トーマの意識は更に深く沈んでいく。
今まで観ていたビジョンとは別の景色が目の前に現れる。
荒れ果てた…もっと分かりやすく表現すれば、もう死んでしまった街並みが広がる場所にトーマは、立っていた。勿論これも夢である事は彼自身も解ってはいたが、その光景はあまりにもリアルに自身の記憶に残ってしまっている最悪の場面と一致しているので、どうしても恐怖を抑えられなかった。
(前回もその前も、何度も僕は此処で僕を殺してきた。)
その前に死んでしまう家族は、その時々で違っていたが最後の一人が死ぬのは、いつもこの場所だった。
他人に認識されることが、唯一自我を確認する方法だったトーマは、誰も居なくなった瞬間に死んでしまったも同然だった。しかも、その結果を作り出したのは他でもないトーマ自身であるから自分を殺したという認識に落ち着くことになった。
今回こそと毎回意気込みはするものの、毎回同じ結末を迎えてしまう。
もう何度同じことを繰り返したのか数えるのすら嫌になってしまうほど繰り返してきた。
(今度こそ、今度こそ絶対に此処には来ない。)
トーマが決意を決めた瞬間辺り一面光に溢れた。
それは、決して逃げることの出来ない始まりの瞬間だと解っていたので、トーマは目をそっと閉じた。
《ボクハシラナクテハナラナイ…。コノセカイガ、ドコニムカワナケレバナラナイノカヲ…。》
トーマが目を開けると辺りはすっかり暗くなっていた。外から聞こえる音が何だか騒がしい。
自分の運命を決める戦いが始まった。部屋着から、外行きのしっかりした服に着替える。恐らく他の家族達も同じように準備して食堂に集まっているだろう。
着替え終えて部屋の扉をおもいっきり蹴飛ばした。
誰かの声が聴こえたが、何度も聴いた知らない声だった。
気を失っている知らない奴から装備を奪う。持っていたのは、銃火器とその弾。いつもと一緒。だから、トーマはいつも通りに奪った銃でそいつを撃ち殺した。
一周目は、こいつを生かして一人殺された。
二周目に、殺したときは罪悪感に似た思いも抱いたが、その次からは何にも思わなくなっていた。
例えこいつが此処で死んでも、誰かが死んでしまう事実に気付いてからは、いっそトーマが殺しに慣れるためのイベントだと思うようにもなってしまっていた。
食堂に入れば、やっぱりみんな揃っていた。
「遅かったな…。何してたんだ?」
兄貴分のコーヘイが、扉に鍵を掛けていたトーマに声をかける。
「それに何時もより血を浴びている様だか…。」
「此処に来るまでに、いつもよりあいつらを殺しただけだ…。お陰でだいぶこの辺りに居た奴らは居なくなった。」
何度も経験し、そして全部覚えている。それだけが彼等の唯一の武器だった。
「そうか…ありがとな。今のところは、犠牲者は居ない。これもこれまでの経験のお陰だ。」
犠牲者は居ない。その言葉にトーマは、まず安心した。何回か前は、此処にたどり着く前に犠牲者が出た事もあったから。
「今から、作戦会議するからお前も早く席に着け。」
そう言ってコーヘイは、自分の席に戻っていく。
「了解」
短く応えてトーマも自分の席に着いた。
「頑張ろうね♪トーマ。」
隣に座っているミウが、そう言ったのでトーマは、力強く頷いた。