八八艦隊召喚   作:スパイス

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 いよいよドンパチ回の始まりです!


第二話 戦争勃発

 中央暦1639年 4月1日 夜

 ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

 

 

 ロウリア王国はロデニウス大陸の西半分を領有する大国であり、人口は3800万人をかぞえるが、亜人は全く存在していない。

 それもそのはずで、ロウリアは国是として『亜人撲滅』を掲げており、この為クワ・トイネ公国・クイラ王国とは常に緊張状態にあった。

 今、その王都ジン・ハークの中央にあるハーク城で、御前会議が行われようとしていた。

 会議場には国王であるハーク・ロウリア34世の他、宰相や将軍達など国家の重鎮達が顔を揃えていたが、中には薄気味悪い黒装束の男達も何人かいる。

 会議場には松明が幾つも灯され、参加者たちの顔を明るく照らしていた。

 進行役である宰相のマオスが会議の開催を厳かに告げると、国王がまず最初に口火を切った。

 

「皆の者、私はこの場を借りて礼を述べたい。

 ある者は厳しい軍事訓練に耐え、ある者は寝る間も惜しんで戦争の財源確保のために奔走し、またある者は武器と兵器の生産に注力し、ある者は命を賭して敵の情報を届けてくれた。これらの者達の苦労と努力があったからこそ、我が国は悲願である大陸統一と亜人――害獣どもの撲滅に向けてようやく踏み出せる。

 本当にご苦労であった」

 

 国王がそう言って少し頭を下げると、会議場は重鎮達の恐縮の声で一時満たされた。

 それが静まると、マオスは今回の軍事作戦の責任者――王国防衛騎士団将軍のパタジンに向かって話し始めた。

 

「将軍、貴官はロデニウス大陸の統一は目前であるとおっしゃられるが、今回の戦争では、クワ・トイネ公国とクイラ王国の二カ国を同時に相手取ることになる可能性が高いと考えられます。二カ国を相手にして勝利することはできますか?」

「その点については勝利を断言できます。クワ・トイネは農民の集まり、クイラは不毛な大地に意味もなく蔓延る連中で、しかも両国とも亜人が多数おり、結束は弱いでしょう。また戦力という点では質・量とも我が方が完全に優位にあり、勝利は間違いないと言えるでしょう。ただ……」

 

 パタジンは一度言葉を切って、国王の顔をちらりと見た。

 国王が手を振って続きを促すと、パタジンは話を続けた。

 

「我が国の国境において、この数週間の間に正体不明の『鉄飛竜』の姿が何度も守備兵によって目撃されており、これが少し気になるところであります。

 この鉄飛竜は東の方角から我が国の上空に侵入しては、何度か旋回して去っていくという謎の行動を繰り返しており、また非常に高速で、ワイバーンでも全く追いつけません。

 一度、竜騎士隊が鉄飛竜の進路に回り込んで捕捉しようと試みたことがありますが、これまた正体不明の攻撃を受けて、ワイバーンが一騎撃墜され、鉄飛竜は逃走しました。

 また一週間前には『アメリカ』なる国の使者を乗せた巨大な鉄の船が、王国南部の沿岸地域に姿を見せて不遜にも交渉を要求してきました。幸いにも沿岸砲台の奮戦によって、連中は尻尾を巻いて逃走しましたが、『砲弾は一発も届かなかった』と砲台の指揮官は報告しているため、船には全く損害を与えることが出来なかったと思われます。

 私はこれらの事件は、一か月前に我が国に接触してきた『日本国』の仕業ではないかという可能性が僅かにあると思っています。

 これが差し当たっては、唯一の懸念事項です」

 

 パタジンはその鉄飛竜が『航空機』と呼ばれるもので、『一〇〇式司令部偵察機』と大日本帝国陸軍が呼称する高速偵察機であることなど、この時点では全く知らなかった。

 

「なるほど、よく分かりました。

 しかし、将軍の懸念は無用に終わると思います。まず『日本国』はクワ・トイネから1000kmも離れた北の沖に存在している新興国家であり、軍事的に影響があるとは考えにくいこと。そして、奴らの使者が最初に我が国に接触してきた時、竜騎士隊とワイバーンを見て『初めて見た』と言っていたことから、ワイバーンも知らない蛮族であると思われるからです。

 ワイバーンを知らないのに、鉄飛竜など飼いならせる道理がありません。私の推測ですが、おそらく山脈に生息している新種の竜でしょう。

 大陸統一後に亜人の生贄でも捧げれば、大人しくなると思います」

 

 マオスが言うと、パタジンはもう一つの懸念を口にした。

 

「そうですか。ではもし日本国の連中が出張ってきても、鎧袖一触で蹴散らせますね。

 ですが、アメリカの情報はどうなのです?」

「アメリカに関する情報は本当に少ないので、はっきりしたことは言えませんが、鉄で出来た船を保有している所から考えて、注意すべき国であると考えています。

 ですが、大砲の砲撃程度で驚いて逃げ出すような連中である以上、戦闘意欲に乏しい蛮族であることに変わりはありません。大陸を統一したら攻め込んで、鉄の船を我が物としてしまいましょう。何も心配することはありません」

「分かりました。確かに懸念は無用でしたね」

 

 パタジンはそう言って、口の片方の端を吊り上げた。

 その後も会議は順調に進み、とうとう終盤に差し掛かった。

 途中、黒装束の男達――今回王国に支援をしてくれているパーパルディア皇国の使者――が口を挟み、国王の機嫌が悪くなるという一幕もあったが、概ね順調に作戦案はまとまり、国王は気分よく会議を終えることができた。

 

「よろしい! 作戦開始日は4月12日と決定する!

 今宵は人生最良の日だ!! クワ・トイネとクイラに対する戦争を許可する!!」

「ハハーーーーーッ!!!」

 

 国王の言葉に、重鎮達は一斉に頭をたれてそれに答える。

 しかし、彼らは他にも会議の内容に聞き耳を立てている者がいることに気づかなかった。

 掃除夫に変装して、天井の空間から会議をこっそり聞いていた者――帝国陸軍特務機関に所属する諜報員である近藤(もちろん偽名)は、会議が終わると、直ちに城を抜け出した。

 

「なるほど。部下を気遣う辺り、国王は思想はともかく、君主としてはそんなに悪い奴じゃなさそうだな……

 だが、こっちも仕事なんでね……」

 

 近藤は王都の端っこにある掘っ立て小屋に着くと、周囲に誰もいない事を確認してから中に入った。

 床下の板を上に上げると、無線機が姿を現す。

 さほど間を置かずに、暗号無電が放たれた。

 

『ロウリア王国はクワ・トイネ、クイラに対する戦争を開始する決意を固めたり。

 侵攻作戦の開始は4月12日と判明、両国に警報を送られたし……』

 

 

 

 

 中央暦1639年 4月3日 早朝

 クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 日本国大使館

 

 

 

「……今日は忙しくなりそうだな」

 

 大使館員である田中は、奇妙な予感とともに目を覚まし、窓の外を見た。

 クワ・トイネは農業国であることもあってか自然が豊かであり、空気がきれいで小鳥のさえずりが聞こえるなど、寝起きのよい朝を迎えられることが多かった。

 洗顔をして朝食をとろうとした時、職員が慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「大使! クワ・トイネ公国の外交担当者の方が、アポなしでこられました。

 何でも、火急の用件とか」

「こんな朝早くに? 分かりました、直ぐに向かいます」

(何かあったな。こりゃ……)

 

 田中が応接室に赴くと、室内では外交担当のヤゴウが緊張した顔で待っていた。

 

「田中殿、前もって通達もせずに来たことの無礼をお許しください。

 しかし、早急にお伝えせねばならない事態が発生いたしましたので」

「分かりました。先ずはお掛けください」

 

 田中が座るよう促すと、ヤゴウは座るなり言った。

 

「昨日の夜、我が国の軍務局に大日本帝国の大使館付き武官の方から緊急の連絡が入りました。

 ロウリアが我が国に対し、侵攻してくるとの情報を入手したとのことです。

 我々の方でも独自に調査した結果、この情報は精度が高いと判断しました。 戦争です」

「せ……戦争ですか!」

「はい。その為開戦となると、貴国に対して約束していた食糧の輸出はほぼ不可能になります。

 条約を反故にするのは本当に心苦しいのですが……」

 

 田中はしばし絶句した。

 食糧の供給が無くなる――それは日本国にとって死刑判決も同じだった。

 現在日本国はアメリカ合衆国と食糧の輸出協定の交渉に入っているものの、新しい航路の設定や海域調査などに時間が掛かっており、アメリカから食糧を積んだ船が到着するのはまだ随分先の話だ。

 加えて、アメリカは日本帝国にも食糧を供給しており、いかにアメリカでも現時点では余裕が無い。

 従って、今はクワ・トイネ公国からの食糧のみが唯一の頼みの綱なのだ。

 食糧が絶たれれば、日本国は一年以内に餓死者が続出するだろう。

 田中にはその悪夢が見えるようだった。

 

「何とか出来ませんか……?」

「おそらく無理です。ロウリア王国はこの大陸で最大の軍事力を保有しており、我が方がいかに軍事援助を受けていても、都市を幾つか放棄せねばなりません。そうなれば流通を維持するのは非常に困難です。また軍の物資輸送に輸送路を確保しなくてはならないため、さらに難しくなります。

 申し訳ありませんが……」

 

 ヤゴウは言って、ちらりと田中の顔を見た。

 

「そこで提案なのですが、援軍を派遣して頂くわけにはいきませんか?

 現在、大日本帝国の金田大使殿に問い合わせたところ、我が国に対して『派兵を検討中であり、最大限の軍事援助を約束する』とのお言葉を頂きました。アメリカのクロフォード大使殿は『現時点では答えられない』と回答されておられますが、まだ希望があります。

 あなた方も参加してくだされば、この上なく心強いのですが」

「……我が国は、武力による紛争解決の放棄が憲法にあります。同じ『日本』という国号を戴いていても、違いがあるのです。残念ながら、軍事的支援は……」

「分かりました。では残念ですが、食糧の供給は困難となるでしょう。

 我々はあなた方の国内問題に口を出せる立場にはありませんから……」

 

 この数日後、大日本帝国はクワ・トイネ公国に対して『協定に基づき、援軍を派遣する』と決定。艦隊と航空兵力、陸上戦力を派遣した。

 アメリカは派兵問題で国内が揺れていたが、政府による『ロウリア王国の危険性』の宣伝が功を奏したのか、半数以上の国民が派兵に対して前向きな姿勢となったため、クイラ王国を中心に部隊の展開が行われることが決まった。

 これらの動きを見た日本国も、『憲法を拡大解釈して海外派兵すべきだ』との論調が政府内で強まったため、多分に政治的な意図(帝国とアメリカに乗り遅れるとこの世界で軽く見られてしまう、との危惧)ながら、自衛隊が現地に派遣されることが決定された。

 

 

 

 中央暦1639年 4月11日 午前

 ロウリア王国東方国境付近 東方征伐軍先遣隊 野営地

 

 

 

「明日はギムの町、そして一か月後には公国西部、三か月後には蛮地全土が我が国の配下に……ヒヒヒ、楽しみだ」

 

 先遣隊の指揮をパンドール将軍より任されている副将アデムは、そう独りごちた。

 アデムが率いる先遣隊は、それだけで三万人という大軍であり、このことからも王国が多大な期待を自分にかけていることが分かる。

 しかもこの内訳には、この世界で『最強の航空戦力』であるワイバーンを操る竜騎兵150騎と、アデム自身が陣頭に立って訓練を施した魔獣使い250人が含まれており、そのことが一層嬉しさと満足感を倍増させた。

 また、最新鋭の兵器である大砲も30門預けられており、これは王国全軍の保有する大砲の一割に上ることも、彼の機嫌をより一層良いものにしていた。噂ではこの大砲のサンプルをパーパルディア皇国から譲り受ける際、皇国は常識では考えられない屈辱的な要求を王国にしたようだが、彼はそんなことは全く気にかけていなかった。

 クワ・トイネ公国の外務局からは「軍を国境より退去させて欲しい」と、再三に渡って魔力通信が送られているが、全部無視するようにと彼は通信兵に言い含めていた。

 彼は伝令兵を呼ぶと、獰猛な笑みを浮かべながら言った。

 

「全部隊に伝えよ。ギムでは戦利品は好きにしていい、とな。

 町の連中はなるべく残虐な方法で殺し、一人も生かして町から出さないように…………

 いや、待てよ。いいことを思いついた」

 

 アデムはもう可笑しくてたまらない、といった表情をしながら追加の命令を出した。

 

「100人ほどは殺さずに開放せよ。恐怖を連中に広めるのだ…………

 クックック……アッハッハッハ!!」

 

 伝令兵は逃げ出すように彼に背中を向け、部隊に命令を伝えた。

 

 

 

 中央暦1639年 同日午後

 クワ・トイネ公国 西部方面騎士団 ギム基地司令部

 

 

 

「どうやら市民の疎開は間に合いそうだな」

 

 西部方面騎士団団長のモイジはそう言って、幕僚たちに笑みを見せた。

 西部方面隊の兵力は歩兵、弓兵、騎兵、重装歩兵、軽騎兵を合わせて3500名と、飛竜24騎に魔術師が30名であり、ロウリア軍の先遣隊の十分の一程度に過ぎない。これでもかなりの兵力が割かれているのだが、どうしても見劣りがする。

 しかし司令部に詰めている者達の表情は皆晴れやかだった。

 それもそのはず、ギムの町とその周辺地域の集団疎開がほぼ完了したとの報告が、つい先ほど届いたからだ。

 これまで公国政府はギム市民に対して『疎開命令』を発令し、軍までも動員して強制的に市民の疎開を推し進めた。そのため腰の重い地元民たちでさえ次々と疎開に応じざるを得なくなり、現在ギムには一人の市民も存在していない。

 彼らが全員無事逃げ切れるかどうかは神のみぞ知るだが、自分たちは少なくとも『国民を守る』という任務は成し遂げたのだ。

 軍人にとって、これほど誇らしいことがあるだろうか。

 

「団長、そろそろ我々も行きましょうか」

「うむ! 司令部にある重要文書は全て焼却処分だ! 魔力通信機も破壊し、使用不能とせよ! 町にも火を放つ準備だ! 周辺の畑や倉庫の食糧も処分し、井戸には毒を投げ入れろ! ロウリアには何も渡すな!

 我々の使命は、国民が1m、1cmでも奴らから遠く逃れるための時間を、一分一秒でも長く稼ぐことにある!!

 各員はそのことを常に頭に置くように!!!」

「オオーーーーーーッ!!!」

 

 幕僚たちはモイジの檄に応じると、直ちに行動に移り始めた。

 それを確認すると、モイジは懐に手を伸ばして一枚の紙を取り出した。

 そこには、最愛の妻と娘の絵が描いてある。

 妻と娘は疎開する際に泣きながら「離れたくない」と言ったが、モイジは心を鬼にして後方に疎開させた。

 ここで少しでも長く戦うことは、家族を救うことにもつながるのだ。

 モイジは改めて、そう決意した。

 

 

 

 

 中央暦1639年 4月12日 早朝

 クワ・トイネ公国 ギム

 

 

 

 この日の朝は、ロウリア軍側からの航空攻撃と砲撃で始まった。

 アデムは機嫌よく配下の砲兵に指示を出してゆく。

 

「さあ始めよう……殲滅の宴を! 撃てぇぇ!!」

 

 アデムの号令一下、30門の大砲は次々と砲弾をクワ・トイネ側に撃ち込む。

 

「クククク……しかしこの『大砲』という兵器は実に凄いですねぇ……

 敵の攻撃範囲外の1km先から一方的に打撃を与えることが出来るとは…私好みの兵器だ」

 

 アデムは砲声に酔いしれながら、部下に前進を始めさせる。

 号令に従い、竜騎士を乗せたワイバーンが空から、歩兵や騎兵が地上から次々と国境を突破する。

 この時になって、敵側から赤い狼煙が上がり始めた。

 おそらく国境突破をギムの連中に知らせるものだろうが、もう遅い。

 ギムの市民――特に亜人は、一人残さずなぶり殺しにするつもりなのだから。

 

 アデムはこの時、楽に勝利を収められると思い込んでおり、それは配下の兵士たちも同様であった。

 しかしそれが間違いであったことを、彼らは思い知らされることになる。

 

 

 

 昭和17年(1942年)4月13日 深夜

 大日本帝国 広島県 柱島泊地

 

 

 

 この時、帝国海軍最大かつ最重要の拠点である柱島泊地は、夜の闇に沈んでいた。

 しかし突然、停泊している複数の艦から、ある戦艦に発光信号が放たれるや、各艦は一斉に動き出す。

 先ずは軽巡『木津』を先頭として、第一水雷戦隊に所属する12隻の吹雪型駆逐艦が整然と出港してゆく。

 続いて第一二戦隊の軽巡『北上』『大井』が、続いて第八戦隊の重巡『妙高』『那智』『足柄』『羽黒』が、これまた一切の逡巡のそぶりも見せずに出港する。

 また陸軍部隊や補給品を満載した輸送船団も、艦隊に付き従って外洋へと進んでゆく。

 泊地の艦艇は次々と出撃してゆき、最後は小山のような大艦――戦艦が動き出す。

 艦隊と輸送船団は全てが外洋に出ると、輪形陣を組んでゆっくりと西に向かって進みだした。

 ごく少数の関係者以外、このことは誰も知らない。

 

 

 

 中央暦1639年 4月13日 夕方

 クワ・トイネ公国 ギム 

 

 

 

「やってくれたな……モイジよ……

 お陰様で私の経歴に土がついてしまったではないかぁぁぁ!!」

 

 アデムは燃え盛るギムの町を背にしながら、憎々しげに捕虜となったモイジを睨みつけて地団太を踏んだ。

 一方のモイジは、捕虜の立場でありながら不敵な笑みを臆することなく浮かべている。

 確かにアデムはギムの町を陥落させたものの、先遣隊は町を陥落させるまでに大幅な侵攻予定の遅れを来しており、それはアデムを苛つかせるには十分であった。

 苛々したアデムは、本隊が進軍を開始するまでに町を陥落させるために先遣隊の全兵力で町を包囲して攻撃し、守備部隊を全滅させたが、その過程で先遣隊は500名もの損害を出してしまった。

 極めつけは戦利品としてなぶり殺しにする予定だった市民が一人もいないという事態で、とうとうアデムは癇癪を爆発させた。

 

「貴様ぁ! 戦利品どもをどこへやったぁ!!」

「それに答える義務は何所にもないな。それに副将ともあろう者が子供のように癇癪をおこすとは……みっともないにもほどがあるぞ」

「黙れぇぇ!! 質問をしているのは私だぁぁ!!」

「ふん。その顔を見れただけで一日半も町で籠城したかいがあったというものよ……

 もう市民は全員避難した。残っているのは軍のみだ。今頃避難民たちは遥か遠くにいる。お前は一人も捕まえられんぞ。

 少し遅かったな。ハッハッハ」

 

 モイジの言葉は途中で遮られた。

 何故ならアデムが剣を振りかざして、モイジの体を刺したからだ。

 その後もアデムは奇声を上げながらモイジの体を、自身が血まみれになるまで刺し続けた。

 何十回も刺した後でようやく気が済んだのか、アデムは周囲にいる部下たちに向かって叫んだ。

 

「何をぼんやりしてるんだぁぁ!! さっさと追撃部隊を出せぇぇ!!

 蛮族どもを一人残らずぶっ殺すんだぁぁぁぁ!!!!」

 

 血まみれになり、悪魔のような形相のアデムに怒鳴られた部下たちは、慌てて行動を開始した。

 しかし、アデムは気づいていなかった。

 これが破滅に至る道のほんの始まりにすぎなかったことに……      




 いかがでしたでしょうか?
 少し更新が遅くなってしまい、申し訳ないと思います。
 感想、ご意見などお待ちしておりますので、よろしくお願いします!

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