼女を部屋から追い出し鏡の前に立つ。
鏡に映る半年前の自分を前に再び決意する。
(今度こそ…僕は手に入れる。皆死なない幸せな未来を…。)
強気に気持ちを持てたのは、近くに家族を感じる事が出来たからだった。
今日着る服に着替えてトーマは自分の部屋から出た。