例えば、この世界がループなんてしていなければトーマはこの世界をこの上なく好きでいられただろう。とはいえ、トーマの世界=この施設な訳なのだが…。
他人に依存し、非難や罵声でも受けれること事態が彼の存在を証明出来ると考えているトーマは、自分以外の存在がいるこの世界はとても居心地が良かった。
なんともおかしな考えをしているとトーマ自身も思っているが、こればかりは生き方の問題だからどうしょうもない。
「トーマお兄ちゃん…。何か考え事?」
弟を連れて食堂へやって来たトーマは、自分に与えてもらった席に着き食事が運ばれてくるのを待ちながら、目の前の少女が言うように物思いにふけていた。
その声に顔を上げたトーマを心配そうに少女が見ていた。その顔は、ミウとは方向性が幾らか違うが万人が美少女と評価する顔立ちだろう。現にこの施設では、天使の様だと全員から可愛がられている。
彼女の目線と言葉で、トーマはまた自分という存在を認識する。それが、何より嬉しかった。彼女の中にも自分は居るのだとわかったから。
「大丈夫だよ…。目が覚めたばかりだからまだ少しぼんやりしているだけだから。」
少女を安心させる為に優しい言葉で返事をする。
とたんに少女は、「はうっ!!」と声を上げ顔を赤く染めうつむいた。
そんな少女の姿をじっと見ていると目の前に食事が乗ったお皿が置かれる。
「おはよう姉さん…。」
皿が差し出された方向をトーマは見て、そこに立っていた少女に挨拶をする。
実をいうと、トーマはループ後の最初の朝が苦手に思っている。トーマが挨拶をして返事をしてくれなければ、その人の中で自分は存在出来ていない事の証明になってしまうから。そして、この施設で一番そうである可能性が一番高いと思っているのが、今挨拶をした姉なのだ。
彼女は、ここに住む子供たちの中で一番利口だった。
して、一番合理的に物事を考える。
一番トーマを責める可能性が高いのである。もっともトーマにしてみれば責めてくれるだけありがたい。無視などされればとたんに絶望してしまう。
「おはようトーマ。今回も残念だったね。」
そう言って彼女は、自分の席に座った。
良かったと思う。まだこの施設の中で自分は生きている。それだけでトーマは嬉しくなる。
そして、その小さな笑顔を見て施設に住む三人の少女に、軽い目眩を与えた。
言い忘れたが、トーマの目の前に座っている少女の名前は、カナ。食事を運んできたのはヤヨイという名前だ。
兄弟が皆席に座った事を確認してコーヘイが口を開いた。
「前回は残念な結果になってしまったが、今回こそ全員で生き延び必ずループを終わらせよう。」
そして、全員が手を合わせた瞬間頭上から声がしてきた。
『やぁおはよー、皆が大好きPaPaダヨ♪』
明らかに高いテンションで挨拶をしてきた。PaPaと名乗る声に一応全員が挨拶をする。
『おやおや~皆元気がないね~。まだ若いんだからもっと元気に♪』
今度は、全員が無視をする。すると今度は、あからさまに落ち込んだ声が響く。
『皆…酷いよ…。PaPaは、皆の事大好きなのに…。』
「ウチ達は、お腹が空いている。要件だけ言って消えろ。」
『相変わらず冷たいね、ヤヨイチャンは。PaPaが言いたい事は、一つだけ♪皆今日も元気に楽しく過ごそうね♪』
そう言うと、PaPaからの放送は終わった。
気をとりなおして全員でいただきますと言って食事を食べ始める。慣れ親しんだ味にトーマはスイッチを押して良かったと思った。